Fate / Assassin cried 作:JALBAS
序盤は、アーチャー対士郎の自分同士の戦いです。
決着が付いた後、再びギルガメッシュが姿を見せます。
その一方で、衛宮家の前ではアサシンとランサーの戦いの決着が……
そして士郎達は、ついにアサシンの正体を知る事になります。
固有結界の中で、アーチャーと士郎の戦いが続く。
セイバーと凛は、黙ってその戦いを見詰めていた。例えどのような結果になろうとも、他者の介入による結末では、この2人は絶対に納得しないと知っているから……
最初は一方的にアーチャーが優勢だったが、戦う度に士郎は成長していき、互角に迫って来ていた。何度倒され、傷付いても、士郎は立ち上がり、その傷は回復していく。
“ちっ……奴の体の中に聖剣の鞘が有る限り、決定的なダメージを与えなければ直ぐに回復してしまう……やはり、先に奴の心を折らなければ……”
アーチャーに、焦りが見え始める。
アーチャーは、斬り掛かって来る士郎の腕を受け止め、士郎に問い掛ける。
「聞くが、お前は、本当に正義の味方になりたいと思っているのか?」
「何を今更……俺はなりたいんじゃ無くて、絶対になるんだよ!」
アーチャーの腕を払い、斬り掛かる士郎。アーチャーをそれを交わし、お互いの腕を絡ませて、士郎と背中合わせになる。
「そう……絶対にならなければならない。何故ならそれは、衛宮士郎にとって唯一の感情だからだ。例えそれが、自身の内から現れたもので無いとしても……」
「くっ……」
「ほう?その様子では、薄々感づいてはいたようだな?俺にはもう、かつての記憶は無い。だが、それでもあの光景だけは覚えている。一面の炎と、充満した死の臭い。絶望の中で助けを乞い、叶えられた時の感情。衛宮切嗣という男の、俺を助け出した時に見せた安堵の顔を……それが、お前の源泉だ。助けられた事への感謝など、後から生じたものにすぎない。お前はただ、衛宮切嗣に憧れた。あの男の、お前を助けた時の顔が、あまりにも幸せそうだったから。自分もそうなりたいと思っただけ……」
その言葉は、士郎の心に大きく響く。
“そう……あの時、救われたのは俺の方じゃ無い。誰一人生存者が居ない大火災。助かる筈も無い子供と、居る筈の無い生存者を見つけた男……どちらが奇跡だったかと言えば、それは……”
「子が親に憧れるのは当然だ。だが、最後に奴はお前に呪いを残した。お前はあの時、正義の味方にならなくてはいけなくなった。お前の理想は、ただの借物だ。衛宮切嗣という男が取り零した理想、衛宮切嗣が正しいと信じたものを、真似ているに過ぎない。」
「そ……それは……」
「正義の味方だと?笑わせるな!誰かのためになれと、そう繰り返し続けたお前の思いは、決して自ら生み出したものでは無い!そんな男が他人の助けになるなどと、思い上がりも甚だしい!」
アーチャーは士郎の剣を砕き、士郎の足に剣を突き刺した。
「がはあああああっ!」
苦しんで、跪く士郎。
「そうだ!誰かを助けたいという願いが、綺麗だったから憧れた!」
士郎に斬り付けるアーチャー。士郎は、何とか後方に飛び退き、再び剣を投影する。
「故に、自身から零れ落ちた気持ちなど無い!」
更に、襲い掛かるアーチャー。
「これを偽善と言わず、何と言う!」
猛攻を続けるアーチャー。士郎は、防戦一方になってしまう。
「その理想は破綻している……自身より他人が大切だという考え、誰もが幸福であって欲しい願いなど、空想の御伽噺だ。そんな夢でしか生きられないのであれば、抱いたまま溺死しろ!」
「ぐはああああっ!」
決定的に近い傷を受け、倒される士郎。
『士郎!』
セイバーと凛が叫ぶ。流石に、これで勝負がついたと思われた。
