どうやらこの少年、少し強行に挑む様です。
※R‐15
サクラは気まずさと、不安を胸に秘めて森をブラブラと歩き。
座るのに丁度良さそうな木を見つけると、その幹に腰を下ろした。
座ってボーッと空を見上げているだけでも、少年はちゃんとサクラを見つけ出してくれる。
それが可愛らしいと思える自分が、徐々に熱い思いに侵蝕されている事に恐れに近しいモノを感じる。
(何、ビクビクしてるの私。相手は年下だし、それに私はそんな感情は持ち合わせていないのよ!)
年下はサクラの射程内に入らない。
筈だった。
熱を秘めたあの瞳に見つめられてから、サクラの中で少年の評価が変わった。
今まで弟ととしか見ていなかったが、それもひっくり返されそうなのだ。
会う度に、成長してゆく少年に少しづつではあるが[男]を感じずにはいられなかった。
初めて会った時は、どの位の大きさだったかは分からないし、覚えていない。
敵に追われている少年に助太刀する形で戦闘に加わった事で、正確な体格は確認出来なかった。
改めて顔を合わせた頃は、サクラの胸辺りに頭があった事は覚えている。
それが、今ではサクラの目の高さだ。
これからもっと成長していく。
背を追い越されるだろう。
チャクラを無しと考えて、腕力で勝てなくなるかも知れない。
全ての要素が、サクラに危機感と、可笑しな期待をもたらす。
それは[母]としてか、[女]としてか。だが、後者は少年の思いを受け取ってしまった場合である。
それは、果たして許されるのだろうか。
結局は生きる時代が違う。
もし、サクラがここに残ると選択し、それが認められたのなら。
それは、大きな時間の歪みを生み出してしまうやも知れない。
しかし、サクラはまだ、そこまで難しく考えていない。
少年の熱が冷めた辺りに、丁寧に断れば一時の年上への憧れとして処理されるだろうと、浅はかな考えがあったからだ。
サクラは肝心な箇所を忘れてしまっている。
少年がうちはの人間である事を。
それは、彼女の所属する7班に居る[彼]の性格を観察してみれば分かる事なのだ。
敢えて分かり易く言えば、狙った獲物は逃さない、自分のモノだと認識したものは絶対に手放さない、裏切りは許さない、等々。
実に扱いにくく成長する、と。
(あの手紙も、何だか内容も気になってきた事だし、そろそろ解読してみようかしら)
だが、それまで踏み出せないのだ。
何度も自力で解読してみようと古書を引っ張り出しても、とある感情が足を引っ張って中々集中まで達しない。
そこにまた熱い思いが書いてあったのなら、サクラも少年の気持ちを無視が出来なくなる。
そして、現代に戻っても問題が出てきた。
顔つきの似ているサスケを見る度に、サスケへの思いではなく、少年の顔が浮かんできてしまうのだ。
(困ったわ…。サスケ君を、[個]として見れなくなってきてる…)
あんなに想いを募らせていた相手が、魅力を感じなくなり始めている事に焦りを感じ始めている。
ついて行って里を抜けても良いと思った時もあった。
他人に殺されるのなら、自分が殺そうと決めた頃もあった。
そんな相手を『なんの魅力』を感じなくなったとは大問題だ。
精神疾患だ、心の病だと、いのに心配されてしまった。
後に相談をした事を後悔する。
サスケも、冷静なサクラの対応に違和感を感じているのか。
少し気にかけるている様子だが、第三者から見れば手遅れだ。
愛は失わなければ、分からない事もある。
誰しもが体験する洗礼を、彼は受けてしまったのである。
サクラも、彼に思う気持ちを、熱を取り戻したいと思いながら。
心のどこかで諦めを感じていた。
二人共、どうしようもない状態になってしまったのだ。
(ホント、こっちもどうすればいいのよ…)
額を手で押さえ、ため息を付くと何処かから[気]が飛んできた。
それに反応し、サクラはその場から跳ねるようにして避ける。
サクラの座っていた木の幹には、石が勢い良く当たって弾けたではないか。
そして、飛んできた方向を見ると、案の定、噂とすれば何とやらだ。
「お、いい反応」
「もう、危ないじゃない!」
-お姉さんだったら、避けられるだろ?
