Fate / Assassin cried 作:JALBAS
セイバー・アーチャー奪回のため、イリヤに協力を求めに行った士郎達は、そこで居る筈の無い、8番目のサーヴァントの存在を知る事に……
更には、その場にアサシンまでもが現れて……
士郎と凛は、キャスターを倒してセイバーとアーチャーを取り戻すために、他のサーヴァントの協力を求めようとする。
ランサーはマスターの素性が分からないため除外し、バーサーカーの協力を得るため、冬木市郊外のアインツベルンの城に向かっていた。
その道中で、凛は士郎に、士郎が凛に返したペンダントの事を語る。士郎とアーチャーが別々に同じペンダントを持っていたが、本来それはひとつしか無い筈の物である言を。
その事実により、士郎も凛も、薄々アーチャーの正体に気付き始めていた。
アインツベルンの城に辿り着いた士郎達を待っていたのは、意外な光景だった。
城のあちこちは崩れ、大穴も開いている。庭には、イリヤに仕えていたと思われる召使い達の死体もあった。更に城の中からは、激しい轟音が響いている。二人は、警戒して裏側から城の中に入り、玄関のホールに向かう。そこでは、金髪の見た事も無い男と、バーサーカーが戦っていた。
それを見た士郎達は驚く、あのバーサーカーが一方的に攻められ、複数の武器に体を貫かれているのだ。
「貴様の敗北は決定した。どうだ?どうあれ死ぬのなら、最後に荷物を降ろすというのは?」
バーサーカーはそれらの武器から、イリヤを抱え込んで庇っていた。
「裸の貴様なら、まだ我を仕留める余地があるぞ。」
しかし、バーサーカーは金髪の男の言う事は聞かず、イリヤを離して、その前に仁王立ちして対峙する。
「そうか……では、主共々、死ぬがいい。」
金髪の男の背後に、無数の時空の歪が発生する。そして、その時空の歪から、無数の宝具と思われる武器が現れる。それらは、一斉にバーサーカーを襲う。バーサーカーは巨大な石斧剣で、その武器を悉く弾く。時空の歪は、バーサーカー達の背後にも現れ、イリヤに目掛けても放たれる。バーサーカーはこれにも反応し、素早くイリヤの背後に回って武器を弾く。
必死に戦うバーサーカーを見て、涙ぐみながらイリヤが叫ぶ。
「負けないで……バーサーカアアアアアアッ!」
この声に反応して、雄叫びを上げ力を増すバーサーカー
「ならば……最大の試練をくれてやる!」
新たな時空の歪が現れ、更に強力な武器の嵐がバーサーカーを襲う。弾ききれずに、また幾つもの武器に体を貫かれるバーサーカー。それによって命を落とすが、直ぐに蘇生して立ち向かう。
「これで11、いよいよ後が無くなったな!ヘラクレス!」
更に襲い掛かる武器の嵐に貫かれ、とうとうバーサーカーは沈黙してしまう。
士郎達は、圧倒されて、その光景をただ見ている事しかできなかった。
「早々に主を見捨てていれば、勝ち目はあったものを……」
そう呟いて、金髪の男はバーサーカーに近付いて行く。
しかし、バーサーカーはまだ死んではいなかった。再び動き出し、金髪の男に襲い掛かろうとする。だが、時空の歪から今度は無数の金の鎖が放たれ、あっという間にバーサーカーは絡め取られ、完全に動きを封じられてしまう。
「戻りなさい!バーサーカー!」
このままではバーサーカーが殺されると、イリヤは令呪で霊体化を命じるが、バーサーカーは霊体化する事ができなかった。
「な……何で?私の中に帰れって言ったのに……」
「無駄だ人形!“天の鎖”、この鎖に繋がれた者は、神であろうと逃れる事はできん!いや、この男のように、神性が高いほど餌食となる。令呪による空間転移など、この我が許すものか。」
そして、黄金の巨大な矢が、動けないバーサーカーの胸を貫いた。これにより、バーサーカーの12個目の命も尽き、バーサーカーは完全に沈黙した。
「や……やだよ、バーサーカアアアッ!」
泣いて、バーサーカーに寄って行くイリヤ。金髪の男は、時空の歪から剣を一本取り出し、そんなイリヤの両目を切り裂いた。
