Fate / Assassin cried 作:JALBAS
ライダーの結界が発動されます。
慌てて止めさせようとする士郎達。
その一方で、キャスター陣営はこの混乱に乗じて仕掛けます。
そして、アサシンは……
柳洞寺での一戦から、一夜明けた早朝。その柳洞寺の山門の前で……
「ぐはああああっ!」
アサシンは、胸に大きな穴を開けられて、その場に倒れる。彼の胸に大穴を開けたのは、キャスターだった。
「舐めた真似を……これは、お仕置きよ!」
わざと、アーチャーを足止めしなかった事に対し、キャスターは激怒していた。しかし、現状でアサシンを消去してしまうのはデメリットが多いため、死なない程度に痛めつけていた。
サーヴァントには、治癒能力が備わっているため、致命傷にならない傷ならば数日で回復する。マスターの魔力が高ければ高い程、その治癒速度は早くなる。冬木市内から生気を集めている今のキャスターの魔力なら、1日足らずで回復してしまうだろう。
「次は無いわよ……今度こんな真似をしたら、完全に消滅させてやるわ。」
更に、キャスターは令呪も使って、再度命令を下す。
「あなたに、改めてここの門番を命じます。私達の敵であるサーヴァントは、一匹たりとも通してはいけません。いいですね?!」
キャスターの右手から、赤い波紋が放たれ、アサシンを包み込む。
「……りょ……了解……した……」
仰向けで、胸の大穴から内臓を曝け出しながら、アサシンは答える。
朝から、山門の前でこのような事をやっていれば、寺の者に気付かれるところだが、キャスターの結界により一般人には、二人の姿も見えず声も聞こえ無くなっていた。
「キャスター……」
そこに、境内から声がする。
現在のキャスターのマスター、葛木宗一郎がゆっくりとそこに近づいて来る。
「宗一郎様。」
それまでの鬼のような形相が、恋する乙女のような甘い表情に変貌する。
「時間だ、行って来る。」
そう言って、門を出て立ち止まる。顔だけを横に向け、仰向けに倒れているアサシンを見る。しかし、全く表情は変えず、無言でそのまま行こうとする。
「あ……お待ち下さい、宗一郎様。」
そのまま行き掛けた葛木を、呼び止めるキャスター。
「これを……」
キャスターは、小さなお守りを葛木に渡す。
「いつ、ライダーの結界が発動されるか分かりません。これを、常に身に付けていて下さい。中に入っている護符で、短い時間ですが結界の効力を防げます。」
「うむ……」
「それと、もうひとつ……」
更に、少し大きめのお守りも渡すキャスター。
「結界が発動したら、私でも容易に中には入れません。この中に、私の魔力を込めた、私の分身が入っています。万一の時は、この袋を開けて下さい。そして、私の分身の指示に……」
「分かっている。戦闘時は、お前の指示に従う……分身であろうとも。」
葛木は、その袋も受け取り、懐に入れる。
「あ……ありがとうございます……では、お気を付けて、いってらっしゃいませ。」
「うむ……行って来る。」
葛木は、前に向き直って石段を降って行く。キャスターは、その姿が見えなくなるまで、じっと見送っていた。
葛木の姿が完全に消えると、キャスターは普段の表情に戻り、境内の中へ入って行く。もう、アサシンには見向きもしなかった。
その日の昼休み、衛宮士郎と遠坂凛は屋上で昼食を取っていた。
昨夜の、アーチャーの行動を詫びる凛。そして、令呪によって同盟関係が続く間は、士郎達とは戦わないように命令した事を告げる。
その後、二人はライダーのマスターの話をする。ライダーのマスターは2人の同級生である“間桐慎二”であり、別々に2人に共闘を申し込んで来たが、2人ともそれを断っていた。
その時、異変は起こった。
突然校舎が大きく揺れ出し、校舎内、校庭、至る所から赤い帯のようなオーラが発せられ、学校全体をドームの様に包み込んでしまう。
「こ……これは?」
「結界が発動してる?」
「と…とにかく、止めさせるんだ!」
士郎と凛は、階段を降りて校内に入る。途端、異様に息苦しくなってしまう士郎。
「な……何だ……これ……」
「体内で魔力を生成し続けるのよ、衛宮くん!」
