これからも《デスゲームのお食事事情》をよろしくお願いします
世界樹の内部に転送されると、そこはただの樹の上のような場所だった。そこには光妖精など1人も存在せず、クリア特典など最初から用意されていないようだった。
どうやらGMは本当にゲームをクリアさせるつもりは無く、このVR世界で隠したいことがあるようだ。
メイは舌打ちをし、マップを開く。本来世界樹にはマップは無いが、内部に見取り図があるようなので、それを基に作り出した。そこからエリア内にいる全てのプレイヤーを表示するように設定する。
表示した2つのエリアにプレイヤー反応が出た。一つのエリアに点は三つあり、名前を表示すれば、《Kirito》《Asuma》《Oberon》の文字が出てきた。
だがそちらより気になることがある。反対側には数字表記をすれば約300のプレイヤー反応が出てきた。その数はSAO未帰還者の数と一致する。キリトにはカードを転写したユイもいるし、アスナを方を任せることにし、メイはプレイヤーの多い方に進む。
少し進めば《実験体保管室》と書かれた部屋に到着する。世界樹への唯一の入り口に絶対的なロックをしていたため、中の警備はザルだったので楽だ。メイは部屋の扉に触れ、音もなく消滅させる。
部屋の中の様子にメイは眉間にシワをよせる。そこには無数の人の脳が台座の上で浮いていた。どれも同じように見えるが、よく見てみると色が僅かに違っていたり、それぞれ違うペースで動いていたりした。部屋の名前からするに、これらの違いは何かしらの実験後の影響だろう。
部屋の奥に黒い立方体のような物が見え、そこまで歩く。いつぞやに同じものを見たので使い方は覚えている。メイはその立方体に触れ、システムを起動させる。そうするとウインドウがいくつも現れ、一番下には全員を安全にログアウトできるシステムを見つけた。
それを見つけた瞬間に背後から何かが弾かれる音がした。振り返るとメイの背中のあった位置に《Immortal Object》の紫のウインドウが出ていた。
「おいどういうことだよ!?不死属性持ちのNPCとか作った覚えもないし、あの人から聞かされた覚えもないぞ!?」
「反応見る限りこれはプレイヤーだね…。でもこれはどういうことなのかなー?」
後ろを振り返れば紫のナメクジが2体いた。彼らの前にもウインドウが何重にも広がっており、何かしらの操作をしているから運営側の人間だろう。
「どうする?あの人に聞いてみる?」
「いや、今はあの小鳥ちゃんのとこに行ってるはずだから機嫌を損ねたくないし、動きを止めれば良いだろう。そんなことよりこいつがどう侵入したか、だね。」
2体はメイをこれからどうするかについて話しながらウインドウを操作する。メイも聞きたいことはあるのだが恐らく聞かないだろう。
「…………なんで…だよ…」
「どういう……ことだよ…」
ウインドウを操作する触手が止まった2体は怒ってるのか身体を震わせていた。体が体なのでその震え方は気持ち悪かった。
「「どうして干渉できないんだよ!?なんだよそのiDは!?」」
2体は同時に叫ぶ。自分の持ってる絶対的権限が通用しないのだ。仕方ないだろう。
「で、ここで何してたんや?ゲームの世界で籠城して何か隠しながらすることや。なんかヤバイことなんやろ?」
何もなかったかのようにメイはナメクジ達に問う。だがいつもの初対面の人に対する敬語などは一切なく、確信を持っているのでそんな遠慮などはどこにもなかった。
「答えるわけないだろ!」
「やろな。んじゃ」
そう言ってメイは透明化していたウインドウのボタンを押す。するとナメクジ達は床に押さえつけられた。
「んなっ!?グギギッ、、これ、って」
「邪魔やからそこで大人しくしときいや。」
