烏白馬角   作:葱定

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サイトより転載




星火燎原

 

 夜明け前、僕らはグレッグミンスターを後にした。

 顔見知りの番兵は、僕とテッドが仲のいいことを知っている。割と頻繁に朝早くから二人で連れ立って、近場に狩りに出ていた為、僕らがこの時間帯に来ることも不自然ではないはずだった。

 いつもの様に話しかけてさり気なく目的を確認してくる番兵には、テッドが旅に出る事になったのでレナンカンプか場合によってはクワバまで見送りに行くのだと話した。答えに少し寂しそうな表情を見せた後、寂しくなりますね、気をつけて行って下さいと見送ってくれた。嘘を吐くならば虚言八割に真実二割位が本当っほく聞こえるから不思議だ。綺麗に騙されてくれたことに、少々感銘を受けた。(かといって態度を改めようとは思わなかったけれど)

 部屋に残してきた書き置きにも同じ事を書いてきたので、グレミオ達が気付くのも遅れる計算だった。

 だから三日後、レナンカンプで近衛隊やら地方軍の追っ手が掛けられているだなんて、予想外もいいところだった。

「っ! なんで追っ手が!」

「お前クワバ辺りまで見送りに行くって、本気で書いたんだろうな!?」

「当たり前だろ!」

 追いかけてくる兵士達から訳も分からず逃げ回って、全力で路地裏を駆け回る。

「お前等、こっちだ!」

 さっきも通ったとおぼしき通りに突き当たったとき、がたいのいい男に呼ばれ、手招きを受けた。呼ばれるままに角を曲がり、開いていたドアに飛び込む。

「……すまない」

 息が収まるのを待って、匿ってくれた男を見上げた。そいつはがたいのいい、人好きのするような男だった。

「何をして憲兵に追われてるかは知らんが、放っておけないからな」

「恩に着るよ」

 大きく息を吐き出しながらテッドが言う。

「暫く匿ってやるよ、着いてきな。俺はビクトールだ」

「僕は……あー、ティルだ」

 少し迷って、僕は愛称を名乗った。テッドも愛称で僕を呼ぶから間違えることもないし、彼がどういった人物なのか分からない以上素直に身分を明かすのは得策じゃないと思ったのだ。

「で、俺はテッドだ」

 ちらとテッドを見れば、小さく頷いて返してくる。僕の意図を分かってくれたらしい。

「しかし素早い対応だったな」

「ホント、グレミオを甘く見てたよ」

 僕らの会話に少し先を行っていたビクトールが振り返る。

「なんだ、お前ら自覚ありか」

「うん、まあ。でも別に犯罪とかとは関係ないし」

 罪を犯せば追っ手がかかるのは当然。でも最近は罪と言えない罪でも追われることだってある。

「ふうん、まあいい。歓迎するぜ?」

 何を、と聞く前に開けた広間に出る。少し待っていろと言いおいたビクトールはカウンターの男に何やら話をし始めた。どうやら招き入れられたのは宿屋の裏口だったようだ。

「ティル」

 脇を小突かれてそっちを見れば、テッドが小声で耳打ちしてくる。

「妙な事になったな」

「ほんとにね。どうしようか」

「まあ、なるようになるんじゃねえの?」

 取り敢えず様子見だろうな、そう言ってテッドは僕の肩に腕を回す。

「ちょっ、テッド、重い!」

 いきなり体重を乗せられ、僕は多々良を踏んで声を上げた。

「話終わったみたいだぜ?」

 テッドに言われてビクトールを見れば、少しばかり呆れたような顔をしてこちらを見ている。

「お前ら、仲いいんだな」

「まあね」

「親友ですから?」

 おどけたようにそう言うテッドに僕も少し笑う。そんな僕らに小さく苦笑して、ビクトールは「こっちだ」と僕らを招く。

 通されたのは、宿のちょっと上品な一室だった。

「高そうな部屋だな」

 テッドが素直な感想を漏らす。そうか、普通はそう思うのかと妙に納得してしまう。

「……お前、なんか失礼な事考えてないか?」

 僕が黙っているのを不信に思ったのか、テッドが怪訝そうに目を細めて顔をのぞき込んできた。

「そんな事ないよ、多分?」

 最後の方は自問自答で悩んでしまった。あれ、シツレイな事ではないよね?

