烏白馬角   作:葱定

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サイトより転載


妄言奇語

 

 昨晩遅く、父が帰ってきた。その時既に僕は眠っていて、その事を知らされたのはその翌日の夕食の時だった。

「謁見に僕も?」

 思わず問い返すと父はうむと頷いた。

「光栄な事ですが、解せません」

 敢えてそう言えば、

「お前ももう十五だ」

との言葉をくれる。そう言われてしまえば、何の為の呼び立てか想像に難くない。どうやってかわそうか、僕に残された少ない猶予で頭を巡らせる。

 正直な話、僕も謁見に連れて行くというのは想定外だった。というか、予想外だ。 士官学校の卒業もまだの未熟者を、父が引っ張り出すとは思っても見なかったのだ。 生真面目を絵に描いたような父が、特に身内を特別扱いするだなど、一体何の冗談か。

「しかしまだ士官学校すら卒業前の若輩者の身です」

「陛下達てのご希望だ」

 苦虫を噛み潰したような顔をして言う父としては、望ましくない展開なのだろう。

「……陛下の意図を父さんはご存知のようですね」

 少し間を空けて尋ねれば、父は大きく息をつき、ワイングラスを傾けてから答えてくれた。

「先日、近衛隊に空きが出来たのだそうだ」

 父が溜め息を吐きたくなる訳である。

「それは……父さんからも進言すべきではないのですか?」

 僕の言葉に、父は難しい顔する。何を悩んでいるのか、大体の予想はつく。

「どのような場合も、このような前例は作るべきでない。そうでしょう?」

 軍の乱れは国の乱れに繋がっていく。帝国将軍たる父がそれに気づかない訳がないし、帝国将軍であるからこそ陛下自ら軍規を侵すようなことをするのを諫める義務があるのではないのか。国を思い、陛下を思えばこそ、心を砕くのが臣下の務めと父の姿を見て学んできた。

「父さんがこの話をよく思っていないのなんて、見ればわかるよ」

 子供の立場からそう言えば、父は手にしていたグラスを今度こそ空にしてテーブルに置いた。

「……そうだな。お前の言う通り、この様な前例を作っては弱味を作る事になりかねん。時に陛下をお諫めするのもまた、臣の努めか」

「何時も正しいと思うことをしなさいって、僕に言うよね」

「……お前の言うとおりだ」

 そう言って父は不適に笑った。百戦百勝将軍、テオ=マクドールの顔だ。こうなった父を止めるのは難しい。

 陛下に忠言なんて恐れ多い事とは思うけど、父の言葉なのだからおいそれと流すこともないだろう。テオ=マクドールはこの国の軍部にとって、皇帝陛下にとって無二の存在であるから、まかり間違ってもとんでもない事態にだけはなりはすまい。

 こうして僕は父の忠言という、とても強力な対陛下戦の対抗手段を手に入れた。

 この謁見で父が勅命を賜ることは、まず間違いないと見ていいだろう。ただ最近の動きから見ると、北の国境か国内の反対勢力の鎮圧か割れるところであるが、そこは自分の運を信じるしかなさそうだ。出来れば北の国境へ行って貰いたい所だけれど、そうも言ってはいられない。

 どちらにせよ、皇帝陛下を説き伏せることが出来なければ、僕の計画は頓挫する。

 僕は僕の望みのために、父すら利用して然るべきなんだと自らに言い聞かせた。そこまでしなければ、僕はこの国から逃れられない。知ってはいたけれど、改めて突き付けられた現実に、僕は歯噛みするしかないのだ。

 

