デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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休みになってダラけすぎました。
3週間ぶりの投稿です。





殴り合い&決着

クラインとメイにとってお互いに武器を取りに戻るという選択肢はなかった。クラインの刀は壁に刺さっており、またクライン自身が刀がどれほど深く壁に刺さっているかを把握していないからだ。中途半端に背を見せてしまえば何をされるか分かったものではない。

 

メイの鉈包丁は地面に転がってはいるが、HP以外の全体的なステータス面でクラインには劣る。また麻痺耐性のついていないクラインが麻痺状態のまま動いている現在、他のステータスが強化されていてもおかしくはないと思っているため、迂闊に武器を取りに行けばそこを狙われるはずだ。

 

だからこそお互いに素手で対応することを選んだ。メイはローブを投げ捨て、更に鎧と籠手に仕込んでいた針やナイフ、毒液の入った小瓶なども全て捨てた。毒が効かないならあっても邪魔なだけだ。

 

拳を構えながらお互いは睨み合う。少しずつ距離を詰めながら最初の一撃を入れるタイミングを探ることにした。

 

一歩、二歩と近寄り、周りながら目を離さない。そして2人は同時に足を地面に深く踏み込んだ。

 

お互いの拳が腹に入る。やはり性別的な体格の関係上クラインの方が深く入っているが、メイの腕も伸びきるギリギリなのでダメージはある。

 

「ヴッ…」

 

「ッ…」

 

同タイミングとはいえ中々のクリティカルヒットに2人は飛び退いてしまう。それでも戦闘中には変わりなく、構えは崩してしまっては負けにつながってしまう。クラインは腕で口を拭い、メイは下がっていた頭を上げる。

 

1発目の撃ち合いからメイの心にさらに火がつく。腕と顎をさらに引き、クラインより先に動く。左の突きをクラインは右腕で躱し、残った右腕で殴りつけようとする。だがクラインは受けた右腕を伸ばし、メイの頬を狙う。だがメイも強引に腕を伸ばして起動を逸らした。

 

クラインは一時防御のため、メイは起動確保のために交差された腕を下ろす。だが腕の位置的に残ったのはメイであり、下から顎狙いで振り上げる。

 

だがクラインは上体を反らして避け、次に体を戻すと同時に、殴りかかる。一度でも体を止めてしまえば麻痺がまた襲うかも知れない。クラインは体を止めてはいけないと思っていた。

 

メイも拳を伸ばし、殴りつけようとする。お互いの拳が手首によって起動が僅かにずれる。

 

1発

2発

 

クラインは体を引き、メイは3発目の突きを繰り出す。クラインはその突きを両腕で受け、メイの腕が引くと同時にその場で膝を深く曲げた

 

クラインはその場で跳び上がる。元々筋力ステータスの高いクラインはその跳躍も高いところまでいき、メイの身長を超える高さまで飛んだ。

 

メイはそれを見上げ、即座に腕を交わす。クラインの蹴りが3発当たり、4発目は両脚による押し飛ばしで体を飛ばされた。

 

「チッ」

 

姿勢を低くして掌を地面につける。5メートルほど手を擦らされたがやっと体が止まる。すぐさまに顔を上げたがそこには驚くべき光景があった。

 

「んなっ!?」

 

「ア゛ァ!」

 

クラインが全力で走っていた。そのスピードはメイが普段知るものよりも速かったのだ。やはり麻痺のことと言いステータスそのものが上がっているのかも知れない。

 

クラインはメイに飛びかかり、メイは緊急的な受けから2人は地面を転がる。回転が止まればクラインが上を取っており、腕を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

クラインの腹部に衝撃が走る。メイに蹴られた体は飛び上がらされ、それをメイは追う。なんとか足から着地したクラインたが、腹部の衝撃は残り、顔を下げてしまう。一瞬で頭を戻したがメイの拳が迫っていた。その攻撃を後ろに下がりながらも避けるが、迫り来るメイの気迫には押されてしまう。

 

このまま下がり続ければいずれ壁に当たるだろう。3度目の突きを避け、4発目の攻撃を体をひねって避ける。その時にクラインは体を回し、足を上げて回し蹴りを放つ。

 

「おっとぉ!」

 

メイは首を振って避ける。クラインの足は髪と鼻先を掠め通りすぎたが、そのままの勢いで回る。もう一度蹴りが放たれ今度は腕で受け止める。

 

「がっ!?」

 

クラインは止めた足を軸にして、メイの腕を滑らしながら飛ぶ。残った片足でメイの頭を蹴り抜く。

 

「い゛っ゛!?」

 

宙に浮いたクラインをメイは逃さない。浮いている体全体のうち、伸びている脚を掴んで壁にその脚を握りこむ。そして地面に叩きつけ、その場から飛びのく。

 