 疑問符で一杯になってしまった僕を見て、テッドが大きく見せつけるような(!)溜め息を吐く。

「此だからボンは」

「ぼんって言うな昼行灯」

 間髪入れずに言い返せば、テッドがちょっと眉を寄せる。

「昼行灯じゃねえよ」

「じゃあ若年寄り」

 言い直したらカチンと来たようだ。ムッとした様子で噛みついてくる。

「誰が若年寄りだ世間知らず!」

「聞き捨てならないこと言うなぬらりひょん!」

「ぬらりひょんたぁどういう了見だ箱入り息子!」

「箱になんか入ってないもんね、この唐変木!」

「嫌味も通じないかねこの糞ガキは」

「分かってて言ってるに決まってるじゃないか何いってんの? ボケでも始まった?」

 心配そうな顔をして尋ねてやれば、テッドは頭を抱え天を仰いで身悶えた。

「うわっ、可愛くねぇ! 超ムカつく! すっげームカつく!!」

「可愛くなくて結構ですー」

 全くテッドは僕に何を求めているやら。思わず半眼で睨めつける。

「お前ら、本っとーに仲良いな」

 重く響く音とビクトールの呆れた声にそろって目をやれば、大きな時計の横に地下へと続く階段が出現している。何をどうしたのか知らないけれど、どうやら隠し階段らしい。

「……えっと、随分と本格的?」

 どうコメントして良いものか、素で悩む。

「あんたら、秘密結社かなんかの集まりか?」

 困ったような声で(僕も似たようなもんだろう)テッドが茶化すと、

「まぁ、似たようなもんだな」そう言い残して、ビクトールは階段を降りていく。

「……まじかよ」

 半ば呆然とテッドが呟く。僕も僕で天を仰いだ。

 もしかしなくても、なんだか面倒な事になってきたらしいのをひしひしと感じてしまう。

 どうしてこう、普通予測しないような事態に発展していってしまうのか。予定外の事態を楽しめるほど僕はまだ大人ではないし、楽観的でもない。

 何も起こってはいないはずなのに、諦めにも似た気持ちを抱えて僕らもビクトールの後を追って階段を降りた。

「随分と賑やかなのね、貴方たち。ようこそ、歓迎するわ」

 階段を降りた先に待っていたのは、栗色の長い髪を持つ強い意志を感じさせる澄んだ瞳の女性だった。

「しかしほんとに子供だな、お前ら何をやらかしたんだ?」

 そう尋ねてきたのは青いバンダナに青いマントの青尽くしの青年だった。

「ようこそって」

「失礼しました」

 諦めたように呟いたテッドの横で踵を返した僕の肩をビクトールが掴んで留める。

「そう言わずに、な?」

「ビクトール、貴方また何も言わずに連れてきたの?」

 女の人(どうもこの人が顔役っぽい)が呆れた様子でビクトール(もう熊で良いか)を見た。

「んな細かい事気にすんなよ」

 全然細かくないと思う。むしろこっちにとっては重大だ。

「ビクトールが失礼したわ、悪い人ではないの」

 ちょっと肩を竦めてそういう彼女にほぼ確信していることを尋ねる。

「此処、革命派の組織?」

「知ってたの? なら早いわね」

 少しだけ意外そうな顔をしてから、彼女は笑う。

「私はオデッサで、彼がフリック。改めてようこそ、解放軍のアジトへ。歓迎するわ」

 言われて困ってテッドを見れば、やっぱりテッドも困った顔をしている。

「すみません、直ぐに出ていきます」

「憲兵に追われているのでしょう? 何にせよ今は身を潜めた方が得策よ」

 オデッサの言うことは最もだけど、僕の立場的にも此処の人たちにも迷惑なのは間違いないし。

「俺はテッドでこっちがティル。追われてる理由は家出かな」

 さらっと流すようにテッドが言う。

「家出? 地方軍どころか近衛隊も巻き込んでるんだぞ? それが家出人の捜索ってのは笑えないぜ?」

 ごめん、本気で笑えない。思わず目を逸らす僕に、フリックがマジかと漏らす。マジなんです。