「はっ……桜はっ?」
士郎達は、後輩で士郎の家に毎日手伝いに来てくれる“間桐桜”を心配して、彼女の教室に向かう。
その頃、職員室でも教師達が苦しんでいた。
「う……ううっ……」
ひとり、またひとりと倒れていく教師達。そんな中、ひとり涼しい顔をした者が居た。キャスターのマスター、葛木宗一郎である。葛木は、懐からキャスターから預かった大き目のお守り袋を取り出し、開く。その中から、黒い霧が溢れ出し、徐々に人の姿に変わっていく。紫のローブに身を包んだ魔女、キャスターの姿に……
士郎達は、桜の教室に辿り着いた。
そこは、地獄のような光景だった。どの生徒も、衰弱し、苦しみ、倒れている。士郎は、教室の奥で倒れている桜のところに行き、顔に耳を近づける。
「息はある。まだ、間に合わない訳じゃ無い。とにかく、サーヴァントを捜して結界を解かないと!」
凛は茫然と佇んでいたが、直ぐに更なる異変に気付いて声を上げる。
「……衛宮くん!」
そして、廊下に向かってガンドを放つ。士郎もモップを強化して、ドアをぶち破って攻撃する。敵は、獣のような、骸骨の化け物だった。それが、何匹も襲い掛かって来ていた。
「何だ?こいつらは?」
「ゴーレム、使い魔の類よ!」
敵は、次々に湧いて出てくる。これでは、先に進めない。こうしている内にも、校内の皆が生気を吸い取られていく。
「セイバーを呼ぶ。」
「え?」
「遠坂は、昨日令呪を使ったんだろう?なら、今度は俺の番だ。」
士郎は、左手の甲の令呪を眼前に翳し、叫ぶ。
「頼む……来てくれ、セイバアアアアアッ!」
士郎の前に、光り輝く球体が現れ、その中からセイバーが姿を現す。出現と同時に、セイバーはゴーレムの集団に突進し、あっという間に一掃する。そして、姿勢を正して士郎に言う。
「召喚に応じ参上しました。マスター、状況は?」
凛は、アーチャーと連絡を取ろうとするが、結界の中では繋がりが断たれていた。
また、凛は結界の基点を一階だと感じていたのに対し、セイバーはそのフロアにサーヴァントの魔力を感じていた。
士郎達は、このフロアのサーヴァントをセイバーに任せて、二人で結界の基点の一階に向かう。
葛木は、一階の廊下を早足で進んでいた。その葛木の脳裏に、キャスターの分身の言葉が響く。
『ライダーとそのマスターは、化学室に居ます。セイバーは私が足止めしますので、お急ぎください。』
「うむ……分かった。」
化学室では、ライダーのマスターの間桐慎二が、窓の外の状況を見ながら呟いていた。
「いいね、いいねえ……優れたマスターってのは、こうでなくっちゃ……へへへへへ、後で、萎びた衛宮でも見に行ってやるか?」
その時、脇で控えていたライダーが、敵の気配を察知する。
「どうした?ライダー?」
慎二の声と同時に、化学室の戸が荒々しく開けられる。
「ん?……おい……何でだよ?何でお前動けてるんだ?」
化学室に入って来た葛木に、慎二が尋ねる。が、葛木は何も答えず、慎二に向かって歩いて来る。
「おい……来るなよ……来るなって言ってんだろ!」
ライダーの結界の中で、平然としている葛木に脅える慎二。そんな慎二にお構い無く、葛木は彼に迫って行く。ライダーは、武器を握り締める。
「な……何だよ?……ひっ!ライダアアアアっ!」
「マスター、下がって!」
ただ怯えるだけの慎二を庇って、ライダーが前に立つ。そして、鎖付の鉄杭を葛木に向けて放つ。しかし、葛木は素早くそれを交わす。
「何?!」
その反応の早さに、一瞬ライダーが怯む。その僅かな隙に、葛木は一気に間合いを詰めて、ライダーに襲い掛かる。
「ぐふううううっ!」
キャスターの魔力で強化された、葛木の正拳を喰らい、ライダーは体勢を大きく崩す。間髪入れずに、葛木は次の攻撃を放つ。数発は交わすが、結局は捕まって連打を喰らい、ライダーは壁際に追い込まれる。
「くっ……」
ライダーは、目隠しを外そうと顔に手を当てようとする。
『マスター、ライダーに目隠しを、外させてはいけません!』
葛木の脳裏に、キャスターの分身の指示が飛ぶ。
即座に、その指示に反応した葛木は、ライダーの手を弾き、反対の手で彼女の首を掴む。
