Fate / Assassin cried 作:JALBAS
第五次聖杯戦争で、アサシンのサーヴァントは、同じサーヴァントのキャスターに召喚されました。
本来の話では、召喚されたのは架空の英霊“佐々木小次郎”でしたが、この話では、生前の記憶を喪失している、謎のサーヴァントが召喚されます。
―― 聖杯戦争 ――
冬木の地で、アインツベルン・遠坂・マキリの魔術師家系の三家によって200年前から始まった、どんな望みでも叶えるという万能の器“聖杯”を求めて、7人のマスターが、7人のサーヴァントと呼ばれる特殊な使い魔を使役して戦う儀式である。
サーヴァントとは、伝説の英雄が聖杯の魔力によって“英霊”として蘇った、一種の超人である。
“セイバー”、“ランサー”、アーチャー“、”ライダー“、”キャスター“、”アサシン“、”バーサーカー“の7つのクラスが有り、”令呪“と呼ばれる紋章を持つマスターと契約する。
”令呪“は、サーヴァントの意志を完全に抑えてでも従わせる絶対命令権であり、3回のみ使用する事ができる。使い切れば、基本新たに付与される事は無く、使い切らなくても、サーヴァントを失えば喪失する。但し、”マスターを失ったサーヴァント”が現存していれば、新たに契約を結ぶ事も可能となる。
最終的に、全ての相手のサーヴァントを倒したマスターが勝者となり、聖杯を手にすることができる。だが、サーヴァントは強力で、容易には倒し難い。そのため、マスターを倒す方が効率的となり、結局はマスター同士の殺し合いになるのが常であった。
基本的に戦闘は人目を避け、夜間等に人気の無い所で行うのがルールとなる。
冬木独特の霊脈を利用し、過去に4度行われていてる。通常は霊気を溜めるのに60年の歳月を必要とするが、この度、前回から10年しか経っていないにも関わらず、第五次聖杯戦争が行われようとしていた。
ひとり、またひとりとサーヴァントが召還されて行く。ここまでで、未だ召還されていないのは、“セイバー”、“アーチャー”、“アサシン”の3人となっていた。
まだ、マスターとサーヴァントが出揃ってはいないが、水面下で戦争は既に始まっており、早くも2人のマスターが命を落としていた。
夜、柳洞寺の山門の前で、ひとりの女が魔方陣を敷いて、何やら呪文を唱えている。
紫のローブに身を包んだ、妖しき女サーヴァント、キャスター。
彼女は、最初のマスターに裏切られ、自らそのマスターを始末した。その後他のサーヴァントに狙われ、一度は深手を負い消滅仕掛けたが、新たなマスター“葛木宗一郎”と契約を結び持ち直し、柳洞寺を第2の拠点としていた。
「……汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
目の前の魔方陣から光のカーテンが立ち昇り、中に、ひとつの人影が浮かび上がって来る。黒と灰色の軽装の鎧に身を包み、口元は白い布で覆っている。更には赤いフードを被り、顔を隠している。
「……お前が、私のマスターか?……」
召喚されたサーヴァントが、キャスターに問い掛ける。
「ええ……そうよ……あなた?アサシンかしら?」
「そうだ……しかし……お前は、キャスターのサーヴァントか?」
「そうよ……私がマスターでは、不服かしら?」
「サーヴァントがサーヴァントを召喚するのは、ルール違反では無いのか?」
「魔術師である私が、サーヴァントを召喚して何が悪いの?」
少し考え込んだ後、アサシンは答える。
「……そうか……」
「特に、不満は無いようね?なら、私と契約なさい。」
「分かった……」
アサシンがそう答えると、キャスターの右腕に、令呪が浮かび上がる。
「では、マスターとして尋ねます。あなたの真名は?」
「真名?……」
「あなたは、どういう英霊なの?」
「英霊?……」
「何してるの?早く答えなさい!」
「……」
「どうして答えないの?私を、マスターと認めたのでは無いの?」
「……分からない……」
