最近クリス先輩の様子がおかしい。
未来さんから受けた精神的ダメージは回復してるはずなんだけど、ここのところよくため息を吐いてる。
「調?今日の依頼は誰にするデスか?」
「クリス先輩かな?悩み事あるみたいだし」
「それじゃあ報酬の為にクリス先輩のお悩み解決デース!!」
動機がゲスいよ?切ちゃん…
***
「クリス先輩は悩み事があるデス!!」
切ちゃん?クリス先輩相手にそんな直球で行ってもダメだよ?
「お、おう…」
え!?あっさり認めた!?
まずいよ。そんなに重症だと私達の手に余るよ!
「まぁ、お前らには今さらだしな…この前、その…未来の奴にコテンパンにやられちまっただろ?」
やっぱりそれ関連か…
最近思ったけど未来さんに関わると高確率で命の危険に晒されてる気がするのであまり関わりたくない。
「それ以来よぉ…何か…その…未来を見ると胸がドキドキすんだよ…なぁ?あたしはどうなっちまったんだ?」
恐怖が刷り込まれてるよ!!
ほんと未来さんに何されたんだろう?
怖くて聞けない。
クリス先輩のプライドを傷つけそうだけど…教えてあげた方がいいよね?
「それは…」
「それはズバリ、恋デース!!」
え!?切ちゃん!!?
「何!?これが恋なのか!?あたしは今恋をしてるのか!?」
「間違いないデース!!」
間違いだらけだよ!!
「いや、ちが…」
「でも相手が未来だなんて…あたしはどうしたらいいんだよ!?」
どうもしなくていいよ。
むしろトラウマ上塗りされるから大人しくしてて。
「この忘却探偵暁切歌にお任せデース!私はどうしようもないダメんずが1人の女性に告白するまでサポートした実績もあるデスよ!」
なにそれ!?私知らないよ!?
「そ、そうなのか?じゃあ…頼んでも…いい…のか?」
そう言ってクリス先輩が上目遣いで見てくる。
…ちょっとクリス先輩かわいすぎない?
切ちゃんひとすじの私でもグラつきかけたよ?
***
結局、クリス先輩がその気になってしまってるので指摘しにくいまま、依頼の解決案を切ちゃんが説明する。
「まずは、胃袋を掴むデス!!」
「ぐ、具体的にどうすんだよ!?」
「手作りのお弁当を渡して好感度アップ作戦デス!!」
あ、いつもの切ちゃんに比べるとまともな案だね。
恋じゃないっていう致命的な間違いはあるけど…
そう、クリス先輩は、お料理がとても上手なのだ。
戦場で生きてきたから少しでもおいしく食べれるように工夫しないと生きていけなかったとのこと。
あんなにおいしいお料理が作れるのに、何であんなに食べ方が汚いんだろう?
「よし、弁当だな?任せろ」
「あわよくば、一緒に食べるように誘うデスよ!」
うん、それは普通に逆効果じゃないかな?
***
「未来!!」
「?どうしたの?クリス?最近避けられてると思ってたけど?」
さすが未来さん、容赦が無い。
クリス先輩は…あぁ、ドキドキが再発してるね…
恋じゃなくて恐怖だから当たり前なんだけどね?
「そ、その…今日は弁当を作って来た!」
「そうなの?でも私、響と食堂に行くから…」
ここまでは予想通り。
「切ちゃん?あの鉄壁は金城。散発を繰り返すばかりでは突破できないよ?」
あ、このきんぴらおいしい。
今度作り方教えてもらおう。
「ならば、お弁当に全エネルギーを集中して鎧通すまでデスよ!」
切ちゃんが唐揚げを頬張りながらクリス先輩にサインを送る。
この煮物もおいしい。
「べ、別に食堂で弁当食っても…も、問題無いだろ?だから…やるよ!」
「うーん、そうじゃないんだけど…まぁいっか。じゃあ頂くね。ありがとう」
「お、おう」
未来さんの笑顔にクリス先輩がドギマギする。
私含め恐怖の対象でしか無いはずなのにああいう仕草は天使みたいなので本当にずるいと思う。
***
「あれ?未来?今日お弁当なんて作ってたっけ?」
「ううん、クリスが作ってくれた」
「おやおや?未来さん浮気ですかな?」
「響にだけは言われたくないよ?それにクリスは律儀だから何かに恩を感じたんじゃない?」
「確かにクリスちゃんは変なとこ律儀だよねー」
私達は今、ターゲットを監視している。
それにしても響さん…
割とギリギリの会話してるね?
いつもあんな感じなのかな…?
本人は気付いてないみたいだけど地雷源でタップダンスしてるようなものだよ!?
「ちょっと見せてー。おぉー!すごい美味しそう!未来!一口…」
「ダメ。クリスが私にって作ってきてくれたんだから私が食べないと失礼でしょ?どうしても食べたかったらクリスにお願いしてみたら?」
あれ?向こうも割と好印象だね?
響さんにはだだ甘かと思ってたのに。
***
「ありがとうクリス。おいしかったよ。」
「お、おう…その…何だ。別に1人分作るのも2人分作るのも変わらねぇから、また作ったら持って来てやるよ」
「本当?ありがとう。クリスのお弁当すごくおいしかったから嬉しい」
また未来さんの笑顔にクリス先輩が射抜かれている。
あれが恐怖の対象でさえ無ければ普通に微笑ましい光景なのになぁ…
これからクリス先輩に残酷な事実を突きつけないといけないのは普通に気が重い。
「で?次は何をすりゃいいんだよ?」
「次はスキンシップを取って…」
このままじゃ良くないよね?
「ちょっと待って!!」
「調?どうしたデスか?」
「急に大声出してどうしたんだよ?」
「クリス先輩の恋は勘違い。実際は恐怖が刷り込まれてるだけ。だからドキドキしてる」
言った…言って…しまった。
「そうか…まぁそうじゃねぇかとは思ってたんだけどな?」
あれ?気付いてた?
じゃあ何で切ちゃんの作戦に付き合ってたんだろう?
「今はあんま関係ねぇんだ。未来は恩人だし…その…あのバカが絡まなきゃいい奴だしよ?///」
あれ?この感じ…もしかして?
「だから…多分…元々惹かれてたってことだよ///」
えぇ…まさか本当に恋に発展してるなんて…
***
クリス先輩は「あのバカは強敵だがあたしは諦めない!」と意気込んで行ってしまった。
「まさか勘違いが本当になるなんて…」
これがつり橋効果ってやつなのかな?
実際になってる人は初めて見たけど…
「何はともあれ一件落着デスね!」
「じゃあ帰ろっか?切ちゃん」
「デェス!」
こうして私達の定期的な依頼にクリス先輩の初恋を応援することが追加されるのであった。
クリスちゃんが料理上手は捏造です。
タイトル通りとは言ったが、この作品なのでロクなことにはなりません(笑)