ソード・オラトリアーanother story- 作:ロクでなし白
【ロキファミリア】の入団試験の方法は至ってシンプルだ。それは【ロキ・ファミリア】の団長であるフィンとの模擬戦である。スキルの使用から魔法の使用、武器の使用の何でもありで、己の実力をすべてを持って審査員の一人であり対戦相手のフィンに見せればいいというものだ。勝敗は関係ない。そもそもオラリオで有数実力者であるフィンに駆け出し冒険者や他のファミリアから移ろうとしている者が勝てるはずもないのだが・・・。
しかしフィンは勝負が始まる前に対戦者に必ず言うセリフがある。それは
「君たちの全力を見せてほしい。僕を殺す気でかかってくるんだ」と。
試験も始まり次々と入団希望者たちが敗北していき不合格を言い渡されていく中、ついにクリスの番号が呼ばれた。クリスはフィンのいるリングに上がっていく
。
「君で最後だね。武器は持っていないようだけど素手で戦うのかい」
何も武器持ってこないクリスを見てフィンが訪ねてきた。ちなみにフィンは槍を二本持っている。
フィンに尋ねられて自分が武器を持っていないことに気づいたクリスは何もない空間からいきなり二本の漆黒の短剣を現した。これには見ていたすべての人が驚いた。
「準備は整ったようだね。他の入団希望者にも言ったけどもう一度言わせてもらおう。君の全力を見せてくれ。さぁ僕を殺す気でかかってくるんだ」
そう言ってフィンは槍を構えた。
「もちろん、殺す気で行くさ。」
瞬間クリスの体から溢れんばかりの殺気がフィンにおそい襲い掛かる。
「ほー、やっぱおもろい奴やな。ほな試合開始や」
ロキの掛け声とともに二人の戦いが始まった。
はじめに動いたのクリスだった。突然目の前から消えたと思ったところ、いきなりフィンの前に現れ二本の短剣で切りかかる。
「うそやん・・・」
ロキはあっけにとられていた。それはリヴェリアも同じである。その動きはレベル6であるリヴェリアですら目を見張るほどのスピードだった。しかしフィンはしっかり反応し、二本の槍で短剣を受け止めた。そして剣を流し、逆にクリスに対して槍を突き出した。
それをクリスは難なく躱し、反撃に出る。互いに一歩も引かない激しい剣戟の嵐が続く。しかし二人の攻防に入団試験に来ていたほとんどの人が理解することができていなかった。もはや二人の戦いは入団試験で行われる模擬戦のレベルをはるかに超えていた。そうこう言っているうちに今度はこっちの番だといわんばかりのフィンの激しい連続の突きがクリスに襲い掛かった。それをクリスは何とか二本の短剣を使ってうまくさばこうとしているが徐々に対応できなくなっている。やはり手加減してはいてもレベル6の攻撃は鋭くとても重い。クリスの身体を覆っていたマントはいたるところに切り傷がはいってボロボロになっていた。それでもクリスはフィンのラッシュをよく耐えている。しかし先に限界がきたのはクリスではなく二本の短剣だった。フィンがこの均衡を崩そうと放った一撃に耐えることができずに砕けてしまった。そしてその好機を逃すフィンではない。すぐさまクリスとの距離を縮めてとどめを刺しに行く。
「君との戦いは楽しかったよ。でも、これで終わりだ」
そう言ってフィンはクリスにとどめの一撃を放った。もはやクリスにフィンの攻撃を防ぐすべはない。ロキもリヴェリアもこれで決着がついたと思った。しかしその光景はいつまで経っても訪れなっかった。なぜなら砕けたはずの二本の短剣がクリスのもとにありフィンの一撃を防いだからである。一体どのようにしてあの短剣を呼び出したのかオラリオ一の魔導士と言われるリヴェリアですらわからなかった。それは実際に戦っているフィンも同じである。短剣が現れる前、クリスが何かを呟いているのが見えたのであれがおそらく魔法の一種であることはわかる。しかし武器を呼び出す魔法などリヴェリアは聞いたことすらなかった。もしそれが本当にあるのならば相当なレア魔法なのだろう。ロキなどクリスの魔法を見てからとても興味津々だ。
「今のは決めるつもりの攻撃だったんだけどね。君には本当に驚かされる」
そう言ったフィンはクリスが自分の攻撃に耐えたことにとてもうれしそうだった。しかしクリスの反応は周りが思っていたのと違った。
「くそ~、やっぱり剣だけじゃあの攻撃には耐えられないか」
剣を砕かれたクリスはとても悔しそうにしていた。その耳にはフィンの称賛など聞こえていない。
「出来れば避けたかったけどもういいや、ばれたって構うもんか。俺はフィンに勝ちたいんだ」
クリスは一瞬だけリヴェリアの方を見て何かを決心した後、突然魔法の詠唱を開始した。
「【氷よまとえ】」
クリスの詠唱とともに彼の周りの気温が下がり、冷たい風が吹き荒れる。そしてクリスの持っていた二本の短剣が氷で覆われ徐々にその形を変えていく。そして先ほどとは違い切れ味がすごそうな氷をまとった短剣が出来上がった。
