デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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最近慣れ始めたのか文字数が増えました。今回は4300字です。

募集していた武器の名前はスヌーピーさんの《ハーネット・メイデン》に決まりました。
他にも案を下さった人達もありがとうございました!


屋台獲得クエスト&共闘

「嘘やろ…今日が自動返却日やったんか…」

 

いつものように屋台を整備しようと思っていたら屋台がなかった。屋台の消滅条件の一つの自動返却である。

 

特殊アイテム《屋台》は特殊クエストの報酬である。しかし普通とは異なり、報酬としてレンタルができる品だ。なので期限が来れば自動的に消滅してしまう。消えてしまったなら仕方ないと割り切り、メイはクエストを受けるために身支度を始めた。

 

屋台獲得クエストは厄介なものである。報酬に《屋台レンタルの権利》を出しているクエストは今は2つしか見つかっておらず、その数しか屋台がないため早い者勝ちだ。更に2度目、3度目に受けようとしてもクエスト提示のNPCが動き回るので非常に見つかりづらい。とにかくNPCから情報を集めてたどり着くしかないのである。

 

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メイは一日中歩き回り情報をかき集めた。あつめた情報をまとめるとこうである

・10日前にアルゲードで見かけた

・8日前にグランザムの片隅で見かけた。田舎にいくらしい

・4日前にダナクを全力疾走していた

・2日前にセルムブルクを出た。68層に向かうとのこと

・昨日68層の宿で見た。目的を果たすまで出ない

・今までの屋台より設備が充実してるとのこと

 

NPCはどんどんとアインクラッドを登っているようだ。今逃すとまた情報の集め直しになるのでメイは68層に向かう。その上今までの屋台より設備が充実してるので、獲りにに行くしかない。

 

メイは68層の宿に到着しクエストマークのあるNPCを探した。頭上に?マークのあるNPCは一人しかいなかったので簡単に見つかった。

 

「何かお困りのようですけどどうしたんですか?」

 

「旅のお方。よろしければ相談に乗って頂けますか?」

 

話を要約すると、68層の森を抜けた先の平原にあるアイテムを入手したいのだが、そこを縄張りにしてるボスを倒さないといけない。そいつを倒してくれとのことだ。

 

「そのアイテムを譲ってくれたらこの屋台を()()()()()()

 

報酬は今までと違いレンタルではなく、入手ということにメイは驚いた。とても美味しい話なのでメイはクエストを受けることにした。

 

しかしこのクエストにはメイはレベル不足という重要な問題があった。《〇〇を〜体倒せ》や《ネペントから胚珠を持ってきて》等と違いボス討伐である。一人では勝てそうにもないので同行者を探すことにした。

 

翌日、メイはクエストの同行者募集の看板を店の中に立てた。しかしこの店に来る人はほとんど中層組なので前線のボスにビビるため立候補はいない。

 

待てども待てども同行者は来ることなく、自分のレべリングを進めた方が早いと思い始め、ため息をついた時だった。

 

チリンチリン

 

「この店に来るのも久しぶりだなぁ。」

「今日はお頭の奢りだー!」

「食うぞー!」

「なんでお前らが決めてるんだよ!」

 

見覚えのある侍集団がやってきた。

 

「いらっしゃいませー。お久しぶりです。」

 

「お久しぶりです!メイさん!」

「「「「「お久しぶりです!」」」」」

 

店に来たのはギルド《風林火山》だ。その面々はテーブルに着き料理を注文した。届いた料理を食べていると、前にはなかった看板が目につき、内容を確かめた。

 

「メイさん。あのクエスト同行者募集ってなんのことですか?」

 

「68層のフィールドボスを倒すクエストです。一人では厳しいので手伝ってくれる人を探そうと思いまして」

 

ほとんど最前線のフィールドボスをソロで倒すことなんて確かに無理なことだ。現状それができそうなのはユニークスキル持ちのヒースクリフぐらいだろう。攻略組のプレイヤーでも難しい。少人数で挑むのではなくレイドを組むのが一番確実だろう。

 