「って訳で、明日の正午から、僕も謁見に同行することになった」

 街を見下ろせる丘の上で、後ろに手を着き、両足を投げ出して僕はテッドに報告する。

「それは……ご苦労さんだな」

 テッドは全然そう思ってない笑みを浮かべて僕を労った。

「この街を、国を出たいってのは、そんなに大それた願いなのかと疑問に思うよ」

 思わず半眼になって愚痴をこぼせば、呆れたような、半ば真剣なような声でテッドが確信を持ったように僕に尋ねて来た。

「お前さ、本当に家なんて継ぎたくないと思ってんな……出たらもう戻って来ないつもりだな?」

 見事確信を付いたテッドに僕は体を起こし、両手を上げる。

「そうだよ、大当たり。なんで分かったの」

「お前とはもう結構つるんでるしなー」

 はははっ、と軽く笑いながらテッドは続ける。

「しかし本気でお二人の子供に全部押し付ける魂胆なのか」

「押しつけるって、酷いな。立場を譲ろうと思ってるだけだよ」

 大袈裟に肩を竦めてみせれば、同じだと軽く笑い飛ばしてくれる。

 テッドはこうやって軽口を叩いて悪ガキでいられる、居させてくれる数少ない相手だ。それは僕の立場からもとても貴重で、こんな風に素の僕をぶつけられるのはテッドだけだった。

 士官学校の庶子出の子供には将軍の息子で、所謂一般以上の有力貴族の子供には皇帝筋の係累として見られて、正直それだけでも息が詰まってしまう。グレミオはグレミオで、あれだけ悪戯しているというのに僕の事を天使のように無垢な子供と疑っていないんじゃないだろうか。(もっともグレミオに出て行くなんて、恐ろしくて告げられないけれど)

「兎に角、明後日の明朝、父さんが発ってからの決行になりそうかな」

「でもテオさまが発ってからになるとグレミオさんとか起きてるんじゃねえ?」

 そうなのだ、テッドの言う通りきっとグレミオは起き出して朝食の支度をしているに違いない。

「一日は大人しくして、晩の方がいいかなぁ……でもそうなると陛下を説得出来なかったときがなぁ……」

「おまっ……万が一の時はすっぽかすつもりかよ」

 眉をしかめ呆れたように目を見開いてテッドが大きく溜め息を吐いた。

「え、だってイヤですってのは伝えるつもりだし。僕ならこう動くって予想は着くと思うし」

 伊達に赤ん坊の時からの付き合いではないんですよ。

「なんでそんな自信があるんだよ……」

「うん、まあ大叔父上だから」

 僕の悪戯の数々を笑い飛ばしてくださったあの方なら、僕が逃亡する予想はたてるに決まってる。

「……聞いてねぇ」

 妙に脱力したテッドが蚊の鳴くような声で呟く。

「言ってないからね」

 テッドが僕に話してない事があるように、僕だってそういう事の一つや二つはある。なのにテッドは妙に不満そうに僕を見る。

「なに?」

「別にぃー」

 不満をありありと見せつけるように返されて僕は眉を寄せた。

「テッドだって僕に言ってないことだってあるんでしょ? それと一緒だよ」

 別に知られたくなかったとか言う訳じゃなくて、単に言う機会がなかっただけなのだけど。それを抜きにしても人には知られたくない事の一つ二つ、そういうのがあるのは上等だと思う。

