【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は序盤の山場な展開となっております。閑話休題。現状、最後に精霊の2文字を付与する縛りでサブタイトルをつけてますが、話数が増えるにつれてサブタイトルが雑になっている感。そろそろ別のアイディアを考える頃合いですかね。



5話 実は知っていた精霊

 

 

 ショッピングモールの入り口で志穂が鉄柱に潰されて死んだことを契機に、志穂が残機∞の精霊だと知った後も、士道は志穂とのデートを続行した。志穂の忠告に従わずにデートの続きを要求した手前、ショックな出来事があったからといってデートをやめるわけにはいかなかったからだ。

 

 そんな士道の目の前で、志穂は冗談みたいに何度も死んでいった。

 デートを仕切り直そうとする士道の眼前で、志穂は当然のように死に続けていった。

 

 唐突に上から落下してきた植木鉢が志穂の頭部に命中し、急死。天宮クインテットに強盗が現れ、強盗の威嚇射撃の流れ弾が志穂に命中し、即死。信号無視をした暴走トラックに志穂が撥ね飛ばされて、轢死。志穂の体が壁の中に埋まる形で現界した結果の、変死。これまた唐突に落下してきた看板が志穂の頭部に命中し、頓死。などなど。

 

 まるで世界が志穂を色んな方法で殺して遊んでいるかのように、様々なバリエーションで志穂が死んでいく。その度に、士道の目の前で、志穂の血が飛び散っていく。志穂の目から命の光が消えていく。そして、絶命とともに志穂の死体や血が消滅し、無傷の志穂が何事もなかったかのように士道の隣に静粛現界してくる。もう、おかしくなってしまいそうだった。

 

 

「えと、士道先輩。大丈夫ッスか? SAN値に余裕はあるッスか? 一時的狂気や不定の狂気の兆候があったりするッスか?」

「……」

 

 午後7時。道路沿いの自動販売機で冷たい緑茶を購入した志穂は、自動販売機の隣のベンチに深々と座る士道に心配そうに声をかける。だが、今日1日だけで計10回もの志穂の死を間近で見てきた士道には、平気だと答える余裕も、志穂から差し出された緑茶のペットボトルを受け取る気力も残ってはいなかった。

 

 

「んー、参ったッスね。先輩が飲まないなら私が緑茶飲まなきゃなんスけど……私、緑茶あんまり好きじゃないんスよね。これは選択をミスっちゃったッスね」

「……志穂。いつも、こうなのか? いつも、今日みたいに何回も死んでるのか?」

「はいッス。今まで、ざっと見積もって1万5千回は確実に死んでるッスよ。現界してから死ぬまでの時間は約2時間って所ッスね。今日は結構ハイペースで死んだ感じッス。やれやれ、いくら世界が私のことを嫌ってるからって、先輩とのデートをそう何度も邪魔することないッスよねぇ」

 

 士道を元気づけるべく、努めて明るく振舞う志穂に、士道は弱々しい声色で志穂に尋ねる。志穂は士道の問いにあっさりと肯定しつつ、士道とのデートに水を差しまくった世界に対する不満をふくれっ面で表明する。

 

 

「そうか。だから、俺とのデートを2時間だけにしようとしていたのか」

「ま、そうッスね。私のグロい死に様を見たら、その手の性癖を持ってなさそうな優しい先輩はショックを受けるだろうなと思ったので。実際に今、凄くショックを受けてますしね」

「……」

「ちなみに今朝、おじさんが私を轢いたって騒いでたッスよね? あれ、事実ッス。私は実際にあのおじさんの車に轢かれて死んでたんスよ。でも、私は死ぬと、すぐに私の死体や血が消える仕様になってるッスから、あんな騒ぎに発展したってわけッス。何ともはた迷惑な精霊ッスよね、私。空間震こそしょぼくても、私も立派に特殊災害指定生命体ってことッスよね。あはは」

 

 志穂の事情を深刻に捉えている士道とは対照的に、志穂はどこまでも軽い口調で言葉を綴っていく。士道は何も答えられない。志穂に合わせて軽口を返すことすらできない。

 