「ああああああっ!」
両目を抑え、その場に蹲るイリヤ。
「い……痛い……痛いよ!バーサーカー!」
それを見た士郎は、怒りに任せて飛び出しそうになる。それに飛び付いて、乗っかって抑え込む凛。
「てめ……」
叫ぼうとする士郎の口を両手で塞いで、士郎を必死で止める。
「お願い……我慢して、士郎……」
更に、金髪の男は手に持った剣をイリヤに突きたてる。その剣が、イリヤの胸を貫こうとした瞬間、イリヤの姿が消失する。
「何?!」
驚く金髪の男。すかさず後ろを振り向くと、背後には、イリヤを抱いたアサシンの姿があった。
『アサシン?!何で?』
士郎と凛も、アサシンの登場に驚く。
“誰?私を抱いているのは?バーサーカー?……ううん、違う……でも、何だろう?すごく、安心できる……まるで、母様に抱かれているみたいな……”
イリヤは、何とも言えないぬくもりを感じていた。
「何だ貴様?それは、我の獲物だ!横取りは許さんぞ!」
「それは、こちらの台詞だ。お前に、この娘は渡せない!」
「戯けたことを……」
その時、沈黙した筈のバーサーカーが動き出した。
「何?!」
さしもの金髪の男もこれには驚いたが、飛び掛かる直前で、またも時空の歪からの武器に貫かれ、今度こそ消滅していった。
「呆れた男よ……最後の最後に、己が神話を乗り越えたか……」
金髪の男は、最後はバーサーカーに、敬意を示すような言葉を漏らす。
その隙に、城の中庭まで逃げ出して来たアサシン。しかし、そこに高らかに金髪の男の声が響き渡る。
「そこまでだ、こそ泥!」
気付くと、360度、全方位を時空の歪が取り囲んでいた。そして、城の屋根の上に金髪の男が姿を現す。
「今ならまだ許す。その人形を置いて、早々に立ち去れ。さも無くば、人形諸共串刺しになるぞ!」
しかし、アサシンは応じない。
「断る!この娘は人形なんかじゃ無い……人間なんだ!」
「ならば、その娘と一緒に死ねい!」
時空の歪から、武器が飛び出す。全方位から、アサシン目掛けて飛んで来る。
「time alter square accel!!」
アサシンは、固有時制御を発動する。今迄よりも何倍も高速で動き、全ての武器の攻撃を交わす。そのまま、一気に城を抜け、森の中へ消えて行った。
「何だと?!」
この動きは、金髪の男でも追いきれなかった。気付いた時にはもう、アサシン達の姿は何処にも見つから無かった。
「お……おのれ……」
このどさくさの間に、士郎達も城を抜け出していた。
たまたま見つけた廃屋の前で、士郎と凛は、先程の謎のサーヴァントとバーサーカーの戦いについて話していた。
「何なのよあの金ピカ?何で、8人目のサーヴァントが居るのよ?」
「あの男……何の英霊なんだろう?」
「湯水のように宝具を使ってたけど、ひとりの英霊が、あんなに無限に近い宝具を持てるの?あれじゃあ、何処の英雄か絞り込めもしないじゃない。」
少し考え込んだ後に、士郎が言う。
「もしかしたら、武器自体が宝具じゃ無いのかも……」
「え?」
「奴が使った武器は、どれも見た事も無い物ばかりだった。もしかしたら、あれは宝具の元となった武器じゃないのか?だとしたら、相当古い物だ。大昔に、全ての財を自分の物にしていた者……」
凛は、はっとする。
「世界最古の英雄王、ギルガメッシュ?!」
「そして、その宝物庫が、奴の宝具……」
それを聞いた凛が、呆れたように言う。
「それなら、バーサーカーが倒された事も納得いくわね……それだけの武器があれば、相手の弱点を突く事なんて、造作もないでしょうから……」
また、二人は考え込んでしまう。
「けど……とりあえず金ピカは後回しね。まずは、キャスターを何とかしなくっちゃ。頼みのバーサーカーがやられちゃったんじゃ、あたし達だけでやるしか無いわ。」
「お前達だけでは無理だ。」
『何?!』
突然割り込んで来た声のする方を向いて、士郎と凛は驚く。そこには、イリヤを抱いたアサシンが立っていた。
「イリヤ!」
