ましろは学校が終わり、伊月が待っている喫茶店へ入った。
喫茶店へ入ると、スーツ姿の彼がすでにコーヒーを飲んでいるところだった。
「やぁ、昨日ぶり。」
「現実世界ではお久しぶりですけどね。」
ましろも席について、飲み物を注文する。
「で、用件なんですけど。」
「カフスの時のことだよね、シロの反応が楽しくて、やり過ぎたのはいけなかった。」
本当にすまない、と謝る伊月。
「別に、もういいんです。」
「あれ。気にしてないのかな?」
「気にしてます!それより…今度、現実世界で会ったら教えてくれるって約束でしたよね。」
「最初に、君に話しかけた用事…だったよね。」
「それです!」
伊月は少し困った顔をしながら、話そうとすると、ましろの飲み物が運ばれてきた。
「君は神谷主任から、まだ何も聞かされてないんだよね。」
「あれから本人に聞いてもはぐらかされるし、伊月さんに聞いてるんですよ。」
「わかったよ…。ちょっと話が長くなるけど、いいかな?」
「私は時間はたっぷりあります。」
運ばれてきた紅茶を飲みながら、答えるましろ。
「わかったよ。…最初に、結論から言うとね。ましろ、君にお見合いの話が出ている。」
「えっ?」
「お見合い。聞いた事はあるよね。」
「お見合い?誰と?」
「僕と。」
苦笑いをしてる伊月が丁寧に答える。
「今の時代に、見合い?どうして、私と伊月さんが?」
「順に説明していくから。」
ましろは落ち着く為に、紅茶をもうひとくち飲む。
「まずは、僕の育った環境を説明しないといけない。僕の父は医療関係の会社をいくつか経営しているんだ。簡単に言うと、社長。その父がある日、神谷主任の進めている研究プロジェクトに関心を寄せてね。」
ましろは、伊月の話に相づちを打ちながら聞く。
「父の会社が研究プロジェクトに出資することが決まったんだ。」
「なるほど。そこまでは、話は分かりました。」
「ここからは、推測なんだけど。お互いの利益のためか、会話の流れでお見合いをしようとなったのか…それは僕にも分からない。」
「私に知らされてないだけで、お見合いの話は進んでるんですね。」
「その通り。ましろ、君と出会ったあの日に、声をかけたのは、興味本位からだ。」
「…。」
「相手がどんな人間か、気になるだろう?近いうちに、君にもこの話をされるだろう。」
「伊月さんは、嫌じゃないの?」
「嫌かどうかの話ではなんだ。残念だけど、僕の発言権は低い。」
「それって、どういう…。」
「君自身が嫌と思うなら、主任とよく話し合うべきだ。」
「…。」
伊月は時計を確認して、このあと予定があるからごめんね、と言葉を残して店を出た。
ましろは残り少なくなった紅茶を見ながら、伊月に言われた言葉を必死に考える。
喫茶店を出た、伊月は歩きながら後悔していた。
ーー君自身が嫌と思うなら、主任とよく話し合うべきだ。
彼女にはっきり拒否されるのは、怖い。
なのに誘導するみたいに、ああ言ってしまった。
今みたいな関係が続けばいいのに、と思う伊月だった。