デスゲームのお食事事情   作:lonrium

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クライマックスだぁぁぁぁぁぁぁ。遅くなりましたぁぁぁぁぁぉぁ。

消えては書いて、構成に悩みまくった結果満足できるものになっているかは分かりませんが、楽しんでくだされば幸いです。


目的&閉幕

クエストのリザルト画面を全て流し、クラインもとい壷井遼太郎はログアウトをする。頭に装着されているアミュスフィアをすぐに外し、直ぐ横に置いてある端末を確認する。

 

端末のロック画面を見ると、キリトやアスナ達からの通知が大量に来ており、またメイについての議論が展開されていた。その中にメイが発信したメッセージは何一つ無く、何かの間違いということもない。増してやあれ程戦った遼太郎としては確信すらある。

 

以前に一度飲み潰れた皐月を家に送ったこともあるので家の場所は知っている。あそこまで必死に喰らいつくメイを見たことなかったので、これからどういった行動に出るかも予測はつかなかった。皐月と直接話す為に遼太郎は家を飛び出した。

 

 

 

 

時間は少しかかったものの遼太郎は皐月の家に辿り着く。家の呼び鈴を鳴らし、中からの対応を待つ。

 

『いや、今日は皐月は午前中から出かけてるよ』

 

中から聞こえた声は皐月の叔父のものだった。皐月を送った時に何回か話したことがあるので間違いない。となると皐月は今どこにいるのかも検討が付かなくなってしまった。あそこまで必死だった皐月がこれからどういった行動に出るかも分からない。遼太郎は挨拶をしてからその場を立ち去り、当ても無いまま一人で捜索を始めた。

 

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「クッッッッッッッッッッソォォォォォォォォォォ!!」

 

『起きたと同時に叫ばないでよ!ビックリしたじゃない!』

 

とあるホテル内でメイもとい篠原皐月はログアウトをしていた。HP0のログアウトはメイも例外ではなく、クエスト内で2度体力を失った彼女もログアウトをしていた。

 

皐月は頭を掻き毟りながら体を起こす。そして身体にいくつか付いてある線を全て外しながら大きく溜息を吐いた。

 

「あ、すいません。完全に忘れてました。バイタルチェックありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛子さん」

 

皐月の横に立てかけられていた端末には通話中の文字が出ており、その相手の名前は『神代凛子』と表されていた。彼女は茅場の元恋人であり、ある交換条件のもと今回の皐月の企てに協力をしている。

 

『その調子だとダメだったみたいね』

 

「アカンかったんですよ。負けました。」

 

『それで?この後はどうするのよ。流石にアキみたいなことにはならないわよね?』

 

「死ぬつもりなんてないですよ。……そうですね…」

 

皐月はベッドから降り、着替え始める。その間に少し思考を巡らせた。

 

「このままこっそりと明日には帰りますか。合わせる顔もあらへん訳ですし」

 

クローゼットを閉めてから皐月は答えた。その答えに凛子は一瞬だけ考え、すぐその意味が分かった。

 

『そう、それなら問題無いわ。それと困ったことがあるならいつでも連絡を頂戴。()()()()なんだから』

 

「あ、まだ他にも頼ってもいいんですか?」

 

皐月は意地の悪い顔を端末に向ける。その顔を見て凛子は安堵をしながら、それと同時に少し失敗したかなと苦笑いを浮かべる。まだ皐月と出会って数日しか経っていないが、彼女をどうしても茅場晶彦と重ねてしまい、大事に思っている。

 

「それじゃ、お世話になりました」

 

通話を終了し、皐月は部屋を出る。季節もあって外はすっかり暗くなってしまったが、皐月は真っ直ぐ家に帰るつもりはなかった。それにこれだけの騒動を起こした後に真っ直ぐ家に向かえばその途中で誰かと鉢合わせすると考えたのだ。

 

(基本的にいい人ばかりやからなぁ…。)

 

薄暗い中目的もなくフラフラと歩く皐月を止める人はいない。

 

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走る。走る。走る。

とにかく走る。

 

午前中から家を留守にしているということは、後になってこうなることを予測していたということだろう。それに皐月の足からして行動範囲はそう広くない。それに休みを挟むのが基本であることも知っているので休める場所を手当たり次第に探す。

 

たがどこを探しても遼太郎は皐月を見つけることができなかった。時刻は夜8時。視界は真っ暗でよく見えにくいが、ここで足を止めてしまえば駄目な気がした。

 

(どこにいるんですか…、メイさん…!)

 

どうしても聞きたい。何があったのかを聞かなくてはならない。息を切らしながら、闇雲に走る。

 

ふと鼻が水の匂いを捉えた。下には河川敷があり、そこから匂いがしたのだろう。遼太郎は階段を降りた。

 

 

 

「…………こんばんは…」

 

間違えるはずがない。階段の下のベンチでバツの悪そうな顔でこちらを見上げるのは篠原皐月だ。

遼太郎は階段を下り、ベンチに座ってる皐月の前に立つ。

 

「…どういうことか教えてください」

 

その言葉に皐月は視線を逸らす。出会い頭にこれだけでは分かりにくいが皐月には分かっていたからだ。そして何かを思い出したかのように目線を戻す。

 

「まぁアスナには勝ったら教える言いましたしね。わかりましたよ。とりあえず座ってください」

 

