ハリー・ポッター 桎梏の乙女と滅びの獣   作:鍬形丸

7 / 7
今話は過去最多文量です
まぁですがようやく原作に入ることができました

それではどうぞ
第7話 ダイアゴン横丁
お楽しみください



第7話 Diagon Alley

「魔法界へようこそスピカ」

 

普段のスピカなら魔法関連の事を教えると無知らしい大袈裟な言動をとるのが常だったので、オルドリッチ城とはまた違った魔法界の景色にどんな反応をするのか内心楽しみにしていたのだが待てどもスピカはピクリとも動かない。不審に思い観察してみると驚きのあまり硬直しているだけだと理解できた。普段スピカらを通す区間は露骨に魔法らしいものはあまり置いていないので魔法の絨毯やら所帯じみた魔女や魔法薬の材料の屋台に使い魔のペットショップなどは確かに新鮮と言えるだろう。

 

「うわぁぁ……、すごいなぁ……」

 

スピカの驚いた顔を見るのは別に嫌いではないがこうも惚け面を見せつけられ続けるといろいろな感情がこみ上げてくる。イラっとしたため惚けているスピカの額の前で人差し指を引き絞り親指で解き放つ。つまりはデコピンだ。

 

「痛ったぁぁ!ちょ、いきなりなにするのアルフ」

「俺の知ったことか。いつまでも間抜け面を晒しているほうが悪い」

我が主(マイロード)はスピカが構ってくれなくて拗ねているのですよ」

「本当にお前は黙っていろ」

「おや?そうだったのかい?」

「お前もか。はぁ……どうでもいいからさっさと行くぞ」

 

クロードのふざけた冗談にアルバートが乗っかってきたがこうなった時の馬鹿共の発言は流したほうが被害は少なくて済む。だから未だに額を押さえ悶えているスピカを尻目にダイアゴン横丁へと足を踏み出す。

 

「ちょっと待ってってばっ!」

 

言葉とは裏腹に待ってもらえると思っていたらしいスピカは本当に歩き出した俺を見て慌ててついてくる。追いついたスピカは恨めしそうにこちらを見てくるがその程度なら可愛いもので痛くも痒くもない。

しばらくはそのまま人ごみの中を進むが大した苦痛にはならなかった。その理由として恐らくは自分たちに目を奪われ足を止めていたからだろう。俺は当然としてスピカもクロードもアルバートもリリアナもそれなりに整った顔立ちをしているので触れないようにと人の波がモーセの偉業の如く左右に割れていく。顔が整っているからと今まで大した利点を感じてこなかったがなるほどこれは便利だ。

 

「それでまず最初はどこに向かうんだ?」

「うーん。とりあえずグリンゴッツかな。入学品を揃えるには手持ちのお金が少ないからね」

「そうか」

 

グリンゴッツ。世界最高セキュリティの銀行と名高い銀行だ。ただ口座を開設するには純血のゆかりの者でなくてはならないという。その内部には飼いならしたドラゴンを守り人とする口座もあるようだがどのみち俺には関係のない話だ。おそらく口座自体はあるだろうがオルドリッチの財宝は城の地下の宝物殿に収められている。

そんなことを考えているとグリンゴッツに着いた。特徴的な斜めに傾いている入り口を通るとせわしなく人が行きかい小鬼たちがカウンターでふてぶてしく構えている。

 

「ねぇアルフ。あの人たちは何なの?人間じゃないよね?屋敷妖精に少し似てるけど」

 

思えばスピカには人間社会で生活する知的生命体の講義をまだやっていなかった。人間と小鬼が対等に働いていれば初見は戸惑うだろうし講義を前倒しでやったほうがよかったかもしれない。

 

「あれは小鬼。まぁゴブリンだな。あれらを見る機会は基本的にここでしかないだろう」

「ふーん小鬼かぁ」

「それじゃあ行くよスピカ。ブラック家の口座に登録しないといけないからね」

 

アルバートがスピカの手を引いて窓口で担当の小鬼に声を掛け黄金で出来た鍵を渡す。

 

「ブラック家の口座にスピカ・ブラックを登録したいな。これがブラック家の鍵ね」

「ふぅむ。……確かにブラック家の鍵のようですね」

 

受け取った小鬼は鍵を軽く叩いたり匂いを嗅いだりして小鬼特有の感覚で真贋を判定する。小鬼は金銭感覚が特殊だが契約は破らないし真贋の見分けも出来るので金庫番としては優秀だ。

