SAO フェイタルバレット 現実世界編   作:玄神

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000話

※こちらはシロ編の現実世界(リアル)のお話です。その為、シロ編に合わせて更新していきます。

 

まず、彼女の話から入ろう。

神谷 ましろの母、神谷 小夜子(さよこ)という女性のことだ。

彼女を簡単に説明するならば、自分と他人に最前を求める人間である。

 

もちろん娘のましろには小さい頃から勉学を優先させてきた。

しかし、ほとんど家にいなかったものだからテスト、通知表、順位…それらの数字で判断していた。

経過よりも結果、常にましろはそれに答えて生きて来た。

 

小夜子はARを研究している部署で働いている。

仕事が終わると会社の宿舎で寝泊まりする事が多い。

その点でましろの住んでいる家を《我が家》と呼んでいいのかはっきりしない。

 

そんなある日、母からメールが届いた。

「仕事で忙しいので着替えを持って来て欲しい」

との内容だった。

 

色々任される立場になったせいか、今までもこんな理由で研究施設へ言った事がある。

「神谷 小夜子の娘です。」

いつも通り、顔見知りとなった受付のお姉さんに伝えた。

「はい、ここに名前と住所を書いてね」

お姉さんの指示通りに必要事項を書いて行く。

 

受付は一階のロビーに置かれており、外部の人間は必ずここを通る形になっている。

それ以外はパーテーションで仕切られた、テーブルとイスがわずかに見える。

よくスーツを着た人が受付の人に案内されて、何かを話してる様子をみかける。

 

今日も仕切りの間から男性と思われる人影が見える。

そんな時、静かなロビーに男性の声が響いた。

 

「伊月(いつき)先輩!」

 

ましろの耳には確かにその名前が届いた。

 

スーツの男性がひとり、誰かの名前を呼びながら入って来た。

おそらく、その伊月先輩であろう男性がパーテーションから出て来た。

 

「そうそう、ましろちゃん」

小さな声で受付のお姉さんが呼ぶ。

「後ろの眼鏡の人、カッコいいよね。」

そう言われて、男性2人のうち、眼鏡をかけてるのがどっちなのか視線を送る。

 

名前を呼んだ方の男性は裸眼で、おっとりとした雰囲気の持ち主だった。

もう片方の男性は眼鏡をかけていた。

(お姉さんが言ってるのはあの人か)

「カッコいいんじゃないですかね」

同意はしておいた。

 

それよりもましろが気にしてたのは

(同じ《イツキ》って名前なんだ)

たまたま同じ名前の人物なのだろう。

次にログインしたらこのこと話してみよう…と思いながら用紙を受付に出した。

 

あとは持って来た荷物を本人に渡してもらう様にお願いして、受付を後にする。

 

出入り口へ向かう途中、伊月先輩と呼ばれた男性とすれ違う。

自分が制服を着ているから目立つのか、視線を感じた。

 

ましろは気にしないでいると、声をかけられた。

「えっと…神谷主任のお嬢さんかな?」

母の知り合いだったか…と心の中で舌打ちをしながら振り向く。

 

「すみませんが…どちら様でしょうか」

「ごめんね。こういう者だよ」

眼鏡の男は名刺を渡して来た。

名刺には『○○医療機器メーカー 営業2課』と書かれている。

 

男をよく見ると、ふわふわとした髪は丁寧にセットされており清潔感を感じる。

営業という肩書きも嘘ではないらしく、笑みを浮かべている。

 

「それで…その伊月さんが、何の御用でしょうか」

「さっき受付の会話を聞いちゃってね。神谷主任に挨拶してきたばかりなんだ」

話の内容が見えて来ないので、ましろは少しイラついてきた。

 

ましろの様子を見て男性は思案している。

「もしかして…まだ聞いてない?」

「母からは特に聞いてませんが」

ここでやっと彼の中で何かが繋がったらしい。

 

(これは悪い予感しかしない…後で母に確認しよう)

 

「ちょっと急いでるので、そろそろ失礼します」

「あぁ、時間を取らせてごめんね」

男性は爽やかな笑顔で手を振る。

確かに顔が整っていて愛想が良い彼の事を、世間はカッコいいと言うのだろう。

 

しかし、ましろは気付いていた。

彼の目が、

会話のあいだ、笑っていないことを。

 

何かこちらの腹の内を探るような嫌な感じさえした。

(二度と会いたくないなぁ…)

 

去って行く彼女の背中を見ながら彼は呟く

「またね…ましろちゃん」

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