「まあ、な。しっかし、平然とすっぽかすとか抜かして、お前も相当……いや、何でも無い」

 呆れたようにこちらを見てそう言うテッドをギっと睨みつけてやると、テッドは言いかけていた言葉を撤回した。でもテッドに言われたくはないと思うのは我が侭ではあるまい。

「でもどうしようかなぁ……結局の所は様子見?」

「謁見後の夕食に俺もお呼ばれしてるからな。夕食前の時間にでもあった事を教えろよ、それから二人で考えればいい」

 二人で頭を突き合わせていつもの様に相談する。どう転んでも一緒に旅をするという希望を叶える為には、二人一緒に行動しなければならないのだから苦にはならない。

「うん、なんかごめん」

「なにが?」

 なんだか申し訳なくなってしまって謝れば、きょとんとした顔でテッドが僕を見遣る。

「付き合わせちゃってるのがごめん」

「俺が好きで付き合ってるんだって。なんで分からんのかね」

 わしわしと自分の髪を掻きむしりながらどうしようもないようにテッドが呟く。後半は僕に宛てられた言葉ではなかったけれど。

「でも付き合ってもらってるのには変わりないだろ」

「自分からそうするのと人に言われてそうするのと、違うだろ」

 俺のは自分の意思なの。そう強調されて、僕は少しだけ嬉しくなる。

「そうだね。やっぱり自分の意思で動くのと他人の思惑で動くのじゃ、結果が変わってくるもんね」

 僕と、テッドの関係の様に。言外にそう含ませてみたけれど、果たしてテッドは気が付いたのか。少し嬉しそうに口元が歪んで、テッドは何も言わなかった。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 だからそれだけ。ヒトコト礼を言えば、テッドもヒトコトだけでそれを返した。

 

「テオよ、変わりはないか」

 威厳に満ちた声で、第十七代バルバロッサ=ルーグナー皇帝陛下は父にそう尋ねる。

「継承戦争の頃より、変わりありませぬ」

 深く頭を垂れてそう言う父に、陛下は顔に皺を刻んで穏やかに笑う。

「それは頼もしい限りだな。其方もそう思うだろう、ウィンディよ」

 陛下の言葉に、右脇に控えていた女性──お抱えの宮廷魔術師、ウィンディ殿も笑みを浮かべて言葉を返す。

「そうですわね、さすがは大将軍のお言葉ですわ」

 ウィンディ殿の言葉に満足そうに頷いて、陛下は視線を父に戻す。

「テオよ、お前も北方での不穏な動きに気付いておる事だろう。どうだ、セナンの守りに出向いては貰えぬか?」

「ジョウストンらとの争いも、テオ将軍ならば安心ですな」

 左に控える大臣閣下が真面目な顔を崩さぬまま、口にする。

 僕の予想を違わぬ陛下の言葉に僕は胸の内で小さく笑う。僕にとっては願ったりの展開だ。

「さて、ティルノアよ」

 父が剣を賜り一歩引けば、陛下に呼ばれ、僕は父の横に並んだ。

「少し見ぬうちにいい面構えになったな」

 厳しさの中に優しさを感じさせる、陛下は目を細め何度か小さく頷いた。

「お言葉、身に余る光栄であります」

 言葉を紡ぎながら深く礼を執れば、面を上げよとの言葉を受け僕は顔を上げる。

「其方の父がセナンに赴く間、変わりにこの帝国に力を貸してはくれまいか?」

「未だ未熟者ではありますが、私に負えるものであれば喜んで力をお貸し致しましょう」

 僕の言葉に満足そうに陛下は頷く。

「頼もしい限りであるな」

「近衛隊隊長クレイズ=マイルス殿が、ティルノア殿の上官となります」

「陛下」

 大臣の言葉に、父が声を上げる。

「どうした、テオよ」

「僭越ながら、申し上げます」

 父は深く礼を執り、続ける。

「我が息子はまだ就学中の身」

「其方はティルノアの入隊に反対か?」

「御意に」

「其方の息子の成績は儂も聞き及んでおるぞ、並ぶ者も居らぬそうではないか」

 誇る事である様に、陛下は朗々と仰った。その言葉に僕は恐縮してしまう。僕の授業態度や出席状況は陛下の耳には入っていないようだ。

「併しながら。近衛隊は士官学校卒が入隊の条件、陛下御自ら律を侵す事は弱味となりましょう」

「言が過ぎますわ、テオ将軍」

 非難めいた口調で口を挟んだのは、ウィンディ殿である。

「陛下の御意志ですよ」

「よい、ウィンディよ」

「随意に」

 窘められて、ウィンディ殿は陛下に礼を執る。

「して主はどう思う、ティルノアよ」

 此処で振られるとは思わず、僕は陛下を窺った。陛下は穏やかな表情に、目をまるで悪戯を思いついた子供の如く輝かせている。まるで──いや、僕は試されているのだと理解した。