そう言って、小悪魔なニィっと笑う顔が反則モノだ。
サクラは怒りたくとも、その表情に悪意ないものを感じてしまいキツく言い返せない。
少年はサクラの座っていた木の幹に腰を下ろし、背伸びをして、頭の後ろで腕を組む。
完全にリラックスしている体勢だ。
それは、警戒しているサクラが、段々と馬鹿らしく思えてくる程。
がしかし、サクラが安心して、隙を見せた瞬間に、またドキリと女を擽る誘惑を仕掛けてくるのだ。
一体何処でそんな知恵と、テクニックを磨いてくるのか。聞きたくなる程に。
(大きくなったら[魔性]になりそうね。本当になりそうで怖いわ…)
今はまだ幼い部分があって、可愛らしい時期でもある。しかし、時の流れは残酷で少年も男へと順調に成長中なのだ。
サクラは見ているしか出来ないのだ。
[変わらない姿]で。
サクラは時を越えても、その時代に合わせては居ない。つまり、時が幾ら経っても変わらないのだ。
彼女の周りの時間が止まっている様に。
これも仮説を立てると、自身がこの時代に残ったのなら、周りの止まった時間も時代に合わせて動き出すのではないか、と。
もし、サクラより年上になり、頼りある[男]に成長してしまったら。
それを考えると、少し見てみたい気持ちと、不安が複雑に絡み合う。
その時上手く断れるだろうか。
(その前に、何とか関係をもとに戻せば)
何度も言おう。
その考えが、[浅はか]だと。
少し機嫌の良さそうな少年の隣に腰を下ろし、サクラは何時もの様に話を切り出した。
「今日はなんの修行?」
「いや、もうして来たんだ。お姉さんが居なかった間に、面白い奴にあってさ」
「面白いヤツ?」
「そ、面白い奴。スッゲェ服と髪型がダセェ奴でさ、でも強いんだよ。俺と同じくらいか」
-もしかすると、俺以上かも知れねぇ。
珍しい。あの少年言い訳を言ったり、屁理屈が先に出てくる口から潔く認める言葉が出てきた。ここにその面白い子が居ない所為もあるが。居たらきっと恥ずかしがって、思っている事を逆の事を言ってしまうだろう。
「で、ちょっと休憩して話したんだよ」
身を起こし、何時になく真剣な表情で己の拳を見つめる。
「…アイツ、俺と同じ事を考えてたんだ。…無駄な争いを、どう止めるか」
それはサクラが前々から少年から聞いていた、彼の知る大人達が[夢物語]と鼻で笑う話だった。
一族単位ではなく、大きな里を作り、国を支えるシステムを作る。
サクラの知る木ノ葉隠れがそうだ。
しかし、まだこの時代には『一国、一里』制度が出来上がっていない、戦国の世なのである。
サクラは未来に里を言う大きな忍のコミュニティが出来る事を知っている為、少年の考えがよく分かった。
そして、核に触れない程度のアドバイスをするのだ。
少年は年相応の反応で目を輝かせ、サクラとの会話に花を咲かせた。
その話相手が増えたのだ。
それも、きっと他の一族の子供だろう。
この出会いが後に、少年の為に成れば、と、親心に似たモノを感じずにはいられない。
「良かったじゃない。いい友達が出来て、私も少し安心したわ…」
すると、少年は不貞腐れてムッとした表情になり、サクラに聞き返す。
「それってどう言う意味だよ」
「え?だって、私以外の話相手が出来たじゃない?」
コレで少しは夢中になるものを見つけて、興味が逸れるかも知れないと思ったのは内緒である。
しかし、少年はそんなサクラの思惑を見透かしていた。
「俺はお姉さんを必要ないって、思った事はないからな…」
少し寂しげな思わぬ直球に、サクラはたじろぐ。
いつもなら、然りげ無く言い回しや、仕草でドキリとさせられるのだ。
らしくない少年の態度に、安定していたサクラの心の水面に波が立つ。
それを見せぬように、平然を装う。
だが、会う回数を重ねる内に少年は洞察力が確実に上がってきている。
上手く隠していても、すばりと当てられてしまう事が殆どになっているのだ。
