デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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エギル&■■■

クエストが始まってからまだ1時間も経ってはいない。それなのに脱落者ばかりが増えていき、ついに部屋の前には4人しか残っていないのが今の状況だ。

 

よくよく考えてみると1人ずつしか挑めないというのはプレイヤー達にとっては辛いものがある。本来SAOは協力してクリアすることを前提にされているのでボスは当然ながら強い。なのでレイドを組むのは必然であり、それぞれの役割が渡される。完璧なステータスなど存在しないので当たり前だ。

 

「やっぱり鬼門じゃねぇか…」

 

メンバーが残り半分を切り、クラインが現実を再確認する。仲間を待つ間にも精神面は削られていき、押しつぶされそうになる。SAOだと発狂していたかもしれない。

 

「やっぱり何も分からないな…」

 

リズベットが負けたとはいえ、何かないかとキリトは考える。体力の減り方で火力だけはわかるが、やはりそれ以上の情報はない。モンスター相手にこれほどやり辛いのは久しぶりだ。

 

「いや、分からないことなど無いわ」

 

アスナが何かに気づいたような発言をする。やはり攻略の指揮を取っていただけあり、微かな情報も見逃さない。

 

「メイさんに使われた一撃技が2人には多分使用されてないと思う。そんなのがあればリスクがあってでもボスは使うはずよ。」

 

2人も挑んでそのような攻撃を彷彿とさせるような事は一切ない。持ってたとしても技発動後のリスクはあるかもしれないが、あればそれでもうつだろう。だが未だメイにしか確認はされていない。そのことはシノンとクラインからは聞いている。

 

となると発動条件がある。それを満たしたのがメイということだ。だがクエスト開始から3分以内で脱落した上で条件を満たしたことになり、相手の体力関係ではないと思える。

 

「確定情報じゃないのに予測だけで突っ込むと足元をすくわれるぞ」

 

考え続けるアスナに対してエギルが止めにかかる。少ない情報から何とか予測するが、あくまで予測を超えないので先入観を持つのは危険だと判断した。実際1層ではβテストの情報を盲信してディアベルが死んでいるのだ。

 

「…ごめんなさい」

 

アスナが思いとどまる。常に誰も死なないように考えてきて彼女は無意識に責任感を抱いていた。それをいち早く止めれたエギルには流石というしかない。

 

「俺が行く。キリト、アスナを任せるぞ」

 

「あぁ、負けるなよエギル」

 

何かと付き合いが長いのでこれ以上の言葉はいらない。エギルは目の前の扉を開け、中に入った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

エギルが部屋に入るとそれに反応するかのように壁に設置された松明に火が灯る。扉が閉まってロックされるような音もした。ここまではアスナが予測した通り。部屋のギミックは見てきた上、今までの経験から焦ることはない。

 

部屋の真ん中にはボスがいる。人型であり、今までのバスのような迫力には欠ける。だが全身にはノイズが発生しており、不気味に思える。

 

「■■■ギ■■ん■」

 

ボスが何か言うようだがエギルにはわからない。意図的に隠してるとなると発言に何かボスに関するヒントがありそうな気もする。

 

「何か言ってるようだが分からんな。商談なら乗るぞ」

 

つい悪ノリで返してしまう。ここには2人しかいないので話すことが重要だと自己判断を下した。何か反応があれば儲けものだろう。

 

「■っ■■変■■せ■ね。そ■■も、■はも■■■す■。」

 

試した結果エギルの予測は当たった。受け答えだけはしっかりとしており、言語エンジンどころかユイレベルのAIだと確信する。これならシリカが挑んだ時にピナが先に狙われた線は濃厚だ。

 

ボスが武器を抜く。それにはノイズが入っており、エギルには見たこともない種類だ。リズベットがギミック解除をしたが、その状態はプレイヤーが変わるたびにリセットされることを誰も知る由はない。引き継ぎではないということだ。

 

エギルも武器を構える。両手斧は攻撃力も高く、また面が広いので何かと便利だ。

 

ボスが距離を詰め突きにかかる。エギルは手首を捻り広い面で防御する。そのままもう一度捻り、相手を弾き飛ばす。

 

「ぬんっ!」

 

軽い

 

一度受けただけでよく分かる。相手に筋力値はエギルより低い。そして武器の間合いも短いとも取れた。刀ぐらい見た目はあるが、先端がエギルに重なったのを彼は見逃さなかった。武器は見掛け倒しだ。

