トリガーの使い方   作:日々平穏

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対『米屋』

『そういえば何本勝負でやるか決めてなかったな』

 

「このあと、出来れば三輪さんとも戦いたいので5本勝負で良いですか?」

 

『おーけー、じゃあやるか』

 

パソコンの通話を切断して、簡易的なベッドに横になる。

 

米屋が使うトリガーは槍型の弧月とシールドのみ。仮想アタッカー敵としては、これ以上ないぐらい理想的な相手だ。

 

 

 

 

『対戦ステージ、市街地A。個人ランク戦5本勝負、開始』

 

いつも通り、見慣れた住宅街の道路に俺と米屋は転送された。距離およそ30メートル。

 

俺は後退しながらハンドガンを連射する。相手の攻撃手段は槍だけだ。寄せ付けないで済むならそれが一番良い。

 

しかし、この手は何度も相手して慣れているのだろう。構えの低い前傾姿勢でシールドを張りながら突っ込んでくる。

 

真っすぐに接近しているように見えて、細かく左右に動いているな。アステロイドがそもそもシールドにたいして当たってない。

 

彼我との距離は10メートル弱、俺の経験的にレイガストは、この距離の判断が勝敗を分かつ。

 

出し惜しみは無しだ。足を止め、前に重心を傾ける。既に米屋は突きを放つために右手に持った槍を引いている。

 

俺はシールドモードのレイガストを前に差し出すようにして、力強く前へ踏み切る。

 

「スラスターオンッ!!」

 

周りの風景が一瞬で流れ、米屋に衝突。

 

「うおっ!!」

 

そのまま後ろへ押していく。シールドチャージで転ぶと思ったが、驚きながらも咄嗟に重心を後ろに引いて飛びやがった。これだから反応速度の速いやつってのは厄介だ。

 

だが、これでどうだ。

 

ハンドガンを腹に押し付けて連射する、と同時に押し付けた場所に割り込むようにシールドが張られた。これにも反応するのか。

 

スラスターの推進力が切れる前に、レイガストを手放す。米屋はそのまま押され5メートルほど離れた地点に着地。

 

シールドを割って何発かは体に届いたようだ。腹から多少トリオンが漏れ出ている。

 

「いやービビったわ、なんだよ今のは」

 

「秘密兵器です、初見殺しは確実だと思ってたんですけどね。」

 

「ま、そこは経験だな。高速で近づいてくる奴ってのは結構いるからなー」

 

「なるほど……」

 

さて、どうしようか。レイガストを手放してしまったので俺の武器はハンドガンのみ。向こうは特に損傷無し。距離はインファイト圏内。

 

俺がスラスターを使ったのには理由が一つある。それは、近距離で突きを防げる自信が無かったのだ。出来たとしても首や胸を防ぐのが精いっぱいで、反撃する暇もなく削りきられてしまう予想も付いていた。なので槍が最も強い距離に入る前に、こちらから距離を詰めて倒す算段だったのだが。

 

目算が甘かったのだ、仕方が無い。差し違える覚悟で行くか。

 

半身になり、ハンドガンを右手で構える。

 

米屋は重心を前に傾けて、いつでも動ける体制を取っている。視線は銃口へ。つまり、弾道さえ分かれば反応で防ぐなり躱すなりする自信があるのだろう。

 

もうあとは賭けだ。一か八か、勝負は一瞬。

 

俺が引き金に力を込めると同時。向こうは斜め前に、銃口を避けるように踏み込んできた。既にここは槍の距離だ、俺が銃口を向けなおすより先に穂先が首に到達するだろう。

 

しかし結果的にいえば、槍は首を貫かず。俺が放った弾丸は米屋の頭部を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

一本目が終わり、ブースに戻された。

 

『まさか首にピンポイトでシールド貼ってくるとはなー』

 

パソコンから声が聞こえてきたので、起き上がってモニターへ顔を向ける。

 

「知ってましたからね、米屋さんが首を狙う傾向が強いこと」

 

構えを半身にして致命傷になる心臓部を視覚的に狙いづらくし、首に狙いを誘導する。こうすれば、米屋がほぼ確実に首を狙うだろうと信じていた。

 

「いつ来ても米屋さんがランク戦やってるところ見れますからね。自然と癖とかも分かりますよ」

 

本当にこの人はいつも居るので、ロビーでモニターを眺めていると戦闘の様子が高頻度で目に入るのだ。ある意味、米屋はバトルジャンキー故に負けたと言える。

 

とはいえ俺だけが相手の手の内を知っている状態で戦い、さらに初見であるはずのスラスターを投入して尚ギリギリの戦いだったあたり地力の差は相当あるが。

 

『くっそー、次だ次。二本目行こうぜ!』

 

「了解です」

 

ベッドに横たわると再び、マップへ転送された。

 

こっちも手の内を全て見せた今、果たして戦いになるのだろうか……。




ならないです(確信)


ちなみに主人公はボーダーでは兄以外には敬語で接することにしました。何故なら見かけで歳を推測するのは危険だと小型かつ高性能な人から学んだからです。

感想はもちろん全部見させてもらってます。全部モチベーションになるのでドンドンください。



追記

幻踊がどのタイミングで制作されたかは不明なので置いておいて、槍型弧月はおそらく全ての隊員が希望すれば使えると思います。BBFの米屋のページに書いてある「ボーダー屈指の槍使い」「ボーダー内で右に出るものはいない槍型弧月使い」(槍型弧月使いが他に居ないと書けない書き方)とBBFのQ152とQ154から槍型弧月は迅がスコーピオンを作った流れと同じものだと推測出来ます。

あとはQ137からA級の特権で米屋は槍に伸縮機能を追加してもらったことが分かります。Q137から読み取れる情報は多く、「米屋の槍だけの特別な性能」という文章から槍型弧月が他の隊員たちでも使用可能と考えられます。

推測だらけー。
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