「というわけで私達は。」
「結婚したんだ。」
「お前らは過程という概念をどこに置いてきたんや?」
キリト初訓練の翌日に、メイはいきなりバカップルに変更された二人に結婚の報告をされた。
SAOのシステムの一つに結婚がある。これは二人のプレイヤーがシステム的に結婚することにより、パラメータとストレージを共有するものだ。グリムロックとグリセルダもしていたものである。
「メイさんには以前に相談に乗ってもらったことがあるので真っ先に報告することにしたんです。」
「まぁとりあえずはおめでとう。よかったな二人とも。」
この後メイは二人が結婚するまでの過程を聞いた。クラディール絡みのことだったがメイは特に二人に反応を見せなかった。なぜなら、既にヒースクリフにより聞かされているので、事情を知っているからだ。
「それは色々と大変やったなぁ。二人はお互いのことが大事なんやろ?」
「「もちろん。」」
「じゃあ、互いに生き残るように無茶はできんくなるな。前々から二人とも危なっかしいところがあったで。」
「74層のボスに一緒に突撃した人に言われたくはないです。」
痛いところを突かれ、メイはしどろもどろになる。危ないことをした人に危ないことをするななど完全にブーメランだ。
「まぁ、何度も言うようやけどホンマにおめでとう。そういやこれからどうするん?」
結婚話のインパクトが強いので意識されないが、この二人はモンスターではなくプレイヤーに殺されかけるというかなり危ない目にあっている。その上そのプレイヤーは大きいギルドに潜伏していたレッドプレイヤーだ。事後処理はヒースクリフもといGMがやるのだろうが、被害者の二人は別だ。今まで通りに普通に活動できるはずもないだろう。
だがその辺のことの対応もするのがヒースクリフだ。この二人には一時脱退の許可を出したようだ。
「22層に綺麗なログハウスを見つけんだ。俺とアスナはそこでしばらく過ごすことにする。」
「団長からの許可もいただけたことだしね。」
「ということは戦線離脱か。」
この2人が前線を離脱することは痛い。しかし本人の気持ち的にはそれが一番いいのだ。またマッピングも大方進んでいるようなので特に問題はなさそうだ。
だが2人はヒースクリフに「すぐにまた戻ってくるだろう」と言われたらしい。だが今すぐではないようなのでお呼びがかかるまで休みといった感じだ。
「それでは失礼しました。」
「また来るよ。」
「ゆっくり休みやー。」
2人は挨拶を済ませ店を出た。2人が出て行くとメイはニヤついた。
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数日後、22層にあるログハウスの呼鈴が鳴る。
「はーい。」
アスナがドアを開けるとメイがいた。
「あ、こんにちは。」
「ログハウス見に来たんやけどいい?」
「いいですよ。」
メイはアスナに入れてもらいソファに座る。森の中にある丸太製の家は心を落ち着かせた。
「いいところやなー。」
「綺麗なところですよ。戦いから離れてみるとこういうのもいいかなって思うほどに。」
アスナが紅茶を出し、メイがクッキーを出す。2人で談笑していると、匂いにつられたキリトが二階から降りて来た。
「なんだ、来てたのかメイ。」
「お邪魔してまーす。」
キリトとアスナの顔を見るとメイは思い出したかのようにアスナの方へ向かう。
「アスナ。ちょっと話があるんやけどええか?」
「いいですけど…。」
「キリト。二階借りてもええか?」
「あ、あぁ。」
アスナとメイは二階に行き、その間キリトは適当にお茶やクッキーなどで時間を潰すことにした。
しかし30分経っても2人は降りて来ず、キリトはそわそわし始める。男の自分が追い出されたので、聞くべきではないのだがどうしても気になってしまう。
更に10分経ってやっと2人は降りて来た。その時のメイの顔は笑顔で、アスナはキリトに向けて少し申し訳なさそうに照れている顔だった。
「話は終わったのか?」
メイは頷くとウインドウを操作し始める。長い時間の操作が終わるとキリトの方を向く。
「ちょっと来てもらいたいところがあるんやけどええか?」
「い、いいけど。」
相変わらずメイから不敵な笑みは消えず、不気味だった。
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三人が来たのは57層、つまり圏内事件があった場所だ。街の中にある一際大きな教会に向かい歩いている。
キリトとアスナはメイに先導されて教会の裏口から入った。
「なんで裏口からなんだ?」
「ええからええから。」
