平日の午前中からはALOをするのは気が引けるので、遅れている分を取り戻すために勉強をする。やはり学生時代のクセが抜けず、学校のある時間帯は勉強しなくてはという気持ちがある。
やはり理数系の科目がどうにもならず詰まってしまう。美優に聞くのが一番だが、時間的にもよくないし、受験のピーク時に聞くのも申し訳ない。
「やっぱあかんわー。」
伸びをしつつ呟く。3時間も座りぱなしだと流石に集中力も切れてくる。
時刻は正午。そろそろお腹も空いて来る頃であり、軽c昼食を食べることにする。皐月が一人で食べる分なので、今朝会社に行った叔父に渡した弁当の中身とほぼ同じなので、色々と楽である。
昼食を済ませると、勉強へのモチベーションが少し低下したので家事をしていく。だがやはり家事を一人でこなす上、皐月の足では大変だった。
掃除はほどほどに済ませてから、早めではあるが夕飯の準備に取り掛かる。作るのは生姜焼きだ。
豚肉を程よい大きさに切り、軽く焼く。
生姜チューブ、砂糖、酒、醤油、みりんを混ぜてタレを作る。
フライパンに肉を入れ、その上からタレをかけて、タレがほとんど無くなるまで強火で煮詰めていく。
これで生姜焼きは完成だ。あとはキャベツを千切りにしていき、添える。
ご飯と味噌汁も作ることにし、それぞれ作っていく。ご飯は炊飯器のタイマーをセットするだけだ。
1時間ちょっとで料理は終わり、時計を見れば午後3時半。まだ早いと言う気もあるが、ALOをすることにした。日常生活も大事だが、やはりアスナのことも気がかりだ。
皐月はナーヴギアを被り、ログインをした。
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ALOにログインし、最後のセーブポイントであった、宿屋から出る。メイは改めて世界樹の位置を確認し、街とフィールドの門から飛行をすることを決めて、歩き出す。
門に近づくにつれ、掛け声のようなものが聞こえてくる。メイは聞き耳を立てて、会話を聞いた。
「影妖精と風妖精の二人組はルグルー鉱山へ向かうようだ。よって今回の目標はルグルー回廊での奴ら及び討伐だ!」
「「「「はい!」」」」
数えると12人のプレイヤーが作戦確認のようなことをしていた。メイにとってこの情報は有力なものだった。
ルグルー鉱山は世界樹までの中継ポイントのようなものであり、セーブ地点としてはぴったりだ。だが、話の内容から推測するに、そこで倒すべき対象がいるようだ。アスナ救助が目的のメイは急ぎたいので、そこに混ぜてもらいたい気持ちはある。だがこんな初期装備のプレイヤーを入れてくれるはずもない。
なのでメイは後ろからこっそり付いていくことにした。その下準備として、物陰に隠れ、魔法を唱える。
唱えた魔法は8詠唱の闇魔法だ。唱え終わると小さなコウモリが出現する。このコウモリはマーキングのようなものであり、特定にプレイヤーをマークすることができる。コウモリを12人の内のプレイヤーの一人につけ、全員が飛び立ったのを確認して、少ししてからメイも飛び立った。
影妖精を追う火妖精集団を追う火妖精という二重追跡が始まって僅か。メイは思いの外世界樹までの距離はあるのだと痛感させられた。外ならどこからでも世界樹が見えていたので、空を飛べれば近いと思っていたが、翅の制限時間と予想以上の距離。道中にもモンスターはいるらしく、戦闘を余儀なくされる。それ自体は影妖精達がなんとかしてくれるが、火妖精集団は彼らに見つからないように隠れねばならず、メイもまたこっそり追跡してる身なので隠れればならない。
ガタンを出て数時間。先頭集団が止まったらしく、それに伴い火妖精達も一時休憩するようだ。時間を見ればそろそろ夕食時と風呂の時間も近いので、一旦ログアウトすることにする。
だがここで問題が起きた。現在いる場所はどうやら中立区らしく、ログアウトはできてもプレイヤーの体そのものは残ってしまうようだ。これだとモンスターに見つかっても、プレイヤーに見つかってもキルされてデスポーンしてしまう。
どうしようもなかったので、緊急策として手頃な岩に魔法で穴を開け、その岩の中に入ってから表面を幻惑魔法で覆う。どれほどの効果があるが分からないが、無いよりはマシだと思い、ログアウトをする。
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「意外と問題なかってんな…」
1時間ほどログアウトしててもメイの体には特に問題はなかった。コウモリの位置を確認してみれば、思ってるほど進んでおらず、充分に追いつける距離だった。メイはすぐに追跡を再開した。
少しすると、洞窟にたどり着いた。火妖精集団の作戦開始地点が近いので、いつでもコウモリと視覚共有できるように準備する。
洞窟の中を進んでもモンスターと出会うことはなかった。恐らく一番前の影妖精達が倒したのだろう。
10分程進んでから、そろそろ戦闘が始まってるころだと思い、コウモリと視覚をリンクさせる。ピントを合わせてから現在の状況を確認する。
『グオォォォォォォォォォォ!』
……化物が吠えていた。しかもメイにとってその姿は見覚えがあった。それはSAOの74層のいたフロアボスにそっくりだった。
『た、退避!退避ー!』
火妖精の集団が陣形を崩され、退避していく。だが化物はそれを許さず、追撃していく。その追撃の途中でコウモリとのリンクが切れた。化物の手によって潰されたのだ。
状況は最悪だ。ルグルー回廊を通ろうにしても、あのモンスターがいては進むことができない。かといってガタンまで戻ってから編成を組んでもらうにしてもいつになるか分からないので、メイはここを一人で突破しなければならない。
「これは無理やろなぁ…」
メイは腹をくくり、戦うための準備をする。とはいっても今まで使った魔力を回復させるためにポーションを飲むくらいだ。それからメモをしておいた魔法をもう一度確かめる。
だがメモをしておいた魔法の中に一つどうにかなりそうなものがあった。あの化物と戦うにはこれしかないと思い、詠唱を始める。
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「キリト君。そいつ残してお」
「まだです!後ろから新たなプレイヤー反応があります!」
リーファが暴れるキリトを止めようとするが、ユイから制止が入る。初めから13人のプレイヤーがあったが、ここで戦ったのは12人であり、一人足りなかったのだ。だがついに後ろからついて来たもう一人がくる。リーファは相当な手練れだと予想していた。
「キリト君。あともう一人来るよ!」
その声にキリトは反応し、手に握ってる火妖精を橋の端に投げる。そして洞窟の出口を見つめた。
「目視距離まで、5、4、…」
ユイが近づいて来る反応に合わせてカウントダウンを始める。しかしリーファには幻惑魔法で無双したキリトがいるので一人ぐらないなら問題ないと思っていた。
「3、2、1…」
洞窟の出入り口から現れたのはどう見ても人間ではなく、化物だった。その姿を見たリーファの第一印象としては『気持ち悪い』だった。
現れたのは体調が4メートルほどある、白い蜘蛛だった。その前脚は鎌のように鋭くなっている。背中にはトサカのようなものがあり、毒々しい色をしていた。
『キュルァァァァァァァァァ!』
巨大な蜘蛛が大きく吠えた。それに合わせるかのようにキリトも吠える。
蒼い悪魔と白い化物がお互いを敵と見なし、橋の上で戦闘を始めた。
怪獣大決戦
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