《LADIES & GENTLEMEN 成田からのフライト、お疲れさまでした。定刻通り、本機はまもなくフィウミチーノ空港へ着陸します。座席のシートベルトを――――――》
「もうすぐ空港に着くから起きろ。後シートベルトをしろだってよ」
「ん?……わかりました………」
エリオを起こし俺もシートベルトを締める。ようやく帰ってきた俺の故郷―――――イタリア。3カ月(4カ月)いなかっただけでここまで懐かしく思うってことは……俺もここにはそれなりの思い入れがあるってことか。
エリオは、飛行機に乗っている間も俺からのイタリア語のレッスンを受けてさせて片言だけでもしゃべれるようにした(無理やり)。俺がいれば大丈夫だと思うけど……家の中で意思の疎通ができないのはちょっとメンドーだからな。
「今飛行機より早くしゃべってるけど伝わるか?」
「……はい、なんとか…わかります」
「空港のロータリーで親父が待っているからさっさと荷物を回収しよう」
「{コクコク}」
さすがに12時間くらいしかレッスンしていないから会話は難しいか。でも12時間でここまで理解できるって…若い子はいいなあ(15歳)。
荷物を受け取り、ロータリーに出る。車を買い替えたって話を聞いていないから大丈夫かと思うけど…いた、アレだ。
「おーい、親父」
「久しぶりだな、光輝。少しは頼もしくはなったな……タブン」
「なんで今タブンって言ったのさ……」
「???」
エリオが訳が分からないって顔をしている。まあここは教えていないしわかったらわかったで〝なんでそこはわかるんだよ〟って感じになるけど。
「エリオ、自己紹介をするんだ{ヒソヒソ}」
「わ…わかりました{ヒソヒソ}」
「ああ……先に自己紹介をさせてもらうが、俺は『ジャイロ・ツェペリ』だ。この近くの診療所で医者をやっている」
「しかも自前」
「?エ…エリオ・モンディアルです。泊めてくださり…あ、ありがとうございます」
「礼儀正しいのはいいが、もう少し砕けてもいいぜ。よろしく、エリオ」
「え…あ、はい。よろしくお願いします」
「親父、エリオはイタリア語に全く慣れていないんだ。〝正しい〟イタリア語を使おうとしているのもそのためなんだけど……まあそこんとこわかって{ヒソヒソ}」
「わかったよ{ヒソヒソ}」
自己紹介が終わったから荷物をトランクにやって座るが、親父は一向に車に乗ろうとしなかった。
「おい親父、なんでいかないの。どうしたんだ?」
「あ?ほかにもお客さんがいるんだよ」
「ハァ?どーゆーことさ」
「こーゆーことだ」
親父がそう返すと同時に、奥からまっすぐこの車に向かってくる二人組が来る。顔はちょうど窓の上にある。
「よ…よろしくお願いします」
「1週間お願いします」
「もっと気楽でいいからな。あと息子がいるけど無視してもいいから」
「親父ィ!なぜそんなこ…と……を………」
「あれ……?」
挨拶をしてきた人たちに親父が変な返しをしたのでそれに対し突っ込んだらそこにはアリシアがいた。それにローウェル先輩も。そういえば語学研修にはホームステイが含まれていたな。
「光輝…君……?」
「そうですね…光輝です。 ……ちょっと親父!{ヒソヒソ}」
「なんだよ{ヒソヒソ}」
「なんでホストファミリーに真似事してんだよ。部屋が足りないし感染とかしたらどうすんだよ{ヒソヒソ}」
それにどこにも連れていくことなんてできないぞ。それにローウェル先輩になにか起きたらどうするんだ。アリシア?1人で何とかできそうなイメージしかないな。
「最近お小遣いが……冗談だって!落ち着け。イタリア語の勉強もできるし光輝の嫁さg…マジでやめろ危ない{ヒソヒソ}」
「最後のはマジでいらないから。さっさと出発して」
「わかっているが…お宅ら知り合いなのか?それともこれか?」
親父が小指を上げるが、俺はそれを折ろうとする。(避けられたけど)
「違ぇよ。ローウェル先輩は寮が一緒で、アリシアは知り合いだよ」
「ふ~ん?」
「なんだよ」
「なんでもねーよ」
親父が気持ち悪い笑みを俺に向ける。絶対に何かを含んでいる目だ。
「じゃあ出発するけど、荷物はこの愚息に運ばせていいからな」
