デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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海&おつかい

SAOにおいて『趣味スキル』と纏めて呼ばれるスキルがある。料理スキルもその一つであり、趣味スキルを鍛えている人はほとんどいない。

 

料理スキルの他に代表的なのは『釣り』スキルだ。これは水中にいる生物を文字通り釣りあげるスキルだ。但し釣りあげられるのは食材、モンスターを問わないのが難点ではあるが、レアモンスター、レア食材を釣りあげることもある。

 

メイはよくよくこの釣りスキルを取りたいものではあったが、スキルスロットが全て埋まっていたため、とることを諦めたものの、未練たらたらで目の前の海を眺めていた。

 

現在メイがいるのが13層。海をモチーフにした階層であり、47層と同様に観光スポットみたいなエリアだ。そのため多くの人で賑わっており、チラホラとカップルらしい二人組も見れる。

 

今日はその浜辺の掘っ立て小屋で簡易式海の家を経営しているメイであった。

 

 「……暑い。」

 

どういうわけかこのエリアは他のエリアとは異なり、季節関係なく常に暑い。目の前に並んでる多くの客の中に混ざっているカップルもその暑さ(熱さ)を助けており、鉄板で焼いてる焼きそばの煙の3段コンボで暑さは最高潮だ。

 

 「おねーさん焼きそばくださーい」

 「カレーライスくださーい」

 「かき氷くださーい」

 「一緒に遊ばなーい?」

 「オムそばくださーい」

 

 「ナンパはお断りでーす。」

 

ゆるく、そして真面目に客を捌いていき、料理を提供していくメイ。環境が変わろうが慣れたその動作には無駄がなかった。

 

いつもと違うことと言えば常に忙しいことだ。いつもなら昼食、夕食の時間帯が主に忙しかったが、今は常に忙しい。かき氷やドリンクなどもメニューにあるため、軽食、嗜好品として求められているからだ。

 

メイが最初に予想していたよりも客足は伸び、在庫もほとんど尽きかけており、そろそろ後片付けに入ろうと思っていると、知っている顔が見えた。

 

「あっ!メイさんじゃないですか。」

「キュイ!」

 

「おー。シリカちゃん。久しぶりやなぁ。」

 

やって来たのはシリカだった。肩にはいつものようにフェザーリドラが乗っており、その機嫌は心なしかよく見える。

 

「こんなとこで何してんの?散歩か?」

 

「まぁそんなところです。ピナもここが大好きでたまに来るんです。」

 

シリカの手には魚系の食材が握られており、それをピナが食べている。ピナのおやつに魚モンスターを狩りにきたということだった。

 

「なぁシリカちゃん。ちょっと一ついい?」

 

「あ、はい。なんでしょうか?」

 

メイは少し申し訳なさそうにしてシリカにメッセージを飛ばす。

 

「悪いんやけど…そこに載ってるもの全部買ってきてくれへん?」

 

メッセージを見たシリカは顔を青くする。

 

「これ…全部ですか…?」

 

「ホントにごめん!でもいいかな?お礼もするから!」

 

シリカはこれを了承し、急いで街の方に向かった。しかし買ってきたものの、まだまだ客足は伸び、もう一度追加で買いに行くことになったが、重量+暑さでシリカがバテたため、転移結晶まで使った。

 

「は〜終わった〜。ありがとうなシリカちゃん」

 

「メイさんって…いつも…こんなこと…してたんですね」

 

シリカは息を切らしながら言う。今までにない体験でつかれたが、こんな激務を難なくこなすメイを見上げた。

 

 「最初の約束通りお礼したいんやけど…」

 

 「いや、別にいいですよ」

 

 「いいからいいから。」

 

半ば強引ではあるがメイはお礼をすることにし、シリカと共に50層のメイのホームに向かった。

 

 「今から晩御飯なんやけど食べてって。とは言っても今日の一部なんだけどな。」

 

 「えぇ!?いいんですか?メイさんの料理すごく美味しいので嬉しいです。」

 

 「焼きそば作るから待っててな〜」

 

玉ねぎはくし切りにし、人参とキャベツは細切りにしていく。豚バラ肉を一口大に切る。

 

ホットプレートを熱し、豚バラ肉を塩コショウで炒める。

 

火が通ってきたら、玉ねぎ、人参、キャベツをいれ更に炒める。

 

野菜がしんなりしてきたら土手状に広げる。この真ん中にもやしを入れる。

 

具の山の上に麺をおき、蒸し焼きにしていく。

 

上からソースを回しかけ、全体をよく混ぜ合わせる。

 

最後にトッピングを乗せればできあがり。

 

 「シリカちゃーん。焼きそばできたよ〜。」

 

 「ありがとうございます!」

 

二人は向かいあって焼きそばをすすり始める。

 

 「やっぱりメイさんの料理は美味しいです。ソースがしっかり絡んでいて、野菜もシャキシャキしていて。」

 

 「気に入ってくれたなら嬉しいなぁ。」

 

二人は向かいあって笑顔で食べ続ける。

 

 「そう言えばSAO内には日本食が少ないのはなんでなんでかね?」

 

 「周りの風景が中世ヨーロッパみたいなイメージやからかなあ…。喫茶店やってる人もメニュー内には日本食ないし…。」

 

SAO内は中世ヨーロッパのような風景がほとんどであり、店を構えてる人はほとんどが洋風である。そんな中週に一度とはいえ、場違い感溢れる和風の店があるのは景観のぶち壊しでもある。

 

 「どんな風景でも結局は美味しく食べれたらええねん。美味しく食べることが食事の基本やからな。」

 

ごちそうさまと言い、後片付けに入る二人。ふと思い出したようにメイはシリカに尋ねる。

 

 「そういやシリカちゃんって短剣使いやんな?」

 

 「はい。そうです。」

 

 「OK。ちょっと待って。」

 

メイはウインドウを開き、少し操作した。

 

 「それあげるよ。」

 

シリカの元に来たのは以前メイが使っていた短剣だった。シリカが断ろうとも押し付けられ、受け取った。

 

 「なん…ですか…これ…」 

 

短剣のステータスを見てシリカは驚いた。今までシリカが手にしてきた短剣の性能を大きく上回っていたからだ。前線のものには及ばないものの、中層なら大体オーバーキルできるレベルだ。

 

 「こんなのどこで手に入れたんですか?」

 

 「ソロ専用特殊クエストのボスドロップ」

 

さらりとメイは答えた。新しい武器が手に入り、レア武器を腐らせるのはもったいないと思い、メイはシリカに短剣を渡した。

 

 「メイさんって何者なんですか?」 

 

この質問にメイは全力で逃げた。タダの料理店の経営者なのにその答えではシリカが納得しないと踏んだからだ。しかしシリカもメイを逃がすことはなく、結局メイは自分のステータスを全て吐いた。とても普通のステータスだったのでシリカはガッカリした。

 

 




オリ主の使う短剣の名前は8/7まで受け付けています

誤字修正しました。

オリ主とより仲良く出来そうな方

  • ロニエ
  • ティーゼ

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