 

「――まぁそんなわけなので、先輩。私の霊力を封印しようとするのは諦めてくれないッスか?」

「……え? 志穂?」

 

 と、その時。志穂がにこにこ笑顔を消し去って、真面目な顔つきで一言、士道に提案をした。なぜか士道の目的が志穂にバレている。士道は思わず顔を上げ、改めて志穂を見やる。

 

 

「実を言うと私、先輩のことを知ってたッス。前に私、偶然にもラタトスク機関本部やDEMインダストリー本社の中で静粛現界したことがありまして。そこで、興味本位で色々と精霊に関する資料を読み込んだことがあったッス。まぁ最終的に、ラタトスク機関の時は足を滑らせて階段から派手に転げ落ちて死んで、DEM社の時は世界最強の魔術師(ウィザード)を自称するエレ何ちゃら先輩に見つかって首をスパーンと刎ねられたッスけど」

「……エレ何ちゃらって、それ多分エレン・メイザースのことじゃないか?」

「あ、そんな感じの名前だったッス。まぁそれはさておき。私はそこで先輩のことを、これまで何人もの精霊を救ったヒーローのことを知ったッス。……先輩なら、いずれ私のことも救おうと接触してくると思ったッス。でも、私にとって精霊の力は生命線ッス。残機が∞だったからこそ、私は世界に嫌われてもなお、何度も何度も殺されてもなお、生きていられるッス。精霊の力がなければ、喜び勇んで殺しに来る世界の悪意に対抗できずに、私はとっくの昔に終わっていたッス。今、先輩とこうして話す私もまず存在しなかったッス」

「志穂……」

 

 ここで士道は合点がいった。どうして志穂が士道の好感度が上がりすぎないように自制していたのか。志穂が士道のことを事前に知っていたのなら、答えは簡単だ。志穂は士道に霊力を封印されれば最後、今日みたいに死んだらもう復活できなくなる。だからこそ、志穂は士道にキスをされても霊力が封印されないように好感度を調整していたのだ。

 

 

「だから、先輩。先輩とのデートは楽しかったッスけど……私を攻略して、霊力を封印しようとするのはもうやめてほしいッス。これっきりにしてほしいッス。お願いします、先輩」

 

 志穂は諦念に満ちた微笑みを浮かべながら、ペコリと頭を士道に下げる。普通に考えれば、志穂のお願いを受け入れるべきだ。士道は今まで精霊を救うために、精霊に幸せになってもらうために、キスという手段で精霊の霊力を封印していた。だが、志穂の場合、霊力の封印は志穂にとって幸せどころか、復活できない完全な死という不幸をもたらしてしまう。封印が志穂の幸せに繋がらないのなら、ここで士道は志穂のお願いに応じるべきだ。精霊の封印が精霊の幸せに繋がるという法則に例外が存在することを受け入れるべきなのだ。だが。

 

 

「……それは、できない」

 

 気づけば、士道はきっぱりと宣言していた。志穂の提案を真正面から拒否していた。自分でもどうして、志穂のお願いを拒否したのかがわからない。対する志穂は、まさか士道が自分の提案を突っぱねるとは考えていなかったのか、エメラルドの瞳を驚きに見開く。

 

 

「私の死に芸事情を知ってなお、頑なに私の霊力を封印する気ッスか? 何スか、それ? 私に死ねって言うんスか? どうしてそんなこと言うんスか。酷いッスよ、先輩。私、そこまで先輩に嫌われるようなことをしたつもりはないんスけど」

「違う、そうじゃない。志穂を封印しないってことは、志穂を今のまま放っておくってことは、志穂はこれからも今日みたいに死に続けるってことだろ? それはダメだ。それじゃあ、志穂が救われないままだ」

 

 志穂が悲しそうに目を伏せる中、士道はしっかりとした声色で志穂の提案を拒否した理由を告げる。そう、そうだ。士道はなぜ、志穂の提案を否定したのかを理解した。士道は己の心に渦巻く感情に任せて、言葉を紡いでいく。

 

 