「じゃあ……よろしくね」
「私のもお願いね」
「……ハイ」
先輩たちの荷物をトランクにやり後部座席に座る。
「そういえば…語学研修の日程はどうなっているんですか?」
「月曜から金曜は学校で、週末はホームステイ先の人たちと過ごすんだって」
「へぇ~」
ローウェル先輩に聞いたんだけど……なんともまあご苦労なこって。そもそもどこにも連れていくことなんてできねえじゃねえか。
「注意事項とか聞かれていると思うけど一応言っとくけど、買い物するときはぼったくられないように気を付けて。あとは……ナンパしてくるヤツとか、ないとは思うけどギャングの抗争だな」
「ギャングの抗争って……それってよくあるの?」
「最近は無いようなんですが、何年か前あったようなので一応」
そのあたりからどんどん沈静化していったからね。
☆
その後30分ぐらいで家に着いた。懐かしく感じる。やっぱり愛着ってのはあるのかもしれない。
「じゃあ荷物は持つんで」
「悪いわね」
「いいですよ。部屋に案内します」
荷物を持って2階に上がる。家は診療所の隣に建っている。と言っても感染病とかも考えて20mくらい離れているけど。
「家は結構広いのね」
「それなりには広いですよ。その分部屋は少ないですけど。空いているのは……この部屋ですね。この部屋でアリシアと過ごしてください。ベッドとかの家具もあるので」
「運んでくれてありがとうね」
「そんなことでしたらある程度はやりますよ」
さすがに全部やるほどのお人よしではないからな。
「長旅だったんで今日はしっかり休んでくださいね」
「おーい光輝!電話だ」
「じゃあ呼ばれてるんでいってきます」
階段を下りてリビングに向かう。そこには親父がいて、アリシアがいた。
「アリシア、上に荷物運んだから見て来い」
「うん、わかった」
アリシアが2階に上がったのを確認して親父に話しかける。
「で、誰から電話なの?」
「ウェカピポからだ。お前が帰ってきたことをさっき知ったらしくて電話をかけてきた。内容は知らん」
ウェカピポさん。俺のレッキングボールを扱いを教えてくれた師匠のようなものだ。昔、妹の離婚騒動で一度イタリアから出て行ったんだけど、その後政権が変わったことからイタリア政府から戻ってくるように言われて戻ってきた人。(妹は無事再婚)
俺はおじいちゃんのコネで護衛官の訓練を受けさせられたけど、問題児には問題児というハンムラビ法典的な思考でウェカピポさんが割り当てられた。いろいろ尊敬できる人だ。
「もしもし、光輝です」
《光輝か。帰ってきたんだってな。学校はどうだ?》
「結構楽しいですよ。友人とバカやったりとかで」
《そいつはよかった。で、
切り替え早いよ!そんな近況報告する必要あったの?!
「そ…それは明日からの話ですよね?」
《そうだ。最近女性の失踪事件の聞き込みなんだがな》
「それって別に俺たちがやらなくてもいいんじゃ……?」
ただの失踪事件なら、わざわざ帰ってきた俺じゃなくてほかの人たちで充分いい気がする。
《調べたら結果なんだけどな。『吸血鬼』が関係しているかもしれないんだ》
「……それって本当ですか?」
吸血鬼の可能性があるなら俺が出てくるのもしょうがないな。吸血鬼の弱点は太陽の光か波紋。そしてその波紋をイタリア政府内で習得しているのは俺だけだからな。
《本当だ。正式な任務は明日受領される》
「了解しました。明日向かいます」
TO BE CONTINUED...
光輝…明日、ウェカピポさんとコンビを組んで聞き込み開始。吸血鬼じゃなかったらいいな。
アリサ&アリシア…ウキウキ♪
光輝「あ~……ホームステイ中は俺が簡単なイタリア語の問題を出すからな」
ロー「わかったわ」
アリ「うん」
光輝「じゃあ道に迷ったときになんて言えばいいんだ?」
アリ「……」
ロー「Dirai il modo?(道を教えてくれませんか?)」
光輝「そうですね。大体の人はそう言えば教えてくれるはずなので覚えていてください。まあはぐれなければいいだけなんですけどね」
おかしい…長くするっていったはずなのにさらに短くなった気がする………。