今日も今日とて。   作:不皿雨鮮

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晴香は語る。人生を。怒りを。

 さて、これは私の、土御門晴香の一人語りです。

 私が生まれ、今に至るまでの人となりを語る訳です。とはいえ、私が生まれた時が何グラムだったか、などは一部の好事家くらいしか興味がないでしょう。なので、要約して、かいつまんで、省略して、語っていこうと思います。

 私が生まれた土御門家は祓い屋稼業で大成した一族です。陰陽師、陰陽五行説に基いた呪術を用いた流派です。元々は官職であったことも含めて、それはもう大層なお金持ちでした。まぁ、そのお金は全て汚れたお金なんですけどね。

 陰陽師は怪異と祓うことを主としています。その資金は怪異祓いによって成され、そして怪異を研究する為に消費されています。

 陰陽師のみが持つ特殊な契約儀式、式神というものをご存知でしょうか。あれは怪異に名付けを行うことで手懐ける、言わば呪いです。怪異を自由に操る特殊な呪術でして、つまり、怪異による被害を人工的に創り出すこともできる。

 ええ、はい。陰陽道の廃れた現世であっても土御門家が祓い屋稼業の中でその権力を持っているのは、そういう訳です。

 人への呪いの行使。つまりは、競争相手を呪術によって殺す。そうすることで土御門家はその地位を揺るがざるものにし、また資金を得る為に罪のない人々を、呪い殺した。

 時には式神に暴れさせ、それを祓うことで揺らぎかけた地位を固めたという事例だってあります。

 そう。土御門家なんてものは、潰れて当然の、穢れきった最悪の一族なのです。 

 …………。そして、私がその穢れの象徴です。

 人を呪わば穴二つ。他人を呪えば、その呪いは自分に返ってくる。そういうものなのです。だから、土御門家は呪いを受けた。その呪いそのものが、私なんです。

 はい。そのとおり、妖狐です。私に取り憑いているこの妖狐は管狐と呼ばれる妖狐です。飯縄権現とも言いますね。彼らはとても優秀な従者ですが、彼らは私の成長につれて増殖するという性質を持ちます。優秀な従者が増えるのはいいことのように聞こえますよね、ですが、違うのです。

 彼らは言わば私の分身。私の生命力――霊力を食らって存在します。つまり、増えれば増えるだけ、私の命が削られていく。約七十五匹。それだけ増えてしまうと、人間の寿命は尽きるというのが一般的でしょう。

 そして、憑かれた私の寿命が憑きてしまった、その時が、土御門家のゲームオーバーだったのです。管狐に憑かれた人間が死ぬと、その一族に一匹ずつ管狐は憑き、更に増えていきます。倍々ゲームで土御門の血を受け継ぐものは死んでいく。

 そう、これが呪いです。私という爆弾を抱え、それが爆発した瞬間、土御門家は滅びを迎える、そのはずだった。

 ――ですが、彼らはそれの対処法を知っていた。

 いえ、知っていたからこそ、土御門家は私を生んだのです。

 私の父親は土御門家の分家の分家の分家くらいの、下っ端でした。そんな彼が、土御門本家の母親に見初められ、私を生んだ。そんな奇跡の子供なのだと、私は昔教えられました。

 ですが、奇跡なんてものは大抵の場合は偶然か、或いは作為的でしかありません。

 私は捨て駒だったのです。

 私が生まれた直後、父親は死にました。自殺です。土御門家を滅ぼす爆弾を生み出してしまった、とね。

 ですが、それすらも土御門家は計算ずくだった。土御門本家のことを第一に考えるような、そういう人間をわざと爆弾の親にしたのです。邪魔者を手っ取り早く処分する為に。

 私が生まれた直後、即座に私は土御門家から縁を切られました。物理的、書類的、そして呪術的に。さて、両親共に土御門家であり、その土御門家から縁を切られた私が死んだ時、さて、管狐はどこに行くのでしょう。

 ……はい、その通りです。どこにも行けないのです。管狐はそれで一度滅ぶ。土御門家には何の影響もない。たった一人、私だけが野垂れ死に、それで全てが終わる。

 次の管狐が土御門家に憑くまでには数十年の猶予があります。逆に言えば、私が生まれたその時点で土御門家は更に数十年間、のさばるということです。

 土御門家は、そんなことをこと行い続けているんです。

 だから。

「だから、私は、土御門家を滅ぼしたい。土御門家によって殺されるのなら、土御門家を巻き込んで死にたい。それが私の願いです。どうか、どうか、協力していただけませんか?」

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