「久々に暇やわー。」
今日はいつもと違い、店はガラガラだった。なぜなら今日は攻略組は75層のボス戦に挑む日なので、いつも来ているメンバーがいないからだ。
メイも最初はヒースクリフに攻略に誘われたが断った。ラスボスの正体を知っているのになぜクウォーターポイントという地獄に行かなければならない、となるため行かなかった。
「こんなことなら行けばよかったなー。」
だが化け物相手に怖い思いをしたくないところもあるので、取り出した回廊結晶を弄ぶだけだ。
チリンチリン
「いらっしゃいませー。」
「お久しぶりです。メイさん。」
入って来たのは初老を思わせる男性だ。肩には釣り竿を乗せ、服装は釣り装備のものだ。
「あっ!ニシダさん!お久しぶりです。」
NPCと思えるような見た目をしているが、ニシダと呼ばれた人は確かにプレイヤーだ。恐らくSAO内のプレイヤーでは最高齢だろう。
「今度は何が釣れたんですか?」
「今回も良いのが手に入りましたよ。また調理をお願いします。」
メイの店では食材を持ち込んで料理を頼むこともできる。だがほとんどの食材が最初から揃っているため、特に意味は為さなかった。だがメイは釣りスキルが無いため、市場に揃ってない魚を入手できないので、釣りプレイヤーが食材を持ち込むことは多々ある。
ニシダはウインドウを操作し、今回の魚を取り出す。
「今回入手したのは22層の池の主です!」
メイは食材アイテムを受け取り、その情報を読んでいく。その魚の正体は6本足で、人面魚のような化け物魚であった。
「アッハハ、これを調理かぁ。」
あまりの化け物具合にメイは笑った。この魚はどの魚にも似てないため、料理の方法に悩む。
「ご注文はなんですか?」
「それでは和食定食をお願いします。」
「少々お待ちをー。」
ヌシの一部で出汁をとり、味噌汁を作る。
ヌシの残りは簡単に焼き魚にして、大根をおろしていく。
米を炊き、茶碗に盛り付ける。
小松菜を切り、水で洗って、水気を切る。
質素だが健康的なメニューだ。だが電脳世界のため健康に関係ないので、気持ちの問題だ。
「お待たせしました。和食定食です。」
「おぉ。やはりこれですなぁ。」
ニシダは手を合わせてから食べ始める。久しぶりのまともな日本食のようで、美味しそうに食べていた。
焼き魚に手をつけようとしたニシダはふと手が止まる。
「そういえば、ここにしか無いと思っていた醤油が他にもありましてな。」
この世界での調味料の入手は料理スキル持ちのプレイヤーが自作するしかない。趣味スキルを取っている人はそこそこ少ないので調味料の存在は絶望的だった。
「こんな緑色のスライムのようなものですけどね。その人の醤油も見てみたいですね。」
配合の方法に違いはあっても、最終的に同じ味にたどり着くこともある。実際メイは本物に限りなく近いお酢と、赤色のゼリーのようなお酢がある。
「あなたと同じく料理スキルを極めた人でしてね。なんと、それだけではなく物凄く強かったのです。今食べてるこの化け物魚を倒したのもその人なんですわ。」
22層のヌシ。料理スキルを極めたプレイヤー。22層にいるとは思えないモンスターを簡単に倒すプレイヤー。これだけで大体メイは予想がついた。おそらくアスナだろう。突然に知り合いの存在がチラつき、思わず笑う。
チリンチリン
「いらっしゃいませー。」
「今日はいつもと違ってガラガラなんだナ。」
「姐さんじゃないですか。また久しぶりですね。」
「新聞屋さんじゃないですか。」
入ってきたのはアルゴだった。仕事に一区切りがついたときにはよく来るようになっている。
「今日は何を食べます?また寿司ですか?」
「持ち込みがありと聞いたからナ。苦労して手に入れたコイツを頼むヨ。」
アルゴはウインドウを操作してカウンターに食材を出す。その食材はなんとミストイールだった。
「また見れるとは思ってなかった…」
「ミストイールですと!?釣り師達の間では幻なんですよ!?」
ミストイールに一番興奮していたのはニシダだった。どうやら釣り師ではこれを釣ることがよほど名誉ものらしい。
「どうやってこれを釣ったのですか!?」
「「掴み取りで」」
ミストイールの捕獲方法は掴み取りだ。ある一定の沼で低確率で現れるのを素手で掴むだけだ。
「まさか釣りではないとは…」
ニシダは衝撃の事実に肩を落とした。今まで自分が狙っていた大物の入手方法が自分の得意の釣りではなく、もっと簡単な方法とは思いもしなかった。
「じゃあメイちゃん。こいつで3人分の肝吸いを頼むヨ。」
「本当ですか!?頂いてよろしいので?」
アルゴは頷き、ニシダは喜んだ。S級食材が食べれるのだ。こんなに嬉しいことはない。
「少々お待ちをー。」
緑色の苦玉を潰さないように取り外す。
筒状の部分を包丁でしごき、先端を切り離し、残った部分を水で洗う。
鍋に湯を沸かし、塩を入れて肝をさっと湯通しする。
ざるに上げて水で洗い流す。
カツオ出汁に塩と薄口醤油を入れ、煮立ったたら肝を入れ、また煮立ったたら完成だ。
「肝吸い!できました!」
「「おぉー。」」
3人は肝吸いを啜る。やはりS級食材は偉大だ。とても美味しい。
「またS級食材を食べれるとは…」
「いやぁ、とても美味しいですな。癖になりますね。」
「こんな美味しいのは初めてだヨ。」
3人は肝吸いを堪能し、また飲みたいと思った。だがそういうわけにもいかない。現在攻略中の75層が終われば、ラストスパートがかかるだろう。今回は断ったが次回からはメイも強引に駆り出されるはずだ。
「いやぁ美味かったよメイちゃん。あと残りも僅かダ。頑張ろうナ。」
「今日はご馳走様でした。」
二人は店を出て、メイは見送った。現在攻略中の75層も含め、あと26ボス。終わりも近い。メイは改めて考え直し、店に戻った。
「ゲームはクリアされました。」
たった一言の放送がアインクラッド中に響き渡った
次回、SAO編ラスト。
ALOもGGOも書きます
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