街で既に公表されている分のマッピングデータを受け取り、74層の迷宮区に向かうメイ。毒蜘蛛戦から店を休み続け、死なないためにレベリングに没頭していたメイは以前よりレベリングのノウハウを深く理解し、安全に効率的にレベリングをしていた。
だがレベリングを場所を70層を超えたあたりで雑魚モンスターにもイレギュラー要素が入り、一人では苦しいとこもあるものの、ポーションは大量にあるので心配は少ない。
「残りのポーションは21本。帰りの分もいるから5本になったから帰ろうかな。」
目の前に現れたモンスターを倒し、アイテムドロップや経験値を確認していると後ろから足音が聞こえた。振り返るといつしかお世話になった侍集団がいた。
「皆さーん!こんにちはー!」
「「「「「「こんにちは!」」」」」」
メイは毒蜘蛛戦で手伝ってもらったギルド《風林火山》と合流した。風林火山はマッピングを進めるのとレベリングの両方をするためにダンジョンに来ているようだ。
「メイさんはここで何をしているんですか?」
「ただ普通にレベリングですよ。以前のような死に目にはもう合いたくありませんので。」
「でも最近はmobも強いんでメイさんも一緒にレベリングしませんか?」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
クラインの誘いを受けメイは風林火山と一緒にレベリングをすることにした。メイのテンションは少し上がり気味だった。
一行は迷宮区の奥の入っていきながらレベリングを続ける。奥にいくほど雑魚モンスターも気持ち強くなってる気もしないことはないが、複数人で戦うのでメイにとって戦闘は数倍も楽になっていた。
迷宮区の奥深くまでやってくると、そこには安全区域があった。安全区域には既に人がいて服装を確認してみると、メイが昨日見送ったキリトとアスナだった。一緒に行動しているということはある程度上手くいったのだろう。
「おー。キリトじゃねぇか。」
「クライン。まだ生きてたのか。今日はメイも一緒なんだな。」
「死にたくないからレベリング中!」
メイはサムズアップを決めた。座っている二人は立ち上がった。キリトを通しアスナとクラインの自己紹介が終わり、クラインはキリトとアスナが二人でいることを妬んだ。そのクライン達の流れをメイは離れたところで少し不機嫌になりながら見ていた。
安全区域で話していると後ろから集団がこちらに来るのが見えてきた。
「あれは…軍のやつらか?」
黒目の青の鎧を身に着けた軍のパーティーが安全区域にやってきた。先頭の人以外は全員息を切らし、誰の目にみても疲れきっていた。
「全員!休め!」
リーダーらしき男が号令をかけると軍のプレイヤーは全員崩れ落ちるように座り込んだ。休むことなく動き続けているようなので当たり前だとは思う。メイも普段は休みが少ないが、軍のように偶に動くわけでもなく、毎日やっているので多少慣れはあるので大丈夫だった。
「私は軍のコーバッツ中佐だ。」
「キリト。ソロだ。」
「kobの副団長のアスナです。」
「クラインだ。」
「またお好み焼き食べに来てくださいね。」
「「「「「お久しぶりです!」」」」」
「ヒッ」
軍は定期的にレストランに来ているので、メイは重役の顔は大体覚えている。コーバッツは最初の軍の客だったので尚更だ。
「君たちはこの先のマッピングはしているのかね?」
「ボス部屋までのマッピングは終わったよ。」
「うむ。ではそのデータを我々に提供していただきたい。」
コーバッツはマッピングデータを要求した。周りがどよめく中、メイは今までマッピングをしたことが一度もなく、その苦労を知らない。今日クライン達と出会った場所や毒蜘蛛の平原も全て公開されていた情報だ。命を張って攻略組が頑張っているのは知っているが、彼らにもそれ相応の報酬があったので、タタで要求しているコーバッツに「大丈夫か?」と思っていた。
「マップデータを提供しろだと!?マッピングの苦労を知っているのかよ!?」
クラインの言い分は最もだ。
「我々は一般プレイヤーのために闘っているのだ。諸君が協力するのは当然のことである。」
「てめぇ…」
噂なら軍は25層の攻略で壊滅的ダメージを受けたらしく、それ以来攻略に参加することが一切なかったらしい。それが今になって出て「協力しろ」は都合のよすぎることだ。
「いいんだよクライン。どうせ街に戻ったら公開するデータなんだ。」
人が良すぎるとクラインに言われたがキリトはウインドウを操作し、コーバッツにマップデータを渡した。
「協力感謝する。」
コーバッツの言葉は特に気持ちのこもったものではなく、社交辞令みたいなものであった。
「ボスにちょっかいを出すつもりならやめといた方がいいぜ。あれはあんた達でどうにかなるような相手じゃない。それに仲間達も疲労しているじゃないか。」
「それを決めるのは私だ。それに私の部下たちはこれ位で疲れるような者はいない!さっさと立て!」
コーバッツは部下達を無理やり立たせてから奥に進んでいった。
「大丈夫かよ。あいつら。」
全員は先に進んでいった軍を心配していた。だがあの人数で挑みに行くなら偵察目的だと割り切り、安全区域で休憩を続けることにした。キリトとアスナの仲良さげな雰囲気をみてクラインはアスナに話しかける。
「あー、そのー、アスナさん。口下手でバカタレではありますが、キリトのことをよろしく頼みます。」
「はい!任されました!」
クラインの頼みにとてもいい笑顔で応えるアスナ。あんなに明るい顔ならキリトのことがどれだけ好きかよくわかる。御役御免の日は近いなとメイは思った。
キリトの提案で軍の様子を一応見にいこうということになり、ボス部屋に向かって歩いていく。
「ーあぁぁぁぁ…!」
奥から確かに悲鳴が聞こえた。それを聞いた全員は一斉に走り出す。やがてボス部屋が見えたが、大きな門は既に空いており中の様子が見える。
中は悲惨な状況だった。ボスが軍を相手に蹂躙していた。最初に見たときよりも二人足りない。脱出したのだろうか。
「早く転移結晶を使え!」
キリトが転移結晶を使うように指示したが、その答えは絶望ものだった。
「駄目だ!転移結晶が使えない」
二人足りない。転移結晶が使えない。これだけの情報だけで二人の人間が死んだのは分かりやすかった。
「嘘だ…」
メイが言葉をこぼす。つい先日に来てくれた客が死んだ。その事実はショックだった。これ以上死者を出すべきではない。気がついたときにメイは叫んでいた。
「逃げてください!死んでしまいます!」
「何を言うか!我々に撤退の二文字はない!戦え!戦うんだ!」
「逃げてくださいって!」
軍は手を休めることなく攻撃を続けたが、まともに攻撃も当たることはなかった。ボス《グリーム・アイズ》のたった一息で崩され、一人のプレイヤーが大剣に掬い上げられ、門の前に放り出された。
掬い上げられたのはコーバッツだった。彼の体力はドンドンと削られていきレッドゾーンで止まることなくあっという間に0になった。
「あ、ありえない」
コーバッツは涙を浮かべ、たった一言呟くとポリゴン片になり爆散した。
すごく中途半端に終わってしまいました。
作者的に3000字も書けばエネルギー切れを起こすので2回に分けます。ごめんなさい。
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