次には原作突入と言いましたが無理っぽいです
それではどうぞ
第4話 秘密を知る者
お楽しみください
クリスマスを後数日に控える為かその町はすでに真夜中だと言うのにどこか浮ついた雰囲気が漂い未だ人の気配が途切れない。
その中の明かりのひとつで1組の男女がテーブルを挟み真剣な表情で何かを議論している。
「リリィ、確かに黙っていた方がスピカにとっていい事なのかもしれない。だけどね……」
「あなたの言いたいことは分かるわ。あの子には全てを知る権利があるもの。でも魔法界について教えた時にあなたのお父さんはアズカバンにいるのよなんて言えるわけないじゃない」
「なら先輩についての件はもう少しスピカが大人になってから話せばいいさ」
「……そうね」
「それにあの子は分かってくれるさ。君やマリーネ先輩に似て真っ直ぐ優しく育ったからね」
「ええ、昔の姉さんにそっくりよ。……でもどうしようかしら」
「うん?何がだい?」
「魔法についてすら教えてないじゃない、ホグワーツの入学証明書が後半年もしたら来てしまうわ」
「ああ。実はその事についてなんだけどスピカはもう知っているんじゃないかな」
「どういうこと?」
「説明するよりもこれを見た方が早いよ」
そう言ってアルバートがテーブルの上に置いたのはひとつの鏡だった。リリアナはそれを見て怪訝そうな顔をするがそれに触れると鏡に魔力が込められているなんらかの魔法道具であることを理解した。
「これは?なんらかの魔法道具である事は分かったわ。けど何でこれがスピカが魔法を知っている根拠になるのよ」
「そういえばリリィは見た事が無かったね。これが両面鏡だよ。今では現存するものの少ないとても希少な品なんだ。当然この家には無いよ」
「つまりあなたはこう言いたいのね。スピカと魔法族が接触していると。……それで?あなたはこれをどこで見つけたのかしら?」
話の流れから真実を推測したリリアナはアルバートに詰問する。アルバートは冷や汗を流しどうにかして話をすり替えようとするがどれも上手くいかず溜息をついて口を開く。
「前々から夜になるとスピカの部屋から話し声が聞こえてね不審に思いこっそり覗いてみれば鏡に向かって喋っているじゃないか。それで寝静まった頃を見計らって借りてきたんだ」
姪を心配する気持ち故の行動だがいかなる理由があろうとも年頃の少女の部屋を覗き忍び込むのは、心苦しいがそうそう許されるものではない。リリアナは呆れた顔で変に隠そうとしないで最初からそう話せばいいのにと呟いた。
「別に心配しての行動なら責めないわよ。それであなたはこれをどうするつもりなのかしら」
「そうだね。対の持ち主には驚かれるだろうけどこれが一番手っ取り早いんだ」
そう言ったアルバートは鏡のふちをなぞると鏡のよく磨かれた面が渦のように歪み自分の顔が一切見えなくなる。
やがて鏡の歪みが晴れるがそれでも自分の顔は見ることは出来ない。むしろ鏡が映しているのは人ではなく研究室の様な部屋だった。
スピカが帰った後アルフは前から構想を練っていた魔法道具の最後の材料がようやく採取できたので早速試作してみようと思い地下の専用の研究室に篭っていた。
地下であるため当然窓はなく照明は宙に浮いて動き回る光球のみで研究室の机には今回試作する魔法道具の材料が雑多に散らばってスピカに渡した物と対になっている両面鏡は天井を向いていた。
アルフの側には常に羽ペンと羊皮紙が付いて回り作業中に思い浮かんだアイディアを書き留めていた。
魔法道具の試作の形をとりあえずブローチ型にして術式を組み込んでいる時に研究室のドアがノックされた。
アルフの研究室は法律で所持及び使用の禁止された特に危険な品が納入されることがあり非常に危険なので自室とは違い許可が無ければ扉を開けることすら出来ない。
「クロードです。夕餉の準備が整ったとのことですが如何されますか」
「今日は要らん。今は手を離せないからな」
「……そう仰ると思いサンドイッチをお持ちしました。研究室の前で待っているので手が空いたらお食べになって下さい」
「すまないな。お前の気遣いに感謝しよう」
「勿体無き御言葉」
そのやりとりから一時間後にようやく術式の書き込みが終わり小腹が空いたので取りに行こうと部屋を出ようと扉を開けるとアルフは僅かに目を見開いた。目の前にはクロードが皿を手に立っていた。