二人は互いに向き合い、もう一度構える。だが攻撃に転じる前にお互いは状況を確かめた。

 

(左眼…まともに見えてへんな…)

 

先程のクラインの蹴りで左眼を失ったようだ。距離感が薄くなり少々闘いにくい。

 

(右脚…違和感が半端ないな…)

 

メイに握り込まれ、叩きつけられた脚に違和感が襲う。少し動かしてみるが動きがかなり悪い。

 

だが修正を聞かせ、ふつうに動けることはできる。失ったわけではないのでまだマシだと思うことにする。クラインは地面を踏みしめ、勢いをつけて走る。

 

クラインが突きを放つ。メイは一撃目を喰らい、2発目は後ろに飛んで避ける。クラインは再び体を捻り、回し蹴りを放つが、上体を反らされて避けられる。

 

(なら!)

 

左肘を直角にし、メイに向かって落とす。

 

「あっ!?」

 

メイはそれを読んだいたかのように掌を出して肘を止める。そして再び力任せに握り、クラインの動きを固定した。

 

「らぁ!」

 

動きの止まったクラインに両足で飛び蹴りを放つ。吹き飛ばされるクラインを持ち前の速度で追いかけ、クラインの体制が整う直前に殴りかかる。

 

「つっ!?」

 

腹に拳が入りクラインは更に追いやられる。クラインは体術スキルを瞬時に発動させ、動く前にキャンセルをする荒技を出し、硬直で体を留める。手は地面についていたので、逆立ちの姿勢で手で跳躍する。

 

「嘘やろ!?」

 

無理な動きを成功させたクラインに驚かされる。そのまま右の回し蹴りに当たるまで気付かず、モロに喰らい体を飛ばされる。

 

やはりクラインはステータス、プレイヤースキルの何もかもが向上している。一撃の重さはキリト並みであり、一気に体力を削られる。

 

 

 

 

 

負けてやれるわけないやろ…

 

メイはよろけながら立ち上がり、見えにくい視界でクラインを捉える。するともう目先であり、拳を脇腹に食らってしまう。そのまま左の回し蹴りを側頭部に放つ。

 

「いっ…」

 

「つっ…」

 

回し蹴りを喰らいながら、なんとかその場に踏みとどまる。そしてゼロ距離なのは理解してるのでクラインの頬にアッパーを入れる。

 

回し蹴りを放ったクラインは体は浮いている。その脚を掴み、遠心力を利用しながら投げつける。クラインは壁に打ち付けられ、ダメージを負う。

 

「フゥー」

 

「ハァー」

 

激しい殴り合いの応酬で精神的に違いは疲れている。一度息を吐き、三度構える。

 

二人は同時に走り出し顔めがけて拳を振る。

 

 

メイの拳がクラインに当たり、クラインの拳はメイに当たることはなかった。これを機にメイは何度も殴りつける。クラインの視界は揺らされ拳を構えるどころではなかった。

 

何度も何度も殴られる。

 

クラインの体力は残り4%ほどになる。メイも残り1.8%でありここで止めれば負けるのを分かっていた。クラインは後ろに下がろうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ

 

クラインは足を刺されるような感覚に襲われる。メイが踵捨てずに仕込んだ最後のナイフでクラインを固定する。

 

前によろつかされ更に殴られる。避ける術も、躱す術もクラインにはなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

メイは勝てると信じて疑わない。ここで勝たないと目的を果たせなかったことになる。勝たなくては。倒さなくては。

 

麻痺を無効化された時は勝てないと思ったが、残した仕込みが効いてなんとかなっているのが現状だ。ここでクラインだけは絶対に倒さないとダメだ。

 

倒す。クラインも、キリトも、アスナも、エギルも、シリカもリズベットも■■■■■ために

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

クラインの体から力が抜けていく。

 

(最後!)

 

メイは腕を振ってアッパーを放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スウェアーバック

 

メイのアッパーはクラインを捉えることなくそのまま空振りをする。

 

「歯ァ!」

 

クラインの拳がメイに迫る

 

「喰いしばれぇぇぇ!」

 

クラインの拳がメイを捉える。メイは体を飛ばされ地面に倒れこむ。そのままピクリとも動くことはなく、静かに倒れていた。

 

「……止まったかよ。メイさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けてたまるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けてやれるわけないやろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイが急に起き上がり、その拳を振りかぶる。そしてそのままクラインに向かって伸び、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その拳はクラインをすり抜け、メイはポリゴン片になって消えた。

 

congratulationsの文字はクラインの目に入ることはなかった。

 

 

 

 




次回でオリジナル編の最終回です

オリ主とより仲良く出来そうな方

  • イスカーン
  • シェータ

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