Fate / Assassin cried 作:JALBAS
キャスターが、ルールを破って召喚したサーヴァント、アサシン。
それが原因で、正規のサーヴァントとは違う異質な者が召喚されてしまいました。その上、前世の記憶を失っています。
しかし、そんなアサシンの正体に、気付く者が現れます。
全てのマスターとサーヴァントが出揃った、第五次聖杯戦争。
その中にあって、異端のマスター“衛宮士郎”。
聖杯戦争の事も、サーヴァントの事も全く知らないこの少年は、偶然サーヴァント同士の戦いを目撃したために、聖杯戦争に巻き込まれる事となる。そればかりか、最優のサーヴァントであるセイバーを召還し、7人目のマスターとなってしまった。
アーチャーを召還した“遠坂凛”は、士郎と同じ穂群原学園の同級生であり、彼に密かに好意を持っていた。一度はランサーにより瀕死の重傷を負った、彼の命も救っていた。
彼女は、士郎に聖杯戦争が何であるかを説明し、言峰教会に連れて行き、聖杯戦争の監督役である“言峰綺礼”に引き会わせる。そこで士郎は、言峰から聖杯戦争の全容をより詳しく聞かされる。
自身も命を落とし掛けた、10年前の大火災も聖杯戦争によるものである事を知った彼は、二度とその悲劇を繰り返させないため、聖杯戦争への参加を決意する。
言峰教会を出た直後、士郎達は、聖杯戦争発起御三家のひとつアインツベルン家のマスター、“イリヤスフィール・フォン・アインツベルン”と、そのサーヴァント、バーサーカーに襲われる。
イリヤスフィールは、見た目は小学生くらいの少女だが、全身が魔術回路という最強と言っていいマスターだった。そのサーヴァントであるバーサーカーも、1体で他の6体を一度に相手できる程の、最強のサーヴァントだった。
その強大な力の前に、セイバー、アーチャー陣営の共闘でも苦戦を強いられたが、その場はイリヤスフィールが士郎達を見逃す形で、戦闘は終結した。
後日、士郎と凛は、学校内でライダーのサーヴァントに襲われる。学校内には、ライダーによる結界も仕掛けられており、士郎と凛は、学校内にもうひとりマスターが居る事を知る。
もっとも、キャスターの第2のマスターである“葛木宗一郎”も穂群原学園の教師であるため、学校内には4人のマスターが居る事になるのだが、士郎達はまだこの事を知らなかった。
バーサーカーや学校内のマスター対策のため、士郎と凛は同盟関係を結ぶのであった。
キャスターは、冬木市全域に監視の目を張り、これまでの各マスター、サーヴァントの動きを監視していた。
そして、セイバーのマスターである衛宮士郎に目を付けた。
「あの未熟な坊やなら、ここに誘き出す事も可能ね?そうして、令呪を奪ってしまえば、セイバーを私の手駒にできる……あんな、素性の知れない胡散臭いサーヴァントより、最優のサーヴァントであるセイバーの方が、余程頼りになる……」
キャスターは、自分で召喚したアサシンに不満を持っていた。記憶も無く、自らの宝具を使う事もままならないという事もあるが、それ以上に、自分の中に彼に対する嫌悪感があった。その理由は、キャスター自身にも分からなかった。
深夜、衛宮家の土蔵の中では、士郎が強化魔術の鍛練に疲れて、そのまま眠り込んでいた。
その土蔵の中に、風のように幾多もの細い糸が流れ込んで来る。糸は、見る見る内に士郎の体に絡み付いていく。そして、士郎の体が勝手に動き出す……
士郎は、夢遊病者のように夜の街を歩いて行き、柳洞寺の石段の前に辿り着く。そのまま、ゆっくりと石段を登って行く。
山門の前には、アサシンが立っていた。
意識の無い士郎は、アサシンには気付かない。そのまますれ違って門をくぐって行く士郎を、アサシンは無言で見詰めていた。
境内に辿り着いたところで、士郎は目を覚ます。
「はっ!……こ……ここは、柳洞寺?」
『ええ、そうよ。』
どこからともなく声がして、突然目の前に黒い霧が立ち込める。その中から、紫のローブを纏った、魔道師のような恰好の女性が現れる。
「き……キャスターの……サーヴァント?」
「ええ、その通りよ。セイバーのマスターさん。」
士郎は、体を動かそうとするが、金縛りに合ったように体は全く動かせない。
「無駄よ、一度成立した魔術は、魔力という水では洗い流せない。ましてあなたの魔術回路のような弱々しい流れでは……」