「うぐっ!」
そして、教室の反対側の壁に向かって、思い切りライダーを投げ付けつる。
「ぐはあああああああっ!」
凄まじい力で壁に打ち付けられ、ライダーの体は壁にめり込んでしまう。そこに、またも一気に間合いを詰め、助走で勢いを増した葛木の正拳が飛ぶ。それは、ライダーの右顎の当りに炸裂する。
「うぎっ!」
短い悲鳴と、骨が砕けるような鈍い音と共に、ライダーの首は捩じ折られてしまう。
こうして、ライダーは、完全に沈黙した。
「ひ……ひいいいいいいいっ!」
慎二は、ただ、隅で怯えているだけだった。ライダーを倒した葛木は、ゆっくりと慎二の方に向き直る。
「や……やめろ……来るな、来るなああああああっ!」
慎二に向かって歩き出そうとした葛木の脳裏に、再びキャスターの分身の指示が飛ぶ。
『マスター、セイバーとアーチャーのマスターが、そちらに向かっています。』
それを受けて葛木は、慎二に向かうのを止め、窓から校庭に出て行ってしまった。
上階では、セイバーがゴーレム達を蹴散らしていた。そこに、ようやくライダーのサーヴァントが現れ、セイバーに襲い掛かって来る。
鎖の付いた鉄杭の攻撃を交わし、セイバーの剣がライダーを貫く。
「ふふっ……」
しかし、胸を貫かれたライダーは、何故か笑みを浮かべる。そして、徐々に姿が変わっていく。紫のローブを羽織った、キャスターの姿に。
「お……お前は?」
驚くセイバーの前で、キャスターは、無数の光の蝶に姿を変えて消え去ってしまった。
ゴーレムを蹴散らし、士郎達はようやく一階に辿り着いた。そこで、士郎達は脅えて廊下に蹲る慎二を見つける。責めたてる凛に対して、慎二は叫ぶ。
「ち……違う、僕じゃない、僕じゃないいいいいっ!」
話の噛み合わない慎二に疑念を抱き、士郎は化学室に入る。そこで士郎が見たものは、壁にめり込み、首が拉げて項垂れるライダーの姿だった。
士郎達の見る前で、ライダーは崩れ落ち、消滅していった。
ライダーが消滅するのと同時に、学校に張られていた結界も消えて無くなった。
凛は、ライダーを殺した犯人を慎二に問い詰めるが、慎二は答えず、
「次に狙われるのは、お前達だからな!」
の捨て台詞を残して逃げてしまった。
セイバーと合流した士郎達は、セイバーと戦ったのはキャスターの分身であった事を聞く。ゴーレムを操っていたのもキャスターの分身で、結界の発動を利用して、逆にライダー達を罠に嵌めた事を知る。
その後、教会に連絡し、倒れた教師や生徒達の処置を依頼した。皆、衰弱していたが、命に係わるような状態では無かった。
動揺して、殆ど呆然としていた凛は、冷静にてきぱきと対処した士郎を見て言う。
「衛宮くん……随分冷静なのね?意外だった……」
「冷静じゃ無いぞ、怒りで我を忘れていただろ。」
「それでも、皆の傷を把握してたじゃない……私には、できなかったけど……」
「別に大した事じゃない……死体は見慣れているだけだ。」
「見慣れてる?」
更にその後、外界との繋がりも元に戻ったので、アーチャーも現れた。校内には、倒れた生徒達を病院に運ぶため救急隊員が入って来たので、士郎達は校舎裏の雑木林に移動する。
学校内に、もうひとりマスターが居る事を知った士郎達は、まずはキャスターのマスターを見つけ出す事が先決との判断をするのだった。
日が暮れた頃、葛木は柳洞寺に帰って来た。
石段を登った先、山門の前で、キャスターとアサシンが葛木を出迎える。
「お帰りなさい。お勤めご苦労様でした、宗一郎様。」
真っ先に、キャスターが労いの声を掛ける。
「うむ……今日は、助かった。」
「勿体無いお言葉です……宗一郎様こそ、見事なお手際でした。」
キャスターは、葛木に寄り添って、一緒に境内に入って行く。
アサシンは、黙ってそれを見届けていた。
今回の話は殆ど原作通りですが、キャスター側をメインにして書いてみました。
葛木対ライダー戦も含めて、キャスター陣営が、どのようにこの混乱利用したかを妄想してみました。
でも、主役のアサシンは、何もしないで門の前に立っていただけです。
まあ、門番を命じられているのに学校まで行く訳にはいかないので……