デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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GGOのGすらない話です。現実回なのです。





飲み会&思い出話

皐月は今台東区のアンドリューの店である《ダイシー・カフェ》に向かって歩いている。今日はアンドリューと遼太郎との定期的に行われている飲み会があるからだ。

 

皐月はいつも通りに予定より早めの時間にダイシー・カフェに到着する。この3人の中で皐月が一番料理ができるので、つまみ担当になっている。なので皐月の持ち込み品は食材が多い。

 

「こんにちはエギルさん。お邪魔します」

 

「やっぱ早いなメイは。いつも思うんだが足に無理はさせてないだろうな?」

 

「そしたら膝ガックガクでまともに立てへんと思いますけどね」

 

二人はいつものようにジョークの言い合いを始める。だがアンドリューはその裏で皐月が心配だった。SAOで商売をしていた彼女は時間に余裕を持って行動するのは分かっている。この定期飲み会の初日に皐月は時間に遅れかけ、自分で歩くペースを上げていたのか飲む前から足に力が入っていなかったことがあった。

 

だが何回もこの集まりを経験してるので皐月も慣れたのだろう。アンドリューとしてはもう心配をすることもない。

 

「エギルさん、厨房借りていいですか?」

 

「いつものことだからもう確認はいらないんだがな」

 

「勝手に借りれないんで」

 

アンドリューからの許可も出たので、皐月は厨房に入りつまみを作る。手の込んだものは作らず、ゆでタマゴやチャーシューなどのサッと作れるものにした。

 

皐月がつまみの準備を終えると、裏口側の呼び鈴が鳴る。今日はもうこの店は閉めているので、くる予定があるとすれば彼だけだ。アンドリューもその事が分かっているようで、ドアを開ける

 

「悪いなエギル、ちょっと遅れたみたいだ。メイさんもすみません。」

 

入ってきたのは遼太郎だ。手にはダイシー・カフェには置いてないお酒の瓶が3つある。3人はいつもこのように役割分担をして飲み会を行っている。

 

 「じゃあ全員揃ったことだし始めるとするか、二人は何にするんだ?」

 

 「私はロゼで」

 

 「俺はビール」

 

 「肉食う気満々じゃねーか。まぁメイが既にチャーシュー用意してるからつまみに困りそうなことはないとは思うけどな」

 

アンドリューはそう言いながらボトルと瓶を開けていく。ちなみにアンドリューが飲むのはウォッカだ。皐月はつまみを取り分けてそれぞれの前に置いていく。

 

 「「「乾杯!!」」」

 

こうして3人の飲み会が始まった。

 

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「ーまぁこんなところだ。」

 

「あれやっぱエギルさんやってんな。ラフコフ消えて活発な奴増えると思ってたけどそんな情報姐さんからも聞いたことなかったし。」

 

「攻略に参加してないときはそんなことしてたんだなエギル。俺はとにかく攻略しか考えてなかったからよ…。」

 

飲み始めてから1時間ほど経てばいつものように3人は思い出話に花を咲かせる。その内容はそれぞれがSAOで行なってきたことだ。それぞれが互いを知る前の話が多い。

 

「そういやクラインはどこまで話したっけな」

 

「確かクラインさんは67層のボス戦まで話したはずですよ」

 

「んじゃ次のめぼしい話は毒蜘蛛あたりだな」

 

「それ私が依頼したやつじゃないですか」

 

「その話、俺は聞いたことないぞ」

 

だがこのように誰か一人が知らない話もある。遼太郎は商売人特有の話は知らないし、皐月はボス戦の話は知らない。アンドリューだけが知らない話は少なく、興味が唆られるものも多い。

 

遼太郎がその時のことを話し出す。皐月も当事者なので遼太郎がどう話すのかが気になる。それに、あの時のメイがどれほどの印象を彼に与えているのかも知りたい。メイにとってクラインとの出会いは今となっては素っ気ないと思い、あの時ではこんな気持ちを持つとも思わなかったので改善されていてほしいものだ。

 

「えっとだな…」

 

遼太郎はあの時の記憶をなぞるように話し始める。メイからの依頼、移動、そして戦闘の話。

 