「流石に近衛隊まで動かすとは思わなかったからな」

「ほんとにね」

 テッドと顔を見合わせると、思わず溜め息が出る。

「まぁ私兵が動かない分マシなんじゃねえの?」

 慰めるように熊が言ったけれど、ちっとも慰めになっていなかったりする。

「なら良かったんだけどな。今残ってんの、誰がいたっけ」

 テッドの言葉に直視したくない事実を突きつけられる。

「グレミオとクレオかな……パーンは一緒に行ったはず。他の人は分からないけど、めぼしい面子はみんな行ってるはず」

 最大二個旅団分までしか動いてないはずだ。

「で、クレオがそんな事で兵を動かすとは思えない」

 寧ろ動かして欲しくないと言うのが正しいかもしれない。クレオは良識派だと信じたい。

「賭か」

「というよりそんな非常識なことやって欲しくない」

 自分で言っておきながら軽くへこむ。

「グレミオが僕の嘘を見破ったかどうかもかなり気になるんだけど」

「あー───」

 言いたいことが分かったのかテッドが視線を明後日の方に向けた。嘘だと気付いてならまだいい。問題は──

「そうじゃないなら僕を心配してってこと? どれだけ信用されてないの僕」

「……いや、ただ過保護なだけだろ」

 あーっ、と頭を抱えてしまった僕にビクトールが控えめに突っ込んだ。

「軍まで動かすって、どんな過保護だよ」

 割と整った顔した頬に十字傷のある黙ってれば結構美人、な家政夫も兼ねた職業軍人です。

 胸の内で即答して、割と本気で泣きたくなった。

「なんだかお前も大変なんだな」

 よく分からないけれど同類を見るような目で、フリックが同情するように僕に言った。自分でも肯定しているように、僕が苦労しているように見えたようだ。事情の類はよく分かっていないようだが。

「うん。諸々の事情で悪いけれど、一緒に行動するのはまずいんだ。主に僕の精神衛生上に」

 僕にも何故同情されているのか今一分からなかったけど、きっと彼も苦労しているんだろうと思う。嘘はついていないし、僕が此処にいることで多分間違い無く迷惑もかかるだろうし、全部込みでそう言うと、テッドが胡乱気な瞳で僕をみる。

 何か言いたそうなのを視線で黙らせると、オデッサが口を挟んでくる。

「今は街の外に出るのも苦労するわよ、あの様子じゃあ」

「……そうですね」

「尤もだな」

「一先ず落ち着くまで此処にいたら?」

 その台詞に噛みついたのはフリックだった。

「オデッサ!」

「フリックは反対?」

「当たり前だろう!」

 彼の反応は当然だと思う。対抗する側の人間がいていい場所じゃないのは明白だし、僕らが情報をリークすると考えてるんだろう。でも、オデッサが何を考えているのかもわかるから、僕らは敢えて釘を差す。

「此処に居させて貰えるなら、それに越した事は無いんだけどね」

「コイツ、家に戻る気は全くないし」

 ねー、と二人で顔を見合わせて軽く首を傾げると、明らかにフリックの肩の力が抜けたのが分かる。(脱力したとも言うかも)

「だってやりたい事やりたいでしょ、やっぱり」

 本心を語ればテッドがすこし嫌そうな顔をする。

「万事こんな調子でさ、コイツ」

「旅に出たくて」

 何処まで本心かテッドの場合、分からないのだけど、それでも思った事を述べているのだけは分かったので。僕もそれにあわせて言葉を綴る。

「南下してエルイールから群島方面に抜けたいんだ」

 オデッサには暗に取り込まれない意思を明白にしておく意味もかねて。

「……戻るつもりはないってことか?」

 しつこい! でもこれ位用心深くなきゃやってられないんだろうなぁ。

「戻りたくないね」

 真剣に断言すると、ついにフリックが折れた。

 これで僕たちは解放軍に属さず、解放軍という帝国軍から最も隠れた場所に身を潜めることに成功したわけである。

 

