Fate / Assassin cried   作:JALBAS

4 / 9

葛木がキャスターのマスターだと疑い、その帰り道で罠を張る士郎達。
一方、アーチャーはこの待ち伏せメンバーから外されます。
ところが、これ幸いとばかりに、単独行動でアサシンに戦いを挑んでしまいます。
果たして、その結末は……




《 第四話 》

 

早朝、柳洞寺の山門から、葛木とキャスターが姿を現す。通勤する葛木を、キャスターが見送りに来ていた。

「宗一郎様、セイバーとアーチャーのマスターが、あなたの事を嗅ぎまわっています。しばらくは、ここに留まる方が安全かと?」

「心配無い。学校内では、おいそれと手は出せまい。まだ正体が割れていない内は、下手に休むのも業務に支障をきたす。」

「はい……分かりました。お気を付けて。」

いまひとつ納得のいかない表情で、キャスターは葛木を見送る。例によって、葛木の姿が完全に見えなくなるまで見送った後、境内に戻って行く。山門の前に立つアサシンには、一切目を呉れる事無く。

 

 

士郎達は、士郎の親友で柳洞寺の住職の息子でもある“柳洞一成”から、葛木が3年前から柳洞寺に住んでいる事、2週間前からその婚約者という女性も同居している事を聞き、葛木がキャスターのマスターだと疑い、葛木の帰り道で罠を張った。

 

日が暮れた後、士郎、凛、セイバーの3人は、市街地から少し離れた、潰れたガソリンスタンドに来ていた。

「ここから柳洞寺まで一本道だから、葛木は必ずここを通るわ。ここで罠を仕掛けて、迎え撃つ。おあつらえ向きの場所でしょ?簡易的ではあるけど結界を張ったから、外から見られるのはアウトだけど、防音だけは完璧よ。」

「凛、アーチャーはどうしたのですか?」

セイバーが問う。

「アーチャーは置いて来たわ……今は、アーチャーとキャスターを会わせたくないの。」

凛は、士郎との同盟関係について、アーチャーと揉めていた。“同盟を組むのならキャスターの方が有効”というアーチャーの考えを、抑え付けていた。

 

 

 

丁度その頃、アーチャーは柳洞寺に来ていた。

石段をゆっくりと登り、山門に近づいて行く。そのアーチャーの前に、アサシンが姿を現す。

「生憎、キャスターもそのマスターも留守だ……もっとも、居ても通すつもりは無いが……」

足を止め、アーチャーが答える。

「知っている。私のマスターが、キャスターのマスターを襲撃中だからな。」

「お前は、参加しなくても良いのか?」

「ああ……“来るな”とのマスターの命令だ。」

「では……何用だ?」

「私の標的は、あんただ。」

「……お前は、不必要な戦闘を好まない、平和主義者では無かったのか?」

「そうだ……だから、これは必要な戦闘という事だ。」

「……そうか……」

「あんたの記憶が戻ると、私の目的の妨げになるやもしれん。なら、記憶の戻らない今の内に片をつける……トレース・オン!」

アーチャーの両手に、白と黒の夫婦剣“干将・莫耶”が投影される。

「投影魔術……だと?」

「行くぞ!」

アーチャーが、アサシンに斬り掛かっていく。

 

 

 

潰れたガソリンスタンドに、葛木が近付いて来る。士郎と凛は建物の中に、セイバーは木の陰に隠れている。葛木がスタンドの手前に差し掛かったところで、凛がガンドを放つが、現れたキャスターによりそれは防がれてしまう。