遼太郎は皐月に促され隣に座る。そして皐月は杖を持ち上げ、地面を2度叩いた。

 

「SAOでキリトとヒースクリフが決闘した日の夜にですね、私はヒースクリフの正体を推測で当ててしまったんですよ」

 

懐かしむように皐月は言う。今思えばあれほど無謀なことをしたのは本人も反省はしていたが、それ以上の収穫があった。その事実に遼太郎は顔を少し変えたが、口を挟まない。

 

「そして正体の看破と口止め料として、何でも望むものを与えると言われたんですよ。その報酬として95層を明け渡してもらい、それに伴って一部のGM権限も貰いました。とは言っても誰か来たらそこを退くくらいの置物としてですけどね」

 

杖を持つ手に力を入れて立ち上がる。一歩二歩と進み遼太郎に背を向けたまま皐月は口を止めようとしなかった。しかし湧き上がる疑問に遼太郎の口はいつのまにか動いていた。

 

「…なんでそのことを言ってくれなかったんですか…」

 

「言えなかったんですよ。口止め料として頂きましたし、言ったら容赦しないとも示されましたし…。」

 

皐月は石を拾いあげ河に投げる。ポチャンと音を立てて石が沈むのを見届けてから立ったまま遼太郎に向き直る。

 

「…それから、知り合いが死にました。GM権限持ってても救えないのは救えないって…痛感させられました。もう何度目か忘れましたよ…。何人も何人も店に来ないのを悲しんだのは…」

 

当時の知り合いがふと蘇る。コーバッツ、クラディール、ゴドフリーはもちろん。黄金林檎や月夜の黒猫団の面々も思い出し、ふと涙が流れた。

 

「私はもう嫌になりました。そして自分が持っている95層である結論に至りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の体力を1にして幽閉すれば良いんだと」

 

この発言の時、虚しそうな顔で笑っている皐月を遼太郎は見逃さなかった。そして遼太郎を考えに考え、この発言の意味するところに辿り着いた。

 

「つまり、メイさんはSAOクリアを…」

 

「諦めました。全員で安全圏に行こうと決めました」

 

周りから見れば、無論遼太郎からしても明らかに間違っている。だが一部が望んだ『全員で脱出』というような夢物語も皐月は見ない。下層、中層、最前線全てを見てきた彼女はいつしかそんなことを諦めた。だが『生存』の夢は諦めきれなかっただけだ。

 

「そんなの…、おかしいじゃないですか!なんでもっと信じてくれないんですか!」

 

そして遼太郎は怒った。つまりメイはクリアを微塵も信じていなかった。茅場に一点張りをしたのだ。

 

「最前線にしろそうじゃないにしろ何にも変わらんやろ!毎日誰かが死んでいく!店で笑顔を見せてくれた人がもう来ない辛さを、名前に横線が入っていく怖さを、最前線とは桁違いなんやコッチは!」

 

泣きながら皐月は叫ぶ。やはりこのやり方はどう考えも納得はできなかった。

 

「私一人が汚名を被るだけで良かったんですよ!95層が突破されるまで設定に生かされる私なら何とかできた!75層のクリアなんて誰も予想できひんやろ!」

 

実際はヒースクリフもメイも、その場にいた誰もが75層クリアを予測できなかった。それによってメイの仕掛けは無駄になったが、その仕掛けは95層突破まで、メイにはノイズが走り、安全圏キル可能と、メイによってキルされたプレイヤーは95層の出入り禁止のエリアに飛ばされることだ。

 

その仕掛けのことも遼太郎は皐月の口から話してもらった。

 

「…なんも間違ってへんやろ…」

 

遼太郎は自分の手に力が入るのを分かった。そしてベンチから立ち上がり皐月の方へ向かう。

言わなきゃいけない。こんなのは間違っている。

 

「もう、やめてください。俺はこれ以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きな人が間違うのを見ていられない」

 

真っ直ぐ目を見据えながら言う。ただ皐月はその言葉に口を開いた。

 

「もう遅いかもしれません。でも今からでも間に合うかもしれません。あなたが間違うなら引きずってでも連れ戻します。」

 

ただ涙の量が増える。それでも自分が間違っているとはどうしても思えない。

 

「私は…戻りませんよ…」

 

「なら俺が付いていきます。あなたは間違っていても、それを正解にしてみせます。あなたは一人で間違ってはいけないんです」

 

この言葉で分かった。私は一人で戦う必要などどこにもなかった。ただ目の前の、言ってることがメチャクチャの馬鹿な人がついている。

 

「…馬鹿じゃないですか。私もあなたも…」

 

「何があろうとついて行きますよ」

 

「…ば〜か」

 

いつのまにか皐月は遼太郎の胸に頭を預けていた。その胸はいつのまにか濡れていた。

しばらくしてから皐月は落ち着き、笑顔で向き直る。顔は泣いたことにより赤いが、その笑顔は純粋なものだった。

 

「帰りましょう」

 

「はいっ!」

 

二人は河川敷を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチの上に置かれた二つの缶コーヒーだけが、二人が手を繋いでいるのを見た

 

 

 




これにてオリジナルストーリー編は終わりです。
次から数話を挟んでマザロザ編です。

オリ主とより仲良く出来そうな方

  • イスカーン
  • シェータ

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