デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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アインクラッド編最終回。ここまで約7ヶ月。長い…長いよ…


ゲームマスター&醤油ラーメン

いきなり意識が暗転したかと思えばすぐに目覚める。まるでゲーム初日の強制転移の時のようだった。だがあの時とは違い、エフェクトなど何一つなかったことだ。

 

 「なんやここ…」

 

メイは改めて現状を確認する。服装はさきほどまで調理場に立っていた時のエプロン姿だ。だが場所が違い、ここは外だ。綺麗な夕焼けが広がっており、幻想的だ。

 

続いて足元を確認すれば、そこにあるのは透明な水晶版のようなものだった。つまり空中に立っている状態だ。

 

メイはわけがわからなくなり、この場から脱出を試みる。回廊結晶を取り出そうとウインドウを開くと、いつも通りのウインドウが開いたかと思えば、一瞬で切り替わる。そこには『最終フェーズ実行中 78%』と出た。そして振り返れば後ろで塔が崩壊してるのが見えた。

 

(落ち着け。まず整理するんや。)

 

後ろで崩れてるのはどう見てもアインクラッドだ。そして最終フェーズ実行中の文字。最後に朧気に聞こえたあのアナウンス。ここまで整理し、まとめ上げる。

 

「綺麗な景色だろう?」

 

メイの横から声がした。それは茅場晶彦の声だった。

 

 「なんで終わったんですか?まだ75層のはずで、あなたは100層のボスのはずですが?」

 

メイは茅場に質問をする。こんな途中でこの男がゲームを終わらせるはずがないと思っているからだ。

 

 「何、75層のボスを倒した直後にキリト君の手によって正体がバレてしまってね。看破の褒美に一対一の勝負をしたら負けてしまったのだよ。」

 

なるほどとメイは納得する。確かにキリトもメイと同様に看破の褒美はもらっているようだ。ただ違うとすればその周囲の状況だ。メイの時は周りに誰もおらず、キリトの時はいた。その上生産系プレイヤーと攻略プレイヤーの立ち位置による思想的な違い。交渉の余地もない。

 

 「それで、私はどうなったんですか?」

 

メイは現状を茅場に確認する。ここにはメイと茅場しかいないので不安な気持ちはある。

 

 「安心したまえ。()()()()6147人のプレイヤーは全てログアウトした。」

 

これにはメイも驚いた。よくあの状況でそのプレイヤーの中に含まれたのだと分からなかった。

 

 「てっきり私はログアウトされへんものかと思ってましたよ。」

 

 「私は君との約束を守ることができなかったからな。それに君も生存者だ。システム上私の体力が尽きた瞬間に生存してる者はログアウト対象になる。」

 

茅場が申し訳なさそうにメイに謝罪する。メイは水晶版の上で背中から寝転ぶ。

 

 「まぁログアウトされてますしね。それならそれでいいですよ。あなたは約束を守る人ですしね。」

 

 「そう言われると私も嬉しいな。」

 

二人はフフッと笑う。あぁそう言えばと茅場は続ける。

 

 「君はあれを何回使ったのかね?私は2回だと思っているが。」

 

今度は茅場がメイに質問する。

 

 「あ、やっぱりバレてました?本当は3回使いましたけどね。まぁその一回はただ回廊結晶を作っただけなんですけどね。」

 

やっぱり隠し事は通用しないと痛感する。

 

 「キリト君たちの結婚式の時と軍のサブリーダー捜索の時だろう?でないと2日で75層まで広がったアインクラッド内で隠れた一人の人間が見つかるわけがない。」

 

 「筒抜けやん。」

 

本人の前でそれっぽいのは一回行ったメイであったが、まさか新聞記事だけでそこまでたどり着かれるとは思っていなかった。

 

 「それと君の言う《対策》は見せてもらったよ。確かにあれなら万全だろう。君の目的もある程度はわかった。」

 

茅場は半透明の体をメイにむける。

 

 「君は私に賭けたんだろう?」

 

二人の間に沈黙が続く。だがその沈黙もすぐに破られ、メイは笑いだす。

 

 「あっはははははは。やっぱり頭の回る人には勝てへんな。」

 

メイは笑い転げた。楽しくて仕方ない感じで笑い続ける。しばらく笑うとメイは落ち着き、体を起こす。

 