「お……俺を、殺す気か?」
「安心しなさい、殺してしまっては魔力を吸い上げられないわ。始めは加減が分からず殺してしまったけど、今は程度良く集められる。もう気付いていると思うけど、新都のガス漏れ事故も全て私の仕業……」
「む……無関係な人間を、巻き込んだのか?」
「この街の人間は皆、私の物……」
「き……キャスター!」
「さあ、それでは話を済ませてしまいましょうか?」
そう言って、キャスターは士郎の耳に顔を近づける。
「その令呪を、貰ってあげるわ。」
その頃、異変に気付いたセイバーは士郎が居ない事を知り、魔力の流れを追って柳洞寺の石段の前まで辿り着いていた。しかし、一気に駆け上がろうとしたセイバーの前に、ひとりのサーヴァントが立ち塞がった。セイバーは、そのサーヴァントに問い掛ける。
「聞こう、その身は如何なるサーヴァントか?」
「……アサシンだ……お前がセイバーか?」
「そうだ!悪いが、ここは通してもらう!」
「こちらも悪いが、通す訳にはいかない……ここを通りたいのならば、圧し通るがいい。」
「そうか……ならば!」
セイバーは見えない剣を抜き、アサシンに斬り掛かる。
ところが、アサシンは、まるで剣が見えるかのように最小限の動きでこれを交わし、即座にナイフでセイバーに斬り掛かる。
「くっ!」
セイバーは、とっさに後方に飛び避けるが、そのアサシンの対応に驚く。
“な……何故だ?私の剣はカモフラージュしているのに、どうしてアサシンは、初見で間合いを見切れたのだ?”
一方のアサシンも、自分の感覚に驚いている。
“私は、この英霊と戦った事があるのか?何故かは分からないが、あの見えない剣の全容が分かる……”
「令呪を……奪うだと?」
「そうよ、令呪を私のマスターに移植する。そしてセイバーには、私の手駒になってもらうわ。令呪を剥がすという事は、あなたから魔術回路を引き抜くという事でもあるわ。」
キャスターに操られ、士郎の左手が上がっていく。その手の甲に、キャスターの指先が迫る。キャスターの指先からは、淡い光が発せられている。
「くっ……」
そこに、無数の光の矢が天から降って来る。
「はっ!」
とっさに、キャスターはそれを交わして士郎から離れる。
「ふん、とうに命は無いと思ったが、存外にしぶといのだな?」
そこに、遠坂凛のサーヴァント、アーチャーが現れる。アーチャーがキャスターの糸を断ち切ったため、士郎の体は動くようになる。
「アーチャーですって?!」
それまで冷静だった、キャスターが突然騒ぎ出す。
「ええい!アサシンめ、何をしていたの?!」
思い切りヒステリーを起こすキャスターを、アーチャーは鼻で笑う。
「女の激情というのは中々に御し難い……全く、少しばかり手荒い事になりそうだ。」
門の前の石段では、アサシンとセイバーの攻防が繰り広げられていた。
セイバーは、見えない剣で何度もアサシンに斬り掛かるが、アサシンは巧みにそれを交わす。アサシンは隙を見てはナイフを投げ付け、姿を消しては死角から銃撃を試みるが、セイバーもその全ての攻撃を弾き返す。
背中を見せれば容赦無く攻撃されるので、一気に石段を駆け上がって行く事もできない。無情に時間ばかり過ぎて行き、セイバーは焦り始める。
“早く、ここを抜けなければ……このままでは、士郎が……”
セイバーは、意を決し勝負に出る。
「あなたには、このような小細工は無効のようだ。」
そう言って、セイバーは剣のカモフラージュを解く。凄まじい風が剣から解き放たれ、黄金に輝く聖剣がその全容を現す。
「行くぞ!」
聖剣の力を一部開放し、アサシンに斬り掛かるセイバー。その動きは今迄とは桁違いに早く、アサシンも反応しきれなかった。
セイバーの聖剣が、アサシンを捕えたと思われた瞬間!
「time alter double accel!!」
無意識にそう叫んだ、アサシンの動きが加速する。
セイバーの剣撃を紙一重で交わし、すれ違いざまにナイフで横腹を切り裂く。
「ううっ!」
蹲るセイバー。ただ、鎧の上からなので傷は浅く、大したダメージは無かった。そんな事よりも、完全に決まっていた一撃を交わされた事に、衝撃を受ける。
「な……どうして?」
直ぐに立ち上がり、身構えるセイバー。
“確かに、私の攻撃はアサシンを捕えた筈……どうして交わされた?何故、一瞬アサシンを見失った?”
