【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は文字数がプロローグ並みに少ないですが、キリのよさを考えた結果ですので、どうかあしからず。あと、何かここの士道さん、原作より微妙に紳士成分が多い気がする件。いずれ熱い士道さんも描写したいものなのです。



4話 意味深な精霊

 

 

 天宮クインテットにて。入退場ゲートで2人分のフリーパスを購入した士道は、志穂とともに屋内遊園地へと足を踏み入れていた。当初、士道は志穂が好きそうなアトラクションを優先して回っていく予定だった。しかし、今日が土曜日なためか、屋内遊園地は午前中にもかかわらず人が多かった。ゆえに、士道は待ち時間の少ないアトラクションへと志穂を連れていくことにした。志穂の好きそうなアトラクションを選んだ所で、アトラクションの待ち時間が長いと、せっかくの志穂の遊園地への興奮が収まってしまうと考えたからだ。

 

 そのため、士道はまず志穂とジェットコースターに乗ることにした。だが、士道と志穂がライドの最前席に乗り込み、安全バーを下げた所で。今までハイテンションのままに士道と会話を続けていた志穂が急に無言になっていることに、士道は気づいた。

 

 

「志穂? もしかして、ジェットコースターが怖いのか?」

「いえ全然全くこれっぽっちも私は今日も元気ッス」

「……怖いんだな。悪い、すぐに乗れそうだから選んだんだけど、他のアトラクションにすれば良かったな。スタッフに頼んで、降りさせてもらうか?」

「いやいやいや! だから怖くないって言ってるじゃないッスか!? 今になって急に怖くなったとかそんなことないッスから! ええ、ないですとも!」

「と言われても、そんなにブルブル震えてて怖くないは無理があるんじゃないか?」

 

 士道の問いかけに対し、志穂は支離滅裂な言葉を返す。そのことから志穂がジェットコースターが苦手だと気づいた士道は、今からでもジェットコースターから降りることを提案するも、志穂は虚勢を張り、あくまで自分は怖がっていないと主張する。と、そうこうしている内に、ジェットコースターが動き出す。もう、ジェットコースターから降りることはできなくなった。

 

 

「あーうー、動いたぁぁ! ヤバい、今の内に辞世の句を考えなきゃ……!」

「辞世の句って大げさな。……なぁ、志穂って精霊なんだろ? いざって時は天使や霊装があるんだから、そんなに怯えることないだろ?」

 

 レールに沿って士道たちの乗るライドはゆっくりと高度を上げていく。ガクブルと体を震わせ、死をも覚悟している様子な志穂を前に、士道はふとした疑問をぶつけた。そう、精霊には最強の矛たる天使と、絶対の盾たる霊装がある。いざという時は天使と霊装を使えば志穂は難なく生き残れるはずだ。なのになぜ、志穂がこうも怯えているのか。ただジェットコースターが苦手にしては怯え方が異常なように、士道には感じられたがゆえの疑問だ。

 

 

「そ、そんなこと言われても――」

 

 士道の問いに志穂が涙目で返答しようとした時。今までほぼ真上を向いていた士道たちの体が正面を向く。士道たちの乗るライドがレールの頂点に達したのだろう。だから、これからライドは急降下を始めるのだろう。そう考え、士道と志穂は前を向く。が、そこにレールはなかった。

 

 

「「え」」

 

 直後、ジェットコースターは勢いよく逆走した。

 

 

「うわッ!?」

 

 まさかの後ろ向きジェットコースターである。心の準備をしていなかった士道は思わず悲鳴を上げる。志穂の前では頼もしい男として振舞っているのにマズかったかと士道は志穂に目を向ける。

 

 

「にゃああああああああああああい!?」

 

 しかし、当の志穂はひたすら絶叫するのみで。士道のことなど気にもかけていないのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

「ふぃー、満喫したッスねぇ。遊園地」

「あぁ。いい思い出になったな」

 

 午後1時。適宜ラタトスク機関からサポートをもらいつつ、数多くのアトラクションを体験した士道と志穂は休憩と昼食をかねて、屋内遊園地内のレストランを訪れていた。ちなみに、志穂はジェットコースターを始め、フリーフォールやバイキングといった絶叫マシン系のアトラクションは例外なく苦手だった。

 

 

『んー。妙なことになってるわね』

「琴里?」

『……士道の志穂とのデートは私たちの目から見ても上手くいってるわ。士道も、志穂と仲良くなってる手ごたえはあるでしょ?』

「あぁ。まぁな」

『でも、志穂の好感度が一定の値を超えようとすると、すぐに下がっちゃうのよ。まるで、志穂が士道と仲良くなりすぎたらマズいって自制してるみたい』

「え?」

 

 カルボナーラを平らげ、満足そうに椅子の背もたれに体を預ける志穂を前に、士道は志穂に聞こえない程度の声で琴里と会話する。琴里曰く、志穂は士道と仲良くなり過ぎないように感情を抑制しているそうだ。だけど、ここ数時間志穂とデートしてきた士道には、どうしても目の前の志穂がデートを心から楽しんでいるようにしか思えなかった。

