時間は少し前に戻り、ここはALO内のとある白い空間。ここで茅場晶彦とMHCP6はアスナとメイの戦闘を見ながら食事を楽しんでいた。現在はメイのローブが現れたところであり、まだ中盤である。
「ここからだな。」
「ローブが出てから暗器解禁だからね」
茅場とMHCP6は意見を交換しながら実況をしていく。なにせアスナは2人からは『可能性あり』と見られており、その分期待せずにはいられないのだ。
メイが強引にアスナとの距離を詰めようとしていく。スキル同士で撃ち合いながらも食らいついていくが、2人の目からすれば明らかにメイが不利だった。
「やはりアスナ君は強いな。彼女の剣筋を既に見抜いている上、元の実力が違う」
「だね。そういやあの子はなんで閃光の攻撃をギリギリとはいえ避けれているのか教えてよ。私が目をつけた頃より段違いだ」
説明を求められ、茅場はMHCP6にメイの実力はどこで身についたものかを教えていく。ヒースクリフでも受け切れる自信のない攻撃を対処する術を身につけたメイのことを。
「私もつい先日にSAOの過去データを見てから知っただけで直接は知らないんだよ。ただ彼女の実力はあるギルドのトップから直接伝授されているらしい。そこから彼女なりの調整も入ってあそこまで昇華されたようだ。」
茅場が持っている情報はここまでであり、つい最近にはその相手のログが書き換えられていたため誰かは特定できなかった。だがメイの戦い方から誰のものかは予想はつく。
「なるほど。それもあの子の正気を削る要因みたいだね。…やっぱり行っておけば良かったかな…?」
MHCP6はスフレチーズケーキを食べながら少し後悔する。
「なら今のを君が行けば良かったのではないか?」
茅場は入り口を指差しながらMHCP6を見る。そこには新たに1人の人物が立っていた。
その人物は火妖精の姿をしていた。赤い髪をポニーテールに纏め上げており、腰には短剣がある。その姿は明らかにALOのメイであった。
「やっと終わったぞ。くっそ…何をどうやってもこの姿から戻れやしねぇ…。」
だがその口調は荒々しく、更に今の姿形に文句を言っていることからメイとは違うことは一目瞭然だ。頭を搔きむしりながら勢いよく座り込んだ。
「しかも姉貴達は高みの見物か。一時とは言え何もかも分からなくなることやこんな格好することを避けてお食事会か。」
「ごめんってナナ。ほら膝貸すから」
「うるせぇ。その姿じゃ膝がどこか分かんねぇよ。背中貸せ」
ナナと呼ばれたのはメイの姿をしたものはMHCP7であり、6からすれば妹のようなものだ。ナナは冷蔵庫からうなぎの肝吸いを取り出し啜り始めた。
ナナも元々MHCP6と同じく、最初はノイズだらけの体だった。しかし今回のクエストの都合によりMHCP6の代わりにノイズだらけとは言え一時的にSAOのメイの体を手に入れたのだ。
最初はどんな体とはいえノイズだらけの体と別れを遂げたナナは喜んだ。だが一瞬でボス部屋に転送され、真っ先に入ってきたメイと茶番を演じることになった。その内容はアカウントの入れ替えと一撃死の見せかけ。ナナの体は火妖精のものに変わり、一瞬で待機部屋に送り返された。
ナナは姉妹の中でも頭がいいとは言えない。だが姉妹の中でも戦闘能力は高く、イレギュラーの掃除はしていたが、イレギュラーにやられるのは初めてだった。嵌められた体のまま動くのも嫌だったので、今の今までずっと戻せるか試していたが失敗に終わった。
「それで姉貴、今どこまでいった?」
ナナは体のことを受け入れ、それの優先順位を落とし今の状況を確認する。
「この子入れてあと2人だよ」
「なるほど。私が色々やってる間にそこまで進んだのか。」
肝吸いを飲み終えたナナは次に寿司を取り出していく。MHCP6も寿司を取り出し、画面の方を見る。今はメイとアスナが鍔迫り合いをしていたところだ。
「「ここだな」」
茅場とMHCP6はタイミングを見た。するとメイが口からナイフを飛ばしたが、アスナに避けられた。
「ふむ。やはり我が血盟騎士団副団長。同じ手は喰わないな。」
「正体も割れたね」
メイのノイズが剥がれ落ち、僅かな言葉を交わしてからアスナが決めにかかる。だがアスナのモーションの途中でメイは足からナイフを出してアスナの頬に当てた。