クラインはレイドを組むことを提案したが「一番の情報屋がまだ抑えていない情報なので出回るより先に入手したい」の理由で断られた。

 

「そういえば…風林火山って攻略組ですよね?」

 

「よくフロア攻略には参加させていただいてます。」

 

これを聞いたメイは表情を明るくした。風林火山のプレイヤー達がいるテーブル前に移動をして、息を大きく吸った。

 

「お願いします!クエストを手伝ってください!」

 

クラインの思考は一瞬で塗り変わった。前線のフィールドボスに少人数で挑むことは最善ではない。故に参加しようと気はあまりなかった。しかし女性に頼まれたのだ。ここで断るものなら男が廃る。

 

「わかりました!手伝いましょう!」

 

「ありがとうございます!」

 

こうして68層フィールドボス討伐パーティーが出来上がった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、クラインたち風林火山は約束時間15分前に転移門前についた。まだメイが到着していないので各自はアイテムの確認を始めた。

 

その5分後に転移門が光を放ち始めた。

 

「すみません。遅くなりました。」

 

現れたのはメイだ。しかしいつものエプロン姿と違い今日は若草色の軽金属の鎧にロングブーツ、首には黄色のマフラーの戦闘用の装備だった。

 

「まだ時間ではないので全然大丈夫ですよ」

 

「ありがとうございます。それでは行きましょうか」

 

こうして一行は68層に向かった。道中は特に問題もなくサクサクと進み、森を抜け例の平原に到着した。

 

 「雑魚モンスターが一匹もいねぇな。」

 

 「そろそろ来ますよ。準備お願いします。」

 

遠くからズシンズシンと大きい足音が響く。その音が徐々に近づいてきた。目の前に不自然にある洞窟の中から聞こえる。

 

 「おいおい…これがボスかよ…」

 

 「でかすぎやろ…。そのせいでよっぽどキモいで」

 

現れたのは全長4メートルほどの巨大な白い蜘蛛だ。脚は鎌のようになっているためとても鋭い。背中にはトサカのようなものもあり、色は毒々しい。ネームは『ポイズン・スパイダー』。体力ゲージは3本だ。

 

 「あんなもん絶対に状態異常系の攻撃ありますよ」

 

 「だろうな。おいテメーら!各種結晶はすぐ使えるようにしとけよ!」

 

 「「「「「了解!」」」」」

 

風林火山&メイとフィールドボスの戦闘が始まった。

 

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「ぐっ…。そろそろ毒が回り始めてきました!」

「大丈夫かよ!?《ヒール》!」

 

一人が毒にやられてしまっても、もう一人の決めた相方が治す。この戦い方を始めて早数十分。ボスのゲージは一本と4分の3は削れた。しかし風林火山の4人が回復結晶が底をつき、転移結晶で離脱していた。

 

「あと回復結晶はいくら残ってますか?私は1個です!」

 

「俺も1個です!」

 

「俺はもうないです!」

 

かなりの量の回復結晶を用意していたが、底が見え始めて3人は内心焦り出す。毒蜘蛛は攻撃パターンの半分が状態異常攻撃であり、どういうAIをしているのか使用頻度が高い。更には状態異常特攻の攻撃持ちらしく、攻略組でも体力が6割削られる威力だ。

 

毒蜘蛛は口から糸を吐き、地面に固定する。その状態でジャンプをして糸の方を戻した。

 

「翻弄が来ます!」

 

毒蜘蛛は地面に足が着く前に、クラインの真後ろに次の糸を吐く。そうしてもう一度糸の方を戻して、体当たりをしにきた。しかし何度もこのパターンを見ているため、糸が着弾した瞬間にクラインは全力で横に避けた。毒蜘蛛は着地する前にメイにも同じことをしたが、メイも避けた。

 

蜘蛛は着地したが高い位置からなので硬直した。この隙を逃さずクライン達は刀5連撃ソードスキル《鷲羽》、メイは短剣3連撃ソードスキル《シャドウ・ステッチ》を放った。

 

