シキは廃都市に転送された。廃都市はマップの中央に配置されてるが、シキが転送されたのは廃都市の端の方であり、比較的森が近い。
廃都市はシキの1番得意なフィールドだ。毒ガスをばら撒くことができるし、何より森や岩山よりもガス噴射装置が使いやすい。
早速シキは手頃な建物の中に入る。エレベーターなどは使用不可なので2階まで階段で進み、階段の防火扉などを閉めて部屋を密室にする。そして部屋の四隅に毒ガスグレネードを置いて起動させる。そうすれば2階だけが毒ガスに包み込まれる。
大会が始まって15分、1回目のスキャンが始まる。シキは端末を起動させ、他プレイヤーの位置を確認する。どうやら最初のスキャンが始まるまでに一部では勝負が起こっていたようで、自分を除き29の点の内4が黒くなっていた。そして予想通りというか、真ん中である廃都市には比較的多くのプレイヤーがいるのを確認した。
だが折角罠を張ったこの建物を捨てるのは惜しい。シキはここで相手が来るのを待つことにする。
待つこと7分。どうやらシキに比較的近かったのもあり、狙ってきたプレイヤーが建物の扉を開ける音が聞こえた。シキはGAU-22を構え、上がってくるのを待つ。
可能な限り気配を消しているだろう。階段を上がってくる音はあまり聞こえない。そして勢いよく2階の扉を開けられた。その瞬間濃度の高い毒ガスが階段に向かって飛び出し、また即効性があるので相手のプレイヤーは体の自由が奪われる。
動けなくなったところをシキは蜂の巣にした。
扉が開かれたてしまったのでやはりガスの一部は外に漏れてしまった。もう2階での毒ガス籠城は厳しくなってきたのでガスを全て1階に移すのを決める。その頃に2回目のスキャンが始まり、相手の位置を見る。点が2つ足りなかったが誰かは隠れているようだ。
スキャンが終わり毒ガスを1つ追加する。スキャンが終わるまでシキは2階にいたのでそろそろ対策をされるだろう。
少し待てば2階の窓にプラズマグレネードが2つ投げ込まれた。既に1階にいるので無事ではあるが少し驚く。そして相手は扉を開け同じように動けなくなり、またシキは同じように撃つ。
だがこれで毒ガスの大半が漏れたためこの場所は捨てなければならない。本来この大会で同じ場所にとどまり続けるのはリスクがそこそこあるので潮時だろう。
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BoBは人気の大会だ。それはGGOの中では止まらず、現実での配信や他のゲームでの生中継すらある。ALOも例外になく現在は生中継されている。それを見ているのは5人のプレイヤー。アスナ、クライン、シリカ、リズベット、リーファだ。
「お兄ちゃん中々映らないですね」
「最初から飛ばしまくると思ってたのにね」
彼等がこれを見ているのはキリトがGGOでの大会を応援するためだ。
「メイもこっち来れば良かったのに」
リズベットは少し不満を漏らす。最近放浪癖のある彼女と会わないわけではないが今日くらいは久々に会いたかった
「あの人も成人してるから色々あると思います」
「最近あの人は色々としてるみたいだぜ。何箇所かに調理器具担ぐような人だし」
シリカとクラインがそれを少しフォローする形にする。特にクラインはリアルでメイと一番会ってるため事情に詳しい。料理して働きたいこともだ。
「あ、この人面白い戦い方してます」
リーファが画面の一部に注目する。その画面では部屋に突入したプレイヤーが一瞬で体の自由を奪われており、動けないところを撃ち抜くガスマスクをしたプレイヤーがいた。名前を確認するとシキと書かれていた。
「相手を麻痺させて倒すやり方。風妖精でもたまに見るやり方です。」
リーファのその言葉を聞いてアスナは同じやり方を得意とするプレイヤーを思い出した。最初は彼女と面影を重ねたがプレイヤー名が違うし、何より型が違う。重装備で明らかにパワー型であり、スピード型の彼女とは違う。
「あ、この人強いです」
