ジャスくんと、私はタンクになってみせるって。
ギルドマスターとして矢面に立って、喧嘩があったら仲裁して。
私はタンクだ。
ジャスくんがいなくなったからって、その誓いは無くならない。
タンクとして、守ってみせるよ、ロードくん。
「世話、かけるな。」
【気に病むでないぞ。】
ぶれどらさんとロードくんがそう言葉を交わしたあと、ロードくんが支えを失って後ろに倒れる。
「ロードくん!!」
【楼閣殿!!】
ロードくんを心配して駆け寄ろうとする私をぶれどらさんが言葉で制した。
その声に驚いて私は一瞬動きを止める。
【盟友は今、盟友の信念をかけた戦いをしておる。我が盟友に頼まれたのは露払いだ。】
「そんなこと言ったって……!!」
【放っておけぬのは重々承知よ!だが、それでもこれは盟友が解決するしかないのだ!!】
倒れたロードくんを放っておけるわけないじゃない。
そう言おうとしていた私の言葉を先読みしてぶれどらさんが言った。
更にぶれどらさんは続ける。
【関係が良好な楼閣殿とハンコック殿とは異なり、盟友の相手は悪魔だ!彼奴らは目的のためなら手段を選ばぬ!!盟友が悪魔と戦いを始めた今、我らにできることは祈ることのみよ!!】
ぶれどらさんが私を諭す。
それはどこまでも合理的で、どこまでも正論で、
どこまでも、私の役目を否定してくる。
「あぁぁぁもぉぉぉぉ!!ロードくんに頼まれるのはいっつも損な役割ばっかりだよ!ぶれどらさん!空見といて!!」
【!!恩に着るぞ、楼閣殿!!】
ぶれどらさんが迎撃に戻る。
私はロードくんの傍に控えてロードくんにダメージがいかないように守る事を決めた。
あの日、ジャスくんに誓ったんだ、タンクとしてみんなを守ってみせるって。
「一人守れないでみんなを守るなんてお笑い草だよっ!!」
ジャスくんから借り受けた鎧に身を包み、バリアやハンマーで相手の攻撃を弾いていく。
ヒーローと混じった日からずっとそうだった。
目に見えて分かった変化は食べる量だった。
あの日は気づいてなかったけど、私の一日の摂取カロリーは爆発的に増えていた。
人智を超えた力には相応のエネルギーが必要になると考えると当然の結末だろう。暴徒に突っ込んで、助けたかった人を助けた代償だ。
そう考えれば、このくらいは安いものだろう。
摂取カロリーが増えただけじゃなく、気づくと色々な変化があった。
朝の低血圧がなくなったとか、飛んでる蚊を片手で掴めるとか、その程度のことしか実感してなかったけど、さすがに【フルーク】からの爆弾躱せた時は我が事ながらちょっと引いた。
「それで今、私はタンクをやってるよ。ジャスくんの代わりに、私はなれてるかな?」
誰も聞いてはいない言葉。
だけれどそんなことはどうでもいい。
みんなを守るタンクになる
これは私が、私に立てた誓いだ。
「てやぁ!!せいやっ!打ち砕く!!」
ロードくんを背に私は戦う。
ロードくんはたまにピクピクと痙攣し、眼球がまぶたの下でギョロギョロと不規則に動いている。
酷い熱病にうなされているようなその様子に私はいたたまれなくなるけど、こればかりはどうしようもない。
「まったく……ロードくんってば援助を求めるのがへたっぴなんだから!」
愚痴をこぼしながらも私は嬉しかった。
初めてロードくんが私たちを全面的に頼ってくれたんだ。
いつも一番責任のかかるところは自分がやってきたロードくんが、初めて責任を人に投げたんだ。
だったら私は、その期待に応えないと。
ガリガリと何かが減っていくのを感じる。
疲れはない。ジャスくんの鎧が守ってくれるから。
なら、減っていくこれは余裕だろう。
余裕がどんどんなくなっていくんだ。
集中がどんどん切れていくんだろう。
「楼閣さん!!」
どこかに飛んでいきそうだった私を、その一言が引き戻した。
声の主は波羅ちゃんだった。
構えているのは……ガトりんか。地面に固定して360°回るようにしているらしい。
結局、彼も諦めが悪い。
「助かったよ波羅ちゃん!!」
「まだです!!」
波羅ちゃんにたしなめられて周りを見てみると、聞き覚えのある音がした。
耳障りなモーターの駆動音が。
【ギュギギギ!!】
「【メカ犯】!?なんで!?」
私は反射的に叫ぶけど、そんなことはどうでもいい。
ヒーローに味方のカードキャラが揃ってかからないと倒せなかったあの【メカ犯】が、他のカードキャラ達とこっちに向かってきている。
