ソード・オラトリアーanother story-   作:ロクでなし白

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追憶編

 

 

 これは【ロキファミリア】の副団長であるリヴェリア・リヨス・アールブがのちに【剣姫】と呼ばれる少女と出会うより前の頃、とあるクエストの間本当の親子のように過ごしたヒューマンの少年との古い思い出。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、お母さん。今日のご飯なに~?」

 

 少年はお母さんと呼ぶエルフの女性に尋ねた。その様子は彼女のご飯を本当に楽しみというのがはたから見てもわかるぐらいウキウキしている。

 

「ふむ、今日は大量でな。お前の大好物な海の魚をメインに簡単なカルパッチョにでもしようかと思う」

 

「ほんと、やったー、ぼくお母さんの作ったカルパッチョ大好きなんだ。ぼくも何かお母さんのお手伝いしたい」

 

「そうか、では森の中から木の枝を集めてきてくれ。くれぐれも遠くまで行くんじゃないぞ、森は危険だから暗くなる前にはちゃんと戻ってくるんだぞ」

 

 リヴェリアは重ねて少年に注意しておいた。こうでも言っとかないと少年がいうことを聞かないのは経験的にわかっているからである。

 

「もー、お母さん。そんなに言わなくてもそれぐらいわかってるもん。枝集めぐらいちゃんとできるもん」

 

少年は少し拗ねた態度で彼女を見た。そんないじけた少年の可愛らしい姿を見て、リヴェリアは軽く笑ってしまった。

 

「うー、お母さんの笑わないでよー。いいもん、たくさん枝集めてきてお母さんを驚かせてやるんだから」

 そう言って少年は森の中に向かおうとした。

 

「すまない、お前の姿があまりに可愛かったものでつい笑ってしまった。悪気はなかったのだ、許しておくれ」

 

 リヴェリアはまだ少し笑いながら少年に謝った。しかし少年はリヴェリアのその姿に納得いかなかったのか益々可愛らしいほっぺを膨らました。

 

「もー、まだお母さん笑ってるー。もう枝拾いに行くからね」

 

 少年は照れ隠しのためかリヴェリアとの会話やめ、急いで森の方に向かっていった。リヴェリアもその少年の小さな背中を微笑ましく見ながら、

 

「気をつけるんだぞ」

 

 そういうリヴェリアの姿はまるで実の息子を心配する母親のようだ。

 

「わかってるよ」

 

 そして母親の言いつけを渋々文句を言いながら従う息子。どこからどうみても二人は本当の親子のようであった。

 

 

 

 

                      ◇◇◇

 

 

 

 

 

 そして月日は流れ、リヴェリアの目的が達成されオラリオへと帰る日、リヴェリアは少年に自分と一緒にオラリオに来て暮らすかと聞いた。少年はとある事情により家族を失い、孤児であった。そのため少年はリヴェリアと別れたら一人で生きていかなければならない。しかしそうはいっても少年はまだ五歳である。一人で生きていくにはあまりにも過酷すぎる。リヴェリアの提案はそれを見越したものだった。だから少年は彼女の提案に従うとばかり思っていた。けれど少年の答えは違った。

 

「お母さんの提案はうれしいけどそれはできない。ぼく外の世界を自分の目で見て回りたいんだ。世界にはお母さんが話してくれた未知であふれているんでしょ。まだ見たことのない景色、食べたことのない食事、どきどきする冒険。ぼくはそれがしてみたいんだ。世界はぼくの知らないことがたくさんある。それを見つけたいんだ」

 

 少年は決意した眼リヴェリアを見ながら答えた。詰まるところ少年はリヴェリアが話してくれた物語や童話の中に出てくる冒険者に憧れたのである。そして話の中で出てくる冒険者たちは基本親の元を立ち、一人で冒険に出かける。少年の答えはそのためだった。

 

「バカ者、お前みたいな子どもが一人で生きていけると思っているのか。一人旅には危険が伴うし、行く道中に獰猛な獣に襲われるかもしれない。それをわかったうえで言っているのか」

 

 リヴェリアの声はいつもの優しい声と比べて一段と低く、恐ろしさをまとっていた。少年も怒られるのを覚悟していなければ「ひぃっ」と後ずさるところだった。それぐらい今の彼女は怖かった。けれど少年もここで折れる割れにはいかなかった。

 

「お母さんの言ってることわかってるよ、死の危険があることも。でもねそのリスクを背負ってでもぼくは冒険がしたいんだ。だからねここで誓うよ、何年か旅をした後絶対に生きてまたお母さんに会いに行くって。お母さんに元気な姿を見せに行くって」

 

 そう言って少年は親指の先を腰に差してたナイフで少し切ってリヴェリアの方に向けた。それは少年がリヴェリアから教えてもらったエルフ族が決して破ることのできない最上級の誓いの証だった。

 リヴェリアはこれを見て少年の意志を変えることができないことを悟ってしまった。だから彼女はこれ以上何も言わずにナイフを取り出し親指の先を切り、少年の指先に合わせた。そして、先ほどとは打って変わった優しい口調で

 

「絶対生きて私のもとに来るのだぞ。死んだら許さんからな」

 

 そう言ってリヴェリアは少し泣きそうになりながらも少年にめいいっぱいの笑顔を向けた。

 それを見て少年も

 

「約束だよお母さん。絶対に会いに行くからね」

 その言葉とともにリヴェリアの夢は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

                      ◇◇◇

 

 

 

 

 

 目を覚ますとそこは彼女の自室だった。窓から差し込む朝日がとても眩しく、まだ完全に起ききっていない頭でも今のが夢であったことが理解できる。

 

「夢だとしてもえらく懐かしいものものを見たものだな」

 彼女は自嘲気味に笑った。

 

 あれからもう十年。自分のもとに必ず会いに来ると約束した少年はまだ現れていない。十年、普通に考えればもう少年は生きていないだろう。しかしリヴェリアはそれを認めることがいつまで経ってもできなかった。いつもその最悪の可能性に思い至ってしまう前に考えることをやめるようにしていた。けれど今日違った。

 

「信じたいのだろうな。息子が生きていることを、一人の母親として・・・」

 

 リヴェリアも少年がもう生きていないだろうとは薄々感じてはいる。けれどあの日自分の目をまっすぐ見て誓いを立てる少年の姿はとても凛々しいものだった。まるで物語に出てくる英雄が自分の大切な人に一生の誓いを立てているようなそんな姿に見えた。ただ親バカ目線ででそう見えただけかもしれないが実際にあの時彼女の目にはそう映った。だからこそ危険だとわかってはいても少年を止めずに、信じて送り出してしまったのだろう。

 

「早く会いに来いバカ息子。私はいつまでも待っているからな」

 

 そう呟いてリヴェリアはベットから抜け出して身支度へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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