中の様子を見ることのできないボス部屋の前でキリト達はシリカの勝利を願う。だが負ける可能性もあるので唯一の情報源であるシリカの体力の減り方を見るしか他にできることはない。
だが結果としてシリカは負けた。いきなり体力を半分ほど削られた時にはやはり高火力持ちということが確定的になり、次に3割以上のライフが全て消えたので2発で落ちることは間違いない。アスナとキリトは以前90層ボスクラスの死神を地下迷宮で見たことがあるので、そのくらいの強さだと予想した。
「シリカも負けたのか…」
だがいくら情報が入ったところでシリカが負けたことには変わりはない。結局相手の火力しか分からないが、メイの時より進歩したとは思えない。
「…ちょっと待って。」
「どうしたアスナ?」
唐突にアスナが呟く。先ほどのシリカの戦闘で思うところがあった。体力が半分以上減ったのにも関わらず、シリカの体力は回復することが一度もなかった。ピナがいたならば少しでも回復はするはずなのにだ。ここからアスナの中で仮説が立てられた。
「シリカちゃんの体力が一度も回復されなかったってことはピナが回復ブレスをしなかったってことになる。そうなるとこのボスは真っ先にピナを倒したかピナを行動不能にした…?」
この仮説を聞いたメンバーは冷や汗をかいたような感覚になる。シリカではなくピナが先にやられたのが偶然だとすれば気に止める必要はない。
「もし、ピナが真っ先に狙われたとすれば…」
そうなるとボスには合理主義的なAIが備わっていることになる。モンスタータイマーは相棒との連携が命である。それを奪われたなら途端に厳しくなる。
「つまり、駆け引きが必要ってことね」
リズベットが片手棍の持ち手を地面に突く。次の挑戦者はリズベットであり、駆け引きや交渉といったスキルは武器屋を経営している彼女の得意分野だ。生産職の希少性、自分の鍛治スキルの高さから値段を高めに設定し、相手を強引に納得させることから彼女は仲間内からぼったくり扱いされている。
「それなら俺も得意なんだけどな…」
リアルでカフェの営業、そしてゲーム内では雑貨屋を経営しているエギルもその例外ではない。メイもその区分には含まれるのだが、シリカ以上に情報がないはずなので納得するしかない。
「何よ、多分私が1番弱いかも知れないけどもそれでもアンタ達とはそれなりに戦ってきたつもりよ。勝ってみせるわよ」
周りから少し不安の目を向けられたリズベットは不満を漏らす。リズは普段は鍛治のことをメインにしており、戦闘はそれほど積極的ではない。それでも素材集めには行くことも多いので戦闘経験は十分だ。
「それじゃ、行ってくるわよ。」
「頑張ってねリズ!」
リズは気合を入れる。1番付き合いの長いアスナが激励を送り、リズベットは嬉しくなった。私だってみんなと同じように戦える。それをはっきりと証明できそうな気がした。
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リズベットはボス部屋に入った。ドアが閉まり、ロックがされる。そして松明に明かりがついていき、部屋全体が見える。真ん中にはボスが立っていた。
「■は■■か。■■■って■■」
その言葉にリズベットは戸惑う。何か意味はあるのだろうが解析できなければ分からない。鍛治師であり未知のものに惹かれはするがあれは倒すべき敵だ。片手棍を構えて出方を見る。
ボスは統計的に先制攻撃を仕掛けてくることが多い。リズベットもそれを理解しているためこの行動をとった。だが相手もリズベットの方を見ており、動く気配がない。やはり優れたAIがあるのだろう。
先に痺れを切らしたのはボスだ。瞬時にノイズの走った武器を抜き、構えた足に力を入れて一気に駆け出す。リズベットはその速度を見て回避は間に合わないと瞬時に判断し、片手棍で受ける。
リズベットは相手の武器を見る。ノイズが入っており、形状はおろか、間合いさえもはっきりとしない。偶に形が変わっているように見えるのでやりづらい。今はクラインの武器と同じぐらいの長さだ。リズベットは相手の間合いを確かめることにした。
相手はリズベットとの距離を詰める。武器を突き出されたので同じようにリズベットは受け流す。その途中でボスは急に姿勢を低くする。