 

相手は詰めなければならないことが判断し、またその距離内と筋力値ならエギルの方が圧倒的に有利だ。互いに詰めるしかないので考えるより先に動く。

 

先にモーションに入ったのはボスだ。下から斬り上げの動きをとり、刃の付け根で受ける。当たった瞬間に飛び退かれた。

 

ボスが走ると同時にエギルも構えて走る。受けに回っては手数とヒットアンドアウェイでジリ貧になる。相手の間合いより先にエギルは斧を振る。相手は武器で受け、その瞬間にしゃがむ。そのまま振り抜こうとしている。

 

エギルは瞬間的に判断し、武器を振り上げて防ごうとする。だが間に合わず腰のあたりに喰らう。それでも何とか相手を上に持ち上げた。

 

落下位置に合わせて2連撃範囲技の『ワール・ウインド』を放つ。ボスもそれが当たるより先に2連撃範囲技で合わせる。

 

エギルはその動きで相手の武器を判断した。動きは短剣スキルのラウンド・アクセルだった。これで武器も分かった。

 

相手は武器がバレたことが分かったようだ。なので単発スキルのアーマー・ピアスで攻める。エギルも単発のスマッシュを放つ。互いにダメージは喰らうがボスの方が不利だ。

 

ボスはやり方を変え始めた。エギルの首を狙い始めたのだ。唐突に喉に迫るノイズの短剣を避ける。首の薄皮が切られたような感覚が出る。斬り上げ振り抜けを防ぎボスは5連続スキルのインフィニットを放つ。エギルは面で3発受け、残りの2発を受ける。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

「ん■っ!?」

 

だが受けながらモーションを取り7連撃重攻撃のクレセント・アバランシュを放つ。ボスがそれを全て受け、体力が一本目の9割減った。そして大きく弾き飛ばし、壁に叩きつける。

 

硬直が解けると互いに動く。受けあいをすれば有利なのはエギルであり、体力はボスの方が削られる。だから受けるつもりのないはずのボスはアーマー・ピアスで動き続ける。エギルもスマッシュで防ぎ続けた。たが2連撃のクロス・エッジを放たれた。全てくらったがエギルは斧を体に当てた。だがエギルの体力も消耗しており、残りは約4割程だ。

 

「■り■■ね」

 

一本目の体力が全て失くなり、ボスは飛び退いた。そして体の周りのノイズが少し剥がれ、ノイズの体の上に灰色のローブが出てきた。

 

ボスは再び走り出し4連撃のファッド・エッジ繰り出す。4発全てをかする程度で済み、エギルはランパージャックを放つ。だがそれを武器の付け根のようなもので引っ掛けられた。

 

「捕■■■」

 

そのまま鍔迫り合いになり、パワー有利のエギルは速攻で弾き飛ばした。そして構えようとした。

 

 

急に目の前にノイズがかかった細いものが3本飛んできた。それらを全て斧の面で受け切って落とす。

 

「■■っ」

 

「危ねぇ…」

 

何か覚えがある。だがそんなことも気にしてられない。ボスが走って3連撃のシャドウ・ステッチを放つ。受ければ麻痺状態になるスキルだ。動きを知ってるので2発は面で受け3発目は避ける。そしてクレセント・アバランシュ。硬直してるので全て当たり、体力の6割を削り取る。

 

再び距離を取られたボスは足を踏みしめながら立つ。そして何も握ってないはずの左手を無造作に引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピウッ

 

エギルの後ろから首に違和感が走る。先程防いだはずの細いノイズが飛んでいた。エギルの首に当たったのだ。

 

それが当たると途端に視界が霞み、そして回り出す。位置が特定できない。ボスが走ってるように見えるが、右に左に動くので余計に分からない。そして3連撃の何かのスキルを喰らう。エギルの体は動かなくなった。

 

「お、前、……まさ、か」

 

舌も回らない。麻痺状態幻惑状態という最悪の状態になり、今や何もできない。体力を半分削ったがここで負けるのが分かった。

 

「■■、■■■■」

 

多分耳にも状態変化があるのだろう。エギルの視界は更に回る。

 

視界の周りが治ったのはログアウトしてからだ。攻略組のエギルの挑戦はここで終わった。

 

 




あと3人です。次回はシノンの状況とある人が出てきます。

オリ主とより仲良く出来そうな方

  • イスカーン
  • シェータ

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