裏口から教会に入り、キリトとアスナは部屋に入れられた。メイは部屋の前で待つようだ。
部屋には飾り気がなかった。テーブル一つとカーテンが一枚ある程度であり、テーブルの上にはプレゼントボックスがあるだけだった。その前には紙が置いてあり、「開けたら着ろ」とだけ書いてあった。
中を開けると装備が二つ入っていた。とりあえずその装備を確認するためにウインドウを操作する。
『純白のドレス』
『純白のタキシード』
これらを確認するとキリトはこれから何が起こるか察しがついた。部屋の前にいるはずのメイに事情を聞こうとするも、既にそこにはおらず、振り返ればもうドレス、もといウェディングドレスを着ているアスナだけがいた。
「ど、どうかな?」
キリトは言葉を失った。目の前にいる少女のあまりの可憐さに何も言葉が出なかった。何の躊躇いもなく着るということはやはりアスナもやりたいのだなと理解した。
キリトも箱に入っていた装備を着る。いつもの黒々しさはどこかへ消えてしまったが、似合わない訳ではなかった。タキシード姿を見たアスナはキリトを褒め、またキリトもアスナを褒める。ツッコミ不在の褒めちぎりあいになった。
メイが戻ってき、キリトは細かく事情を聞くことにした。
「この服を用意したってことは今から結婚式でもやるのか?」
「まぁゲーム世界でも知り合いが結婚したんやから祝わんとなって思ってな。ちゃんとした手順もあまり知らんから簡易的なもんになってまうけど。」
「それでも嬉しい。ありがとうメイさん。」
アスナは簡易結婚式をやることを事前に知らされていた。やはり女の子にとってこういうものに憧れがあるのだ。少し涙を流していた。
「じゃあ始めるで。」
「あぁ。」「はい。」
メイはスピーカーを取り出し、スイッチを入れる。
「えっ?なんでスピー「新郎新婦の入場です!」え?」
メイが扉を勢いよく開けると中には沢山の人がいた。それもキリト達がよく知ってる顔ばかりだ。
「おめでとうキリト。これでお前も既婚者だな。」
「お前だけずるいぞキリトォォォ!」
「アスナを泣かせたら許さないわよ!」
席が特に近いエギル、クライン、リズベットは思い思いに叫ぶ。更に奥には黄金林檎やkobでアスナと特に仲のいいプレイヤー達がいた。
聞いていた話と違う。キリトとアスナは叫んだ。
「おいメイ!簡易的じゃないのかよ!?」
「こんなに人がいるなんて聞いてませんよ!
」
「簡易的やけど誰も小規模なんて言ってないで。」
キリト達は肩を落とした。だがここで帰らせては流石にみんなに悪いと思い、続けることにした。
真ん中を歩いていけと言われ、二人は歩を進める。キリトには一部男から嫉妬の声が浴びせられたが気にせず進む。アスナには特にそのようなことはなかった。
奥まで進むとそこには神父服を着たヒースクリフが立っていた。
「なんであんたが神父をやってんだよ…」
「メイ君からの頼みでな。今回は私にも責任があるので引き受けたのだ。それでは続けるぞ。」
ヒースクリフはメモを取り出し、それを読み上げる。
「汝キリト。休めるときも、健やかなるときも、苦しい時も、HPがゼロになる時も、この者を愛すると誓いますか?」
「あぁ。」
「汝アスナ。(以下同文)」
「はい。誓います。」
ヒースクリフはメモをしまい、左手を挙げる。
「それでは誓いのキスを…」
「「無理だ!(です!)」」
「だろうな。」
会場からブーイングが聞こえる。ピュアな二人にとって流石にキスは酷だったかと、メモを用意したメイは笑う。
「それでは二人には共同作業に移ってもらう。」
ヒースクリフがメイに視線を向けると、メイはウインドウを操作し、ケーキを取り出す。そのケーキは大きさそれぞれの8ホールのケーキが縦に積まれ、3メートル程の大きさだった。
リズもウインドウを操作し始め、出てきたのはグリームアイズが使っていたのとほぼ同レベルの大きさの大剣だった。
「ケーキ入刀や。」
「流石にデカすぎないか?」
「この剣二人で持てるんですか?」
「軽めの素材で作ってるから二人の筋力値で多分ギリね。」
キリトとアスナは二人で剣を握った。本当に筋力値がギリギリだったのか少し重く感じる。そのまま二人はケーキに剣を振り下ろて切った。
周りから歓声が上がり、二人は更にケーキを刻んでいった。人数分切り、みんなで食べることにした。
この世界でも仲間に恵まれたと改めて実感したキリトとアスナであった。
最終回っぽい終わり方に見えないことはないですが、まだまだ続きます。
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