「さぁ、第二ラウンドの開始だ」
そういってクリスはフィンに向かっていった。
ロキはクリスのことがとても気になっていた。正直明らかに偽名と思われる名を名乗り、マントで身体を覆い自分の正体を隠しているため怪しくもある。しかしそれを踏まえてもロキのクリスに対する興味は尽きなかった。つまり、クリスの怪しさよりも神の興味心の方が上回っていたのである。正直大部怪しいがロキ的にかなりクリスのことを気に入っているいるので最悪フィンたちに無理を言って入団させてもいいかなとまで思っていた。そのため必要に正体を隠していたクリスが一瞬リヴェリアを見た後何かを決意した姿をロキは見逃さなかった。
「なぁ、リヴェリアたん。クリスのことなんか知らへんの」
何となくリヴェリアに聞いてみた。確信があったわけではなかったが、神の勘がそうさせていた。
すると当のリヴェリアは
「いや、まさか・・そんな・・・、しかしあの氷は・・」
そこまで言いかけた後近くで試合を見ていたレフィーヤのところに行き、
「クリスの顔をお前は見たか」
と今まで見たことのないぐらい険しい表情で問い詰めた。
聞かれたレフィーヤはリヴェリアの必死の表情にワナワナした後
「はい、見ました?!髪はセミロングで透き通ったスカイブルーの目をしていて、とても綺麗な顔立ちをしたヒューマンでした」
と慌てながら答えた。
それを聞いたリヴェリアは泣きそうな顔になるのをこらえながら何とかレフィーヤに「そうか」とだけ答えてレフィーヤの元を離れた。
一連の流れを見ていたロキはこれ以上何も言わずに試合の結果を見守ることにした。リヴェリアのあんな顔を見たのはまだアイズがまだ冒険者には成り立っての頃リヴェリアと喧嘩していえでした家出した時以来だった。だからこそ自分が今口を出すべきではないとロキは考えた。試合が終われば自ずと答えもわかるだろうと信じてロキは再び試合に目を向けた。
そこでは二人の激しい攻防が未だに繰り広げられていた。剣と槍がぶつかり合い互いに一歩もひいていない。お互いにけん制しあい駆け引きを繰り返す中、先に動いたのはクリスだった。
「【アイス・ロック】」
そう唱えるとフィンの足元から氷が発生し、足にまとわりついて徐々にフィンの足を凍らせていった。
「うらぁー」
しかしフィンはレベル6のそのステータス高さを使って力ずくで地面からから凍っている足引き抜いた。けれどそれこそがクリスの狙いだった。
「これで終わりだー!!」
背後から現れたクリスが渾身の一撃を放った。あの魔法ではフィンを拘束しきれないことなど初めからわかっていた。狙いは一瞬の足止め。その間に背後に回り回避不可能の一撃をフィンにお見舞いすること、これこそがクリスの思い描いていた流れだった。そのためこの後展開はクリスにとって予想外だった。
「なかなかいい作戦だったけど、まだまだ詰めが甘いよ」
フィンは地面から足を引き抜いた勢いを使ってそのまま無防備になっていたクリスの胸元に向かって回し蹴りをお見舞いした。クリスはこれを受け身が間に合わずもろに食らってしまい、リングの端まで吹っ飛ばされた。そして何とか起きあがろうとしたときにはフィンに槍を突き付けられた。
「これで終わりだ。最後のはなかなか惜しかったよ」
そう言ってフィンは手を差し伸べてきた。クリスは少し戸惑いながらもその手を掴んで立ち上がった.
「次は勝ってやる」
「そうか、楽しみにしているよ」
そこまで言ってフィンは後ろを振り返って
「僕はクリスは合格でいいと思うけど、ロキたちはどうだい?」
「もちろんオッケーや、クリスたんの入団は大歓迎やわ。ところで、なぁなぁクリスたんそのマント中身みしてーや。うちクリスたんの素顔めっちゃ拝んでみたいねん。なーあかん?」
ロキがクリスの元にぐいぐい迫ってくる。
「すまんがロキちょっと待ってくれないか」
リヴェリアがロキの会話を遮った後クリスの前に来た
「お前はもしや・・・」
リヴェリアその言葉を言い切る前にクリスが
「久しぶり、母さん。だいたい十年ぶりくらいかな。遅くなってごめん」
そう言ってフードをはずとセミショートの髪に透き通ったスカイブルーの目をもった綺麗なヒューマンが出てきた。
それを見たリヴェリアは瞳に涙を浮かべながら
「ばかもの、私がどれだけ心配していたと思っている。私があの時お前を止めていればと何度悔やんだことか」
リヴェリアはクリスがに厳しい目を向ける。
「しかしお前が生きていて本当によかった。無事に生きて会いに来てくれてありがとう、バカ息子」
そう言ってリヴェリアは彼をめいいっぱい抱きしめた。
「うん、俺も会いたかったよ。母さん」
こうして二人はロキたちに見守られながらしばしば親子の再会を喜んだ。