差し出されたサンドイッチを受け取りつつアルフは本当に待っていたのかと驚愕する。
「本当にすまないな。戻っていても良かったのだが」
「私は貴方の第一の従者ですから」
「では通常業務に戻るがいい」
「拝命いたしました」
クロードと別れたアルフは試作品を起動するが思う様に働かず触媒が暴発し黒煙を上げた。
杖で煙を払い再度理論から考え直す必要があると羊皮紙にペンを走らせ周囲を舞うメモを掴みそれに目を通す。
「ふむ。ポートキーの術式の一部を流用しより細かい条件付けの為に開心術を組み込むとするならばあるいはといったところか……。刻み方も触媒も試してみるしかないか」
度重なる試作によって研究室にはロクな品が残っていなかったので手短なところにあった羊皮紙で術式の書き込み方を試そうとした時のことだった。アルフは視界の隅で面が歪み対を写そうとする両面鏡を捉えた。
スピカに両面鏡を渡してからは基本的に毎日鏡越しに合っているが時折深夜の時刻に両面鏡で話しかけてくることがあった。アルフは基本深夜まで起きているので対応出来なくはないのだが用件が眠れないんだけどどうしようであるとか宿題が終わらない助けてなどだと思わずイラっとしたり溜息をつきたくなってしまう。
鏡を覗き込む事なく手を休めず術式を試し書きしながら今日は何の用だと呆れを含んだ語調で話しかける。
「それで今日はどうしたんだスピカ。眠れないから子守唄でも歌ってほしいのか?」
そう話しかけたのだが待てども一向に返答が来ない。いつもならコンマ単位で飛びついてくるというのに今日は沈黙を守るスピカを妙に感じたアルフは対にいるのが我が友人ではないと気付いた。
「……スピカではないな、誰だ貴様は」
両面鏡に写ったのが人の顔ではなく無機質な石造りの天井だったことに首をかしげるがよく考えてみればおかしい事ではない。机に置いて使っても会話自体は出来るのだから。
アルバートは聖28一族の出ではないがそれなりの純血家系である為各一族の特徴を覚えているので相手が純血の関係者であるならば大まかにどこの者かわかったのだがそう事は上手くいかないようだ。
『それで今日はどうしたんだスピカ。眠れないから子守唄でも歌ってほしいのか?
相手について色々と考察をしているとそう対の鏡から話しかけられた。その声からして相手は子供でスピカとそう変わらない程度の歳だと気付くことができ、揶揄う様な言葉で呆れた様な語調ではあるがどこか優しさを感じた。
未だに覗いてこない為か対の鏡を持っている相手がスピカではないと気付いていない様だが黙り込んでいると先程のどこか暖かい語調とは真逆で極寒の吹雪の様に冷たい語調に転じた声が投げかけられたので相手はこちらがスピカではないと気付いたのだろう。
『……スピカでは無いな、誰だ貴様は』
「これは申し訳ない、私はアルバート・ブラムフォード。スピカ・ブラムフォードの叔父をやっています」
『ふん、それで?そのスピカの叔父とやらが何の用だ』
「スピカに出来た秘密の友達が知りたかったものでして」
『……まともに答える気は無いのか?ならばいいだろう鏡から離れるなよ』
今の状況を一言では説明が出来ないのでそう言うと揶揄っていると思われたのか冷たい語調に刃の様に鋭い棘が混じり始めた。困ってリリアナの方を見ると呆れた表情で馬鹿なのとため息混じりに呟いた。
鏡の方を見ると風景が揺れ動いているのでおそらく鏡を手元に寄せているのだろう。
やがて動きが止まり鏡にようやく相手の顔が写った。相手の顔を見たアルバートは目を見開いて固まっていてそれは横から覗いていたリリアナも同様に固まっていた。それは何も魔法界においてもまずお目にかかれない金髪金眼に驚いた訳でもなく、女性的に整ったアルフの美術品と称えられる顔立ちに見惚れた訳でもなかった。ならば何故かその理由は一つ、アルフの顔がアルバートとリリアナのかつての親友に瓜二つだったからだ。
アルフの顔を見たアルバートとリリアナは思わず親友の名を溢した。
『……セレス』
それを聞いたアルフは顔にこそ出さなかったものの頭は驚愕と疑問符で埋め尽くされていた。
此奴らはスピカに渡した両面鏡を持っている、何故マグルが両面鏡の使用方法を知っている、此奴らは魔法族なのか。
それよりも
何故
母の名を知っている?