士郎は、肉体だけで無く、心も打ちのめされていた。アーチャーと剣を交える度に、アーチャーの守護者としての記憶も、士郎の中に流れ込んで来ていた。それは、無限に続く地獄のようなものだった。
士郎は、仰向けに倒れ、朦朧とした意識の中で考える。
“あいつの言う事が正しい……俺は、切嗣のあの表情に憧れた。正義の味方に……全ては、借り物の理想だった……だけど……何か、納得ができないことが……”
10年前の、大火災の様子が士郎の脳裏で蘇る。まるで、臨死体験のように、士郎は外からそれを見ていた。唯一生き残った少年を、見つけ出し助け出す切嗣の姿を……地獄のような光景の中、その一角だけが、光り輝いて見えている……
“……そうだ、確かにきっかけはそうだが、俺は感じたんだ”美しい“と……全てが偽りの俺でも、この気持ちは偽りの無い俺の感情だ。俺の行動が間違いだらけであっても、”誰かのためになりたい“という思いが、間違いの筈は無いのだから……”
士郎の傷が、再び回復していく。
「何?!」
そして、士郎はまた立ち上がろうとする。
「何故立つ?」
アーチャーは、両手の剣を士郎目掛けて投げ付ける。
「お前には……負けられない!」
士郎は、新たな剣を投影してアーチャーの剣を弾く。その剣は、今迄の物より遥かに精度が上がっていて、アーチャーの剣と比べても遜色が無かった。
「誰かに負けるのはいい……でも、自分にだけは負けられない!」
「ようやく入口に至ったか……だが、それでどうなる?実力差は歴然だと、骨の髄まで理解できた筈だが?」
「手も足もまだ動く……負けていたのは俺の心だ。お前を正しいと受け入れていた、俺の心が弱かった。」
「何?」
「確かに、お前は正しいのかもしれない……でも、それが絶対じゃ無い!自分が納得できないのに、はいそうですかと受入られるか!それこそ、俺の正義じゃ無い!……お前が俺を否定するように、俺も死力を尽くして、お前という自分を打ち負かす!この思いは、間違い無く俺の意志だ!」
再度、アーチャーに挑む士郎。ここに来て、士郎の投影はほぼアーチャーと互角になった。アーチャーの剣とぶつかり合っても、簡単には砕けない。そればかりか、剣聖までもアーチャーのそれに匹敵していた。
“ええい、何を馬鹿正直に応じているんだ俺は……こいつにできるのはここまでだ。戦法を変えれば、まだ俺には付いて来られない。こいつを殺すなら、冷静に隙をついて……”
アーチャーは、士郎を蹴り飛ばして間合いを取る。そして戦法を変えようとするが、その時……
“お前が士郎を殺すのは、お前のためか?”
アサシンの言葉が、アーチャーの脳裏に浮かぶ。
“そうか……俺は、自分がこうなった恨みを、こいつにぶつけていいる訳では無い……世界のために、エミヤという英霊を抹殺したい訳でも無い……こいつのためだったんだ!俺と同じ思いを、こいつにさせないために……”
「うおおおおおおっ!」
士郎はまた立ち上がり、アーチャーに向かって突進して来る。
“だが、俺は知っている……そんな事、こいつには大きなお世話の筈だ。例え地獄のような未来しか待っていなくとも、こいつは決して退かない。こんな力押しで抑え込んでも、絶対に自分を曲げたりはしない……”
最後に残った剣で、アーチャーの胸目掛けて突いて来る士郎。それに対し、アーチャーは右手の剣を大きく振り上げる。
良くて相撃ち、大方はアーチャーの剣が先に士郎を捕えるタイミングだった。
しかし、アーチャーは途中で手を止めてしまう。士郎の剣が、アーチャーの胸に突き刺さった……
固有結界が消え、周りは元の教会の地下に戻る。
2人は交錯したまま、動きを止めている。
「俺の……勝ちだ……」
士郎が呟く。
「ああ……そして、私の敗北だ……」
アーチャーが、それに答える。
