皐月はALOからログアウトをし、急いで向かう場所ができた。結果的に未帰還者全員を解放したが、当初の目的はアスナの救出だ。以前にエギルから聞いたアスナの入院先に急いで向かう。
アスナのいる病院は所沢だ。足の悪い皐月では自転車は使えず、ましてや走ることは以ての外なので、電車などの交通機関を使って病院まで行くしかない。待ち時間を含め40分以上はかかるが贅沢は言えない。皐月はすぐに準備をすることにした。
駅を降り、雪が降る道の中で皐月は歩き続ける。元々歩くペースは遅い上に、雪のせいで更に進みは遅くなるが、アスナに会いたいがために足に踏ん張るための力を入れ歩き続ける。
足がヒリヒリと痛むが、なんとか目的の病院までたどり着く。門を潜り抜け、駐車場に入る。だがそこには明らかに事件をにおわせるような光景があった。それは成人男性が中高生の男にナイフで斬りかかろうとしていた。
走ることはできないので、気配を可能な限り殺しながら2人に近寄る。ナイフを持った男は狙いを外したのか、雪の上に刃を突き立てた。もう一度振りかぶったところで、皐月は後ろに到着したので、鞄で男の頭を殴りつける。
「ぐぅはぁっ!?」
男は頭から雪に埋もれた。だが相当な衝撃には変わらないはずなのに、その手にはしっかりとナイフは握りしめられていた。
「だ、大丈夫ですか…?」
足にきていた疲れが一気に全身に来る。皐月は息が上がっているが、少年の安否を確かめるために声をかける。
「メイ…なのか?」
この現実世界では一度も聞いたことはないが、聞き覚えのある声がした。その少年はSAOをクリアし、今回のALOでは皐月と協力して世界樹を攻略した人物だった。
「なんや…キリトか。んでこの人は何なん?」
メイは目の前の男がまだもがいていることを機に、状況を確認する。人に感謝されることはあっても、メイが知ってる限りキリトを恨む人物はラフコフを除いていない。そのラフコフも今は自由ではないので、襲われる道理などあるわけない。
「こいつは須郷伸之。ALOのGMで今回の主犯だ。」
それだけを聞いてどういうことかはすぐに分かった。須郷はキリトとの勝負に負け、計画も止められ、その上プライドもズタズタにされたのだろう。だとすればこれは逆恨みだ。
「アスナに会うんやろ?さっさと行ってき。」
「でもお前じゃ…」
キリトは皐月の心配をする。皐月は女性であり、身長は割と高いが見た感じだと細い。成人男性を止められるはずもない。
「いいから行けや!こんなんに構ってる暇ないやろ!?」
皐月の怒鳴り声にキリトは驚いた。その声は有無を言わせなく、キリトとしても行くしかなかった。そして皐月は病院に入っていくキリトをみた。
「どうしてあんな奴に肩入「らぁ!」オゴっ!?」
須郷が雪から頭を出した瞬間鞄で再び殴りつける。今度は何度も叩きつけ、動けないようにする。
「須郷。私はあんたを許さへん。茅場晶彦とは違い、正真正銘のクズのあんたは許さへん。」
そう言い鞄からペットボトルを取り出し、須郷の周りに水を撒く。
「茅場と僕を比べるなー!」
須郷が勢いよく雪から飛び出す、皐月にナイフを刺そうと走るが、撒いた水は既に凍っており、須郷は足を滑らす。
今度は頭が埋もれず、硬く凍った雪の上に頭を打ちつけた。そして須郷は気絶し、それを確かめ皐月も病院に入る。
院内に入り、アスナの病室を探す。少し探せば⦅結城明日奈⦆の文字を見つけ、部屋の中を少し覗き込む。そこにはキリトとアスナが居たので、ここで間違いはない。
「お邪魔しまーす。」
「あっ…メイさん。」
「無事だったんだな。メイ」
アスナとも現実で会うのは初めてだが、やはり初めて会った気がしない。キリトと一緒にいるのでSAOのときの仲の良い二人を印象があるので、懐かしくも思える。
「私も座ってええか?疲れたわ。」
アスナがそれを承諾したので皐月も座る。そして3人はSAOの思い出話に花を咲かせた。
あの後須郷は捕まった。取り調べでは最初は黙秘していたが、部下が吐いたと知ると全て自白したらしい。
SAOに続き、ALOでも事件は起こったのでVR業界は大ダメージを受けた。VRゲームは危険という考えが世間に広がり、もう再開されることもないとおもわれた。
だが茅場がキリトに渡した《ザ・シード》というプログラムは、簡単に言えば誰でもVRゲームを作ることができるというものであり、それを全世界に無料でダウンロードできるようにした。VRゲームは見事復活を果たした。ALOもほかの企業に受け継がれ、続くこととなった。
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「メイ。こっちは終わったぞ。何か手伝えることはあるか?」