「は?」
「私は……誰だ?」
「はあ?」
素っ頓狂な声を上げてしまうキャスター。
「だめだ……何も、思い出せない……」
呆れて、天を仰ぐキャスター。
触媒も用いず、ルールも破った強引な召喚のツケで、呼び出したサーヴァントは前世の記憶を失っていた。
「……フードを取りなさい。」
キャスターは、アサシンに命令する。
「私が、この目で確認します。フードを取って、顔を見せなさい!」
アサシンは、言われた通りにフードを取り、口元の布も取る。
黒い癖の付いた短髪、少し痩せこけた感じの顔付、目も黒いが、生気の感じられない死人のような目をしている。もっとも、英霊なのだから既に死んでいるのだが……
「東洋人のようだけど……見た事も無い顔ね、本当に英霊なの?あなた?」
「……」
「聞いても、分かる訳は無いわね……なら、宝具を見せなさい。」
「宝具?……」
「まさか?自分の宝具も、覚えていないと言うんじゃ無いでしょうね?」
「……思い出せない……」
「な……」
動揺するキャスター。
自分は、何の役にも立たない雑兵を呼び出してしまったのか?そんな事で、貴重なサーヴァントの枠をひとつ削ってしまったのか?徐々に、焦りを覚え、それは、次第に怒りに変わって行く。
「……それで、あなたは何ができるの?何か、武器は持って無いの?」
少しヒステリックな声で、キャスターは尋ねる。
すると、アサシンは、いきなりキャスターに向けてナイフを投げ付けて来る。
「なっ?!」
すかさず、防御壁を張ってこれを防ぐキャスター。その隙に、アサシンは目の前から姿を消す。
「何ですって?」
辺りを見回し、魔力を探るキャスター。しかし、アサシンの魔力は感じられない。
「ど……何処に行ったの?……うぐっ!」
突如、背後から銃撃があり、キャスターの体を打ち抜いた……かと思われたが、弾は直ぐに傷痕から排出され、傷口は何事も無かったかのように塞がっていく。完全に傷口が塞がったところで、アサシンは、キャスターの背後に姿を現す。
「ふん、それなりに戦闘力はあるようね……でも、その程度で他のサーヴァントに対抗できるかしら?……まあいいわ、殺られたら、別のサーヴァントを引き込めばいいわ……」
そう言って、キャスターはアサシンの方に体を向ける。
「あなたに、この山門の門番を命じます!聖杯戦争が終わるまで、ここで、他のサーヴァントの侵入を阻止しなさい!」
「……了解した……」
そう言って、アサシンは、再びフードを被って顔を隠した。
その夜、ひとりのサーヴァントが柳洞寺に向かっていた。
それは、キャスターを、一度は追い詰めたサーヴァントだった。
彼も最初のマスターを失っていたが、新たなマスターの命により、キャスターを狙った。今再び、キャスターが動き出した事を察知し、その偵察に来ていた。
青い軽装の鎧に身を包んだサーヴァントが、石段の下に現れる。一飛びで何段をも飛び越え、一気に山門をくぐろうとするが……
「ちっ!」
突然、その男を投げナイフが襲う。赤く長い槍を取り出し、男はそのナイフを弾く。しかし、進行は止められて、石段の上に着地する。その男の少し上方の石段の上に、アサシンが姿を現す。
「てめえ、アサシンか?」
槍の男が問い掛ける。
「そう言うお前は……ランサーか?」
アサシンが問い返す。
ランサーは、分かり切った質問には答えず、更に問い掛ける。
「ここは、キャスターの根城だと思ったんだが?何で、てめえが俺の行く手を阻む?」
「……」
「答える気は無いか……なら、圧し通るまでだ!」
「やってみろ。」
「じゃあ、行くぜ!」
ランサーは、槍を構えてアサシンに突進して行く。すかさずアサシンは投げナイフを放つが、それは難無く槍に弾かれる。
「喰らいなっ!」
そのまま、ランサーはアサシンを突く。
「何?」
しかし、突かれた瞬間にアサシンの姿が消える。
「ど……何処に行きやがった?」
辺りを見回し、魔力を探るランサー。だが、アサシンの魔力は検知できない。
「?!」
