今日は学校が休日で特に予定のなかったましろに一通のメールが届く。
画面を見ると、『眼鏡』とだけ表示されている。
この眼鏡は、伊月のことだ。
メールを開くと、いつ空いているか?と言う内容と、
学生に向けてAR実習を企画しているらしく、それについて意見を聞かせて欲しい。
この前のお礼も兼ねて、どうかな。
と書かれていた。
ましろは、今日はこの後空いていることを書き込んで、メールを送信した。
1分もしない内に返事は返って来て、待ち合わせの時間と場所が書かれていた。
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午後、約束の時間。
晴れてはいるが、季節は冬。風が冷たく感じる。
ましろが待ち合わせの場所に行くと、黒いコートを着た伊月が既に来ていた。
「待たせてしまって、すみません。」
「予定より早く来てしまってね、気にしないで。」
伊月は私服のましろを上から下まで眺めたあと、感想をもらした。
「私服もかわいいね。」
そのひと言でましろは伊月から距離をとり、身構える。
「伊月さんはよくモテる方だとか言われませんか?あと、通報しますよ。」
「素直な感想を述べただけなのに、信用ないなぁ…。」
「ストーカーしてたじゃないですか。」
「法律には触れない範囲だよ。…そろそろ、移動しないか?」
苦笑いで、こっちだよ。と先を歩く伊月。
2mほど距離を取りながら、後ろを歩くましろ。
少し歩いて伊月とましろはオシャレな建物に入った。
「ここの3階にあるお店だよ。」
上へ行くと落ち着いたレストランが見えた。
ちょうどレストランから出て来た人とすれ違う。
黒い服を着た青年と、眼鏡にスーツの男性という組み合わせ。
ましろは青年をどこかで見た事がある既視感に襲われて、振り返る。
青年の背中しか見えなかったので、気のせいかと思い店内に入った。
「好きなもの頼んでいいからね。」
その言葉にメニューとにらめっこをする。
結局選べ切れずにケーキセットを注文する、ましろ。
伊月は珈琲を注文する。
「今日は時間をとってくれて、ありがとう。」
「いえ。特に予定もなかったのでゲームしようと思っていました。」
「やっぱりVRとかやるの?」
「はい。…《GGO》って知ってますか?」
「ARは詳しいんだけど、VRは全く知らないんだ。どんなゲームなんだい?」
「GGOは《ガンゲイル・オンライン》の省略名です。」
「と言う事は、拳銃とか出てくる?」
「そうです。拳銃を使ってモンスターを倒したりクエストをやったり。」
「今の君からは想像出来ないなぁ。」
「VRはアバターがありますからね。あとは、アファシスと呼ばれてるサポートAIがいたり。」
「ゲームにはサポートAIは欠かせないよね。ゲーム初心者を物語に導いてくれる存在。」
伊月の言葉を否定するましろ。
「それとは…ちょっと違う気がするんです。」
「違うと言うと?」
「私のサポートAI…《レイ》は感情豊かで、AIだけどAIっぽくないと言うか…」
「へぇー。それは面白そうだね。」
「あっでも、ARを学校で使っている人もいますよ。」
「最近ARを使い出すユーザーが増え始めたからね。課題が多いよ。」
お茶を飲みながら、色々話して、その日はお店の前で解散とした。
「駅まで送って行かなくて本当に大丈夫?」
「はい。今日もごちそう様です。」
「ARのことは学生の意見も取り入れないといけないから、助かったよ。
ちょっとは、僕を見る目に変化はあったかな?」
「そうですね…靴の高さくらいには。」
「これは手厳しい。精進するしかなさそうだ。」
ましろは伊月に挨拶をして、家路についた。
見えなくなるまで、見送る伊月。
心なしか、嬉しそうな顔をしている。
「《ゲームのなかでリアルの事を話すのはタブー》だよ。ねぇ、シロ。
真実を知った時にどんな顔をするのか楽しみだよ。」