シャドウ・ステッチは麻痺付与効果のある技だ。9回目の攻撃でついにポイズン・スパイダーは大きな体を痙攣し始めた。

 

「やれやれやれやれやれ!」

 

「毒蜘蛛が麻痺にやられる気分はどうや!?」

 

毒蜘蛛が痺れている間にそれぞれは攻撃回数の多いスキルをどんどん当てていく。10秒間痺れ続け、攻撃を浴び続けた毒蜘蛛の体力は5分の1を切り、レッドゾーンに入った。

 

痺れが解けた毒蜘蛛は一度吠えた。その瞬間体の毒々しさは更に増した。

 

「攻撃パターンが変わるぞ!」

 

「「了解!」」

 

直後、毒蜘蛛から大量の糸が口から吐き出され、3人は拘束された。動けない3人に蜘蛛は毒を浴びせ、脚の鎌を振り下ろした。

 

クライン達の体力はイエローゾーンになり、メイはレッドゾーンになった。残り2個の回復結晶はクエストを受けてるのがメイだけなので一つはメイが使い、もう一つはクラインが使った。ポーションでは回復が追いつかないため、もう一人は転移結晶で離脱した。

 

「これ大分つらいですね。あとは私とクラインさんだけですし」

 

「こんな苦しい状況でも諦めないで勝つのが男ってもんよ!」

 

クラインは自分の刀を、メイは愛刀の《ハーネット・メイデン》を毒蜘蛛にむけて構え直す。毒蜘蛛が吠えた瞬間にクラインは左に、メイは右に走る。拘束攻撃を避け、その隙に二人は攻撃を行った。

 

毒蜘蛛の体力が1割を切り、メイは勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、毒蜘蛛の鎌がメイに当たり麻痺状態になった。

 

毒蜘蛛はメイの方に近づき、特攻攻撃をするために鎌を大きく振り上げる。

 

「い、嫌だ…。嫌だ嫌だ!死にたくなんかない!」

 

メイの体力はグリーンゾーンとはいえギリギリのグリーンだ。あれを喰らえばどうなるかすぐに理解できた。目の前の死に怯えるのは当然のことだ。

 

ついにポイズン・スパイダーの鎌の攻撃の準備は終わりメイに振り下ろした。メイは目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィン

 

響いたのは切り裂く音ではなく金属音だった。メイは恐る恐る目を開けると、目の前には鎌を刀で食い止めるクラインの姿があった。

 

「てめぇ…覚悟はできてるんだろうな!」

 

つば迫り合いの状態からクラインは鎌を弾き返し、よろつき腹が丸見えの毒蜘蛛に刀ソードスキル奥義《散華》をくり出す。全ての攻撃がヒットし、全ての体力を削り切った。

 

麻痺が抜け切るまでクラインはメイを待ち、ようやく立ち上がったメイに言葉をかける

 

「大丈夫でしたか!?メイさん!」

 

「あぅ……えぅ……。だ、たすか、り、まし、たぁ」

 

メイは恐怖やら衝撃やらで呂律が回ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっとメイが落ち着き、クエスト報酬を受け取ってからアルゲードのメイの家まで二人は戻った。

 

「みなさん。クエストのご協力ありがとうございました!どうぞいっぱい食べてください!乾杯!」

 

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

クエスト攻略のお祝いとして焼肉を食べ始める一同。飲み物もありとにかく食べまくる。

 

「かぁ〜うめぇ〜」

「塩が効いてて身にしみる!」

「このタレも美味いぞ!」

 

焼肉を食べている風林火山メンバーを後にメイはクラインの元に駆け寄り、小声で話しかける

 

「あの…クラインさん…。最後は庇ってくれてありがとうございました」

 

「別に気にすることないですよ。男が女性を守るなんて当然のことですし」

 

「でもクラインさんがいなきゃ死んでましたし…。本当にありがとうございました!」

 

メイは追加の肉を持ってくると全員に伝え、厨房に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイの顔が耳まで真っ赤なのには誰も気づくことがなかった。

 

 

 

 

 




次回から74層編に突入します。

感想&評価お待ちしてます。

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