『記録、22秒』
乱れた吐息を整えながら、トリオンで出来た刀身を破棄する。
『お疲れ様、次の訓練まで他の訓練生と一緒に待っててください』
ちなみに前回は34秒だったので、今回は10秒以上短くなったみたいだ。
ネイバーとの戦闘訓練が終わった後には地形踏破訓練、隠密行動訓練、探知追跡訓練が行われた。俺の成績は平均して15位ぐらいだった。地形踏破訓練が一番苦手だ、他の訓練の成績だけなら一桁台なんだが。
高所を飛び回れる奴は、落ちることに恐怖心は無いのか?もちろん落ちてもトリオン体なので痛みは無い。だがあの落ちる感覚自体がダメだ。
訓練が終わった後、集団の流れに乗って辿り着いたのは中央に巨大なモニターがあるC級のランク戦ロビーだ。
俺はさっさと空いているブースに入って、対戦相手を選ぶパネルの前に座る。
パネルには対戦可能な相手のの使用トリガーが表示されているので、その中からハウンドを使っている奴を選ぶ。
「さて、コツコツ勝っていくか」
体が転送され、目の前にはどこにでもありそうな住宅風景だ。
『対戦ステージ市街地A、C級ランク戦開始』
ホルスターからレイガストを引き抜き、シールドモードで展開。
相手とは約30メートルほどの距離。既にアサルトライフルはこちらに向けられている。
互いに使用できるトリガーは一つのみ。この環境のアタッカーとガンナーの戦いは至極単純。有利な射程を維持できるか否か。それだけである。
ガンナーは後退しながら弾をばら撒いてくる。こっちは脳筋丸出しでレイガストを前に突き出しながら突貫するのみだ。
弾丸が雨のごとくシールドに当たるが、ヒビさえ入る感覚は無い。後ろ歩きの相手と、全力ダッシュの俺。当然、俺のほうが速いので距離はすぐに縮まる。
これがハウンドに対する必勝策だ。単純故にハウンド側に対応策はほぼ無い。
しかし半分ほど距離を縮めたところで銃口は俺ではなく、俺の頭上に向けられた。
「……さすがに気づいたか」
「ハウンド使いばかりに対戦を挑んでいる盾持ちが居るっていう話は広まってるからなぁ!」
ハウンドは誘導弾である。適当に狙っても対象へ追いかけていく、お手軽な強トリガーだ。故に使い手もそれなりに多い。
だが、明確な欠点もある。それは弾丸の威力がアステロイドと比べて低いこと。そして主に使われる誘導方式が視線誘導ということだ。
普通の人間は胴体や頭を無意識に狙ってしまうので視線が自然とそこに寄ってしまう。なのでこちらは単純に上半身をレイガストで隠して突撃するだけで良いのだ。
だというのに―――
「シールドを迂回するように撃つ、まぁさすがに対応策も練られるか」
相手は銃口を下へ上へ振り回している。結果的に上下左右からシールドを迂回するような軌道を描きながら弾丸が迫ってくる。
「これぐらいなら、いけるか?」
上下左右に弾が散らばったので、正面の弾幕は薄い。
体を前傾姿勢にして、右手でレイガストを上に構え突っ込む。左手は心臓の前に持ってきてトリオン供給機関だけを最低限守る。
胴体に幾つか被弾してトリオンが漏れ出ているが、この程度なら何も問題ない。
「ちょっ!?」
狼狽しているガンナーそのままタックルを喰らわせて、押し倒す。
「ハウンドは強いが、単品では決め手に欠けるトリガーだと俺は思う」
自分の所感を呟いて俺はレイガストを振り下ろした。
「ふぅ……」
ガンナーはC級ランク戦という環境では鬼のようにアタッカーに強い。シールドが無い環境ではガンナーが引き金を引くだけでアタッカーは回避運動を強いられてしまう。これに弧月やスコーピオンで勝つとするならば相当な技量が必要だろう。もしかしたら、その技量が正隊員には求められているのかもしれないが。
俺には弾丸を回避しながら接近するという技量は無い、磨くつもりも無い。なので今のような戦略を取っているのである。ガンナーだけをカモに3000ポイントまで貯めてB級に上がるのだ。
ベッドから勢いよく跳ね上がる。
急いで退出しないと血も涙もないアタッカーに挑まれるからな。
レイガストで弧月やスコーピオン使いと戦った場合、100%俺が負ける。だから俺はブースに入ってガンナーに挑んで、すぐに退出するという戦法を取っている。これなら自分が勝てる相手とだけ戦えるからな。
「あ」
だが、俺が退出するまでのわずか5秒にも満たない時間でピンポイントに挑んでくる奴が居れば話は変わる、変わってしまう。
ちなみに前回ブースに入ってから出るまでに、俺はそれぞれ別人のアタッカーに5戦以上は挑まれた。
つまり、レイガストというのはそれだけ狙いやすいカモなのだ……。
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