一番困るのは、少年は分かっていてもそれを敢えて言わない。
サクラは後一押しで調子を崩す、と言う時にそれをばらす。
お姉さん、何か俺可笑しい事した? と、ワザとらしく聞いてくるのだ。
「…はいはい」
「何だよ、それ…」
まともに話を返してくれないサクラに、呆れを感じながらも少年はサクラの顔がよく見える様に座り直した。
「今まで言わなかったけどな。俺が可笑しいか」
「なんでそう思うの?」
「お姉さんを一方的に思ってる事だよ」
「素敵…なんじゃない?何かに一生懸命になれる事は」
サクラは自分の言葉に笑いだしそうになった。
無論、失笑だ。
もし、自分がこの言葉を言われたのなら其奴の頭が行方不明になるか、病院で数ヶ月暮らさなけれはならなくなるだろう。
想っていたサスケに言われたのなら、今だったら鳩尾に一発で許せるレベルだ。
「お姉さんは…その好いてる男が、忘れらなくなったりした事はあるのかよ」
ある、何度も。
数え切れない程に、何度もだ。
少年はサクラに思う気持ちは、忘れられない程だと伝えようと話をどうにか持っていきたいが、それに対してもサクラは素っ気無かった。
話に乗ろうともしない。
それに構わず、少年は続ける。
「じゃあ、聞くけどな。その男と会ったのは何時の話なんだよ。大分前なんじゃないか?」
「・・・。」
説明為難い。
サスケとは任務関係で、毎日合っている。
しかし、それは結局の所仕事なのだ。
返さないサクラをいい事に、少年は続ける。
「なぁ、其奴は本当にお姉さんを好きなのかよ。お姉さんはどうなんだ?其奴がまだ好きか?」
「・・・っ」
その棘のある、そしてサクラの感じていた疑問を的確に貫いた言葉に、サクラは肩をビクリと跳ねさせた。
それ見たことか。少年張った線に上手く足を取られ、藻掻こうと、反論しようとするサクラの表情を観察する。
見られていると感じながらも、サクラはどうしようもない。
サクラは自分の膝から視線を外し、声のする方へと顔を動かした。
少年と目が合う。
まだ丸みが残るものの、整った顔で将来が有望である事を嫌でも分からせられる。
黒い瞳が反応を待っていた。
サクラの言葉を待って、静かに、そして一動作も見逃さまいとしている。
その視線から逃れる為に顔を背ける。
黒い獣が目の前に居るのだ。
静かに獲物を狙い、定めている。
だが、伸びてきた手に顎掴まれ無理やりながらも、顔を向けさせられる。
まだ細いが、初めて会った頃よりも男性らしくなっていた事を、サクラに身体を通して伝わってきた。
「なんで、顔を背けるんだよ」
-何がダメなんだ?
細い眉が眉間に集中し、黒いがサクラを捕らえた。
こうなると、もう目を逸らせない。
「私は、」
「まだ、其奴が好きか」
「…いいえ、違うわ」
「じゃあ、何でっ…!」
サクラは返事を返さない。
返しては成らないと、自分に言い聞かせていた。
この燃えるように、熱い想いを身に受けながら、サクラは耐えた。
彼女の表情が思いつめて苦しげに見えたのか、無理やり向き合わせていた手を解いた。
変わりに、少年は安心させるように、サクラの頬を撫で始める。
「俺は、そんな思いはさせない」
-絶対に。
そして、少年の目を漸く見たサクラに笑みを綻ばせて。
まるでこうなると決まっていた様に、自然な流れで顔を近づけさせる。
長い睫毛が正直言って羨ましかった。
何度見ても綺麗なクッキリとした二重瞼で。
スっと通った鼻筋が、サスケに似ている。
他人事の様に、頭の中で冷静なもう一人の自分が、少年の顔を分析していた。
(どうして、こうなるのよ…)
逃れる事が出来ないその甘い罠に、サクラは静かに嵌っていった。
まだ柔らかさがある感触が少年の唇だと分かる。
生ぬるい可笑しな感じではあった。
少年は角度を変えながら、サクラのふっくらとした唇を夢中になって貪る。