 オデッサ曰く解放軍アジト(なんだか秘密基地みたいなノリだ)に僕たちが潜伏してから、早いものでもう三日は経過した。今日も今日とてテッドと二人、フリックを弄りつつ(だって青いんだもの)様子を見ながら過ごすはずだったのだが、思わぬ所で邪魔が入った。邪魔といってもそれは僕とテッドから見た意見であり、革命組織からしてみれば自らの存在を主張するのにもってこいの事例である訳で。

 清風山とやらの盗賊(聞く所、どうも義賊らしい)がロックランドの執政官に捕まったらしく、子分が頭を助けて欲しいのだと泣きついて来たらしい。

「えっと、オデッサさん」

「何かしら、ティル君」

 僕は決して彼女と目を合わせない様にしながら言葉を返す。

「そんな目で見られても、僕たちは動けませんから」

 やたらときらきらした目で見られても、僕らは其の期待には添えません。

 確かに革命軍(と呼ばれるのは嫌らしいけど)の構成メンバーがまだ少なくて、動かせる人員が足りないのは此処数日で分かった。けれど僕らの事情も察して欲しい。

 外はまだ警戒が強くて、下手に動けば見つかってしまうだろう。見つかれば確実に捕獲されるだろうし、此処のアジトも芋づる式に見つかる事にもなりかねない。

 僕らはまだ捕まる気等更々ないので、こうやって彼女の「人手が足りないの、手伝って?」という視線から目を背け、心を鬼にして協力を突っぱねているのである。そう、決してメンドクサイという理由からではないのだ(嘘くさい? それをいうのはどの口だい?)

 というか、どうしてそんなに僕らを信じられるのかが解せないのだけれど。

「オデッサさんはなんでそんなに僕たちを信用するんですか?」

「それ、俺も聞きたかったんだけど。裏切るられるとか思わないわけ?」

 テッドが興味津々といった様子で尋ねれば、オデッサは笑って言った。

「だって信頼して欲しかったら私から信頼しなくちゃダメでしょ? 誠意を見せるべきだものね?」

 何でもない事のように言い切ったオデッサに、軽い目眩を覚える。これは青い人が苦労するわけだ。

 確かにオデッサの言ってる事は正しい。けど、正直言ってそんな事言ってたら命なんか幾つあっても足りない。多分承知でやってるんだろうけど、凄い度胸だ。裏があるだろうから尚質が悪い。