 

「それではスピカ・ブラックさん。書類にサインをしてください」

「えっと、こうでいいですか?」

 

小鬼はスピカの質問には答えずサインの書類と鍵を炉に入れ燃やす。どうやらその炎は熱を持たないらしく熱さを感じないがスピカはそれに気が付く余裕もないほど慌てふためく。

やがてサインが完全に燃え尽き灰が鍵に取り込まれる。そして小鬼は炉に手を入れ登録の完了した鍵を取り出し投げ渡す。それを見たスピカは鍵を慌てふためき避けるが変によけた為に体勢を崩し無様にも顔から転ぶ。

 

「痛ったぁ!さっきと同じとこ打ったんだけど!」

「ふッ、ふふふッ。何をやっているんだスピカ、お前は道化か何かか?」

 

赤くなった額を抑えるスピカを見て堪えきれず吹き出してしまう。それに気付いたスピカは羞恥と怒りと鈍痛で頬と額を赤く染め飛び掛かってくるが身体を僅かにずらし避けると再び飛び掛かって来る。結果として煽っていた手前そろそろ事態を収拾をつけるため飛び掛かってきたスピカの腕を掴み受け流し後ろから抱きしめる形で抑え杖で鎮静させる。

しかし鎮静した筈だというのにスピカはより一層顔を赤くしてもがきあばれる。それを押さえる為により強く抱きしめ耳元で鎮まれと囁く。すると力が抜けたかのように弱々しく抵抗する。

 

「分かった……ッ。分かったから離してっ」

 

離してやるとスピカはふにゃりと倒れ込んだ。何故かスピカが倒れそうになったので咄嗟に支えアルバートとリリアナに渡す。

 

「そんなに時間はかけないつもりだから二人とも待っててくれるかい?」

「構わんぞ」

「ありがとう」

 

足元のおぼつかないスピカを連れて地下行きのトロッコに乗り込み消えていった。時間は掛けないといったがそれなりに空くだろう時間が無駄に感じ地下研究室の足りなくなっていた魔法薬や魔法道具の材料を書き留めた羊皮紙を渡しそれらと教科書を買ってくるようクロードに命ずる。

 

「クロード、お前は教科書を買ってこい。このリストにある物もだ」

「お預かりしたリストにあった物のアクロマンチュラの毒やユニコーンの血などをはじめとする一部の品は直接ノクターン横丁に出向いても入手は困難かと思われますがいかがなさいましょうか」

「それならそれで構わんが揃えられる物は揃えて来い」

「イエス、我が主(マイロード)。それでは行ってまいります」

「ああそうだ、終わったら車で待機していろ」

 

立ち去るクロードを尻目に手近なソファに座りスピカたちを待つがどうも周りの目が鬱陶しい。おそらく先ほどスピカと騒ぎを起したからだろうがその割に責める視線は感じないがそんなことはどうでもいい。

暇潰しに試そうと思っていた新薬の効果がどうなるか考えていたら熱中してしまい、地下から帰って来たスピカに声を掛けられるまで周りの状況に意識が向いていなかった。

 

「__ねぇってばアルフ」

「ん?ああもう帰って来たのか」

「ブラック家って凄い家だったのね。倉庫いっぱいに金貨があってびっくりしたよ」

「まぁ我が財には及ぶまいがブラック家ならそれなりに貯えてあるだろうな」

「クロード君はどうしたんだい?」

「お前たちが遅いからな買いに行かせた」

「そうなのかい?なら時間もかかるし僕たちで教科書とかを揃えるから杖とローブを見てきてくれないかい?」

「俺は別に構わんがな」

「アルフが場所わかるでしょ?なら私もそれで良いよ」

「じゃあ財布を渡しておこうかな。取り敢えずそれで足りなくなることはないと思うよ。じゃあ終わったら迎えに行くから待っててね」

 

そう言うとアルバートとリリアナは人混みに紛れ消えていった。

 

「行くぞスピカ。取り敢えず杖から見繕うか」

「杖!杖があれば魔法を何でも使えるんだよね」

「ああ、お前の才が許す限り幾らでもな」

 

