ソード・オラトリアーanother story- 作:ロクでなし白
リヴェリアは身だしなみを一通り整えた後、部屋を出て執務室へと向かった。彼女は【ロキ・ファミリア】の副団長であり特にファミリア内の執務関係の仕事を担当している。そのためとにかくやることは多いのである。しかも主神がアレなので執務関係の仕事はリヴェリアに丸投げされることが多かった。ロキ曰く、
「え~、ウチそういうの向いてないし、リヴェリアの方が得意やん。ウチがやっても役に立たんやろうから全部任せるわ、頼りにしてるでママ。」だそうだ。
ロキのその物言いを思い出してまた腹が立ってきた。しかもだれがママだ。確かに少し過保護なところがあり、ついつい親みたいな説教をしてしまうことがあるかもしれないがママと呼ばれるほどではないはずだ。はたから見たらその姿がママなんだけどなと思うかもしれないがそこまで彼女は自覚していなかった。
「そもそも私のことを母親と呼んでくれるのは・・・」
その言葉言い切るより前に自分が執務室の部屋の前にもうついていることに気づいたので、考え事切り上げて自分が今日朝早くから執務室にこなくてはならない理由をについて思い出した。そしてはすぐに執務室に入り、早速作業に取り掛かかるのであった。
リヴェリアが朝から準備しなければならないことが今日【ロキ・ファミリア】にはある。それは半年に一回ある【ロキ・ファミリア】の入団試験だ。【ロキ・ファミリア】と言えばオラリオの中で一位二位を争う巨大ファミリアというだけでなく、そこには【勇者】フィン・ディムナ、【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ、【剣姫】アイズ・ヴァレンタインなどと呼ばれるオラリオだけでなく、世界中にその名が広まっている冒険者が多く在籍している。つまり、何が言いたいかというと入団希望者がとにかく多いのである。あまりの多さにロキがいちいち訪ねてくる新米冒険者を審査するのがめんどくさくなって半年に一回入団試験の日を決めてしまったほどである。そのため、半年に一度しかないロキファミリアの入団試験にはすごい数の人が集まる。もうそれは百人ぐらい余裕で集まるぐらいである。だからこそ準備することがとても多い。リヴェリアが朝から執務室にやってきたのはその準備の最終確認をするためだった。
そこまで考えたところでリヴェリアは机の上にあからさまにわかりやすく置かれている一枚の報告書に目がいった。
「ほぉー、【ディアンケヒト・ファミリア】からの初心者ポーションの納入が遅れている・・か。さてどうしたものか」
完璧にめんどくさい仕事丸投げされたことに少し腹が立ったが、押し付けた奴(アホ主神)を後でお説教してやると心に決めた後この問題をどう対処するか考えた。リヴェリア自身は他にも仕事があるためここを動くことができない。しかもまだ日が昇って数刻しかたっていないので起きているファミリアの仲間も少ないだろう。おそらく朝早くから毎日の日課で剣の鍛錬をしているアイズは起きているだろうが急を要する仕事を天然っぽい彼女に任せて大丈夫かと少し心配になってしまう。そうなるとアイズを除いてほかに誰かいないものかと考えを巡らせていると一人の同胞に思い至った。おそらくアイズに対して強い憧れを抱いているあのバカ弟子はアイズの鍛錬を見守りながら自分も彼女に少しでも追いつこうと中庭で鍛錬に励んでいることだろうと思った。朝から鍛錬に励んでいる彼女の邪魔をしてまで用事を頼むのは申し訳なかったが、他に頼めそうな人物も思いつかなかったので背に腹は代えられないなと思いリヴェリアは早速中庭に向かうのであった。
「どうしたんですかリヴェリア様、朝から中庭を訪れて
」
急にやってきたリヴェリアを見てレフィーヤはとても緊張していた。それもそのはずである。なぜならリヴェリア自身がハイエルフであり、エルフの国の姫というだけでなくオラリオの中で最強の魔導士でもある。特にエルフは高貴な血筋出身者を他の種族と比べて崇拝する傾向が強いのでレフィーヤが緊張するのも無理はない。
「そう身構えるな。少しお前に頼みがあってな、こうして中庭を訪れた」
「私に頼み事ですか。喜んで、リヴェリア様の頼み事ならなんでもしますから」