アサシンは、冷静に身構えて次の攻撃に備えている。もう、彼は動揺していなかった。緊急時に、本能的に体が反応する。それが自分の能力なのだと、そう認識していた。
ヒステリーを起こしているキャスターに、アーチャーが言う。
「アサシンの事ならば、奴は、セイバーと対峙している。あの英霊何者かは知らぬが、セイバーを圧し留めるとは大したサーヴァントだ。むしろ、褒めてやるべきではないか?」
「ふん、ふざけたことを……あなたを止められないようでは、英雄などとは呼べない。あの男、英霊を名乗らせるには実力不足です。」
「その言い振り、やはり協力し合っているのか?君達のマスターは?」
アーチャーの質問を、キャスターは笑い飛ばす。
「私が、あの犬と協力ですって?私の、手駒に過ぎないアサシンと?」
「手駒だと?」
「そう……そもそも、あの犬にマスターなど存在しないのですからね。」
その言葉に、アーチャーは顔を顰める。
「キャスター……貴様、ルールを破ったな?」
「うふふ……魔術師である私が、サーヴァントを呼び出して何の不都合があるのです?」
「きゃ……キャスターが……アサシンを?」
士郎が呟く。
「全うなマスターに呼び出されなかったあの門番は、本来のアサシンでは無い。ルールを破り、自らの手でアサシンのサーヴァントを呼ぶとは……」
「うふふ……」
キャスターは相変わらず笑っている。
「だが、それは貴様の独断ではないのか、キャスター?」
「何の根拠があるのかしら?」
「マスターとて魔術師だ。自分より強力な魔術師を召還したのなら、例え令呪があろうと警戒する。その状況で、貴様だけの手足となるサーヴァント召還を認めるとは考え辛い。となれば、この間抜けなマスターのように、とっくに操り人形にされてると予想はつくさ。」
間抜けと呼ばれ、士郎は憮然とした表情をする。
「聖杯戦争に勝つ事なんて、簡単ですもの。私が手を尽くしているのは、単にその後を考えているだけ。」
「ほう?我々を倒すのは容易いと?逃げ回るだけが取り得の魔女が……」
すると、この言葉にキャスターが大きく反応した。再び、さっきの激昂した口元を見せる。
「……ええ……ここでなら、私にかすり傷さえ負わせられない。私を“魔女”と呼んだ者には、相応の罰を与えます。」
「かすり傷さえと言ったな?では、一撃だけ……それで無理なら、あとはセイバーに任せよう。」
一瞬間をおいて、アーチャーは素早くキャスターに切り掛かる。しかし、マントを残して、キャスターは煙のように姿を消してしまう。
「残念ね……アーチャー!」
突然、蝶のように翼を広げ、上空に姿を現すキャスター。その前に、幾つもの魔方陣が現れ、アーチャーに向けて攻撃を放つ。アーチャーは、何とか攻撃を受け止めるが、士郎は爆風で少し吹き飛ばされて、尻餅をついてしまう。
「空間転移か?固有時制御か?この境内なら、魔法の真似事さえ可能という事か?……見直したよ、キャスター。」
「私は見下げ果てたわ、アーチャー。使えると思って試してみたけど、これではアサシン以下よ。」
キャスターはまた攻撃して来る。アーチャーは素早く避ける。更に、雨あられのように降り掛かる攻撃を、アーチャーは巧みに避けて行く。
しかし、キャスターは、今度は士郎を狙う。それに気付いたアーチャーは士郎を助けるが、“余計な事をするな!”と士郎が喚き立てて口論になる。
それでも、お構いなしに攻撃を続けるキャスター。その挙句、士郎を庇ってアーチャーがキャスターの罠に嵌る。アーチャーの体は、霧状のオーラに包まれてしまう。
「気分はどうかしら、アーチャー?如何に三騎士とはいえ、空間そのものを固定化されては動けないのではなくて?ふっ……これでお別れよ。」
ところが、その前にアーチャーは仕掛けていた。いつの間に放っていたのか?アーチャーの2本の剣が、キャスターに襲い掛かった。
「ちっ!」
キャスターは何とか攻撃を受け流すが、魔方陣は消え、アーチャーの体も自由になる。更なるキャスターの攻撃を交わして、アーチャーは弓を出す。そして、魔力を込め、剣を弓で矢のように放つ。
キャスターは、慌てて目の前に魔方陣を敷く。しかし、アーチャーの攻撃は魔法陣を突き抜けて彼女を襲う。
「ああああっ!」