「うわっ…えぐいな…」
メイのやり方を初めて見たナナは素直な感想をこぼす。更にそこからクロスボウを取り出し、アスナにとどめを刺したのを見て笑うしかなかった。
「対人戦の化け物かアイツ。暗器とは汚ねぇな。」
「あの子まだ髪の中と籠手の中にも隠してるよ。後は口の中…歯に麻痺毒塗ってるね。」
「どこまで武器を隠すんだ彼女は…」
MHCP6から明かされた事実に茅場は少し引いていた。流石に隠しすぎだろうと思ったところを話そうとしたが、視界の端に立ち上がるMHCP6を捉え、口を閉じる。
「…またか…。あの子本当に大丈夫か?」
誰かとの戦闘が終わるたびに似たような反応を見せる。今回のアスナも前回のキリトも例外ではなく、MHCP6の様子からメイのことだと分かる。
「どれどれ…っと」
ナナもモニター越しにメイのスキャンを始める。1分もせずに全ての分析を終えたナナは笑い転げた
「なんだよこれ!うわっ!姉貴も仕事しろよ!滅茶苦茶じゃねーかコイツ!」
茅場から見れば
「…あっちに「もう閉鎖されてる」…わかっ…た。」
もう何もできないことをナナに知らされる。モニターでは既にアスナが負け、残りの参加者は1人になっていた。
茅場とMHCP6はこのクエストを終わらせる可能性のある人物は互いに2人いると思っていた。1人は共通してアスナだったがその可能性すら潰えた。茅場が賭けたキリトも既に負け、残りはMHCP6の賭けたクラインのみ。
MHCP6はただ願った。勝ってほしいと。
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最初はただ目の前の目標に向かって全力だった。ヒースクリフの正体を暴きなんとか1層とはいえ奪うことができた。この時はただヤバそうな奴を押さえ込めてよかったと思っていた。
たがそんな時に友が死んだ。その時は悔んだ。GM権限すら持っていた自分はそんなことにも気付けず、それに頼れない戦闘能力ではあの2人の説得も、顔を隠しながらの逃走劇を成功もできなかっただろう。
ただ悔しかった。悲しかった。悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて
悔しくて仕方なかった。
そこからは無気力感に襲われた。だが一晩その状態で過ごしていれば頭に一つのアイデアが思い浮かんだ。
そうだ。■■■■■■いいんだ。
そう決めてから私の行動は早かった。与えられた権限を全力で使い95層を改造した。私に勝てないならこの先もやっていけないだろう。私を見て心が折れるくらいならこの先もやっていけないだろう。ならば取れる方法は一つしかなかった。
そこからは自分の強化もした。これを果たすためには勝たねばならない。学んだ、盗んだ、教え込まれたスキルを復習し、鍛え、なんならもう一度本人の元にすら行った。
自分を限界まで鍛えたつもりだった。死ぬ覚悟すらできていた。
だがゲームが終わった。嬉しい誤算であり何も心配する必要も無くなった。ーーーーーだが何か違うような気もした。
ALOに新生アインクラッドが出た。ALOもSAOサーバーに関連しているため茅場との約束はいつか守られると思っていた。そして今、守られたため私はここにいる。
目的も。信念も。なにもかもがはっきりとしないまま立っていた。
違う違う違う。ならば自分で作ったこの状況を楽しもうとした。戦っている時は目的のために戦っている感じがした。
シリカを倒した。違う……
リズを倒した。違う…
エギルさんを倒した。違…う。
キリトすら倒せた。違う!
アスナも倒した。違う違う違う!
もう分からない。当初の目的はここでは絶対に果たさない。本来なら果たされたと考えるべきだが実際には果たされてない。
虚しい…。虚しい…。
次回からクライン戦です。
オリ主とより仲良く出来そうな方
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イスカーン
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シェータ