「忠告した筈ですよ、総一郎様。このような事があるから、あなたは柳洞寺に留まるべきだと。」

「そうでも無い、実際に獲物が釣れた。」

これで、葛木がキャスターのマスターである言は確定した。凛は士郎に指示を出すが、士郎はそれを拒んで、キャスター達の前に出て行く。

「遠坂に衛宮か?間桐だけでは無く、お前達までマスターとはな……魔術師とはいえ、因果な人生だ。」

葛木が言う。その葛木に、士郎は質問を返す。

「葛木、あんた、キャスターに操られてるのか?」

「その質問の出所は何だ、衛宮?疑問には、理由がある筈だ。言ってみるがいい。」

「あんたは、魔術師じゃない。まともな人間だろう?なら、キャスターがやっている事を知らないんじゃないかって思ったんだ。」

「キャスターがやっている事だと?」

「そいつは柳洞寺に巣を張って、町中の人間から魔力を集めてる。ここ最近のガス漏れ事故や昏睡事件は、全部そいつの仕業だ。このまま放っておけば、いずれ死んじまう人間も出るだろう。」

「成程、確かに初耳だ……だが、それは悪い事なのか?衛宮?」

「何だって?!」

葛木の回答に、士郎は愕然とする。

「キャスターも、随分半端な事をしているな。一息に命を奪った方が、効率がいいだろうに。」

「あんたは、無関係な人間が巻き込まれてもいいって言うのか?」

「構わんな、他人が何人死のうと、私には関係無いことだ。私は魔術師では無いし、聖杯戦争とやらにも興味は無い、誰と誰が殺し合おうと構わん……私は、そこいらに居る朽ち果てた殺人鬼だよ。」

「そうか、では、ここで死しても構わぬのだな?キャスターのマスターよ!」

葛木の言葉に激昂したセイバーが飛び出し、葛木に向かって突進して行く。

しかし、葛木は肘と膝で、セイバーの剣を受け止めてしまった。

「何?」

「侮ったな?セイバー!」

そして、魔術で強化された拳で、セイバーを圧倒する。大きなダメージを喰らい、セイバーはスタンドの奥に弾き飛ばされてしまう。

「そんな……馬鹿な?」

驚く士郎と凛。

「マスターの役割を、後方支援と決め付けるのはいいがな、例外は常に存在する。私のように、前に出るしか能の無いマスターも居るという事だ。」

 

 

 

斬り掛かるアーチャーに対し、アサシンはナイフで剣撃を受ける。しかし、剣に対してナイフでは得物の大きさに差が有り、徐々に追い詰められていく。そうしている内に、ナイフは弾かれてしまう。

「貰った!」

アーチャーの剣が、アサシンを捕えるかと思われたが、アサシンの姿が消えて空振りに終わる。

「ぬっ……何処に行った?」

魔力を探るが、感知できない。そして、突如死角に出現して、銃撃を放つ。

「くっ!」

何とか剣で銃撃を受けるアーチャー。体勢を立て直し、再びアサシンに斬り掛かる。アサシンは、今度は攻撃を飛び避けて、投げナイフで攻撃する。これも、アーチャーは剣で弾き返す。

剣撃で決めきれないと判断すると、アーチャーは戦法を変える。

「トレース・オン!」

弓と剣を投影し、剣を矢に変えて放つ。

強力な光の矢が、アサシンに迫る。アサシンは飛び避けて交わすが、矢は軌道を変えてアサシンを追尾して来る。

「ちっ……」

狭い石段では、逃げ場も少なかった。脇の林の前に追い詰められたアサシンに、光の矢が迫る。

「time alter double accel!!」

アサシンの動きが加速し、寸でのところで矢を交わす。

「何っ?」

驚くアーチャー。背後の雑木林の一部が、光の矢によって派手に吹き飛ばされる。

“あれは……固有時制御か?……あんなものを常時使われたらやっかいだが、記憶が無いから、反射的に発動しているだけか?”

 

その後も攻防は続く。

終止アーチャーの方が優勢だったが、土壇場では固有時制御が発動するため、あと一歩のところで決められずにいた。

「ふん……これでは、埒が明かない……」

小競り合いを続けながら、アーチャーは呪文を唱え始める。

「I am the bone of my sword……」

そして、一旦アサシンから離れて距離を取り、最後に言う。

「……Unlimited Blade Works.」

突然、アーチャーとアサシンを包む景色が一変する。

見渡す限りの荒野、そこには無限の剣が、まるで墓標のように刺さっている。

「これは……固有結界か?」

「ご覧の通り、貴様が挑むのは無限の剣……剣撃の極地、その身に受けるがいい!」

 

