コツ、コツ、と階段を登っていく足音が二つ。それは確かに響いているはずなのに、誰も耀と亨の存在には気付かない。二人は存在感そのものを消したのだ。十数階にも及ぶ階段を登り切る。
屋上には見張りの怪異が二体いた。亨は瞬時に、どこからか取り出した大刀を構えて一振り。たったそれだけで怪異が一体消失する。同時に亨はビルの真上に跳躍。それと同時にもう一体の怪異が、相棒の消失に気付く。しかし、それではもう遅かった。
「ッ、お前は誰――!」
誰だ、と言うよりも前に耀は怪異に触れていた。そして、触れただけでよかった。
「さようなら」
怪異は砂となって消え去った。そして同時に耀も跳躍。場所を入れ替わるように亨がビルの中心、ヘリポートの『H』の中心部分を破壊し、爆音と共に地上まで貫いた。
「解析、分解、収集」
耀の言葉と共に、それらが全て起こっていく。ビルの構造を解析、それを元にビルが粒子レベルに分解され、それら全てを耀は自らの特殊なスペースに集める。そうして、ビル一つ、忽然と消えた。
ゆっくりと、物理法則を無視して低速で落下する耀がにたりと笑う。解析はビルだけではなく、ビル群にいた怪異と人間全てが対象だった。
「亨、怪異の方をよろしく。私は人の方をやるからさ」
「ああ、分かってるさ」
言葉と共にお互いに消え去り、亨は怪異へ、耀は人間が集まっていた方へと向かった。
「さて、ワルモノさん、こんにちはー!」
元気な言葉と共に耀は人間達の前へ出現。そこは別の廃ビルの中階
「ッ! 何者……え?」
男達が最後まで言い切れなかったのは、体が全く動けなくなっていたからだろう。まるで何かに縛られているかのように動けない。
「質問できるのは私だけだよ。まず一つ目、本当に怪異と手を組んで何かができると思ったの?」
「ああ、できるはずだったさ。お前が邪魔さえしなければな!」
「無理だよ。お前達は成功を収めたその瞬間に殺された。成功を収め、調子に乗ったお前達を見て、彼らは呆れて殺すんだ。彼らはとてもプライドの高い存在でね、アンタ達みたいな穢れた人間と関わったということを知った時点で、その事実を抹消しようとする」
「はっ、だから俺達を救ったってか!」
「いんや。死ぬ運命は変わらない。少しだけ早くなっただけの話」
「は?」
耀は極寒の笑みを見せて告げる。
「貴方達は故意に、悪意的に怪異と関わった。それはもう、どうしようもない穢れとなる。そんな人間の血で私達の街を穢すなんて、とんでもない。だからさ、お前達は存在諸共抹消してあげる」
言葉は力だ。特に耀の場合は、それが顕著である。言葉と共に彼らはビル同様に粒子となって消え去っていく。彼らは死に、そして消えた。
同時に、ぺたんと座り込み、そのまま大の字に寝転ぶ。耀が使った異能こと言霊は体力を大いに消費するのだ。
「だー! 疲れたぁ」
「お疲れさん。しかし、お前も容赦ねぇなぁ、人間だぜ、普通には殺人犯だぜ?」
「何言ってんの。私とアンタの妄想でしょ。
「
「さぁ、誰だったっけね」
数秒の沈黙の後、亨は少し茶化すように耀に問う。
「……さて、これで俺達の街は平和に保たれた訳だが、この後どうする?」
「どうするって、んなの決まってんでしょ」
「まぁ、そうだよな」
「学校に行く(か)」
そうして二人は一旦家に戻って制服に着替え、学校へ登校するのだった。