人混みに避けられながらスピカと話しながら進んでいるとオリバンダーの杖店に着いた。店の外見はみすぼらしいがスピカは看板の紀元前382年創業という文字に目を丸くしている。固まっているスピカの手を引いて店内に入る。店内には所狭しとおそらく杖の入っているのだろう木箱が積み重ねられそのせいで壁は一切見えなく床すらも半分程度の足場しか残っていない。

 

「おお、いらっしゃいませ。……あなた方の父君や母君もここで杖に選ばれた。あの日のことを今でも昨日のことのように覚えていますよ」

「母と父を知っているのか」

「ええ、とても優れた魔法使いと魔女でしたよ。父君の方はウメに一角獣の鬣13センチで守護魔法に最適でした。母君はカリンに三頭犬の尻尾22センチで闇の魔術に最適でした」

「では俺の杖を探せオリバンダー。杖腕は右だ」

「それではまずこれからヒイラギにドラゴンの心臓の琴線。20センチでよくしなる」

「違うな。次だ」

「イチョウに不死鳥の尾羽根31センチ。固く頑固」

「次だ」

「ならこれはどうでしょう。ヤドリギにセストラルの心臓の琴線。19センチで気性は荒いが主人に忠実」

 

そう言ってオリバンダーが奥から引っ張り出してきたのは20センチ程の黒く捻じれた杖だったが今までの杖とは違い惹きつけられる感覚がする。手に取ってみると杖から制御し切れないほどの魔力が流れ込んでくるが自分の魔力でそれを抑え込む。すると杖が魔力の放出を止め花火を先から出す。

 

「その杖に選ばれましたか。ヤドリギの杖に選ばれた者は皆英雄と呼ばれる道を歩んで行きました。その為困難が待ち受けることでしょう。どうかあなたの行く先に幸運がありますように願っています」

「それは俺の知った事では無い。例え運命だろうと俺の行く先は俺が決める」

 

そうだ。俺の行く先は俺が決める。従った結果同じ事になったとしてもそれは俺の切り拓いた未来だ。それだけは誰にも否定させない。

 

「ふむ、では次はそちらのお嬢さんですね。お待たせして申し訳ございませんが必ずや貴女を選ぶ杖を探しましょう」

「さっきも言っていましたけど杖が人を選ぶんですか?オリバンダーさんが選ぶんじゃないんですか」

「いやいやとんでもない。杖には意思があります。故に主人を選ぶのですよ。……ではこれからにしましょうか。ヤナギに一角獣の角。16センチ穏やかで守りに長ける」

 

そう言ってオリバンダーが取り出したのは俺の杖とは対照的に白く真っ直ぐだった。如何やらスピカはそれに選ばれたようで周囲が花畑と化す。

 

「うわぁびっくりした。これが私の杖か」

「見事ですな。杖は7ガリオンずつです」

 

値段を聞いてスピカがバックから財布を取り出そうとするのを尻目にオリバンダーにスピカの分も含めて14ガリオン渡す。

 

「え、いいってアルフ。貰ったお金があるんだから自分で払うよ」

「この程度の端金など誤差にすらならん。お前は黙って感謝しておけばいい」

 

不承不承といった様子だったがこうなったら此方が折れない事を経験則上知っているからか渋々従い財布をしまう。

次はホグワーツの制服に指定されているローブを買うのでマダム・マルキンの洋装店に行かなくてはならないのでオリバンダーの店を後にする。

オリバンダーの店からは対して離れていない距離に洋装店はあったので五分と掛からない内に到着した。

スピカを連れて扉を開けベルが来客を知らせるが店員は奥にいる様で俺たちには気付かない。入り口で止まる訳にはいかないので入った店内には何処か不穏な空気が漂っていた。

先に採寸をしていた2人の少年の間にと言うよりは黒髪の方が金髪の方を一方的に敵視している様に見え黒髪の方の額には稲妻のような傷があるのを見つけた。という事は黒髪があのハリー・ポッターという事か。

此方の来店に気付いた2人はどちらも喜色の笑みを浮かべたがハリー・ポッターの方は金髪の相手をしなくて済むといった消極的なものだった。俺と目があった金髪は既に採寸が終わっているのか歩み寄って来る。

 

「やぁ君たちもホグワーツかい?」

「それよりも貴様は誰だ」

「ちょっとアルフ……」

「これは失礼。僕はドラコ。ドラコ・マルフォイさ。ところで聞きたいんだけど君たちもそうかい?」

「え?そうってどういう事なの?」

「純血かって聞いているのさ。僕はねホグワーツにマグル生まれを通わせるべきじゃないと思っているんだよ」

 