先程まで我慢をしていたらしく、それが、サクラに行為を受け入れられ箍が外れたのだろう。
どうして良いものか、迷う暇も無く涎で汚されていく。
行為に甘んじて、サクラの慎ましい胸の膨らみにも手を伸ばす。
ゆっくりと確かめる様に触られる何処か、もどかしいそれにサクラは身じろいだ。
その手付きが、どうも手馴れていて腹立たしいやら恥ずかしいやら、感情が掻き乱されていく。
律儀にも目を瞑ってサクラの唇の感触を堪能しているのを、サクラは薄めを開いて見やる。
すると、少年もサクラの表情が気になったのか、薄らと目を開いた。
目が合い、どうしようもない羞恥に見舞われながらも、少年は名残惜しそうにサクラの唇を一舐めし離れていった。
互の唇がまだ細い唾液の糸で繋がっている。
サクラはどう、声をかければ分からなかった。
恋や、愛には憧れを感じながらもこう云った行為は初めてなのだ。
濡れた唇と、残された感触に頭がついていかない。
「なぁ、前に言っただろう」
-色の修行も一番だって。…お姉さん相手だから少し、緊張したけどな。
白い肌を紅潮させ、そんな事を言われてしまったら。どうしようもない。
そしてまた近づいてくる少年に腕を掴まれる。
「だ、駄目よ!」
「何でだよ…。ここで来て、据え膳とか洒落になんねぇって」
なんで据え膳なんて言葉知ってるのよ! 冷静だったら突っ込みも出来ただろうが、そんな余裕はない。
「物事には順序があって!どうしても駄目なの!」
「じゃあ、お姉さんの順序ってなんだよ」
「そ、それは手を繋いだり、デート…一緒に遠出したりよ!」
「手を繋ぎたいのか」
少年が腕を掴んでいた手をサクラの手に絡ませた。
そして、 こうか? と、サクラの指示を仰ぐ。
-あのさ、
「俺、我慢出来ねぇんだけど…」
その少年の恥じらう様な、瞳を熱で潤ませた表情に、サクラは折れてしまった。
乙女心を背後から殴りつけて気絶させる。
手をサッと少年の太腿へ乗せると、その意図を組んだのか少年は少し緊張した様子を見せた。
知恵、知識だけは持ち合わせていて良かったと、思うと同時に、何か大事なものを失った瞬間であった。
*
「へー、処女は卒業出来なかったけど、初手コキに成功したの。その人ってどんな人?」
「ちょっと!!!声が大きいわよ!!!」
アンタの方がデカイわ。 いのが抹茶パフェをつつきながらサクラを煽ると、それに上手く引っかかってきた。
「噂の猛烈アタックの人でしょう?知ってるわよーそんなの。私を誰だと思ってるの?」
-天下のいの様よぉ!おーほっほっほ!!
手を口元へ寄せて高笑いした親友を、サクラはつかれきった表情で見る。
本当に明かして良かったのだろうか。
心に溜め込んでおけなかったサクラはいのへ相談を持ちかけた事が切っ掛けで、度々こうして甘味屋で話をするのだ。
「でも、良かったの?それで。サスケ君はどうなのよ」
「どうなのって…。だって、いのもサスケ君が好きでしょう」
「ライバルが居ないと、寂しいものよー」
嘘だ。サクラはいのを睨む。
ライバルなんて里中に居る。
サスケが帰ってきた後、またサスケ熱が再熱した同期や、年下好きの女性、憧れをもつ少女達が大勢いるのだ。
一人二人となどと言う単位ではない。
それを、いのはライバルが居ないと言ってみせた。
対した自信である。
「でも、そんな猛烈アタックされたら、もう傾いちゃう気も分かるわ。あー、私も熱に浮かされたい」
「ちょっと、サスケ君は」
「スペアの話よ。本命はサスケ君」
「どうだかぁ」
サクラも溶けかかっていた抹茶アイスに手を出した。
ドロドロととけたアイスに、練乳がかかっている様が。
どうしても、生々しく目に映ってしまう。
「どうしたのよ?」
「…なんでもない」
「まさか、練乳が他の物に見えた…とか?」
「いのっ!!」
そしてまた甘味屋に、いのの勝ち誇った高笑いが響くのだ。
『だから、俺はこれを貴方に渡すため、伝える為に。』