「及ばずながら申し上げます」

 礼を執ることで一呼吸置いてから、僕は口を開く。

「私も父に同じにございます。一度特例を認めるならば、他を退けることが難しくなりましょう。無礼を承知で申し上げますが、袖の下を忍ばせ地位を買う者も少なくは無いのが現状。認めてしまえば、何れ近衛隊の弱体化に繋がりましょう。その様な者等の存在を考えるならば、この様な特例は認めぬ方が得策かと」

 正直な話、今の現状でも士官学校には金に任せた貴族のボンクラが結構いる。今の状況より酷くなるのはもう末期としか言えなくなるだろう。

「そうか」

 僕の答えに、陛下は満足そうに頷いた。そう答えられるのは予想済みであったようだ。

「やはりテオの息子だな。己の益に囚われず、国を憂いてくれるか。テオは誠、良い子を持ったな」

「お誉め戴き恐悦です」

 父は簡潔に答えて、深く頭を下げる。

「だが埋もれさせて置くには惜しいとは思わぬか?」

 その言葉に父の忠言も意味を為さなかったかと思ったのだが、陛下は子供の様に輝かせた目を細めて仰った。

「卒試制度を儲けようかと思っている。それを受け、突破した者には学術過程を飛ばして卒業できるという制度だ」

 一気に話が飛んだ、そう思った。横の父が何かを言おうとする前に、陛下はもう一度口を開く。

「学ばずして修めるのだから、勿論それなり以上でなければならぬ。策試に儀礼、まあ武術は身体能力にも関わるものであるから追々修めてゆけば良い。どうだ、ティルノアよ。卒試、受けては見ぬか?」

 先に無茶を言っておけば後からの提案は通りやすくなる。

 士官学校にしても、そもそも卒試なんて普通に修学すれば無いのだから、わざわざ受けようと思う輩はいないだろう。たとえ居たとしても、策問など答えを覚えればいいものでもないのだから自分の頭の弱さを露呈する事になるだけだ。その辺りを踏まえれば、飛び級も実現できない訳ではない。

「……買い被り過ぎです」

 どう逃げようか迷いながら、僕は答える。というか、普通に考えて落ちたなんて言えば恥じだし、受けなければかかない恥でもある。わざわざ受けに行く奇特な者もいないだろう。

「其方ならば、と思ったのだがな」

 何とも意味深な陛下の言葉に、僕は傍らの父を伺い見た。父は何とも言えない顔をしていたが、お前の判断に任せると目が語っていた。

 そんな無責任なと思ったが、父に持ち掛けられた話でもなく、父自身が最終的に選ぶ話でもないわけで。取り敢えず恨みますよ的な事を視線でもって訴えて、真面目にどう切り抜けるか考える。

「……申し訳ありませんが、今暫く考えさせては頂けないでしょうか」

 こう答えておくのが無難な気がする。そんな意図はひとまず置いておき、僕は深く頭を下げた。

「ふむ。今年の卒業と同じくを考えているで、時間は暫くある。式典の一月ほど前までに返事があればよい」

 頭を下げたままで妙に楽しそうな陛下の声を、僕は少々複雑な心境で聞いたのだった。

 

「坊ちゃん! どうでした、緊張して粗相はしませんでしたか」

 家に帰るとグレミオの熱烈な出迎えを受けて、僕はちょっと減なりした。父も父で、またかという顔をしているのを、盗み見て僕は知っている。

「あ、テオさま、いらしたんですか」

「…………グレミオ」

 その反応はちょっと僕もどうかと思うよ、グレミオ。父さんは呆れたような諦めたような、深く溜めた息を吐いた。

「変な答えは返さなかったと思うよ。卒試制度を儲けようと思っているから受けてみないかとのお言葉を戴いたよ」

「卒試制度……?」

 聞き慣れない単語に、グレミオはテオを見た。卒業に試験が儲けられる事と、それを僕がどうして受ける事に繋がるのかがイマイチ分からないらしい。

「それを受け合格した者は、修学過程を終了しておらずとも卒業出来る、という制度だそうだ」

「それは……とても名誉な事ではないのでしょうか」

 真面目な顔をしてグレミオが言う。グレミオも、普通に士官学校の過程を終了すれば卒業できる事を知っている。そして僕があと一年、士官学校へ通う事も知っている。意義を唱えないのは多分、父と違って頭が柔らかいからだろう。そう思っておく事にする。