 

 

「……仮にそうだとして、なんで志穂は俺への好感度を調整してるんだ?」

『さぁね。でも、今のままだといくらデートを続けても、志穂の霊力を完全には封印できないのは確実でしょうね』

「俺から何か仕掛けないとってことか」

 

 琴里からの情報を受けて、士道は気持ちを引き締め直す。今まではストレスなく、快適にデートをできていたが、これからは志穂が士道への好感度を調整する理由を知るために、タイミングを見計らって志穂に揺さぶりをかけていくことが要求される。場合によっては、志穂の地雷を敢えて踏み抜く覚悟すら必要になるだろう。でなければ、志穂の封印は永遠に実現されないのだから。

 

 

「――って、んん!? もうとっくに2時間超えてるじゃないッスか!? 時間のこと、すっかり忘れてたッス!」

 

 と、その時。ふとレストランに備えつけられていた掛け時計で現在時刻を知った志穂がガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。

 

 

「先輩! 時間なんで、今日の所は失礼するッス! 遊園地デート、一生の思い出にするッスね!」

『士道、志穂を引き留めて!』

「待ってくれ、志穂!」

「先輩?」

 

 志穂は慌てながらも、ニパッと爽やかな笑みを残して士道の元を去ろうとする。士道は琴里に言われるまでもなく、志穂を呼び止める。志穂が不思議そうに士道を見やる中、士道は志穂をこの場に繋ぎ止めるべく、言葉を紡いでいく。

 

 

「志穂。確か、君には事情があるから俺と2時間しかデートできないって話だったけど……何か外せない用事があるってわけじゃないんだよな? 例えばこの後、誰か他の人と会う約束をしていたとか、絶対に行かなきゃいけない場所があるとか」

「いえ、そういうのは特にないッスけど」

「じゃあさ、志穂に用事がないのなら、このままデートを続けないか? 俺、もっと志穂のことを知りたいんだ。志穂と一緒に、デートを楽しみたいんだ。どうかな?」

「……」

 

 士道からのデート続行の提案を受けて、志穂はしばし沈黙する。腕を組み、目を瞑り、むむむと唸り声を上げた後、神妙な顔つきで士道に言葉を返す。

 

 

「先輩。好奇心は猫をも殺すって言葉、知ってるッスよね? ……私とこのままデートを続けてもトラウマしか残らないッスよ? 先輩は知らずに済んだことを知って、後悔するだけッスよ? それでもデートを続けて、私の事情に踏み込むつもりッスか?」

「あぁ。志穂が俺のことを思って忠告してくれるのは凄く嬉しい。でも、それでも踏み込みたいんだ。でないと、ずっと志穂に近づけないままだと思うから」

「先輩……」

 

 志穂が半ば突き放すような発言に、士道は毅然とした態度で今の正直な気持ちを告白する。対する志穂は意外そうに目をパチパチと瞬かせた後、「そうでした。先輩はそういう人だったッスね」とでも言いたげにため息を吐いた。

 

 

「やれやれ、そんなに熱烈にアプローチされたんじゃデートを切り上げるわけにはいかないッスね。ではでは、大好評につき先輩とのデート、第2ラウンド開始ッス。でも先輩、何が起こってもいいように、覚悟だけはしていてくださいね?」

「あぁ、わかった」

 

 志穂は2人を取り巻き始めた真面目な雰囲気を払拭するように、デート続行を高らかに宣言する。他の精霊と同様に、志穂にもきっと何か抱えているものがある。そんな、志穂が抱えているものを知った上で志穂を救う覚悟を、士道は固めた。

 

 

 ◇◇◇

 

 その後。フラクシナスのAIが提示した選択肢から琴里たちが採用した案に従い、士道は志穂とともに天宮クインテットのショッピングモールに向かった。そして。ショッピングモールの自動ドアに差し掛かった所で、唐突に鉄柱が志穂に落下し、容赦なく志穂を圧殺した。

 

 

 士道はこの時、志穂が残機∞の精霊であると知った。

 志穂がなぜ、イモータル(不死者)と呼ばれているかを理解した。

 士道はこの時、己の抱いた覚悟がどれだけ甘いものだったかを思い知った。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。遊園地で苦手なアトラクションは特にない。
五河琴里→士道の妹にして、精霊保護を目的とするラタトスク機関の一員にして、5年前にファントムに力を与えられ、精霊化した元人間。正直、志穂の好感度に言及するセリフは令音さんに言わせた方がよかったかもしれない。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。絶叫マシンは総じて苦手。士道に自分の死に様を見せないようにデートを早めに切り上げようとしていた模様。

 というわけで、4話は終了です。時系列的には、4話→プロローグ→5話と読み進めていくとわかりやすいことでしょう。プロローグの部分もこの4話で改めて描写しようと思ったのですが、何だかプロローグのコピペにしかならなそうだったのでやめました。

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