「ふっ……結局……私は、また同じ間違いを繰り返していただけだった……」
「はあ?……」
「こっちの話だ……だが、これだけは覚えておけ……善意を押し付ける事は、時として悪意になり兼ねないという事を……」
アーチャーの胸に刺さった剣が消滅し、士郎はよろけて数歩後退し、その場に尻餅を付いてしまう。アーチャーの持っている剣も、同時に消滅する。
「し…士郎……アーチャー……」
凛が、心配そうに2人を見詰める。
「ふふ……もう、私がここに居る意味も無くなった……早々に退散……」
「アーチャー!」
アーチャーの言葉の途中で、セイバーが叫ぶ。その直後、アーチャーの背中を、複数の剣が貫く。
「うぐっ!」
「楽しませてもらったぞ。偽者同士、実にくだらない戦いだった。」
階段の上に、金髪のサーヴァント、ギルガメッシュが立っていた。それに真っ先に反応したのは、セイバーだった。
「まさか……貴様?!」
「10年振りだな、セイバー……さて、理解したか?それが、本物の重みというものだ。如何に形を似せ力を似せようが、所詮は作り物、偽者が作り上げた贋作など見るもの汚らわしい……クズめ、他人の真似事だけで出来上がった偽者は、疾くゴミになるが良い。」
ギルガメッシュの周りに、幾つもの時空の歪が現れ、そこから無数の武器が放たれる。
それらは、士郎とアーチャー目掛けて飛んで来る。
アーチャーは、士郎を突き飛ばして庇いながら言う。
「イリヤを護れ……あの男と……」
「何?」
ギルガメッシュの攻撃が、アーチャーに集中する。無数の剣の雨に晒され、アーチャーの体は消滅していった。
「アーチャーっ!」
叫ぶ凛。
「他人を救う余裕があったとはな……」
ギルガメッシュは、冷たく言い放つ。それに激昂した凛は、ギルガメッシュに向けてガンドを放つ。
「このお……誰に断って、私のアーチャーに手を出してんのよっ!」
しかし、凛の攻撃はギルガメッシュを逸れてしまい、脇の壁に当たる。
「……死に底ないを先にするつもりだったのだが、順序が変わったな、小娘……」
ギルガメッシュの周りに、再び時空の歪が現れる。
「凛、下がって!」
セイバーがすかさず庇って、剣を構えて凛の前に立つ。
「何故、あなたがここに居る?アーチャー?」
『アーチャー?!』
士郎と凛が、セイバーの言葉に驚く。
「決まっていよう。前回の戦いが終わった後、我は消えずにこの世に留まった。」
「そんな馬鹿な?」
「我は、聖杯を浴びた唯ひとりのサーヴァントだ。この時代における受肉など、10年前に済ませている。そう、お前の功績だセイバー。お前が聖剣で聖杯を破壊したため、真下にに居た我が、聖杯の中身を浴びる事になった……」
「セイバーが聖杯を?」
「い……いやそれより、セイバーは、10年前の聖杯戦争でも召還されていたのか?」
凛と士郎が、次々に驚きの声を上げる。
「あれが何であるか、我は誰よりも熟知している。何しろその腸をぶちまけられ、中にある物を見たのだからな。だが……まあ良い。我が使うつもりであったが、今回は言峰の我儘に付き合ってやる事にしたのでな。」
「言峰?……あんた、綺礼とグルだったの?」
「グルも何も、この10年間の我の根城は、この教会だったからな。」
ギルガメッシュは、背後の時空の歪を消し、士郎達に背を向ける。
「本命は仕留めた、此度はここまでとしよう。こんな穴倉では、余興も色褪せる。」
そう言って、ギルガメッシュは教会を出て行った。
しばし呆然としていた士郎達だが、はっとしたように凛が切り出す。
「セイバー、10年前の事を教えて!あなたが聖杯を破壊したって、どういう事?何で、あの金ピカの事をアーチャーって……」
一方士郎は、ずっと考え込んでいた。
“何故、あいつはイリヤを護れと?それに、あの男って?……まさか、アサシン?”
