ユイという目の前の大問題が解決され、メイは気持ちが落ち着きいつも通りに店を開ける。
だがユイはキリトのナーヴギアに入ったらしく、またいつ出てくるかも分からない。出て来た時にはキリト達には会わないようにするしかない。それでも1カ月程は出てこれない筈だ。その間にどうにかするしかない。
チリンチリン
「いらっしゃいませー」
「お久しぶりです。メイさん。」
「先日はお世話になりました。」
入って来たのは軍の鎧を身につけた二人の男女だ。男性の方は黒い髪をオールバックにし、長いもみ上げが印象的だ。もう一人の女性の方はメイ同様に長い銀髪をポニーテールに纏め、耳にはイヤリングが付いている。
「あ、ユリエールさんにシンカーさん。先日はどうも。」
シンカーとユリエールは先日のユイの時の関係者だ。シンカーはキバオウに嵌められ、黒鉄宮の地下のダンジョンに閉じ込められた。ユリエールはシンカーを助けようとしたものの、ダンジョンのレベル的にきつく、その場にいたキリトとアスナに助けを求め、シンカーを助けに行った。
いざシンカーの場所に辿り着いたものの、そこには90層のボス級のモンスターが居り、その上そのモンスターは不死属性。絶望的な状況になったが、キリト達に同行していたユイが一刀両断。その正体はメンタルケア用のカウセリングのAIだった。これがユイ事件である。
だがメイが関わったのはこの後だ。今回のシンカーを嵌めたこと、以前の74層の強攻策をメイにより報告され、ついにキバオウは軍を追放された。キバオウは逃亡を計り、流石に放任主義のシンカーもこれを見過ごすことはできなかった。ユリエールはメイにキバオウの捜索の依頼を出し、軍から逃げて2日目でキバオウは見つかった。現在キバオウは黒鉄宮の牢屋だ。
「キバオウ捜索の件については本当にありがとうございました。メイさんがいなければまだキバオウは捕まっていないと思います。」
「もう解決したことなんでそこまで気にしなくて大丈夫ですよ。」
キバオウの逃亡は全力だった。彼は全てのフレンド登録を削除し、誰からもマーキングされてはいなかった。故に捜索は難航したがメイが加わった途端すぐに見つかった。
「キバオウは捕まったけど、これからシンカーさんは軍をどういう方針で進めるんですか?」
「今まで放置してたのが悪かったので、これからは僕が中心となっていくことになりました。」
シンカーが特に口を出すことがなかったので、キバオウ一派ができたため、今後それがないようにするつもりのようだ。ちなみにキバオウ一派の者たち、つまり先日に恐喝まがいのことをしていた連中もキバオウ同様に軍を追放されている。
それでも軍そのものについた印象は悪く、またキバオウ一派のような者が出ると恐れている人もいるため、信頼はまだない。だがシンカーとユリエールの人柄ならいずれ信用されるだろう。
「それで、今日ここに来たのはそういうことを言いに来ただけなんですか?」
「いやぁ…軍の立て直しの指針がやっと固まったところでちょっと休憩を挟みたくて。」
シンカーは頭を掻きながら言う。やはり人間なため電子世界内でも腹は減るため、休憩は必要だ。
シンカーの立て直した指針は最初の目的通り、全てのプレイヤーに平等に食料が行き渡るようにすることだ。だが攻略が進んでいるため、『全て』のプレイヤーに届けにいくというのには無理がある。なので範囲を絞り、一層のプレイヤーに行き渡るようにすることだ。
メイはシンカーの方針に賛成したため、エギルと同じように、売り上げの一部を一層に寄付することを心の中で決めた。
「それで、ご注文は?」
メイはシンカーとユリエールにメニュー表を渡す。二人はそれを受け取るとじっくりと見る。ユリエールは真っ先にケーキやパフェなどのスイーツ系のページを見ていた。やはりどれだけ凛としていてもユリエールも女性なのだ。甘いものには目がないのだろう。
「わ、私はチョコレートケーキで…」
「僕も同じものをお願いします。」
「少々お待ちを〜。」
ボウル内でチョコレートは湯煎にかけて、溶けたら生クリームを混ぜる。
チョコレートのボウルに卵黄ときび砂糖を入れて混ぜる。
冷凍した卵白を取り出し、グラニュー糖を二回に分けて入れ、高速で混ぜる。これでメレンゲの完成だ。
チョコレートにメレンゲとココアパウダーを交互に数回に分けて入れ、その都度混ぜていく。
型に入れ、表面を平らに慣らしたら、170度のオーブンで40分焼いていく。(システムによる時短)
焼きあがったら粗熱をとり、冷やす。(システム時短)
「お待たせしました。チョコレートケーキです。」
「やっぱり疲れには甘いものだね。」
「そうですね。シンカー。」
二人は出て来たチョコレートケーキを食べ始める。疲れた脳に糖分が染み渡り、優しい甘さに包まれる。
「やっぱりこの世界でも食事は大事なんだね。」
「人間の三大欲求の一つですからね。当然ですよ。」
食べている二人を見てそういえばと、メイはシンカーに話しかける。
「シンカーさん。ちょっとユリエールさんと話がしたいのですが…。」
「私と、ですか?」
二人から了承を貰い、メイはユリエールと奥に入る。
「あの、私に話とはなんでしょうか?」
「えっとな…
シンカーさんのこと好きなんやろ?」
「ブフッ!ゲホゲホ!」
ユリエールは盛大にむせた。いきなりそういうことを言われると流石に焦る。
「いきなりなんですか!?別に…そんなこと…。」
「顔真っ赤やで。前々からそうかなー?と思ってたんやけど当たりやった?」
ユリエールは手で顔を覆い、俯く。一度大きく深呼吸をしてメイに向き直る。
「えぇ…そうですよ…。悪いですか…。」
「やっぱりかやっぱりか。で?アタックはせぇへんの?」
「今はできませんよ。あんなにやる気になったシンカーは初めてですし。邪魔をする訳にもいきませんし…。って!なんで今こんな話になってるんですか!」
そう言うとユリエールは立ち上がりシンカーの元に戻った。だが少しの間、ユリエールはシンカーの顔をまともに見ることができなかった。
糖分多めクソ甘回
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