シリカが目をつけたのはペイルライダーというプレイヤーだ。3次元起動で相手に肉薄し、ショットガンでとどめを刺していた。
「おー凄いわね」
リズベットが口笛を吹き感嘆する。だがペイルライダーは次の瞬間いきなり倒れ、肩には針のようなものが刺さっていた。そして遠くからボロマントを着たプレイヤーが近寄り、ハンドガンで撃とうとした。
だがボロマントはいきなり体を仰け反らせる。先ほどまで彼の体のあった位置に弾が通り過た。これを察知したのだろう。
もう一度彼はハンドガンでの射撃準備をはじめ、ペイルライダーを撃つ。体力は大して減らず、またペイルライダーの麻痺も切れたようなので起き上がり、ショットガンを構える。
だが彼は急に痙攣したような動きをする。再び倒れた後、彼の体にノイズが走り消滅した。さきほどまで彼のいた位置に回線切断の文字がある。
5人はそれから彼の名乗りを聞き、ラフコフのメンバーとわかるまで時間はそれほど必要としなかった。そしてキリトが危険なことに巻き込まれていることも理解した。
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ゲームが始まって1時間。つまり4回目のスキャンが始まる直前にキリトとシノンは廃都市の付近に来ていた。死銃が次に狙う相手を殺す前に叩く作戦だ。
「初出場のシキか銃士Xかsterbenのどれかが死銃だ。」
「あのさ…銃士Xはひっくり返して死銃、Xは十字を切る動作。それにシキは漢字にしたら死期、ってのは流石に安直すぎ?」
シノンが推測を述べる。あのようなタイプは色々とこだわりを持ちそうなので、名前にも注目したのだ。
「キャラネームなんてみんな安易だと思うし…。俺は本名のもじりだしな」
「私も」
そして4回目のスキャンの時間がきた。2人は端末を開いて3人の位置を見る。
「シキと銃士Xが街にいるみたいだ」
「sterbenがいないわね。となるとこの2人のどちらかが死銃ってことになるわね」
「いや、多分銃士Xだ。シキは全スキャンで街からまともに動いた形跡がない。それに2回目は最初の位置から動いてなかったからな。今回も大して動いてないみたいだ。それに比べて銃士Xはかなり動いている。可能性は高い。」
そして2人は銃士Xの近くにいるプレイヤーの名前を表示させる。リココという名前が表示され、銃士Xがリココを殺す前に倒すことにした。
「頼むぜ相棒」
キリトはシノンに頼み、作戦行動に出た。
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ほぼ同時刻別の場所。シキは4回目のスキャンを確認する。残された名前は8であり、今この街にいるプレイヤーに自分を除いて4つあった。反対側の橋にキリトとシノン。真ん中のスタジアムに銃士X。その横のビルにリココだ。そしてsterben、つまりザザの名前はどこにもなく、生き残りは9だ。
シキとしては近くに誰もいないので、どうにか移動をするしかないが、装備が重いので進めない。開けた場所は苦手なので遮蔽物のある街から出られないし、銃士Xは機動力がありそうな装備をしているのでそろそろガス噴射装置を出すしかない。
GAU-22の弾倉はまだ1ケース半残っているが、そろそろ心許ない。銃を構えながらゆっくりスタジアム目指して進む。すると近くに大型のバギーを2つ発見した。
それをみたシキはノータイムで乗ることを決めた。まずGAU-22を固定させ、運転しながらでも撃てるようにする。そしてエンジンをかかることを確かめる。大きな移動手段を手に入れたので有利にはなるだろう。
廃都市の中でバギーの走行音を聞いたプレイヤーはまだいない。
動いてなさすぎて死銃候補から少し逃れられたオリ主。ペイルライダーさんの変態起動好きだったよ作者は。
オリ主とより仲良く出来そうな方
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ロニエ
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ティーゼ