士郎は叫ぶ。
「そうか!あのアサシンは……」
衛宮家の門の前では、ランサーとアサシンの攻防が続いていた。
ランサーの槍の攻撃を、アサシンは二刀のナイフで受け流す。時に姿を消し、死角から銃撃も試みるが、ランサーもこれをことごとく弾き返す。
「槍を引けランサー、今は、お前に構っている場合じゃ無い。」
「そうはいかねえ。何せ、令呪で命じられちまってるからな。それに、てめえもう時間がねえだろ?ここで決着付けねえと、そのままとんずらされ兼ねねえからな。」
ランサーは、アサシンの現界期限が迫っている事に気付いていた。
どちらも有効打が出ず、膠着状態が続く。今回は、焦っているのは、時間の無いアサシンの方だった。それでも、先に痺れを切らしたのは、やはりランサーだった。
「このままじゃ埒が明かねえ、俺の全魔力をつぎ込んで、一気に決めさせてもらうぜ!」
ランサーは、槍を両手で持って必殺技の構えを取る。今迄に無い程の、凄まじいオーラがランサーの体から発せられていく。
「今度は外さねえ……てめえの心臓貰い受ける!ゲイ・ボルク!!」
超高速で、ランサーはアサシンに向かって突進して行く。
「は……速い?!」
通常の反応では対応しきれないと、アサシンは固有時制御を発動する。
「time alter triple accel!!」
3倍速で動き、体を交わしながら槍を弾く。
しかし、時間はそこから巻き戻る。槍は弾く直前に戻り、3倍速でも交わせないタイミングで襲い掛かって来る。
「time alter square accel!!」
アサシンは、更に加速する。だが、それでも避け切る事はできなかった。
槍に胸を貫かれ、アサシンは、そのまま壁に串刺しにされた。
「ぐわっ!」
「ふっ……」
不敵に笑うランサー……しかし、直ぐにその表情が歪み、口から血を流し始める。
「……反則だぜ……その速さはよ……」
槍から手を離して、よろけて後ずさりするランサー。その心臓の位置に、アサシンのナイフが深く刺さっていた。
「へっ……あばよ……」
最後にそう言って、ランサーは消滅していった。同時に、アサシンを串刺しにしている槍も消滅する。アサシンの胸にはその傷跡が残っているが、心臓からは外れていた。
「くっ……」
心臓は逸れていたが、かなりのダメージを受け、アサシンは壁に背を付けたまま腰を落としてしまう。
「アサシン?!」
そこに、士郎達が戻って来た。家の門の前で傷付いているアサシンを見て、士郎達は駆け寄って来る。
その時、突如強風が吹いて、アサシンのフードが飛ばされて素顔が晒される。
「?!」
アサシンの素顔を見て、足を止める士郎達。そして、士郎とセイバーが叫ぶ。
「やっぱり……親父?!」
「あ……あなたは……切嗣?!」
一番驚いたのは、それを聞いた凛だった。
「ええっ?!……アサシンが、士郎のお父さんだったの?!」
士郎と切嗣の治癒のため、4人は一旦家の中に入る。
居間で、切嗣は自分のそれまでの経緯を、士郎達に語った。
「だ……だけど、どうして親父がサーヴァントに?」
「それは分からない。僕は、世界と契約もしていないし、英雄として語られる成果も残していない……何かの、イレギュラーとしか思われない。」
「あの……切嗣さん?」
凛が、少し遠慮がちに聞いて来る。
「何だい?」
「何で、綺礼はイリヤを連れ去ったんですか?あの金ピカも、最初イリヤを狙っていたけど……」
少し躊躇いながら、切嗣は答える。
「……イリヤは……あの娘は、聖杯の器なんだ。」
『ええっ?!』
士郎と凛が、驚きの声を上げる。セイバーは、特に驚きもせず、黙って聞いている。
「キャスターが探していた小聖杯、それがあの娘だ……僕の妻、イリヤの母親のアイリもそうだった。聖杯戦争のために、アインツベルンが造り上げたホムンクルスなんだ。」
「イリヤの母親が、あなたの妻って……じゃあ、イリヤは?」
「ああ……イリヤは、僕の実の娘だ……人間と、ホムンクルスのハーフだ。」
この言葉に、士郎と凛がまた驚く。
「そ…それで、綺礼の目的は?」
「聖杯を、完成させる事だろう。奴は、10年前もそれを望んでいた。」
「ちょっと待ってくれ親父。」
そこに、士郎が口を挟む。
「聖杯が完成したら、イリヤはどうなるんだ?」
「倒されたサーヴァントの魂は、一時的に器であるイリヤの中に蓄えられる。だが、それはイリヤの人間としての魂を蝕んで行く。全てのサーヴァントの魂を吸収した時には、もう完全な器と化し、人間としてのイリヤは死んでしまう。」
「ば……馬鹿な!そんな事が、許されていいのか?」
「その通りだ、絶対に、そんな事はさせない!」
「切嗣、」
今迄無言だった、セイバーが口を挟む。