私一人じゃ、守りきれない。
【防衛主任殿、空を頼むぞ!我が彼奴を止める!!】
その時、一匹の竜が飛び立った。
ブレスで空の敵を一掃すると残りを銀ちゃんに任せて【メカ犯】との距離を詰める。
「ごめんお願い!」
【任せておけ!】
そう言ってぶれどらさんは【メカ犯】の前に降り立つ。
その瞬間にぶれどらさんに【メカ犯】が猛攻撃を加える。
【ぐうっ……!】
攻撃をもらって苦しそうに呻きながらもぶれどらさんは【メカ犯】に話を始める。
【家庭用メカよ、貴様が起こした反乱はこの世界を壊すためだったか?】
【メカ犯】は何も言わず、攻撃を続ける。ぶれどらさんの鱗にヒビが入った。
ぶれどらさんはなおも続ける。
【……いや、貴様の目的はあの自称神である
【メカ犯】の攻撃の手が少し緩まる。しかし【ぶれいずどらごん】はその隙をつくでもなく、ある種の慈愛をかけるかのように語りかける。
【なれば我らはここにおいて同士よ!我はあの狂った
徐々に【メカ犯】の攻撃からは勢いが消えてゆき、【メカ犯】はぶれどらさんを見上げていた。表情がない故、何を考えているかは全く分からない。
ぶれどらさんはそれを見て次の行動に移ろうとした。
が、別の刺客がぶれどらさんを襲った。
【…………………………】
【リョーフキー】が虚ろな目をして無表情にぶれどらさんの肢体に槍を突き刺そうと飛びかかる。
【む!?】
(いかん、間に合わぬ!)
ぶれどらさんはそれに気づいたみたいで咄嗟に躱そうとするけど、いかんせん身体が大きすぎた。静止状態からの初速じゃその攻撃を躱しきれない。
その時だった。
【ギュッ……ギギギ!!】
ピシュッ!と鋭い音をたてて光線が【リョーフキー】を襲う。【リョーフキー】は空中ゆえに躱すことも出来ずに消滅する。
光線を発射したのは誰だろう、【メカ犯】だ。
ぶれどらさんはその事に少なからず驚きつつも会話を試みる。
【……手
【ギッギュギ!】
当たり前だと言わんばかりに【家庭用メカ】は頭を上下させると他のカードキャラ達のひしめく前方へと突っ込んでいった。
驚いた。
これはホントに想定外だ。
あの【メカ犯】が味方になるなんて考えられなかった。ぶれどらさんはこのことを予想して説得を試みてたのか。
これでかなり戦いに余裕ができる。ぶれどらさんに感謝だ。
「ぶれどらさん、やったね!あの【メカ犯】が味方になるって凄いよ!これなら何とか──」
【………………カ……】
私は偉業とさえ思えることをやり遂げたぶれどらさんを讃えるけど、当のぶれどらさんは小さく何かを呟いた。
なんて言ったんだろう?よく聞こえなかった。
黙って聞いているとぶれどらさんの声はだんだんと大きくなっていった。
【……カ、奇貨、奇貨奇貨、クカハッ!奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨奇貨、
(えっ!?この人いま【ラッキー】って言った!?)
楽しそうにぶれどらさんは叫んだ。幸運だと、運が味方をしたのだと楽しそうに叫んだ。
それを聞いて私は困惑を隠せない。めちゃくちゃびっくりしてる。状況が把握出来ない。
言いたいことやツッコミはなんとか心に押し込めたものの、多分表情はその内面を如実に表しているんだろう、表情筋がなんとも言えない歪み方をしているのを感じる。
【攻撃が止まった隙に目を抉り、声による誘導で敵を蹴散らして相打ちにしてやろうと思うたが、まさかこちらにつくとは!何とも
(ここに来て運ゲー仕掛けたの!?)
【イケる!】
(イケる!?)
待って待って待って待って!?いけなかったらどうするつもりだったのさ!?
【楼閣殿!!何を惚けておる!憎たらしい彼奴が露払いをしてくれておるぞ!クカハハハハハ!!】
「あぁもう!考えるだけ不毛だよ!銀ちゃんそっちは!?」
【制圧終ワリマシタ!イツデモイケマス!!】
だったら行幸!
私はロードくんを担ぎながら手早く指示を出す。
「銀ちゃんは私と来て!波羅ちゃんと秘めたるは後ろ警戒!そろそろイスタカさんが抑えてた敵が来てもおかしくない!ぶれどらさんも私と!【全天】破るよ!」
【合点!】
【了解シマシタ!】
「はい!」
【おうよ!】
さぁ、最後の幕が上がるよ。
『「お前にだけはあの子を任せてなるものか!!」』