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クエストが始まって20分。それぞれランダムに転送されたメンバーが集まりつつある。現在ボス部屋の前にいるのはキリト、シノン、リズベット、エギル、シリカの5人だ。
「あと4人だな。9人じゃ無理だと思うし他のパーティと組まないとな」
キリトはマップを開きながら言う。特殊ステージでもフレンドの位置はしっかり表示されるようなので、残りのメンバーの位置を確認する。
「あれ?メイがいないぞ?」
ここに来ていないクライン、アスナ、リーファの位置はすぐに確認できたが、メイだけ見つからない。そのことを把握したエギルはメイとパーティを組んでるシノンとリズベットに問いかける。
「お前たちは何か知らないか?」
言うタイミングを逃していたリズベットとシノンは、エギルが取り持ってくれたおかげで落ち着きを取り戻した。シノンがリズベットより前に出たので、シノンが説明するのだろう。
「メイはもう脱落したわ。開始3分で体力が消えた。減り方的には多分一撃死だと私は思ってる」
この事実を知らない3人は思考が止まった。ありえないことがいくつも重なっており、処理ができなくなったのだ。
「ちょ、ちょっと待て。それってつまりアイツは1人で挑んだってことだよな?」
まず我に返ったのはエギルだ。この中で1番歳上なだけあって、落ち着きや冷静さは高い。思うところはいくつかあるようだが1つずつ理解しようとする。
「これは候補の一つだけど、多分メイはボス部屋に飛ばされたんだと思う。いくらなんでも早すぎるし、誰かと違って1人で挑むほど馬鹿じゃないはずよ。」
リズベットは自分の予想を並べる。他にも候補は色々とあるが、1番可能性の高いものから提示し、現実味を持たせることにした。
しばらく話を進めることにしたが、やはり5人だけではまとまりにくい。残りの3人が到着するのを待ってから話すことにした。
クエスト開始から30分。まず1番近かったアスナが到着し、次にリーファとクラインが同時に到着した。リーファは初期転送位置が1番遠かったが、やはり風妖精だけあってそのスピードはピカイチだ。
全員が集まってからキリトはアスナ達に現在の状況を話す。やはりSAOでの攻略の指揮を執っていたアスナは状況の飲み込みが早い。
「メイさんが一撃死したということは、ボスはスカルリーパー並みの攻撃力か、大技を持っていると言うことです。前提としては前者を意識、後者は警戒レベルでいいと思われます。」
メイは火妖精であり、SAOの引き継ぎに近いステータスだ。耐久の方にも並よりは振ってあるので、この情報だけでも大きなアドバンテージではある。
「でも何でメイさんは離脱しなかったんだ?あの人は無茶な戦いはしないはずだ」
クラインが素朴な疑問をぶつける。その疑問にSAO出身者全員はため息を吐いた。どうやら見当はついているらしい。
「あのねクライン。さっきのアスナの言葉ちゃんと聞いてた?それにこのクエストの参加注意事項も読んでたら普通わかるはずよ」
リズベットが呆れる。相手はスカルリーパー並みの火力。そして明らかに制限された情報。この二つから攻略組であったクラインが気づかず、生産職のリズベットが気づくのがいかにクラインが鈍いことかを分からせる。
「つまりだなクライン。条件は75層の時と同じってことさ」
キリトがクラインに答えを教える。その答えにクラインは納得し、その時の戦いを思い出した。まず思い出したのはやはりあの火力。そして部屋のギミック。それは一度入ったら出られない部屋。
「出ようにも出られないってことか…」
「それにしても、他のプレイヤーも集まっているのに全然減らないですね。」
そう、こんなに話し込んでいればすでにレイドが組めるほどの人数は集まるはずだ。シリカが不意に出した言葉で全員がボス部屋の方を向く。50メートル先にボス部屋があり、その前にはすでにレイドが組めるほどの人数もいる。なのに数は減らないのだ。他にあるとすれば前から叫び声は聞こえるが、よく聞こえない。
「ちょっと見てくる」
シノンが立ち上がり、遠見のスキルを発動させる。弓兵には必須といってもいいスキルであり、遠くが見えるスキルだ。シノンが遠見で見たものは立て札だった。そこには例の3つの条件が書いてある。
「これはどうしようもないわね」
遠見を終えたシノンは振り返る。全員の方を向いてから看板に書いてあったことを要約して話し始める。
「あのボス部屋も制限が厳しいわよ。翅も魔法も使えないし、何より1人しか挑戦できない。だから進まないのよ。」
それを聞いた7人は呆然とする。全員が集まるのを待っていたので前の方では既に人は混雑している。
これと同時に疑問も解決した。メイがボス部屋の前に飛ばされていたと仮定すると、メイが1番初めに立て札を読んだことになる。彼女としては待つ理由がないのだ。
「でも連絡はできるのにしないっておかしいですよね?」
リーファの指摘は最もだ。単独で挑むにしてもそれくらいの報告はして欲しかった。いきなりのことで頭から抜けた可能性もあるが、独断専行はどうかと思う。