「あなたは、10年前、私に聖杯の破壊を命じました。」
「……ああ……」
「あなたも、聖杯に触れていたのですか?あなたは、聖杯について、何か知っているのですか?」
しばしの沈黙の後、切嗣は答える。
「あの聖杯は、既に呪われている。」
「呪われている?」
「理由は知らないが、“人を殺す”という呪いに憑りつかれている。そのため、全ての願いを“人を殺す”という手段でしか叶える事ができないんだ。」
「何だって?」
「そんな物を、綺礼は完成させようとしているの?」
「そうだ……だから、聖杯は、絶対に完成させてはならない。イリヤを、助けるためにも。」
士郎も凛も、その意見に同意する。セイバーも、ゆっくりと頷いた。
「あの、切嗣さん。もうひとつ、教えて欲しいんですけど……」
凛が、再度切嗣に問い掛ける。
「あのギルガメッシュって……10年前、誰のサーヴァントだったんですか?」
「え?言峰じゃ無いのか?」
士郎が口を挟む。
「……10年前、アーチャーのサーヴァントを召喚したのは……“遠坂時臣”君の父親だ。」
「えっ?」
士郎が驚く。しかし凛は、そう予想していたのか、特に驚きは見せない。
「じゃあ……今、あいつが綺礼と組んでるって事は……」
そう言いながら、凛は俯いてしまう。そんな凛に、切嗣は静かに語る。
「僕も、詳しい事は知らないが……おそらく、君の考えている通りだろう……」
その後、凛は部屋を出て行ってしまう。士郎達は、掛ける言葉が見つから無いため、誰も追おうとはしなかった。
しばしの沈黙の後、切嗣が切り出す。
「士郎、セイバー、奴らと戦う前に、お前達に言っておく事がある。」
「え?」
「な……何ですか?切嗣?」
「セイバー、僕が10年前、君を召喚する時に何の触媒を使ったか知っているか?」
「い……いいえ、聞いていませんが?」
「それは、先の聖杯戦争の間、アイリの体の中に隠していた。最後の決戦の前に、僕の中に移し替えたが……」
「そ……それは……まさか?」
「そう……聖剣の鞘だ。」
「そ……それは、今何処に?」
セイバーは、体を乗り出して切嗣に問い詰める。
「士郎の体の中だ。」
『えええっ?!』
士郎とセイバーが、同時に驚く。
「10年前、焼け跡で士郎を見つけた時、酷く衰弱して危ない状態だった。あの鞘には、無限の治癒能力がある。僕は、士郎を助けたい一心で、士郎の中にそれを入れたんだ……」
士郎もセイバーも、驚きでしばらく言葉が出なかった。
その後、士郎がばつが悪そうに、セイバーを見て言う。
「す……すまない、セイバー……そんな大事な物を、ずっと俺が隠してたなんて……」
「いいえ……」
セイバーは怒るどころか、救われたような、安堵の表情を浮かべて答える。
「私は、先の聖杯戦争で、何ひとつ護れなかった事を悔いていました……でも、そうじゃ無かった。私は、あなただけでも救えていたんですね……良かった……本当に、良かった。」
セイバーは感動し、士郎は少し照れている。非常に話し掛け難い雰囲気になったが、切嗣は構わず続ける。
「ギルガメッシュとの戦いは、非常に厳しいものになる。おそらく、その鞘の力が必要になるだろう。」
「で……でも親父、それ、どうやって取り出すんだ?」
「投影と同じだ。」
「え?」
「自分の中で、“最強”をイメージするんだ。」
日付が変わった頃、切嗣、士郎、セイバーの3人が衛宮家の門から出て来る。聖杯の完成を阻止し、イリヤを助けに行くために。
少し遅れて、凛もそこに加わる。
「大丈夫なのか?遠坂?」
士郎が尋ねる。
「当然でしょ!私のアーチャーばかりか、父さんまで奪ったあいつらを、絶対に許さないんだから!」
アーチャーの思惑を、原作とは変えています。士郎を殺そうとする本当の理由は、士郎に自分と同じ思いをさせないためです。結局は、自分よりも他人(過去の自分ではありますが)のために行動していた事になります。それに気付き、アーチャーは剣を引いたという事です。いろいろ異論もあるかもしれませんが、まあ、私の勝手な妄想ですので、ご容赦願います。
ちょっと疑問に思ったのですが、第四次聖杯戦争で、セイバーは小聖杯しか破壊していないのでしょうか?そのため、聖杯の泥が流れ出して、未曽有の大火災が起こってしまったんでしょうか?
だとすると、それは何故なんでしょうか?
切嗣が“小聖杯を破壊しろ”なんて言う訳は無いので、そうなると、切嗣もセイバーも小聖杯だけを聖杯と勘違いしたのか?それともセイバーの耐魔力が強すぎて、必死に抵抗したから小聖杯しか破壊できなかったのか?
聖杯の器の提供元のアインツベルンのマスター切嗣が、聖杯の仕組みを知らないというのも変なので、やはりセイバーの耐魔力が原因ですかね?