成る程純血主義か。しかも発言を顧みるに過激派の思想だな。全く自らを客観的に見る事の出来ん楽観主義の愚か者共が。と溜息をつきそうになるのを堪える。此奴らの質の悪い所は無駄に影響力のある事だろう。

オルドリッチの名を出せば守りきれるだろうがいつの時代も愚か者は居るものだ。故に余計な事をスピカが口走る前に手で制す。

 

「コレの名はスピカ・ブラックだ。それの意味が分かるか?」

「ブラック家だって!凄いじゃないか血の高貴さだけで言ったら我がマルフォイ家も悔しながら劣るだろうね。それで君は?服装からして庶民では無い様だけど」

「……アルフ・オルドリッチだ」

「オ、オルドリッチ⁈オルドリッチってあのオルドリッチかい⁉︎」

「……他に何がある」

「そう言われてみれば君の瞳はオルドリッチ特有の金眼だね。にしてもオルドリッチなんてかつてヨーロッパ全魔法界を支配した王家じゃないか。まだ続いているとお父上が言っていたけどまさか君がね」

 

この短期間の間のみではあるがコレには俺が気にかける様な何かしらの魅力を一切感じさせない。家格だけが自慢の小物だな。元々コレを温かくは見ていなかったがそうハッキリと思えば相手にする価値すらないと目が急速に冷えていくのを感じる。

何やら言っている様だがその脇を擦り抜けて奥にいるだろう店主を呼ぶ。すると巻尺を手に1人の女が顔を出した。

 

「ごめんなさい。2人増えているのに気付かなかったのよ。それでお嬢ちゃん2人……いえ違うわね。お嬢ちゃんとお坊ちゃんもホグワーツね」

 

それじゃ測るわよと店主が言えば巻尺は宙に浮かび俺とスピカを計測していく。

やがて計測が終わり巻尺の数値を羊皮紙に書き込んだ店主は再び奥に戻っていった。おそらくローブを取りに行ったのだろうが黙って行くのは如何なものだろうか。

ふと視線を感じ横を向けばハリー・ポッターが此方を見ていた。

 

「何だ」

「あ、君たちもホグワーツなんだよね、聞こえちゃったんだ。あの子みたいじゃないし出来れば仲良くしたいと思って」

「じゃあよろしく!聞こえてたと思うけど私はスピカ・ブラックだよ」

 

魔法界が初めてなのでか妙に固くなっていたハリー・ポッターがそう言うと俺が口を開く前に頭越しにスピカが話し掛ける。

 

「俺はアルフ・オルドリッチだ。ただ貴様の名は知っているが自ら名乗るがいい」

「うん……。僕はハリー・ポッターだよ。でも魔法のこと何も知らないんだ……」

「ふん、気にする必要はあるまい」

「あ、一緒に来てる人が来たから行かないと。えっと、じゃあまたホグワーツで」

「ああ」

 

そう言うとハリー・ポッターは店の前で立っていた巨大な男と共に消えていった。あの男は純粋な人間種ではあるまい。おそらく巨人とのハーフだろう。半巨人ならば人間社会で生きていくことも出来るであろうしな。

 

「さぁ、お嬢ちゃんとお坊ちゃん?ローブの直しが終わりましたよ」

「ああ店主よ。こいつの分も俺に付けておけ」

「あら素敵ね。彼女さんなのかしら?」

「……俺とスピカはそんな関係ではない。邪推はよせ」

「ごめんなさいな。でもお似合いだと思うわよ?」

「辞めろと言ったはずだ。……行くぞスピカ」

「うん……」

 

洋装店を出てすぐ脇にずれスピカの学用品を揃えに行ったアルバートとリリアナを待つ。すると5分と経たない内に大荷物を抱えたアルバートらの姿を確認できた。しかし大荷物である為か人混みを進む事が出来ないでいるようだった。

 

「はぁ、しょうがない奴め。アルバートの元まで行くぞ」

「ねぇ」

「何だスピカ」

「私とアルフの関係って何?」

「そんなことも忘れたのか。お前が請い俺が応えそれを機に友誼を結んだ。故にお前は俺にとって最初にして唯一の対等な者。つまり友だ、違うか?」

「ううん。そうだった、そうだったね。じゃあ行こうよ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。