「皮剥きとそっちの鍋の煮込みを頼んでもいいですか?」
「応。任せろ。」
ALO事件が終わり、しばらくたったころ。SAOのオフ会がエギルのカフェで開かれることとなった。現在皐月は《ダイシー・カフェ》の厨房でオフ会用の料理をエギルの奥さんと作っている。結構な人数がくるので、皐月は朝から料理をしている。このペースなら間に合いそうだ。
少し早くに来た人もいたが、彼らの協力も得て全ての料理は時間以内に作り終わることができた。
「いやーっ。料理って結構大変なのねー。」
そう言ってリズベット、もとい篠崎里香は伸びをする。彼女の主な仕事は配膳だったが、走り回る体力は十分にあるようだ。
「それで、あとはキリト君だけね。」
全ての準備が終わり、今日の主役が来るのをまだかと待ちわびるアスナ。
「それにしてもリズも粋なことをするよなー。」
クラインとシリカ、もとい壺井遼太郎と綾野珪子はリズの計画にうんうんと頷いていた。少し待てば木製の扉が開いてキリトが、桐ヶ谷和人が入ってきた。
「おいおい。遅刻した覚えはないぞ」
「あんたには少し遅い時間を伝えたのよ。主役は最後に登場しないとね!」
里香はそう言って和人の腕を引っ張り、木箱の上に立たせる。そして皆の方を向き、全員に合図を出す。
「「「「「キリト、SAOクリアおめでとう!」」」」」
全員でクラッカーを鳴らし、和人は頭から紙テープを被る。驚いているのか、キリトは呆然としており、皆で笑う。
「「「「「かんぱーい!」」」」」
こうしてSAOクリアのオフ会が始まった。
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「さて!というわけで話したいことがあるので、集まってもらいました!」
里香は一つに机に2人を呼んだ。それは珪子と直葉だ。明日奈はすでに和人にべっとりなので、聞くまでもないし邪魔するのも少し気が引けたので誘わなかった。最近誕生日を迎えた皐月はアルコールが解禁されたので、大人と混じって飲んでいたので誘いにくかった。
「まぁ所謂恋バナってやつよ。直葉ちゃんはどうなの?」
直葉はSAOプレイヤーではないが、和人の付き添いで来た。オフ会が始まってから里香と珪子と気があい、こうして話している。直葉はALOでの和人のことを話すことにした。そこから3人は和人の話になり盛り上がった。
「流石キリトさん。かっこいいですねぇ」
「義理の妹も惚れるほどかー。」
「そういうリズさんはどうなんですか!?まだ気になる人のこと話してないじゃないですか!」
3人は和人との思い出をそれぞれ話したが、里香だけははっきりと和人が気になると公言していない。反応的に気になってるのは確かだが、他にもいそうな雰囲気だ。里香は公言を避けようとしたが、二人からのくすぐりにより直ぐに言うことになった。
「…………メイよ。」
里香はそう言って皐月の方を見る。その皐月は遼太郎とアンドリューと酒を飲んでおり、皐月は遼太郎の肩を叩いていた。皐月は酔っているのか顔が赤い。そんな同性の人の名前が出たことに珪子と直葉は驚いた。
「メイが男だったら絶対に私は惚れる自信あるわよ…」
里香はそう言って顔を伏せる。少しだけだが赤くなってる顔を見られるのが恥ずかしいのだろう。
「だってあの包容力って言うか、男前なところあるのよ!?あんた達は多分知らないでしょうけど本当にすごいわよ!?」
そこから先、里香は珪子と直葉にメイについていじり倒された。里香がもう一度皐月の方を見れば、酒を手放しているのに皐月の顔は赤く、突っ伏している遼太郎を見ていた。
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「リンクスタート」
オフ会の翌日、今日はALOの大型アップデートの最終日だ。今までのアップデートで既に飛行制限が無くなったり、世界樹に街が出来たりしたが、そんなものは前準備と言わんばかりのアップデートだ。
ゴォォォォォォン、ゴォォォォォォン
鐘の音が鳴り響く。空を見上げれば待ち望んだ最後のアップデートが終わったことを告げる。
アインクラッド
それが空から降りてき、それぞれは想いを馳せる。
ある人は思い出に浸るように
ある人は始まりのゲームを見に
ある人は最後まで走ろうと誓い
ある人は…………
ある人は約束を守られることを期待しながら
「約束、守ってくれますよね?茅場さん」
ALO完結しました!次はGGOだ!
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