今日も今日とて。   作:不皿雨鮮

5 / 14
亨と耀。彼らのチート。
亨と耀。彼らの日常


 

 目を覚ますと同時に、頭の中に情報が雪崩れ込む。頭痛に近い情報の濁流に顔を顰めつつ、それらが収まると同時に亨はにやりと笑った。

 面白いことが起こる、と確信していた。元々、知っていたことだ。だが、今日になってもそれが変わらないということは、今日それが起こるということだ。何が起こるのかは分からない。だが、それでよかった。

「さて、と。ちょっとばかし、早送りしますかっと」

 亨に平日だとか休日だとか、そういう概念はない。学校なんてものは亨にとっては行く日もあれば行かない日もある、程度のものだ。教師陣もそれには慣れてしまったらしく、休みの連絡をいれずとも特に問題なく授業が進められていく。

 向かうは街外れの廃ビル群の一つ。それらは都市の発展を目指して行った無理な開発の成れの果てだ。しかし、開発はとある事情によって失敗してしまい、それらを撤去するだけの資金すらこの街にはなかった。そうして人の管理から外れてしまったビルは、つまるところ人ならざる者達の管理下となっていた。

 ビルの柱の物陰から耀が現れる。今回のことは何も言っていないが、それは言う必要がないからだ。恐らく、ほぼ確実にここに現れるだろうことを亨は推測していた。

「やあ、亨。こんなところで『偶然』ね」

「ほんとにな」

 白々しい挨拶に苦笑いを漏らしながら亨は本題に移る。

「――で、お前はどう視えた?」

「両方」

「やっぱりか。珍しいな、純然たる怪異と人間が手を組むなんざ」

「よね、『ラブ』と雅のコンビとかならともかく、今回は特殊で異例。まぁ、どちらにせよ私達案件なのは違いない訳だし……、どうする?」

「どうするって、何をだ?」

「ぶっ潰す? ぶっ殺す? ぶっ壊す?」

「はっ、んなもん、決まってんだろ」

 亨の表情に、納得の笑みを耀は見せる。

「全部、だよ(だね)」

 

 爆音が響くと同時に、ビルの一つが崩壊した。本来、ビル群の一角が崩壊してしまえば、周囲のビルにも影響を及ぼす。最悪の場合、ドミノ倒しのように全てのビルが倒れてしまうことだって有り得てしまう。ところが、その崩壊にはそれが起こり得なかった。

 なぜならビルは一瞬にして粒子レベルにまで分解されたからだ。周囲にいた人々――もとい、人成らざる怪異達は戸惑い驚き、そして同時に理解する。

「やばいぞ! あいつらが来た!」

 一人が恐怖に耐え兼ねて叫んだ。それを合図のように、分解されたビルがあった場所に亨と耀が現れる。

「どーも、『やべーあいつら』でーす」

 言葉と同時に、周辺にいた怪異が根こそぎ消え去ってしまう。一瞬にして祓われてしまったのだ。

 しかし数体だけ、そこにいたどんな怪異よりも早く逃げ出していた者達がいた。

「ッ、なんでなんだよ! なんで、こんなに早く祓い屋が現れるんだよ! まだ、俺達は結集しただけだってのによ!」

「知るかよ! この中に仲間を売った奴でもいるんじゃねぇのか!?」

「んな訳ねぇだろ、俺達と奴らは絶対的な敵対関係じゃねぇか!」

 口論をしながら、彼らは逃亡を続ける。どこに逃げればいいのかなんぞ分かっていないが、少なくともこの街からは脱出した方がいい――そう思ってのことだった。

 そんな彼らの眼の前に、亨が落下する。真上から高速で落下した亨は、その手に自分の身長を優に超す大きな刀を持っていた。

「その通り。お前たちには裏切り者なんざいねぇさ。唯、俺達の街で、俺達の庭で、余計なことを企んだ。それだけが、お前らの企てが失敗する原因だ」

 一閃。それだけで怪異は祓われた。たった一体を残して。

 怪異の中でも危険性の高い者として知られている鬼だ。知性を持ち、武器や他の低級怪異を操る怪異。しかし、そんな鬼に足はなかった。先程の一閃で切り飛ばされてしまったのだ。

「ほぉ、アレで死なねぇとはな。さてはお前が今回のボスってところか?」

「……まぁ、な」

 鬼は只々、亨を見つめる。逃げることも命乞いをすることもしないのは、鬼としての矜持なのだろうか。そして亨はそれを好ましいと思う。

「久々だぜ、お前みたいにカッケェ怪異を見たのは」

「俺は初めてだよ、お前のような理不尽な強さを持っている者を見たのは」

「まぁ、それは俺も自覚がある。ちょっとばかし、俺は理不尽だ。だから俺はあんまり出張らないようにしてんだよ、自分の活動範囲以外には手を出さない。そうでないと、まぁ、怪異も人間も、俺は滅ぼすことになっちまうからな」

「……ッ。お前は、一体何者なんだ? あちらに行く土産話として、教えてくれないか?」

「いんや、遠慮しておくよ。それを知ったところで、お前は何もできない。俺は誰にも殺されないんだよ、悠々自適に生きて天寿を全うするんだ。世界がそう言っている」

「世界が、だと。お前、まさか、アカシックレコードを――!」

 再び一閃。それで全てが終わった。

「じゃあな、鬼。今度、会うことがないように願っとくよ、お前の為にな」




お久しぶり。そして次も多分、しばらく後になるでしょう。

亨が鬼と対話している頃、耀はと言うと……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。