 これは周りが苦労するなと思わず同情してしまう。

「生憎、無害である以外は信用も何もしてもらおうと思ってないよ」

 呆れたように返せば、全く堪えたような素振りも見せずに

「あら、それは残念ね」

と彼女は宣ったのだった。

「なーんか食えねえな、オデッサって人」

 それじゃあお留守番ヨロシクね~と言いおいて彼女はフリックとハンフリーを引き連れて行ってしまった。それを見送ったテッドがぼんやりと呟く。

「あれくらい座ってなきゃ、革命組織なんて率いていけないのかもね」

 オデッサの恋人をやってるフリックは絶対苦労していると思う。というか、振り回されてるんだろうな。そんな事を考えながら、僕はぼんやり呟いた。

「あれ、ビクトールは行かなかったのか」

 のそのそと出てきたビクトールにテッドがちょっと意外というように声を上げる。

「お前等の生きが良すぎる所為で、お目付け役だとさ」

「青い人?」

 尋ねればビクトールは苦笑する。

「お前等、弄りすぎだ」

 分かってんじゃねえか、と熊はビクトールはぼやく。僕とテッドは顔を見合わせて口々に言った。

「だって青いんだもん」

「青春してんなぁって、なあ?」

「だよねぇ。身も心も」

「真っ青だもんな」

 僕らの掛け合いを唖然としながら聞いていたビクトールは大きく溜め息を吐いて言う。

「まあ確かに青いとは思うけどな? あれだけやれば警戒もされると思うぞ」

 仲間からも青いって思われてるんだ、フリック。

 でも僕にも言い分があるんだ。

「だって、自分の二つ名を嬉々として語っちゃうんだよ?」

「やっぱティルも思ったよな?!」

 横で聞いていたテッドが僕を指差しながら声を上げる。一瞬その手を叩き落とそうかよぎったけれど、両手でテッドを指差して僕も声を張り上げる。

「青雷のフリック!」

 寸分のズレもなく声が重なる。

「解放軍じゃちょっとは有名なんだぜ?」

「剣の名前はオデッサ!」

「派手に反応返してくれて」

「おまけに直ぐにムキになる」

 僕らは同時にビクトールを見て叫ぶ。

「これをどうして弄らいでか!」

 これまた意図せず声がハモった。

「……今、すごくフリックに同情しちまったぜ……」

 どうしてか減なりした風にビクトールが漏らす。

「失敬な」

 全然気分を害された様子もなく、テッドが言う。顔が笑ってる。

「しっかし、お前らまるで双子みたいだな」

 呆れたような諦めたような、そんな生温い笑みでビクトールが呟く。

「え、僕たち似てる?」

「あんまり似てないと思うけどなあ」

「血縁上は赤の他人だし、ねえ?」

「だな」

 二人して首を傾げ合っていると、今度こそビクトールが苦笑した。

「そういう息の合ったところがそっくりだって言ってるんだよ」

「グレミオにも言われたなあ、それ」

「怒ったときに言うよな、グレミオさん。『まったくもう! こんな所ばっかりそっくりなんですから!』」

「あはは! 似てるにてる!」

 テッドがした声真似があんまりに似ていて、思わず噴き出してしまった。実は好みが正反対の僕とテッドなのだけど(僕は魚が好きだけど、テッドはあんまり好きじゃないとかね)、悪戯とか何かするのとかは面白いくらい息が合う。

 続く言葉は決まって───

「……グレミオとやらも苦労してんだな」

 会ったことが無いはずのグレミオに同情するように呟いたビクトール。僕はそれに曖昧な笑みを返すことしかできなかった。

 

「ティル?」

 ぼんやりと考え事をしていた僕は、戻ってきたテッドの気配に気付かなかったらしい。声を掛けられて、振り返るとテッドが僕のベッドの側まで歩み寄ってきていた。

「テッド」

「眠れないのか?」

「ん、まあ」

 そんなとこ、と返せばそうかと返されて、それきり暫く二人とも黙り込んだ。テッドが僕の反対側に腰を下ろして、ベットが小さく軋む。

「出てきた事、後悔してるか?」

 問い掛けられて、すぐに答えられなかった。小さく空いた間を、テッドは肯定ととったようだ。

「戻る、か?」

「戻、ら、ない」

 区切った言葉にテッドが黙る。僕は小さく溜め息を吐いてから続けた。

「少しだけ後悔してるのは、きちんとグレミオに話して来なかったって事」

──あんまりグレミオに心配ばかりさせないでくださいね

 結局そう言って許してくれるグレミオを思い出して、僕は少しだけ後悔したのだ。

「きちんと話して、納得させてくればよかったなってね」

「あの人は何時だって、最後はお前の味方だからな」

 苦笑するテッドに少し笑って、僕はテッドの背中に寄りかかる。

「グレミオだからね」

 結局いつも最後は折れて僕のやりたい事をやらせてくれるのだ。

「一旦戻って話してくるか?」

 肩越しに振り返ってテッドが聞いてくるが、これには即答する。

「まさか! 一回やってからなんて、まともに聞いてくれるわけがないよ」

 それこそ何時まで掛かるか分からない。

「……グレミオさんだしな」

「グレミオだからね」

 結局何処まで行ってもグレミオは多分グレミオなんだろうな。

 溜め息を吐いたらテッドと同じタイミングで、顔を見合わせて思わず苦笑した。

 これ以上事態が拗れないことを切に願ってしまった僕に、非はないと思う。

 

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