 「なんとなくお腹へりましたね。」

 

 「奇遇だな。私もだよ。」

 

それでは、とメイは立ち上がり茅場に頼む。

 

 「システム起動お願いします。私のウインドウではもうできませんしね。」

 

 「よかろう。それでは醤油ラーメンを頼みたい。」

 

 「最後の料理を楽しんでくださいね。」

 

茅場はシステムを駆使し、水晶版の上にメイが使ってきたキッチンを再現する。そしてメイに頼まれた食材も出す。現れたキッチンにメイは入り、料理を始める。

 

醤油、ニンニク、ごま油、オイスターソース、鶏ガラ、みりん、砂糖を鍋に入れ、軽く混ぜ合わせる。

 

できたスープにお湯を入れ、濃さを整える。

 

中華麺を茹で、湯切りをしたらスープに入れ、トッピングをしたら完成。

 

 「醤油ラーメンできましたよ。」

 

 「では、頂こう。」

 

ずるずると茅場は麺をすすり、ラーメンを食べる。

 

 「やはり君の料理は美味いな。NPCとは違う。」

 

 「まぁ本物に近づけるため調味料頑張りましたから。」

 

メイはドヤ顔で答える。それを茅場は特に気にせずラーメンを食べ続ける。

 

 「そう言えばなぜこんなことをしたんですか?」

 

麺をすする茅場の手がピタッと止まる。

 

 「どうして……か。空に浮かぶ鋼鉄の城の空想に取り憑かれたのは何歳の頃だったかな。この地上から飛び立ってあそこに行きたい。それが私の唯一の欲求だった。」

 

茅場の動機を聞き、メイは頷く。夢を叶えたい気持ちは誰だってあるのだ。

 

よく考えたらこれはログアウトの最中だ。つまりログアウトが完了されればメイも現実に戻る。当時の夢は今も変わらないので、またそれに向けて頑張ることを決めた。

 

 「やはり、最後に君と話したのは正解だったよ。久々に楽しかった。」

 

茅場はどこかはわからないが行こうとしている。それをメイは見送ろうとする。

 

 「最後に君に感謝するよ。君のおかげでこの世界は限りなくもう一つの現実に近いものになった。最初はみんな脱出に躍起になると思っていたが君の《食事処メイ》のおかげで現実味のある生活がそこにはあった。」

 

 「あはは。ゲームマスターに言われるとゲーマー冥利につきるものです。」

 

 「私はもう行くよ。」

 

 「さようなら、茅場さん。私はこのゲームのことは忘れませんよ。」

 

茅場がいなくなってから、茅場がいた方にメイは呟く。アインクラッドの崩壊はもう90層まできていた。ある程度それを眺めていると、色々な思い出が蘇る。

 

メイはそれを噛みしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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目が覚めた。開いた目に入ってきたのは白い天井と蛍光灯。先程までは光を浴びても何も感じなかったが、今では肌に突き刺さる感触がある。

 

現実だ。

 

頭にははるかに重いものが乗っている。外そうにしても、二年間動かさなかった体はまともに動かない。

 

 「こ、は?、だっ、、つ、でき、た、、の?」

 

声すらまともに出ない。あの世界でメイと呼ばれた少女は体をなんとか捻る。うつぶせになり、動かない腕をなんとか動かし、ナースコールを押した。

 

どうやら耳は正常のようだ。人が走ってくる音が聞こえる。

 

ドタドタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドタドタドタドタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドタドタドタドタドタドタドタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の横開きのドアが開き、病院関係の人が部屋になだれ込む。

 

 「篠原さん!大丈夫ですか!?意識ははっきりしてますか!?」

 

 「篠原皐月さん!脱出おめでとう!あなたで最後の人です!よく戻ってきましたね!」 

 

医者や看護師から声をかけられる。なんとか反応を返し、大丈夫なことを伝える。 

 

また料理ができるだろうか。まずはリハビリかな?篠原皐月は考える

 

この日メイこと篠原皐月はアインクラッドから脱出した。

 

 

 

 




アインクラッド編終了!さぁゲス郷だ!



オリ主とより仲良く出来そうな方

  • ロニエ
  • ティーゼ

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