メイはガーディアンにも使った重力魔法をぶつける。自分達が調整しているデータをその身をもって経験することを想定してなかったのだろう。その間にメイは脳が浮いてある台座や、それに関係するメインコンピュータなどの記録を全て閲覧した。
全てを閲覧し終えたメイは額に青筋を浮かべた。ここで行われていたのは脳の操作の実験だった。そんな外道極まったものにSAO時代に経営していた店の知り合いがその被害に遭っていれば当然誰でも怒る。
「アバター変更。対象2名のアバターを成人男性タイプに変更。」
「なっ!?」
メイがそう言うと、2体のナメクジは人型に姿を変える。
「対象2名のペインアブソーバをレベル0に変更。重力魔法を解除。麻痺状態付与。磔台をジェネレート。」
メイは次々にある準備を整える。整え終わった今の状況はメイの目の前に男二人が磔にされている。
「ふざけんとんちゃうぞ。お前らは考えたことあるんか?身内を。本人を。信念あったあの人を」
メイはウインドウを操作し、空中に無数のナイフを浮かばせる。その数は約300本、つまり未帰還者と同じ数だ。そしてそのナイフで磔にされた二人をまるでハリネズミのようにする。
「「アアアアァァァァ!痛い、痛いィィ!」」
ペインアブソーバ。それはプレイヤーの痛覚に直接関係するものである。それがレベル0であれば現実の痛覚がそのままアバターに反映される。百を超えるナイフの同時攻撃に二人は悲鳴を上げる。
「これで終わりやと思うなよ。〇〇〇マシーンをジェネレート。」
たった一言呟くだけで二人の股下に男なら見覚えのある、それと同時に恐怖を覚えるものがあった。そしてここはゲーム空間。物理法則を無視した設計でも問題ない。
既に2人は気絶しており、もう声も出てなく、虚ろな目で下をボンヤリと見ているだけだ。メイはその間に準備を終え、マシーンを起動させる。
バァァン!
「「コッ……、カッ……」」
破裂するような音がした。起動したマシーンは磔にされた二人の股下のモノに時速600km/hで見事命中した。悶絶するような声を上げ、泡を吹きながら気絶した。
「流石に…やりすぎではないかね?」
後ろから聞き覚えのある声がした。振り返るとそこには顔が引きつった茅場がいた。他人だろうと男が目の前で最大の処刑をされていれば同情もするのだろう。
「というか生きていたんですね。」
率直に思ったことを言う。SAOの終わりに死んだものだと思っていたし、今では行方不明のはずだ。生きている方が不思議でならない。
「そうとも言えるし、そうでもないとも言える。私は茅場晶彦という意識のエコー、いわゆるクローンだ。」
「相変わらずアフターケアが万全ですね。それで、私に何の用です?」
「なに、君に頼みたいことがあってね。」
そう言うと茅場は光る種のようなものを出す。
「これは一体なんです?」
「それはザ・シード。どういうものかは芽吹けば分かる。これは君に任せるのが一番だと思ってね。受け取ってくれるか?」
茅場はメイの前にザ・シードを浮かばせる。メイはそれを受け取らず、指で弾き返した。
「いや、私はなんや言うてあなたに関わりすぎましたからね。自分の感情で決めてしまいそうだから違う人に渡してください。それに、報酬を受け取ってない人もいるみたいですし?」
「そうか。ならば私はあっち側に向かうとする。今後もう二度と会うこともないだろうが、君はやはり面白かったよ。」
そう言うと茅場はうっすらと消えていった。メイはそれを見送ると、立方体に触れ、閉じ込められてるプレイヤー300人を解放し、キリト側の様子を見る。
その様子はもうすぐ終わりの流れだった。キリトが黄金の剣をオベイロンに渡し、剣の勝負をするようだ。オベイロンの剣は腰が引けているので、結果は火を見るより明らかだ。援護の必要もなさそうなので、メイはログアウトをした。
次こそALOラストです。具体的に病院と打ち上げのくだりですかね。
オリ主とより仲良く出来そうな方
-
ロニエ
-
ティーゼ