プロローグ
人間、誰もが一度はこう思ったことがあるのではないのだろうか?
『自分がもう一人居ればいいのに』
確かに、自分がもう一人いれば作業効率は単純に倍になるし、めんどくさいことや、嫌なことはもう一人の自分にやらせればいい。
だが、考えてほしい。
もう一人の自分は結局自分なのだ。
自分がめんどくさいと思うことはもう一人の自分もめんどくさいと思うし、自分が嫌なことはもう一人の自分も嫌だと思う。
だが、もう一人の自分が自分の姿をした他者なら?
全て、自分の思い通りに動くのではないのか?
では、実際に『もう一人の他者』を頼った者の物語を見てみよう。
第一話 「代行者」
毎日が退屈だった。
こんな風に思ったのはたぶん、休み時間に友達と会話の話題がなくなり、することがなくなったからだと思う。
別に勉強やスポーツができないわけじゃないし、嫌いでもない。
友達は普通にいるし、家族のことも嫌いじゃない。
ただ、退屈だった。
毎日、同じ時間に起きて、同じように制服に着替えて家を出て、学校に行く。
そんな日常が退屈に思えて嫌になった。
でも学校には行かないと怒られるし、家族に顔を見せて会話を交わさないと心配されるか怒られる。
「はぁ、もう一人自分が居たらいいのに…」
不意に口から出てしまった。
「なんか言った?」
目の前にいた友達が私の方を向いて聞いてきた。
「ううん、ただの独り言。気にしないで」
「そう?」
友達は再び手元のスマホに視線を落とした。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、友達が自分の席に戻っていった。
◇◇◇
学校が終わって、帰宅していた。
私は部活をやってない。
何度か友達に誘われたが、特に入りたいとも思わなかったので断った。
気が付くと、家の前にいた。
私は家の扉に手をかけて、扉を開いた。
ガチャ
「ただいまー」
「あ、お帰りー」
ママの短い返事がキッチンの方から聞こえてきた。
私が自分の部屋に行くために階段を登り始めると
「晩ご飯出来たら呼ぶから、降りてきてよ」
また、キッチンの方から声が聞こえてきた。
「はーい」
私は短い返事で返した。
階段を登ると左手にある二つの扉の奥の扉が私の部屋。
私が自分の部屋の扉を開けると、強烈な光が目に飛び込んできて、私の視界を奪った。
次第に視界が晴れていき、部屋の中を見ると、人影があった。
さっきの光と逆光のせいもあって顔はよく見えない。
すると
「どうもこんにちは」
妙に聞き覚えのある声で、人影が声を発した。
「だれ?」
細目になりながら人影の顔を見ると
「あなたの分身です」
そこには、私がいた。
理解が追いつかずもう一度、目を擦って見る。
その間に、私の分身と言ったものはカーテンを閉じた。
何度見ても、そこには私とよく似ている…いや、それどころか全く同じ姿をした者が立っていた。
私がいまだ、困惑していると分身は
「もう一人自分が居たらとあなたは言いました」
分身は右手を胸に当て
「そんな真摯な願いが私を呼びました」
そりゃ、願ったとも。
願ったけど、本当に叶うなんて…。
「じゃぁ、あなたは私の言うことを何でも聞いてくれるの?」
分身は微笑を浮かべながら
「はい」
「本当に、本当になんでもやってくれるの?」
「宿題、掃除、なんでもやりますよ?」
そう言うと、分身は机の上から一冊のノートを持ち、あるページを見せてきた。
そこには今日出されたばかりの宿題が終わっている状態になっていた。
分身はまた、にっこりと私の方を見て笑った。
「ねぇ、こんなことより大事なことがあるんだよ。いいでしょ?」
「ええ、やりますやります。何でもやります 。私はあなたの分身です」
「今日から月曜日まで私を演じて!」
「わかりました」
分身はもう一度笑って答えた。
こうして私は艱難辛苦の