 

 

倒れたセイバーにはキャスターが向い、葛木は凛達に迫る。

凛は葛木に向かってガンドを放つが、素早い動きで全て交わされ、腹部に強烈な一撃を喰らい後方の手摺に叩きつけられてしまう。

「遠坂あああああっ!」

士郎は、強化木刀で葛木に飛び掛かるが、いとも簡単にそれは砕かれ、葛木の正拳を何発も喰らってしまう。倒れそうになるが、項垂れる凛が視界に入って、何とか踏み止まる。

“殺される、こいつを止められなければ、遠坂が死ぬ!……武器、強い武器が欲しい!そうだ、あいつが持っていたような!”

「トレース・オン!」

士郎の両手に、アーチャーが持っていた白と黒の夫婦剣が投影される。

「はあああっ!」

士郎はその剣で、葛木の正拳を弾く。

「?!……うそ?」

それを見た、凛が驚く。

「マスター!」

そこに、キャスターの叫び声が響く。復活したセイバーが、葛木に切り掛かる。だが、間一髪、キャスターが葛木を抱えて飛び避ける。

「せ……セイバー……うっ!」

士郎は、そこで力尽きて跪く。

上空から、攻撃をしようとするキャスターを、葛木が制止する。

「待て……ここまでだ、引くぞキャスター。」

「は……はい、マスター。」

葛木の助言を聞き入れ、キャスター達はそのまま姿を消した。

セイバーは、心配して士郎に寄り添ってくる。そこで、士郎の投影した剣は消失する。

そんな士郎に、凛が問い質す。

「衛宮くん、それは何?あなたの魔術って、強化だけじゃ無かったの?」

「あ……いや、そうだけど、始めに出来た魔術が投影で……」

「それ、頭に来るくらい聞いてない!」

 

 

 

固有結界の中では、既に勝負はついていた。

アーチャーは弓を引いて、あとは矢を放つだけの体勢で佇んでいる。その矢の先に、酷く傷付いたアサシンが蹲っている。フードも口を覆う布も粉々に引き千切られ、その素顔が晒されている。

しかし、アーチャーは矢を放たなかった……いや、放てなかった。同じ体勢のまま、体は小刻みに震えていた。眉間にシワを寄せながら、唇を噛みしめている。

「……どうした?……何故、止めを刺さない?」

アサシンには、もうその矢を交わすだけの力は残っていなかった。ただ、右手の指を離すだけで決着がつくのに、アーチャーにはそれが出来なかった。

「ひとつ聞きたい……あんた、本気じゃ無かったんじゃないのか?」

「……何故?そう思う……」

事実、途中からアサシンは、無意識の内に本気を出せなくなっていた。但し、本人にその自覚は無かった。

しばらくの間硬直した後、アーチャーは弓を収めてしまう。

「……止めだ……」

アーチャーは、固有結界も解く。二人は、再び柳洞寺の石段に姿を現す。

「……何故だ?私が……邪魔なのでは無かったのか?」

「ふん……気が変わった。まだ、あんたには、利用価値があるかもしれないからな……」

そう言い残して、アーチャーは去って行った。

 

 

 

しばらくして、キャスターと葛木が柳洞寺に戻って来た。葛木はそのまま境内に入って行ったが、キャスターは、山門の脇に蹲っているアサシンのところに寄って来る。

「随分と手酷くやられたようね……相手は誰?アーチャーかしら?」

アサシンは、何も答えない。

「でも、ここを通った形跡は無い……門番の責務は果たしたようね?それとも、情けを掛けられたのかしら?」

アサシンは、やはり答えない。

「ふん、役に立たない男……」

そう言い捨てて、キャスターは境内に入って行ってしまった。

 






アサシンを討てなかったアーチャー。
過去の自分は殺せても、やはり特別な他人を、簡単に殺す事はできませんでした。
一方のアサシンも、本能的にアーチャーの正体に気付き、本気で戦う事ができませんでした。

キャスターは、どうにもアサシンが気に入らない模様。
そんなキャスターが、次に狙うのは……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。