新アカウント&BAR《シキ》
「さぁこれから決勝戦!勝つのは果たしてどちらのレーサーか!?」
ALO事件が無事に解決し、茅場晶彦が残した《ザ・シード》によってVRゲームは増え続けた。それはファンタジーゲームだけに限らず、音ゲー、レース、スポーツ等のジャンルを問わずに増やしていった。現在皐月がいるのはレース系のゲームであり、小さな大会の決勝戦に出ていた。
「第1レーン、フカ次郎選手!」
元気なアナウンスでまず1人目のプレイヤーが紹介される。フルフェイスのヘルメットをしているため、アバターの顔はよく見えないが、女性ということは分かる。
「第2レーン、シキ選手!」
続いて二人目の選手も紹介される。こちらも同様にフルフェイスのヘルメットをしている女性プレイヤーだ。
普通、レース勝負は多人数で行われるものだが、この大会は特殊であり、1対1のトーナメントだ。なので決勝も1対1であり、広いコースに車が2台だけ並んでいる。
「この二人の通算は共に2勝2敗。この勝負で白黒は着くのか!?さぁ開始まであとわずか!ここまで勝ち残った二人は果たしてどんな勝負を繰り広げるのか!?」
ランプに色がつき、カウントダウンが始まる。
「3、2、1、GO!」
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皐月はベッドの上で目を覚ます。頭に装着されたアミュスフィアを外し、携帯を手に取る。すると美優から電話が掛かってき、すぐに取る。
『もしもーし、私の勝ちだね皐月。』
「あー、あそこであんな綺麗に決められると思わんかったわ。負けや負けや。」
負けたことは悔しいが、身内での勝負なので軽口を叩きながら皐月は返す。美優に今度こそはと挑んだ勝負だが、結局どのゲームでも、勝ち越すことは出来なかった。
先程の『シキ』というプレイヤーは皐月だ。ALO事件の直ぐにサブアカウントを作り、基本的にはそちらを使用している。『メイ』のアカウントも使用出来ないわけではないが、2つの理由で使用を控えることにした。1つは新ALOにSAOデータが使用できるようになり、修正で消えると思っていたGM権限が残ったことだ。これは隠せば何とかなるし、誰もメイがそのような権限を所持してるとも思わないので、まだマシだ。
2つ目はクラインだ。自然と目で追っていたことがエギルに指摘され、恥ずかしくなった。実際メイはクラインとALOでコンビを組んでいるし、そのコンビはモーティマーとユージーンに匹敵するレベルで知れている。それにエギルとクラインとは定期的に呑むようになり、会う機会も増えている。呑む回数が増えるごとに目で追う時間も増えているらしく、他の人にバレたくなかったのだ。それにただ純粋にゲームを楽しみたくなり、色々なゲームを転々することにした。
『それにしてもサブ垢でここまでくるとかすごいわ。負けそうだったもん。』
「頑張って急いで育てたけどなー。やっぱゲーム歴長いだけあるから地力の差やろな。」
先程のレースについて2人は思い思いに話す。話の熱もしばらくすれば落ち着き、次の話題に移る。
『次のゲームは決めてるの?』
「ちょっとやりたいゲームがあってな。次はそっちをすることにするわ。」
『私もALOに戻ろうと思ってねー。ここで互いにソロプレイになっちゃうわけか。』
「まぁまた今度どっかでパーティー組もうや。んじゃ切るで。」
皐月は電話を切り、次のゲームを始める準備をした。皐月が気になったのはガンゲイルオンライン、略称GGOというゲームだ。それは銃がメインのゲームであり、なんとゲーム内の所持金を還元できるらしい。
皐月はGGOを始める日を決め、準備を始めた。
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「おぉ…。すごい世紀末感…。」
シキはGGOにログインした。やはり銃の世界だけあって、荒くれ者の住まう町、っといった印象がある。横に鏡を見つけたため、自分のアバターを確認するために覗く。アバターはランダム生成なので、こうした方法で確認するしかない。
鏡に映ったシキは黒髪ショートカットの男性とも女性とも言いがたい中性的な顔だった。リアルよりも身長は低めになってはいるが、それでやっと平均と同じぐらいだろう。自分の姿を確認していると後ろから声を掛けられた。
「それ、F200系だろ。レアなの引いたねー。3万クレジット出すからアカウントごと売らない?」
「ごめんなさい。これコンバートなので売れないんです。」
