ソード・オラトリアーanother story- 作:ロクでなし白
「あの、手伝って頂いてありがとうございます。お陰で助かりました」
レフィーヤはばらまいてしまったポーションを集め終わった後手伝ってくれた女性に改めてお礼を言った。なぜ女性だとわかったのかというとポーションを拾っているとき偶然フード越しに顔が見えたからである。その女性の顔立ちは神から嫉妬されたと言われているリヴェリアと比べても遜色ないぐらいの美人だった。セミショートで整えられた綺麗な黒髪に透き通ったスカイブルーの目。あまりの美しさにエルフであるレフィーヤですら拾うのを忘れて彼女に見入ってしまった。
「ううん、困っている人を助けるのは当たり前だ。特に君みたいなきれいなエルフの人が困ってたらなおのこと」
彼女は当然のことをしただけだという。その言葉を聞いてレフィーヤは自分の顔が赤くなっているのがわかる。彼女自身は顔を除かれたことに気づいていないのか、はたまた単に気にしない性格で自分の美貌に気づいていないのかはわからないが顔を見たレフィーヤとしては同性だとしてもドキドキさせるぐらいの力があった。このままではまずいと思いレフィーヤは慌てて話題を変えた。
「そう言えば、見慣れない格好をしてますけどあなたは旅人の方ですか」
レフィーヤは彼女の格好がいかにも怪しいことには触れず異国の服装ということにして聞いてみた。
「そうだよ。世界中を旅してるんだ、他にも遺跡探検なんかもしてるけどな。君は冒険者か」
いきなり当てられたのでレフィーヤは驚いてしまった。
「そうですけど、よくわかりましたね」
今のレフィーヤの格好はいつもの迷宮に潜るときの時の格好ではなく普段着である。普通冒険者には見えないだろう。
「そりゃあ拾ってたのがポーションだったらこの町だったら冒険者を疑うだろ。ここは迷宮都市オラリオなんだからさ、それに君がかなり高い魔力を持ってるなって思ったことかな」
レフィーヤは驚いて何も言うことができなかった。他人の魔力量を感じるなど並みの人にはできることではない。ただモノではないだろうとは思ったがこれ以上は深く聞くことはやめておいた。ここでは他人の能力について深く聞かないのは暗黙の了解だからだ。
そこまで考えて自分がまだ自己紹介もしていないことに今更ながら気が付いた。慌てて、
「あ、私レフィーヤ・ウィリディスです。【ロキ・ファミリア】に所属しています。あなたのお名前をお伺いしてもいいですか」
尋ねられた女性は少し何か考える素振りを見せた後レフィーヤに
「クリス、俺のことはクリスって呼んでくれ」
そう気軽に答えた。レフィーヤもおそらくこれが本名ではないだろうとは思ったが何か理由があるのだと思い何も聞かないことにした。困っていた自分に率先して助けに来てくれたような人である。悪い人ではないのだろう。レフィーヤが納得するにはそれだけで十分だった。
「クリスさんはどうしてオラリオに来たんですか」
「実は俺、君が所属している【ロキ・ファミリア】の入団試験を受けに来たんだ。けどオラリオに無事着いたのはいいんだけど試験がどこでやるかわからなくて困ってたとこだったんだ」
クリスはレフィーヤに会えて助かったオーラを全開に出していた。
「クリスさん入団希望者だったんですね、私も今からホームに戻る途中だったので一緒に行きましょ。もうすぐで試験が始まってしまいますよ」
「ホント、流石に遅刻はまずいよな。ごめんレフィーヤ急いで案内してくれない」
「もちろんですよ、さぁ急ぎましょう」
そう言って二人は急いで【黄昏の館】に向かうのであった。
◇◇◇
「今回もようけ入団希望者が集まったもんやな、フィンはどの子がよさそうやと思う」
集まった人の多さにロキは若干なえながらもこの中にはダイヤの原石はないかとフィンに尋ねた。
「そうだね。まだ始まっていないから何とも言えないけどロキと考えていることは同じだと思うよ」
フィンは苦笑いしながら答えた。ロキはフレイアのように魂の輝きを見ることはできるような眼は持っていない。しかしロキには都市最大派閥というだけあってほかの神と比べて多くの入団希望者を審査してきた経験があった。そのためいつも実際に審査に入る前にはだいたい合格者には目星を付けている。そしてそれが外れたことはほとんどない。それはフィンも同じだった。しかし今回は特に酷い。二人の目に叶いそうな人物が一人もいないのだ。新しい刺激を常日頃から求め続けてロキとしては自分の目に叶う人間のいない審査を見続けるは退屈で仕方ないだろう。しかしファミリアの主神が審査を見ないわけにはいかない。そのためロキは始まる前からかなり萎えていた。
「そう萎えるなロキ。開始までまだ時間はある。決めつけるには早計すぎるのではないか」
隣にいたリヴェリアがロキに注意した。
「そうは言うてもリヴェリアたん、後五分もないんやで。そうおもろい奴なんてこやんやろ」
そう言って笑っているとロキたちにとって聞きなじみのある声が聞こえてきた。
「すいません。そこ通してください。すいません」
声の主はロキたちの方にどんどん近づいてくる。
「なんや、どないしたんや」
ロキは興味津々に列の方を眺めている。
「おそらくレフィーヤだろう。彼女には【ディアンケヒト・ファミリア】に初心者ポーションを受け取ってきてもらうよう頼んでいたからな。しかしそれにしては何か慌てているな」
リヴェリアが不思議がっているロキに答えた。そうこうしているうちに声の主はロキに立ちの前に現れた。しかも妙なやつを一緒に連れている。
「リヴェリア様只今戻りました。これが【ディアンケヒト・ファミリア】から受け取ったポーションです」
そういってレフィーヤはポーションの入ったかごをリヴェリアに渡した。
「あぁ、ありがとう。ご苦労だったなレフィーヤ。しかしお前と一緒にいるそこの奴はどうしたのだ」
リヴェリアに聞かれて大事なことを思い出いたレフィーヤは慌てて
「リヴェリア様、入団希望者の受付はまだ終わっていませんか」
と尋ねた。
「まだ締め切ってはいないぞ。そうか入団希望者だったか、名前は何という」
リヴェリアはレフィーヤが連れて来た黒マントに聞いた。黒マントはリヴェリアの顔を見て少し驚いた後クリスと答えた。
「クリスだな。試験は番号順に行われるから呼ばれたら前に出てきてくれ。これが番号札だ」
そう言ってリヴェリアは番号書かれた札をクリスに渡した。
「ちなみに君は既に他の神から【恩恵】授かったりしているか?」
これは他のファミリアからの移籍希望者かどうかの確認のための質問だった。
「一応【恩恵】か授かってますけど、もしかしてダメでしたか」
クリスが心配そうにリヴェリアに尋ねた。
「いや、ちゃんとファミリアの方で脱退の許可をもらっているのなら特に問題はない。では試験頑張るのだぞ」
「ありがとうございます。レフィーヤもありがう」
そう言ってクリスは入団希望者たちの列に向かった。それを見ていたロキには怪しい笑みを浮かべながら
「なんや、ほんまに原石きよったわ。いやあれは原石どころやないな。フィンもそう思うやろ」
「あぁ、クリスは相当の実力者だね。僕も少しはこの入団試験楽しめそうだよ」
こうして【ロキ・ファミリア】の入団試験は始まるのだった。