「毒蜘蛛の攻撃に慣れ始めて俺たちは総攻撃を仕掛けたんだよ。俺は羅刹、メイさんはシャドウ・ステッチだったな。」

 

「2ゲージ目はすごく楽でしたよね。初見であんなに一方的に殴れる風林火山は本当に凄かったですよ。」

 

「やっぱお前達中々に良いコンビネーションしてるよな。そりゃ今のALOでもそこそこ名が通るだけのことはあるよな」

 

3人とも酒が入っているため話す口が止まることはない。一つの話題からいつのまにか違う話題になることもある程度だ。そしてしばらくALOの話になり、脱線してることに気づく

 

「3ゲージ目やばかったですよね。糸は吐くわ状態異常特攻はしてくるわで」

 

「半分削ってから急にキレが良くなったからな。俺でも瀕死ライン見えたから本当にまずかったぜ。ありゃキリの字やアスナさんも連れて行った方が良かったな」

 

こうやって思い返すと反省点も見えてくる。やはり1パーティで行ったのは間違いだったと思う。

 

「んで最後に私が特攻くらいかけたところでクラインさんが割り込んで散華使ったんですよね」

 

「SAOでギリギリの戦いとかするもんじゃねぇぞお前ら」

 

「「それは本当に思ってます」」

 

ちなみに皐月はまだスカルリーパー戦の詳細を知らないので言い返せることができない。話が終わった所で遼太郎は席を立ちトイレに行く。遼太郎がいなくなったことを確認してからアンドリューは話しかける

 

「お前ってなんだかんだでキリトに似てるよな」

 

「何でそう思うんですか?あんなに猪突猛進じゃありませんよ」

 

「いや、あいつがアスナに惚れたのと似てるなと」

 

「あー、分からんこともないですねぇ」

 

真面目な顔でそんな話をする。その間も遼太郎はまだ出てこない。となると長い方だろう。

 

「お前はこれからどうしたいんだ」

 

アンドリューが唐突に聞く。先程の会話からして遼太郎のことだろう。

 

「…今みたいにこうやって酒を一緒に飲めれば満足ですよ。私が勝手に憧れてるだけでもありますし」

 

「お前がいいなら俺は特に言わないがな」

 

「こりゃ酔ってますね。時間もあれなんでそろそろ帰りましょうかね」

 

現在の時刻は22時。電車の時間などもあるので皐月は帰ることにした。ちなみに皐月は酔うのが早いが酔い潰れはしないタイプだ。帰るのにも問題はない。遼太郎が出てきたところで帰ることを告げた。

 

「ご馳走さまでした。また今度ゲームで」

 

「気をつけて帰ってくださいねメイさん」

 

「じゃあなメイ」

 

皐月はダイシー・カフェを出て、まっすぐ駅に向かった。

 

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「なぁクライン」

 

「なんだよエギル」

 

皐月が帰った後、アンドリューが話かける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はこのままで良いと思ってるのか?」

 

その言葉と共に、酒で赤くなっていた遼太郎の顔が更に赤くなる。

 

「お前はどう思ってるんだ?」

 

ここまでくれば間違いなく彼女の話だろう。既婚者のエギルにはやはりその辺りのことには鋭いところがある。

 

「本当に良い人だよなぁ、彼女。料理もできて、明るくて、時々からかいはするけど憎めなくて…。……本当に良い人だよなぁ…。」

 

遼太郎はカウンターに頭を伏せる。彼は酒が入るとよくこの行動をとる。その様子を見てアンドリューはため息を吐く。

 

(お互いに自己評価低いんだよ。でも当人達がこの様子じゃ手伝えることもないからな。)

 

互いに気になってはいるが、お互いが遠慮してるので未だにこうして燻っているのだ。あと一つ何かがあれば変わるとは思うが、そのキッカケを作ることすらできない。

 

「クライン、まだ飲むか?」

 

「サンキュー、エギル。」

 

こうして男2人でもう一度飲み始めた。2人の行く末が良いものであれとアンドリューは願った。

 




予定としてはあと1話GGOでの店が入り、その後にファントム・バレットに入るつもりです。


オリ主とより仲良く出来そうな方

  • ロニエ
  • ティーゼ

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