まずは雅の設定とか考えてみた。そうか、お前西条って言うのか。
コツ、コツ、コツ、と夜道に足音が響く。時々、街灯に照らされて男が持っているアタッシュケースが輝く。対称的に男の着ているスーツは黒く、光を吸収しているかのようだった。アタッシュケースの中にはあまり物が詰まっていないらしく、コトンコトンと音が鳴っている。
時刻は日付を超えてしばらく。会社帰りにしては、遅すぎる。勿論、ド違法な勤務形態をしているアレな会社の社員という可能性もあるが、極稀にすれ違う人々は彼を気にもとめずに過ぎ去っていく。まるで彼の存在に気付いていないかのように。
男はここから先は洋館だと強く主張するような門の前で立ち止まり、上着の内ポケットから携帯電話を取り出す。今時、開閉タイププッシュ式の携帯電話を持っているのは、時代の流れについていけなかった者か或いは過剰な便利さとは無縁なタイプの者かのどちらかだろう。
男は後者だった。
「私だ。前に着いた。開けてくれ」
もしもし、すらなく男は用件だけを口にする。
「インターホンを鳴らせよ」
携帯電話から聞こえるのは少年の声。呆れたような口調、しかしどこか警戒も乗せた声色。それが二人の間の関係を少しばかり表していた。
「悪いな。潔癖症なんだ」
「嘘吐け。ならこんな仕事、しねぇだろ」
「違いない」
くくっと不穏当な笑い声を漏らしている間に、ガチャリと門は身勝手に開き、男を誘う。
ほんの少しの道を歩いて男は玄関の扉を開ける。開けてすぐ、制服のままで出迎えたのは染めた金髪の少年こと、西条雅。
「全く。来る度に、高校生には相応しくない家だと思ってしまうな」
「それは俺も思う」
辺りを見回す男に、雅も同意して笑う。玄関を開ければ、二枚扉よりも幅の広い階段があり、上を見上げれば左右前と、どこかへと繋がる扉がある。どの扉も二枚扉であり、それだけ各部屋が広いことを意味している。
「まぁ、俺も正直使い余してんだよ。二階の右の部屋とか使うか?」
「誰がお前なんかとルームシェアするかよ」
「この場合、ルームシェアって正しいのか? 部屋貸しだから賃貸の方が近い気がするが」
「どうでもいい。お前と一緒にいたら、ストレスでハゲる」
「――で、まだ完成してない訳か?」
唐突に話を区切って、雅は本題を振る。この男が無駄話をするということは、本題を避けようとしているだけ。
「……まぁ、そういうことだ」
「ほぉ。じゃあ、その中身は何だ?」
「試作機ってところだ。理想には程遠いが、近いくらいの性能はある。まぁ、何もないよりかはマシかと、思ってな」
言って男はアタッシュケースを玄関の段差に置いて、扉まで下がる。
「はんっ、だから失敗作を持ってきたってか。……まぁ、いいか、俺も少し無理させ過ぎた。正規品はまた次でいいさ」
「次、か。分かった、アイツらにも言っておこう」
言い捨てるように男は翻して、屋敷を出て行く。
「相変わらず仕事人間だな、お前。家族とか、作れよ?」
アタッシュケースを持って、雅は男と同じように翻して一階の玄関正面の部屋に進む。
「ガキにどうのこうの言われる筋合いはねぇよ」
「さいでっか」
ガチャンと、玄関の扉と部屋の扉が同時に閉まる。数分だけの邂逅、それでも雅は男との接触を欠かさない。それが、雅の役目だからだ。
「雅、今の誰?」
雅が入ったのは一応は客間だ。とはいえ、この屋敷には客間に入る程、長居する人間はいないが。なので、その客間は声を掛けた少女の自室のようなものになっていた。
「いつもの人、だ」
「あのおじさん?」
苦笑いをしながら雅は少女の問いに首肯する。確かあの男は二十から三十代だったはず。おじさんと言われる程の歳ではなかったはず。少女の純粋さは時として毒だなと、雅は思う。
「……雅、お腹空いた」
どうやら少女は「訪問者が誰だったか」にしか興味がなかったらしく、マイペースに次の主張をし始める。座ると体が沈み込んでしまうソファに寝転んだままなのは、空腹で動けないからなのかそれともものぐさだからなのか。
雅もそんな少女の態度には慣れっこだった。雅はアタッシュケースを前に置いて、「ん」と首を差し出す。すると少女は霧状に変化して移動し、雅に背負われるような体勢で再度人の姿を取り戻し、かぷり、と首元に噛み付く。
「っ。――っと、さて、中身はっと」
多少の痛みを感じながら、雅はアタッシュケースを開ける。中にあったのは、適当な梱包をされた四つのブレスレット。どれも形は一緒で赤青白黒の色違い、厚みは〇・五センチ、幅は一・五センチといったところのコンパクトなもの。雅が赤のブレスレットを右腕に着けたところで少女は食事を終えた。
かぱっ、という音と共に少女は雅の首から口を離す。鋭く伸びた犬歯から血が滴り、雅の首元には二つの穴が出来ていた。不思議と、首元から血が出ることはなかった。
「……ん。ありがと。そして、おやすみ」
言って少女は雅が入った扉とは違う扉から自らの本当の部屋に戻っていく。
「今度はいつ起きるんだ?」
「目が覚めたら」
バタンと、扉が閉まり同時に静けさが雅の周辺を包み込む。つまるところ、起きた時が起きる時ということらしい。
「相変わらず、吸血鬼らしくねぇやつだな」
呟いて、立ち上がろうとしたところで軽くふらつく。
「あいつ、結構な量吸いやがったな……。くそっ、俺も寝るか」
ふらふらと、重い足取りで雅もまた自分の部屋に戻って行く。彼女の食事係。それもまた雅の役目だった。
洋館に吸血鬼。そして何やら怪しい男。そんな二人の間にいる雅。ねぇ、これどうやって収集付けるの。
前の話で、京と名乗っていた子の話です。(名前間違って覚えてた)。
マジで設定何も考えてないからこういうことが多発します。(気付き次第、変更し、あとがきに書くので違和感があればあとがきを見てください)。
2018/03/11
変更前「不思議と、そこから血が出ることはなかった。」
変更後「不思議と、首元から血が出ることはなかった。」
主語が不正確な為。
2018/03/12
前「ブレスレットが四つ」
後「四つのブレスレット」
中にあったのは、と文が繋がらない為。