アーチャーの矢が、キャスターを貫く。わざと外したのか、急所は逸れていたが、多大なダメージを受けて彼女は地上に落ちてしまう。傷口からは、大量の血が流れ出す。次の攻撃に備えようとするが、直ぐには立ち上がれそうもなかった。
ところが、アーチャーからの次の攻撃は無かった。彼は、じっと佇んでキャスターを見詰めていた。
「……ううっ……アーチャー……何故、止めを刺さないのです……」
「試すのは、一撃だけと言っただろう。」
いたって冷静に、アーチャーは答える。その間に、治癒能力で徐々にキャスターの傷は塞がっていく。
「で……では、私を殺す気は無いと?」
「私の目的は、この男にあったからな……不必要な戦いは、避けるのが主義だ。」
少し回復して、ようやくキャスターは立ち上がる事ができる。
「ほほほほほ……では、あなた達は似た者同士と言う事?」
『はあ?』
士郎とアーチャーが、同時に声を上げる。
「そこの坊やは、無関係な者を糧とする、私のようなサーヴァントを許せない。あなたは、無意味な殺戮は好まない。ほら、全く同じじゃない?」
「だ……誰が、こんな奴と一緒なもんか!」
士郎が叫ぶ。
「同感だ、平和主義者である事は認めるが、根本が大きく異なる。」
アーチャーもキャスターの言葉を否定する。
更に、二人で口論になる。そのやりとりを聞いて、キャスターはまた笑いながら言う。
「気に入ったわ。あなた達は、力もそのあり方も希少よ。私と手を組みなさい!私には、この戦いを終わらせる用意がある。」
「断る!俺は、お前みたいな奴とは手を組まない!」
士郎は、即座に誘いを断る。アーチャーは、少し考えた後に言う。
「拒否する。君の陣営は、いささか戦力不足だ。いかに勢力を伸ばそうと、バーサーカーひとりに及ばない。まだ、組する程の条件では無いな。」
交渉は決裂したが、アーチャーは独断でここに来ているので、この場ではキャスターを見逃すと言う。
「以外ね?あなたのマスターは、私を追っていたのでしょう?なのにあなたは、私を見逃すというの?」
「ああ、お前がここで何人殺そうが、私には与り知らぬ事だ。」
「あら?酷い男……」
キャスターは、笑みを浮かべながら宙に浮いていく。
「待て!キャスターっ!」
追おうとする士郎の頭上で、キャスターは、細かい光の蝶となって姿を消してしまう。
アーチャーに、キャスターを見逃した事を責める士郎。それに対してアーチャーは、逆にキャスターを利用してバーサーカーを倒させた方が有効だと説く。そのためには、多少の犠牲はやむを得ないと。士郎は、その意見に反論する。
「遠坂は、そんな方針は取らない!」
「そうだな。だからこそ、キャスターには手早く済ませて欲しいものだ。何人犠牲になるかは知らんが、人間など結局は死ぬ生き物、誰にどう殺されようが、結果的には変わるまい。」
「お前っ!」
思わず、アーチャーに殴り掛かる士郎。しかし、その拳は難無く受け止められてしまう。
「私達は、協力関係では無かったか?」
「ふざけるな!俺はお前とは違う!勝つために、結果のために周りを犠牲にするなんて、そんな事絶対にするものかっ!」
そんな士郎に、アーチャーは、何の犠牲も出さずに全員を助ける事はできないと言う。その言葉を聞いた士郎の脳裏に、かつて父親の“衛宮切嗣”から聞かされた言葉が浮かぶ。
“誰かを救うという事は、誰かを助けないという事なんだ。”
「無関係な人間を巻き込みたくないと言ったな?ならば認めろ!ひとりも殺さないなどという方法では、結局誰も救えない。」
だが、士郎はその言葉を認めず、本堂に向かおうとする。
「キャスターを追うつもりか?せっかく助けてやった命を無駄に……」
「うるさい!頼まれたって、お前の手助けなんているものかっ!」
止めようとするアーチャーの言葉を遮って、士郎は叫ぶ。
「そうか……なつかれなくてなによりだ。」
すれ違って、本堂に向かって歩いて行く士郎に、アーチャーは背後から斬り付けた。
「ぐはっ!」
背中を大きく斬られ、士郎は、その場に倒れ込む
「戦う意義の無い衛宮士郎は、ここで死ね。」
士郎は、起き上がる事ができなかった。本堂に向かうのを諦め、何とか這って山門の方に向かって行く。そんな士郎を、ゆっくりと歩いて追うアーチャー。