背後から、銃弾がランサーを狙う。
「甘めえよ!」
ランサーは、振り向きざまに銃弾を弾き、発射位置に向かって槍を突く。アサシンは姿を現し、ランサーの頭上を飛び越してこれを交わす。
このような攻防が、しばしの間続けられる。
お互い有効打は出ていないが、形勢は徐々にランサーに不利になっていった。柳洞寺一帯はキャスターの結界が張られているため、ランサーの魔力消費は通常の倍以上だった。それに対し、アサシンには常にキャスターからの魔力供給があり、魔力が尽きる事は無い。
「けっ……このまま、門もくぐれねえで帰ったら何を言われるか……」
ランサーに、焦りが見え始める。
「様子見のつもりだったが、そうも言ってられなくなった……ここで、討たせてもらう。」
ランサーは、槍を両手で持って深く構える。すると、ランサーの体から赤いオーラが発せられていく。
「その心臓貰い受ける!ゲイ・ボルク!!」
アサシンに向かって、鋭い槍の突きが放たれる。アサシンは、素早く体を交わしながら、手に持ったナイフで槍を弾く。
「何?!」
だが、次の瞬間に時間が巻き戻る。槍は、弾く直前に戻り、今度は絶対に交わせないタイミングで襲い掛かって来る。
「これは?因果の逆転か?」
槍が心臓を貫こうとした瞬間、アサシンの本能が反応する。
「time alter triple accel!!」
無意識にそう叫んだ。それと同時に、アサシンの体は神速で反応し、槍を回避する。
ランサーは必殺の槍を交わされ、アサシンの後方、石段の数段上で止まる。その顔は、驚きで引き攣っていた。
「な……何だ?今のは……てめえ!どうして俺の必殺の一撃を交わせた?!」
振り向いて叫ぶランサー。だが、アサシンは何も答えない。
“何だ?今のは……私は、何を言った?何故、あんな事ができた?”
アサシン自身も、自分が何をやったのか、分かっていなかった。
「……ちっ……槍が交わされた以上、今夜はここまでだな。」
ランサーは槍を収め、アサシンの頭上を飛び越える。そのまま、石段を飛んで降り、何処かへ去って行った。
アサシンは、ただ茫然と、その場に佇むだけだった。
その数日後、聖杯戦争発起御三家のひとつ、遠坂家の現当主“遠坂凛”が、満を持して最強のサーヴァント、セイバーを召喚しようとするが……
「……あんた何?」
「開口一番それか……これはまた、とんでも無いマスターに引き当てられたものだ……」
召還されたサーヴァントはアーチャーであった。
そして、アーチャーを連れて夜の街を偵察中に、凛達はランサーと遭遇する。即座にアーチャーとランサーの戦闘になるが、その戦闘をひとりの男子学生が目撃してしまった。その少年は、当然の事ながらランサーに命を狙われてしまう。
一度は難を逃れ、自宅に戻ったが、そこでまたランサーの襲撃を受ける。少年は自宅の土蔵に追い込まれるが、危機一髪のところで、突然召喚されたブロンドの髪の女性サーヴァントに命を救われる。
「問おう、あなたが私の、マスターか?」
7人目のマスターとなった“衛宮士郎”が、最後の7人目のサーヴァント、セイバーを召喚した。
ここに、全てのマスターとサーヴァントが出揃い、第五次聖杯戦争は完全に幕を開ける事となった。
アサシンがメインの“Fate / stay night”の二次創作を書いてみたくて、この話を書きました。
ただ、ハサンじゃ主役向きじゃ無いし、佐々木小次郎でも面白みに欠けるので、記憶喪失の謎のサーヴァントとしました。
と言っても、もう皆さん正体には気付いてしまったと思われますが、ここは気付かない振りをしておいて下さい。(謎のヒロインXみたいに……)
あくまで、私の妄想設定のサーヴァントです。既存の他シリーズのサーヴァントと似ているかもしれませんが、似てるだけです。
タイトルの“Assassin cried”は、“アサシンクリード”を捩って付けました。
まあ、記憶喪失で悩むアサシンの叫び(嘆き)という意味も含めたつもりですが。