「1人ずつしか挑めない…ね。これはお兄ちゃん達に譲るよ。」
「私もその意見に賛成。因縁の深いアンタ達がどうにかするべきよ」
リーファの意見にシノンが乗る。2人は今回のボス戦を見送るようだ。旧SAOボスに挑みたい気持ちはあるが、目の前の6人は当事者だ。横取りするのは気が引けたのだろう。
キリト達はリーファを引き止めはしたが、彼女たちの決意は固い。最後はキリトの方が根負けし、順番を決め始める。
「リーファ、やるわよ」
「任せるよシノンさん」
キリト達の後ろでリーファとシノンがよくわからない会話を始める。振り返ると矢を3本取り出し、弓にかけるシノンがいた。
1本目の矢を適当な方向にシノンは放つ。その矢は方角は適当だが、上に向かって打ち出され、そこで炸裂音を響かせる。
シノンの放った矢はただ音がするだけの矢だ。本来はモンスターからのヘイトを集めるためのものであり、ここで使うのは場違いである。だがその音は不意をつけば人の注目を集めれる。次にシノンは残りの2本の矢を同時に放つ。
放った方向は先ほど音の矢と同じ方向。だがその矢は先程と違い、音はせず、大量の光を放った。
「うわっ!?」
「なんだ!?」
全てのプレイヤーの視界が真っ白になり何も見えなくなる。だがリーファだけはこの作戦を知っていたので目の保護はしていた。全員が身動きが取れなくなったところでリーファは詠唱を始める。
「ーーーーー」
視界が覆われるのは30秒間であり、その間がリーファにとっての勝負だ。誰もリーファの妨害ができないのでリーファの詠唱は邪魔されない。だが途中でキリトが詠唱に反応する。
「ーーーーー」
リーファの詠唱には以前レコンが唱えていた魔法の単語が入っていたのが聞こえた。それは世界樹攻略の時に彼が使った闇魔法。だが時間目一杯使ったその詠唱はまだ止まらない。
詠唱はついに30単語を超えた。そのころに全プレイヤーの視界は取り戻され、詠唱中のリーファを見る。彼女の顔には誰もつけた記憶のない切り傷のようなものがいくつもあった。
「ーー!」
リーファの詠唱が終わった。並べた単語は37であり、最大規模の魔法だ。リーファの体からボス部屋の前にいるプレイヤー達に風の刃が大量に飛び出す。
「くそっ!」
「あっ!?」
刃は当たった者の体を泣き別れにし、また掠めたプレイヤーには掠めた部位から爆発が起こった。
だが詠唱に時間がかかったとはいえ、これだけ強力で広範囲の無差別攻撃にはそれ相応にデメリットがある。リーファの体には更に傷が増え、HPも削れていく。
「やぁっ!」
誰かに止められる前にリーファは魔法の射出速度を上げる。爆発の音と煙で何も感じられなくなり、闇雲に打ち出す。
魔法発動から僅か12秒。ボス部屋の前は大量の煙に覆われ、何も見えなくなった。だがキリト達はリーファの後ろに立っていたので的になることなく、少し煙が晴れたところでリーファのリメインライトが見えた。
「リーファ!」
キリトが叫ぶ。こんなことは望んでいなかったからだ。リーファもそれをわかっていたので誰にも言わなかったのだろう。アスナが蘇生を試みるが、魔法の代償の一つで蘇生は意味をなさない。
煙が少し晴れ、シノンは煙の向こうをよく見始める。そこに一つだけだがプレイヤーの影が見えた。シノンは糸矢を取り出し、そのプレイヤーに向けて放つ。矢はそのプレイヤーに巻きつき、シノンはそれを引っ張りながら外に向かって全力疾走する。
「おい待てシノン!」
キリトが止めようとするが、シノンもリーファ同様止まらない。キリトは追いかけようとするが、エギルに腕を引っ張られた。
「よく考えろ。アイツたちが何故こんなことをしたか分かってるのか?俺たちのためだぞ」
「このまま放ってとけるわけないだろ!」
キリトは叫ぶが、その横からクラインがキリトの肩を掴む。
「最初に納得した時点で俺たちの負けだったんだよ。」
これがSAOならそういうわけにもいかないが、ここはALOだ。彼女たちの気持ちを無下にはできない。
「分かったよ…。」
ここまで言われてキリトは納得するしかない。順番も決まったので挑むことを決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「いやー、オネーサンたちすごいね」
シノンは約500メートル走ったあたりで対象は拘束を解いた。闇妖精のプレイヤーはリーファの魔法を掠めただけですみ、左腕と右目を失ったが体力は残っている。
「ここでアンタを逃すわけにはいかないわよ」
「そうだねー。ボクもこの体じゃオネーサン倒さないとあっちに行けないし」
闇妖精の少女は剣を抜く。シノンと向き合い、勝負が始まった。
2人目の脱落者はリーファ。シノンは戦線離脱。
レコン以上の仕事を果たすリーファちゃんマジ風妖精トッププレイヤー
オリ主とより仲良く出来そうな方
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イスカーン
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シェータ