イリヤの目には、包帯が巻かれていて、彼女は眠っている。
心配そうにイリヤを見詰める士郎に、アサシンは言う。
「心配はいらない。この娘の治癒能力は、常人の何倍も優れている。数日もすれば、目は元通り見えるようになる。」
「そ……それで、私達に何の用なの?アサシン!」
ガンドを放つ体勢をして、身構える凛。
「この娘を、頼む。」
『え?』
士郎と凛が、同時に反応する。
「衛宮家で、保護して欲しい。」
「何だって?」
「馬鹿を言わないで!何で私達が、そんなぶっそうなお子ちゃまを保護しなきゃいけないのよ!」
「ただでとは言わない。」
「はあ?」
「この娘を保護してもらえるなら、お前達に手を貸そう。」
「何ですって?」
凛は、何をふざけているんだという顔をする。
「キャスターの手下が、何で私達に手を貸すのよ?」
「既に、私とキャスターの契約は切れている。」
「そんなの、信用できる訳無いでしょ!」
「待ってくれ、遠坂。」
それまで黙っていた、士郎が会話に割り込む。
「あんた、いったい何者だ?」
「……」
「何で、イリヤを助けた?自分のマスターでも無いのに……それを、どうして敵である俺達に託すんだ?」
「……すまない、今は、理由は言えない。」
「はあ?それじゃ、お話にならないわ!そんなんでどうやって、私達にあんたを信じろって言うのよ!」
「……」
アサシンは、それ以上語らない。
しばらく、沈黙が続く。その沈黙を破ったのは、士郎だった。
「……分かった。」
「え?」
驚く凛。
「イリヤは、俺達で保護する……セイバー奪回に、手を貸してくれアサシン。」
「ちょ……ちょっと待ちないよ!士郎!」
ひとり、取り乱す凛。
「感謝する。」
アサシンは士郎に近づき、イリヤを渡す。士郎は、丁寧にイリヤを抱きとめる。
「では、出陣の時に、お前達のところに行く。」
そう言い残して、アサシンは去って行った。
その間、凛はずっと何かしら喚いていたが、士郎は完全にそれを無視していた。
「ちょっと士郎、何とか言いなさいよ!」
痺れを切らす凛に、ようやく士郎が答える。
「大丈夫だ遠坂、あのサーヴァントは、信用できる。」
「な……何を根拠に言ってるのよ!」
「ん?……アーチャーから聞いてなかったのか?柳洞寺でアーチャーに襲われた時、俺を助けてくれたのは、あのアサシンだ。」
「え?何、それ?私、聞いてない……」
「それに……俺は、あのサーヴァントを、昔から知っているような気がするんだ……」
「はあ?何なのよ、それ?」
凛は、どうにも納得がいかない顔をし続けていた。
新都にある、古びた洋館。
第三次聖杯戦争の時に、エーデルフェルト家のマスターが使用していた建物だが、その後放置されたままになっていた。
誰も居ない筈の洋館の一室に、明かりが灯っている。中には、妖しい二人の男が居た。死んだ筈の、聖杯戦争の監督役の神父“言峰綺礼”と、金色の髪の、居ない筈の8人目のサーヴァント“ギルガメッシュ”であった。
顔を顰めて、ギルガメッシュは綺礼に問い掛ける。
「何だ、あのサーヴァントは?あんな英霊、我は知らんぞ。アーチャーのような、紛い物の守護者か何かか?」
少し考え込んだ後、綺礼は逆にギルガメッシュに問い掛ける。
「待て、アサシンは、イリヤスフィールを助けたのだな?」
「そうだ。」
「奴は、以前には衛宮士郎も助けている……そうか、そういう事か?」
綺礼は、うっすらと笑みを浮かべている。
「何か分かったのか?」
「ギルガメッシュ、悪いが、ここは私のやり方でやらせてもらいたい。」
「何だと?……ならば、まずは納得のいく説明をしろ!」
「よかろう……」
綺礼は、自分が出した結論を、ギルガメッシュに語るのだった。
イリヤを助け、そのイリヤを士郎に託すアサシン。
そんなアサシンに、士郎は何故か親近感を覚えてしまいます。
更に、アサシンは士郎達に手を貸しますが、アーチャーとも、何やら密約を交わしています。
一方で、生きていた綺礼はどう動くのか?