「救われない? 何を言ってるッスか? 私は救いなんていらないッスよ。私はもう死に慣れたッス。だから、いくら死に続けようと平気なんスよ。それよりも、先輩が私を封印することで、私の残機が1になってしまう方が何倍も、何十倍も何百倍も何千倍も怖いッス。……後生ッス。お願いです、先輩。考え直してください。私を封印しないでください!」

「ダメだ、俺は志穂を絶対に封印する!」

「どうして!?」

「志穂は平気だって言うけど、何ともなさそうにしているけど、何度も死ぬことが平気なわけがないからだよ!」

 

 士道は声を荒らげる。士道は確信していた。志穂が死に慣れてなんかいないとの確信を抱いていた。なぜなら、志穂はジェットコースターに乗る時、怖がっていた。辞世の句を考えようとするほどに、ジェットコースターで死ぬ可能性が高いと判断し、震えていた。もしも志穂が本当に死に慣れているのなら、あの場面でも平然としていたはずなのに。

 

 

「志穂が死に慣れてるなんて、そんなのはウソだ! もしも仮に、志穂が本当に死ぬことが平気だとしたら、それはもう、志穂の心がボロボロに壊れ果てている証拠だ! そんな志穂を放置できるわけがない! 俺は志穂を封印する! 残機∞で当たり前だとか、死ぬのが日常茶飯事だとか、そんな異常な考えなんか捨てさせて、俺が志穂を幸せにしてみせる!」

「わからない人ッスね! 私が幸せになるには残機が必要不可欠なんスよ! じゃないと、世界に嫌われてる私は死の呪いに抗えないんスよ! それとも何スか!? 私を封印して、残機が1になった私を先輩がずっと守るとでも言うつもりッスか!?」

「その通りだ! 志穂にどんな危険が迫っても、俺が守り抜いてみせる!」

「ッ! 信用ならないッスね! 今日私が先輩の前で何回死んだと思ってるッスか!?」

 

 志穂のために志穂を封印したい士道と、残機が1になることを恐れて士道の封印に反発する志穂。2人は段々とヒートアップしていき、荒々しい口調で激しく言葉をぶつけていく。

 

 

「……このままじゃあ平行線ッスね」

 

 そして。双方着地点を見いだせないまま、数分が経過した時。志穂は心を落ち着けるように何度か深呼吸をした後、士道に別方向からの提案を行った。

 

 

「先輩。明日、もう一回デートをしませんか?」

「え?」

「私にどんな危険が迫っても守り抜くんスよね。だったら、証明してください。明日のデートの間、私を守り抜いてください。どんな手段を用いてもいいッスから、私を一度も死なせずに、私とのデートを最後まで完遂してください。もしもそれができたのなら、封印を受け入れてもいいッスよ。……どうせ私を死なせないなんて無理ッスけど」

「ッ!? 本当か!?」

「はいッス。でもその代わり、もしも先輩が私を守れずに、私が死んでしまったなら、金輪際、私を封印しようとしないでください。で、どうするッスか、先輩?」

「あぁ、それでいい。やってやるさ!」

 

 士道は志穂の提案に飛びついた。明日のデートで志穂を守ることに失敗したらもう二度と志穂を封印する機会はやってこないにも関わらず、士道は志穂の提案に快諾した。志穂を守り抜ける確証があったわけじゃない。だが、白馬の王子さまなら。これまで何人もの精霊を救ったヒーローなら。ここで躊躇なんてあり得ない。そんな気持ちで、士道は志穂の提案にうなずいたのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。死ぬのが日常茶飯事な志穂に、生きていられるのが当たり前な日々を送ってほしい一心で、志穂の封印を強く決断した。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。現界する際の位置がランダムなため、壁の中に現界したり、ラタトスク機関本部やDEM本社で現界したりしていた模様。

 というわけで、5話は終了です。ようやく描写したかったシーンその1にたどり着きました。やはり士道さんは熱く語ってこそですよねぇ。物語の構成上、志穂さんを一度も死なせない縛りのデートは1~2話ほど後のことになりますが、お楽しみに。

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