デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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お待たせしましたぁ!テストが…テストがぁ…


最後の挑戦者&■■■

クエスト開始から2時間を超えてボス部屋の前に残ったのは1人だけだった。残ったプレイヤーはクラインだけであり、キリトやアスナを打ち破ったボスの存在に身を震わせていた。だがその顔は笑っており、恐怖や絶望の類ではなく武者震いだとわかる。

 

もう考えるだけ時間の無駄な気がした。何もかもが未知数であるため勝つための算段もつかない。クラインは一度深く息を吸い込んでから吐き出す。それだけで落ち着き、目の前の大きな扉を開く。

 

クラインが部屋に入ったことに反応するかのように壁に置かれていた松明に火が灯っていき、徐々に見え始める。

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

壁に置かれた松明全てに灯ることによりメイは相手がクラインだということを確認する。その顔を見ると自然とメイの口角は上がっていたが、ノイズの走った姿では誰も分からなかった。

 

(やっとだ。一番■■■■■■■■相手が来てくれた)

 

ここはSAOではなくALOだ。その目的は果たされることはないが、メイはそれを完全に忘れてしまい武器を抜いて構える。

 

「ア■■だけ■■■に■■てみ■■す■!」

 

乱れた声でメイは叫ぶ。そのノイズの走った言葉にクラインは理解できずに固まったがメイが武器を抜いたのを見た瞬間に構える。

 

メイはその戦闘スタイルからまず動かねばならない。間合いの外から仕掛けられるより先にクラインの懐に飛び込み短剣を突き出す。クラインはそれを刀で受け流し、メイの体を追いやろうとした。

 

「んなっ!?」

 

だがメイはそのまま体を捻りこみ体を旋回させて短剣を振り回す。クラインは咄嗟に刀単発スキルの『旋車』を発動させて武器を合わせて防いだ。威力もクラインの方が高くメイはダメージを少し受けてしまう。

 

だがその僅かなスキル後の硬直を逃すわけにはいかない。メイは足を全力で動かしクラインの方に突き進む。クラインの硬直が解ける頃には既にメイの間合いであり、メイはそのまま斬りつける。クラインは先端を少し受けてしまったが、短剣の芯は逸らすことに成功した。

 

鍔迫り合いの体制になった瞬間にメイは不利になるのを理解していた。刀と鉈包丁での勝負ではまず話にならないためアスナのように相手を探ることなくまず押し負ける。

 

互いの武器が合わさった瞬間にメイは鉈包丁を軸にして体を持ち上げ、両足でクラインの腹を蹴る。

 

「ぐっ」

 

メイは着地と同時に全速力で走りアーマー・ピアスを発動させる。クラインは咄嗟とはいえ受けることには成功したが、流しきることはできずダメージを負う。

 

そこからもう一度アーマー・ピアスを放ち、クラインはそれを受けきる。硬直時間は短く、クラインはスキルを使わない袈裟斬りをメイに当てる。だがクラインが振り下ろし終えたと同時に硬直は解け、メイは2連続スキル『サイドバイト』を放つ。一撃目は当たり、2撃目からクラインも3連続スキル『緋扇』をメイの鉈包丁に合わせながら放つ。一撃目でメイは流され、2撃目から食らう。

 

「■■た■!」

 

メイはクラインに突っ込む。間合いの外からクラインの刀をモロに浴びながら突きを連続で放つ。2発目でクラインは剣速はメイの方が速いことを理解し、メイの手元をよく見た。そしてメイの腕が伸び始めると同時に5連続スキルの『鷲羽』を放つ。特効状態だったメイは避ける手段もなく全て受けてしまい、1本目のライフを全て失う。

 

「よし、まだ大丈夫だな」

 

クラインの体力はまだ8割を少し切ったところだ。ボスがまだどのような変化をするか分からないが、このペースなら勝てると考えていた。

 

メイの体からローブが現れる。焦っていたメイはローブが現れるその時まで色々と考えた結果二つのことが導き出せた。

 

一つ。完全に焦っていた

二つ。コンビをある程度組んでいた相手なだけあって短剣の動きを知っている。

ただしクライン本人は完全に無意識で対処をしているためそこに気づくことはないようだ。

 

頭を冷やしたメイはローブを触る。仕込んでいた武器の存在に安心感を覚え、ノイズで覆われた顔を上げた。

 

クラインは足をジリジリと動かしながらメイの様子を見ている。ゲージブレイクの直後でパターンの変化を見極めようとしているのだろう。

 

様子を見ている間になんとかダメージを与えようとメイは行動する。同じようにクラインに突っ込む。クラインはスキルを使わずに上から下に斬り下ろす。

 

「何っ!?」

 

だが刀が届くより先にメイは後ろに反る。フェイントが上手く決まり体制を崩したクラインの頸を狙う。クラインは短剣の先を頸に掠め薄皮一枚で何とか避けたが肝を冷やした。

 

頭を振って避けたためクラインの視線はメイを向いていない。ローブで隠れた針を2本取り出し投擲スキルを発動させる。頭が振り戻った時に目の前に針があり驚いた顔をしていた。だがクラインは頭を止めることなくそのまま振り下ろし、針は後頭部を通り過ぎた