「自分のためでは無く、誰かのために戦うなど、唯の偽善だ。お前が望むものは勝利では無く平和だろう?そんなもの、この世の何処にもありはしないというのにな……」
「な……何だと?」
何とか山門に辿り着き、よろけながらも立ち上がる士郎。その直ぐ後ろで、剣を振り上げてアーチャーが叫ぶ。
「さらばだ、理想を抱いて溺死しろ!」
石段の上では、相変わらずセイバーとアサシンの攻防が続いている。
『?!』
そこに、境内の中から、傷付いた士郎の姿が現れる。2人はそれに気付いて、戦闘を中断する。
「し……士郎?!」
叫ぶセイバー。
だが、アサシンは、セイバーが叫ぶより早く行動を起こしていた。
ふらつく士郎の背後から、二刀の剣を構えたアーチャーが襲い掛かる。その剣を、士郎とアーチャーの間に割って入り、二刀のナイフでアサシンが受け止める。
「何っ?!」
これには、アーチャーも驚く。
寸でのところでアサシンに救われた士郎だが、ふらついて石段を踏み外し、そのまま倒れ掛かる。
「士郎!」
ようやく動いたセイバーが、倒れる寸前で士郎を受け止める。
「大丈夫ですか?士郎?」
「……せ……せいばあ……」
士郎は、意識が朦朧として、そのまま項垂れてしまう。
「その男を連れて戻れ!セイバー!」
アーチャーの剣を防いでいる、アサシンが叫ぶ。
「な……私達を、見逃すと言うのか?」
「いいから早く行け!」
何やら鬼気迫る様相で、アサシンは叫ぶ。
「そうか……かたじけない、この礼はいずれ……」
そう言って、セイバーは士郎に肩を貸し、その場を去ろうとする。
「させるか!」
アーチャーは、すかさず剣を引き、アサシンを飛び越えてセイバー達に襲い掛かる。
しかし、アサシンもすかさず銃を取り出し、背後からアーチャーを撃つ。
「くっ!」
反転してそれを弾くアーチャー。結果、セイバー達を取り逃がしてしまう。
「貴様……何故邪魔をする?」
「……さあ……どうしてかな?」
実際、アサシンにも良く分かっていなかった。殆ど本能的に、行動していた。
「先程、私が境内に行くのはわざと見逃しただろう?それが、今は邪魔をする……いったい、何を考えている?」
「……」
これも答えられなかった。自分でも、どうしてそうしたのか分かっていなかった。
「お前はいったい何者だ!」
アーチャーは、今度はアサシンに斬り掛かる。アサシンは、ナイフでこれを受け流すが、徐々に圧されて行く。そして、遂にナイフを弾かれ、アーチャーの剣でフードを切り裂かれた。
「何っ?!」
フードが取れ、素顔を晒したアサシンを見て、アーチャーの動きが止まる。
「お……お前は?」
思いの外驚いているアーチャーに、アサシンも疑念を抱き、戦闘を中断する。
「……何だ?……どうした?」
「な……何故?あんたがここに居る?」
「何?……どういう事だ?お前は、私の事を知っているのか?」
しばらく硬直していたアーチャーだが、ようやく体勢を戻し、納得したような顔をする。
「そうか……それで、最初は私を見逃し、次は私の邪魔をした……全ては、衛宮士郎を助けるためか……」
アーチャーは勝手に納得しているが、アサシンには訳が分からなかった。
「何を言っている?何故、私がセイバーのマスターを助ける必要がある?」
「はあ?……何故って……」
アサシンの言動がおかしい事に、アーチャーは気付く。
「まさか……あんた、記憶が無いのか?」
「……」
アサシンは、何も答えない。敵に、自分から内情をばらす訳にはいかない。
しかし、反論しない事で、アーチャーはそれを確信していた。
「ふん……キャスターめ、とんでも無いサーヴァントを召喚してくれたな……全く、相当面倒な事になりそうだ……」
そう言い残して、アーチャーはアサシンに背を向け、そのまま柳洞寺から去って行く。
特に攻撃もせず、アサシンはその後ろ姿を見詰めていた。
セイバーの足止めをしていながらも、本能的に衛宮士郎を庇ってしまうアサシン。
そんなアサシンの正体に、気付いてしまうアーチャー。
しかし彼は、この事は士郎やセイバーには言いません。もちろん凛にも……
ちなみに、序盤は凛ルートをベースにしています。
ただ、後半以降はどうなるか分かりませんが……