「んな!?」
リズベットの足に足払いをかけてきた。完全には決まらなかったがそれでも姿勢を崩してしまう。再び詰めてくる。まだ万全ではない体制で攻撃は避けられない。リズは突き出しと振り抜きを受けてしまう。
「■そ、■■ら■」
体制を戻して飛び退いたリズベットは構える。相手の間合いがつかめない。ならもう諦めるしかないと判断し、リズベットは仕掛ける。
単調な棍を振り、わざと避けられるようにする。相手は想像通りに避けてくれたところで一歩駆ける。そして片手棍単発スキル、パワー・ストライクを放つ。範囲技であるため当てやすい。
相手は受けたものの威力で後ろに飛ばされる。そして短くても硬直の間に全力で詰めてきた。リズベットは武器同士を打ち合わせ、結果として互いに弾かれる。リズベットはその体制から3連続スキル、トライス・ブロウを放つ。相手は受けようとするが、筋力値に補正の入った攻撃に受けきれなかった。攻撃は全て入った。
「■■、く■っ」
相手にスタンが入る。この好機は逃さず5連続スキルのダイアストロフィズムを放つ。また全ヒットし、ボスの体力は1本目の5割を削る。
5発目の打ち抜きで間合いが再び開く。今までのやり合いからリズベットは相手の武器に予測がついた。
1つ、相手はスキルを使いたがらない。形状が変わると言っても武器の種類は変わらないようだ。スキルを使えばアドバンテージが失われる。
2つ、相手は距離を詰めたがる。刀ほどあればリズの間合い外から攻撃できるのにしない。それどころかリズの武器の方が長く感じれた。間合いは短いはず。
ここからリズベットは相手の武器を2択に絞れた。曲刀か短剣のはずである。
ボスが詰めてくる。やはり距離は短くしてくる。刀の間合いなのに攻撃もしてこない。リズベットは受け流そうとする。
だが今度は違った。相手は武器を上に投げる。自由になった手でリズベットの手首を捻りこむ。体が回って地面に叩きつけられる。相手が上になり、武器が手元に戻っており、両手で握り込んだ武器で突き刺しにくる。リズベットの胸に当たってダメージが入る。
もう一度相手は刺そうとする。リズベットは右足を引っこ抜き蹴り上げる。武器の面に当たり、そのままの相手の握り込んだ手を相手の顎に当てる。
武器を蹴り上げた感覚として、短い。そして曲がってることはなく、直線的であった。短剣だと確信する。
相手は思わず飛び退いてしまい、リズベットはそこから脱出する。そして再び相手に向き合う。
リズベットは運が良かった。いつ、どこで条件を満たしたのかは彼女自身にも身に覚えがないが、ボスの武器にかかっていたノイズは完全に消えていた。
その武器を見てリズベットの思考は止まった。意味が分からない。どうしてそれがある。
彼女がその武器を見間違えるはずがない。
どうしてその武器がそこにあるのか分からない
嫌だ、嘘だ、やめて。そう言った感情しか湧いてこない。
カラン
リズベットは片手棍を落としてしまう。両手で口を抑える。絶望感に襲われ戦闘どころではなくなった。
「■■、バ■て■■た」
ボスが何か呟く。多分隠したい情報がバレたことを嫌がっているように見えるが、それどころではない。
「なんで…、それを持ってるのよ…。」
やっと声が出る。相手はそれを構えながら答えた
「ア■■が■っ■くれ■■ら」
やはり分からない。だが受け答えはしているようだ。リズベットはつい怒鳴ってしまう
「はっきり答えなさいよ!なんでアンタが
ハー」
詰められていたことに気づかなかった。リズベットは口を切られ話すことが難しくなる。そして相手は姿勢を低くし、リズは目で追う。
「また■で■」
心臓の部分を深く刺され、抉られる。貫通した刃に体力を削られる。リズベットは、何も分からないまま負けた
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オリ主とより仲良く出来そうな方
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イスカーン
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シェータ