「そうかー。まぁ気が変わったら連絡してくれよなー。」
そう言って男と別れ、シキは街を散策することにした。
街を動き回って20分程でシキは途方に暮れた。初期金額じゃまともな装備も買えないし、初期装備の今では外で強いモンスターの区別もつかないし、何よりPKゲームなので初心者狩りに会いそうだ。臨時でパーティーも組みたいがこんな初心者を入れてくれるパーティーもない。稼ぐ手段が基本的に無いのだ。
だがそうでもなかった。当てもなく10分程彷徨いて希望を見つけることができた。それはカジノだ。シキはカジノに入り、ルーレットに興味を示した。ルールを見れば普通のルーレットであったが、増えたクレジットについて注意書きがあった。
・このゲームで獲得したクレジットは還元することはできません。
還元はできないようだがゲーム内で使えるならば問題はない。シキはテーブルにつき、勝負をすることにした。
このルーレットは全てシステムであり、NPCのディーラーもいない。チップの置き方もタッチパネル式である。シキはBET時間になると迷わずにチップを500ずつ1st12と2nd12に賭けた。確率は3分の2で倍率は1.5。利益は低めだが勝算は高い。そしてルーレットは始まった。
結果はシキの勝ちだった。1000クレジットが1500クレジットになり、もう一度同じ賭け金を同じように賭ける。所持金の全てを賭けず、負けた場合のために少し残す作戦をとった。シキはこれを1週間、GGOでただルーレットだけを繰り返した。
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カジノのルーレットに籠り続けて1週間。還元はできないが所持金は1億を超えた。元々GGOにはある方向で楽しみたいと思って来たので、目的のために裏路地に入る。複雑な道を5分ほど歩けば、店を売ってくれるNPCの所に着く。そして7000万クレジットで店を買い、残りの3000万で最低限の必需品と自分の装備を整えた。
シキは装備を2種類用意した。1つはGAU-22でガトリング砲だ。シキのアカウントはメイと違いステ振りはSTR>VIT=DEXのパワーと耐久を上げたステータスだ。AGIは殆ど振っていない。
2つ目は鍛治プレイヤーに大金を払って作ってもらったワイヤー銃とガス噴射装置だ。腰に寝かしたガスボンベがセットされているが、ステータスのお陰で重さは特に感じない。そしてメインはナイフであり、近接戦用装備だ。
装備を試すためシキは廃街に出た。今装備しているのはmob戦に合わせた光学銃とワイヤー銃セットだ。警戒しながら進むと遠くに鉄の体の巨大ワームを見つけた。
シキは廃墟に身を隠し、ワイヤー銃セットの準備をする。準備を整え、背後から光学銃を撃ち、ワームにダメージを与えたが気づかれた。
ワームはシキを中心にとぐろを巻き、締めつけようとする。とぐろを巻き終わるまでにシキはワイヤー銃をワームの頭に撃ち、返しで固定する。そして右のガス噴射を起動させ、とぐろの間の空間を無理矢理突っ切り、ワームの頭の下に出る。そして左右のガス噴射装置を下に向け噴射させ、ワイヤーを巻き取り自分の身をワームの頭に上に放り出す。そして頭の急所ポイントを狙い光学銃を乱射する。システムアシストが付いているお陰で幾分は狙いやすいが中々急所には当たらず、六発目でやっと当たった。
6発中ヒットは4、内一つは急所でワームの体力を削り切り、ポリゴン片になった。ワイヤー銃セットは見事シキの予想通り、足りないスピードをカバーしてくれた。
シキは2時間ほど廃墟で物資調達をし、飲み物アイテムとある程度の缶詰アイテムを確保し、自分の拠点に帰る。そして店の看板を作ることにした。最初は酒場をやろうと思っていたが、戦利品の殆どが飲み物系であり、料理が足りない。なのでBARを経営することにした。飲み物の味もその辺で売ってる物よりは美味しいとは思うので、500クレジット、つまり一杯5円ほどなら多分売れるだろう。
シキは店の看板に《BARシキ》と書き、経営することを決めた。
Q.なんでアカウント名変えた?
A.書いた通りメイのアカウントがヤバいから。それにザザだって同じことしてるじゃん?(作ったの多分シュピーゲルだけど)
ちなみに名前の作り方
篠原皐月→皐月→5月→May→メイ
篠原皐月→シのはらさつキ→シキ
※オリ主の装備を変更しました。椿桜さん指摘ありがとうございます
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