 

「■ッ!」

 

思っている以上に対策が的確で舌打ちをする。体制を戻したクラインはメイに向かい走り刀をメイの左肩に振るう。それを鉈包丁で受けて互いに後ろに一歩下がる。

 

互いに一歩詰めもう一度武器を合わせる。すり足で近寄りクラインがメイを押し返した。だがメイは右手を地面につき、手を滑らせて衝撃を抑える。クラインはメイのまともに使えない右腕を狙い片手で刀を振る。だが左手の鉈包丁で受け、一瞬ですり抜ける。それを見たクラインは体を縦に捻り、遠心力を乗せながら頭に振り下ろす。それを同じように受け、右にすり抜ける。

 

その2度の衝撃で松明の火が消える。視界は暗くなり見えにくいが対応はできる。突きを防がれ、斬りあげを受ける。

 

突きのタイミングでアーマー・ピアスを発動させる。至近距離で、その上必中の距離だ。クラインは避けることをせず緋扇を放つ。硬直状態のメイに全てヒットし、距離を開かせる。

 

 

 

 

 

メイはナイフを吹きながら針を6本飛ばす。3撃目の途中で合わせて投げたため当たるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラインの体が急に止まる。3撃目の途中で体を無理やり動かしてスキルキャンセルをしたのだ。2撃目で距離を取られたため硬直の間に攻撃も届かず、遠距離用の仕込みはもう無い。

 

「嘘…■■…」

 

「…そういう…ことですか…」

 

クラインは奥義スキル散華を発動させる。集中していなかったメイに全てヒットし2本目を削り切った。

 

メイを覆うノイズが全て剥がれる。そしてクラインにとっては確信から絶対的な事象へと変化する。

 

「どういうことですか…メイさん…」

 

予想はできていたとはいえクラインは動揺を隠せなかった。メイがボスとしてそこに立っている。ローブの中からとは言え見慣れた顔がそこにいた。

 

「どうもこうも…そういうことです」

 

たった一言だけ呟く。まだクラインの体力は7割以上残っているが、メイにしてみれば麻痺を当てれば相手の体力の量は基本的に関係ない。

 

メイは動揺しているクラインとの距離を詰める。鉈包丁を振りかぶってからクラインは意識を戻して刀で受ける。

 

「なんでメイさんがこんなことしてるんですか!?」

 

メイの人柄的に答えられないと分かってはいるがどうしても聞いてしまう。だが、たった一言だけ、確かにメイの言葉が耳に聞こえた。

 

「私が…こうすることを望んだからです!」

 

メイは叫びながら鉈包丁をクラインの脇腹めがけて突き立てに行く。クラインはそれを真正面から刀で受け流し、鍔を当てがい鍔迫り合いにもう一度する。今度は蹴りにも注意していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズブリ

 

膝に違和感が走る。メイの足からナイフが飛び出し、それがクラインに刺さっていた。クラインはそれに気づいた瞬間力を振り絞ってメイの鉈包丁を押し返し距離を取る。それが終わった瞬間に体から力が抜けその場に倒れる。

 

「やっぱり私のやり方知ってる人と戦うのは苦労しますね」

 

上手く毒が刺さればそれで勝ちだが手の内がバレていると中々決まらない。足のナイフはクラインすら初見であり対抗策は無かった。

 

「本当にすみません。でも仕方ないんですよ」

 

メイは鉈包丁を握りながらクラインに近寄る。その顔を見ればどこかこの結果に満足しているようで、だが何か悲しそうな顔をしていたメイをクラインは見てしまった。

 

こんなやり方は間違ってるはずだ

 

舌が回らない口を動かす。クラインは知ってるはずだ。メイが無意味なことはしない主義だと。何か目的があって動いているはずだがやり方が間違ってるはずだ。

メイはクラインの元まで歩き、刀を投擲スキルで壁に向かって投げる

 

いつもそうだ

 

大事なことに最後まで気付かず、手遅れになっていることが多い。クリスマスイベントも、コーバッツの時も、ヒースクリフのことも。…後悔ばかりだ。

 

メイは鉈包丁をクラインの頸に当てる。

 

何も…話してくれない…

 

クラインは納得していない。今は麻痺で動かないがまだ間に合うはずだ。それにメイを倒さないと話してくれないだろうとも分かっている。

 

動け…

 

動いてくれよ体ァ!

 

メイが腕に力を入れ、鉈包丁を引こうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイの手からハーネット・メイデンが離れる。鉈包丁を蹴られその衝撃で手放してしまった。メイは思わず飛び退きクラインの方を見た。そしてその驚くべき状態に目を疑った。

 

麻痺状態が解けていない

 

もはや意味不明だった。そんなメイの反応を知らず、また本人すら知り得ない状態でクラインはメイと向き合う。

 

「すいませんメイさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歯ァ喰いしばれ」

 

互いに素手。体力は同等。

 

2人の負けられない勝負が始まった

 

 




コブシ・アンド・オンライン

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