レフィーヤが力ずよく頷いた。
「そんなたいそれた頼み事ではないのだが・・、まぁいい。至急【ディアンケヒト・ファミリア】へ行って初心者ポーションを受け取ってきてくれないか。納入が遅れていてな、入団試験に必要な数がたりないのだ。頼めるか、レフィーヤ」
「もちろんです。では早速行ってきます。あっそうだ、リヴェリア様。受け取ったポーションはどこに持っていったらいいですか」
「おそらくレフィーヤが戻ってくる頃には入団試験はもうはじまっているだろう。私はフィンやロキと一緒に試験会場にいるだろうからそこに持ってきてくれたらいい」
「わかりました。では支度が整い次第行ってきます」
そう言ってレフィーヤは【ディアンケヒト・ファミリア】に向かうのであった。
「こんにちは、アミットさんいますか」
レフィーヤが【ディアンケヒト・ファミリア】の入り口を開けて近くにいた団員の人に尋ねると奥からエルフのレフィーヤ自身がみてもとてもきれいな女性が出てきた。
「いらっしゃいませ、【ロキ・ファミリア】のレフィーヤ様。本日のご用件は納入の遅れている初心者ポーションの件でお間違いないですか」
「そうです。ポーションはすぐ準備できそうですか、アミットさん」
「はい、こちらにもう準備してあります。本日はこちらの不手際でご迷惑をおかけしました」
アミットが申し訳なさそうにレフィーヤに謝った。
「全然大丈夫ですよ、アミットさんが謝ることありません。普段から【ディアンケヒト・ファミリア】のエリクサーにはお世話になっていますからこのぐらい迷惑にも入りませんよ」
「そういうわけにはまいりません。そうですね、次回【ロキ・ファミリア】の方が等ファミリアをご利用になられる際に少しサービスさせていただくとリヴェリア様にお伝えください」
ここでロキにと言わずにリヴェリアに伝えてというあたりさすがである。レフィーヤも苦笑いしかできない。
「わかりました。リヴェリア様にそう伝えときます」
そう言ってレフィーヤはアミットに別れを告げて後、受け取ったポーションを抱えて【ディアンケヒト・ファミリア】を後にした。
レフィーヤは【ディアンケヒト・ファミリア】から受け取ったポーションを持って【黄昏の館】に帰るために中央通りの前に来ていた。しかしそこでレフィーヤが目にしたのは行きに通った時とは比べ物にならないほどの多くの人でごった返えになっていた。それを見てレフィーヤは半年に一度の入団試験日の街の様子を思い出した。入団試験の日はいろいろところから多くの人が入団試験を受けるためオラリオを訪れる。それに伴い一儲けしようと多くの商人が集まるため、半年に一度の入団試験は街全体がお祭り騒ぎなのである。
「どうしよう。早くリヴェリア様のところに戻らなきゃいけないのに」
他の道を通って帰ることを考えたが、中央通りというだけあってこの道以上に早く帰れる道がない。路地を通ることも考えたが迷う可能性の方がはるかに高いのでそれはできない。レフィーヤに残された選択肢は中央通りを使って一刻も早く帰る道しかなかった。レフィーヤや小さな溜息を一つついた後、覚悟を決めて人ごみの中に向かった。
初めは人混みを上手く駆け足で進むことが出来たので、入団試験が始まるまでに間に合ってリヴェリア様に褒めてもらえるかもなどと甘い考えを抱いていたレフィーヤだったがその考えは見事に打ち砕かれることになる。
思いのほか早く着きそうなことに油断していたのだろう。あと少しで中央通りを抜けるというところで大柄な男性とぶつかってしまいポーションをばらまいてしまった。
「うわー、またやっちゃった。私のバカ~、余裕ぶってる場合じゃないのに」
レフィーヤは泣きそうになりながらも急いでポーションを集めようとした。幸いあまり遠くまで転がっていったものはなかった。
そんな時全身を黒いマントで覆っていて種族までは完璧にはわからないがおそらくヒューマンと思われる人物がレフィーヤに話しかけてきた。
「ポーションを拾うの俺も手伝おうか」
レフィーヤは初め見た目があまりに怪しいので断ろうかと思ったが、親切に助けを申し出でくれた人無下にするのはどうかと思い、
「すいませんが、よろしくお願いします」
とだけ言い、ポーション集めを再開するのであった。