「それで、坊ちゃんはどうなさるおつもりですか?」

 問いかけてくるグレミオを、僕は見た。真面目な顔をして、黙っていればいい男に見えるなと関係のない事をふと思う。口を開くから駄目なんだろうな。

「その場で即答はしなかった」

 肩をすくめれば、そうですかと返される。

「よく考えてお決めになって下さいね」

 グレミオは満足そうな笑みを浮かべ、小さく頷いた。

「テオさま。後二時間程で食事の用意ができますので、それまでにお御帰りくださいね」

 ニコリと笑みを浮かべ、父に言い切ったグレミオには多分誰も勝てないだろうと思う。

「…………分かった」

 無駄な反論等一刀両断されると分かっている父は、諦観の混じった表情で一つ頷いて、入って来たばかりの玄関から出て行った。

「そうそう、テッド君が来てますよ。坊ちゃんのお部屋にお通しておきましたから」

 それでは私は支度に戻りますので、そう言ってグレミオはキッチンへと戻っていく。それを見送って、僕は二階の自室へと歩を進めた。

「おぅ、ティル。邪魔してるぜ」

 自室に入って目に入ったのは、人のベッドを我が物顔で占拠して本を読んでいたテッドだった。

「寛ぎ過ぎでしょ」

 半眼でのしかかってやろうかと半ば本気で思っていると、テッドは笑いながら体を起こした。

「で、守備は?」

「父さんは北方に出向く事になった。僕の方は卒試制度を受けてみないかと誘われた」

「卒試?」

「うん、受かったら卒業させてやるって」

「……あぁ、赤月にもついに飛び級が導入か」

 かなり噛み砕いた言い方にテッドは一瞬固まったものの、すぐに感心した様に何度か頷いて見せてから、にやりと笑う。

「で?」

「とりあえず保留。決行は明日の夜かな」

「無難だな。足りない物は?」

 聞かれて少し考えて、僕はちょっと首を傾げた。

「一通りは揃えたけど、必要最低限かな。後はレナンカンプで揃えようかと思ってるから」

「大荷物でも動き辛いしな。エルイール方面に抜けるんだよな?」

 テッドの言葉に同意を示し、僕は机の引き出しから地図を取り出してからベッドに陣取るテッドの横に腰掛けた。

「クワバを越えて、大森林を抜けようと思うんだ」

 地図を広げて指で示すと、テッドものぞき込んでくる。

「あそこは抜けるのに時間が掛かるぞ」

 迷いの森と言われるだけあって、やはり抜けるのは厳しいようだ。

「厳しいか」

 顔を上げてテッドを見れば、地図を睨んで少し考えた後、

「いや、追っ手を撒くのには丁度いいか」

顎に手を当てたままそう呟き、何やらブツブツ言った後に僕の方を見て何か企んでいるような顔で笑う。

「何とかなるだろ」

「頼りにしてる」

「任せとけ」

 互いの拳を軽くぶつけ、確かめ合う。それが楽しくて、何となく可笑しくて、僕らは声を上げて笑った。

「でも追っ手って、なんだか悪い事して追い掛けられるみたいだな」

 なかなか収まらない笑いをかみ殺しつつそう言えば、テッドは当たり前と言うような笑みを浮かべて言い切る。

「ワルいコト企んでるだろ? 今、正に」

 言われた僕は心外だ。顔をしかめてみせると僕は言う。

「何言ってんの」

 そしてニヤリと笑ってみせた。

「僕は自分に忠実なだけさ」

 余りの台詞の馬鹿らしさに、僕は顔が歪むのを必至に抑える。

「違いない!」

 弾けたように再び笑い出したテッドに釣られ、僕もまた笑った。

 

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